恋愛騎士物語4~孤独な騎士のヴァージンロード~

凪瀬夜霧

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16章:特別な記念日を君に

おまけ3:気怠い朝は笑顔の貴方と

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 柔らかな布団の中は心地よくて、まどろむ中で寝返りを打つ。途端に走った腰の重怠い痛みに意識が覚醒し、ランバートは目が覚めた。
 昨日は結局あの後更に数回、互いに止まれずに求め続けた。色んな体位で致したから腰に負担のかかる体位もあったのだろう。
 更に後孔に違和感がある。何度も受け入れたので、なんだか内側も腫れぼったい感じがした。

「ちょっと、はしゃぎすぎた……」

 動けない事はないが、もう少しのんびりしたい。
 腰を摩りながら布団の中に戻ったランバートは、モゾモゾと動いて隣を見た。

 ファウストは見当たらない。時計を見ると八時を過ぎている。いつもの起床時間を考えれば二時間以上寝坊している。
 さっき見回したら着替えた形跡があった。朝食にでも出たのだろう。

 それにしても、随分張り切ってしまった。甘えたし、甘えられたしで気持ちも良くて、もっと欲しくてついつい。翌日休みという気の緩みもあった。
 結果、気持ちはたっぷり満たされた。色々悩んでいたのが嘘みたいにスッキリとしている。人間、幸せだと楽観的になるのだろうか。

「……起きよう」

 こうしているのが勿体ない気分になって起き上がる。そっとベッドから降りてみたが、問題なく立てそうだ。多少、鈍い痛みはあるのだが。
 水差しから水を汲んで一口飲み込んだ所で部屋のドアが開いて朝食をトレーに乗せたファウストが顔を見せ、穏やかな笑みを見せた。

「おはよう。体は大丈夫か?」
「おはよう。まぁ、なんとかね」

 ベッドに腰を下ろしたランバートに、トレーを置いたファウストは近づいて頬にキスをしてくれる。それに同じように返すのが、二人で迎える朝の定番だ。

「食事持ってきたんだが、食べられるか?」
「うん、勿論」

 立ち上がってテーブルまで。今日はサンドイッチにサラダとスープ、チキンソテーとカットフルーツだ。
 ファウストが紅茶をいれてくれて、受け取って二人で食べ始めた。

「そういえば、ゼロスは無事にいた?」

 少し気になってファウストに問いかけると、対面でファウストは頷いた。

「シウス達の所にも顔を出して、他にも顔を見せたが。ゼロスはいつもと変わりなかったな」
「……クラウル様、元気なかったんじゃないのか?」
「ご明察だ」

 なんとなく、どういう展開になったのか予想ができたランバートは苦笑する。クラウルは昨日はフラれてしまったのだろう。

「ねぇ、ファウスト」
「どうした?」
「ゼロスの結婚式は、是非とも手を貸したいんだけれど」

 伝えたら、ファウストはニッと笑って「勿論だ」と返してくれた。

 食べ終わると人心地つく。膨れたお腹を撫でつつ大きく伸びをすると痛む腰が主張する。思わず「いた!」と声に出てしまったランバートの元に、ファウストが当然のように軟膏を持って近づいてきた。

「あの……自分で」
「自分じゃ見えないだろ」
「うぅ、でもさ。ファウストにあそこに軟膏塗られるの凄く恥ずかしい」

 エリオット特製の軟膏はとても良く効くのだが、なんせ見えない場所だ。傷はついていないだろうが、楽になるなら塗った方がいい。
 羞恥心との葛藤は毎度あるのだが、大抵ランバートの負けで終わる。

「今更だろ? 昨夜も散々……」
「わぁあ! それはそうだけどさ、羞恥心ってものはあるんだよ!」

 こういうところ、ちょっとデリカシーがない。だがこれがファウストなんだとも思う。

「ほら、いいから」
「うぅ……、分かったよ」

 ベッドへと移ってうつ伏せになり、お尻だけを高く上げる。ローブだからズボンを脱ぐ必要がないのだけが幸いだ。
 後ろに陣取ったファウストが薬を中へも塗り込んでいく。その指の感触や、軟膏の少し冷たい感じが困る。昨日散々に愛された部分がこんな事でも気持ちがいいと感じてしまうのだ。

「腰、揺れてるぞ」
「しかたないじゃないか!」
「するか?」
「流石に腰が死ぬ」

 そう何度もできるほど体がもちません。

 丁寧に薬を塗られ、妙な疲れを感じてベッドに。その隣にファウストも寝転がって、初夏を感じる風が室内に吹き込む中、二人はどちらともなく身を寄せ合って笑った。

「のんびりだね」
「たまにはいいだろ?」
「うん」
「なぁ、ランバート。体の調子はどうだ?」

 心配そうなファウストに、ランバートは穏やかな笑みを返した。

「午前中のんびりしたら大丈夫かな」
「それなら昼は外に行かないか? 昨日行かなかったデートをしたい」

 ファウストの嬉しいお誘いに、ランバートはパッと表情を明るくする。そして胸元に顔を寄せて頷いた。

「勿論!」
「決まりだな」

 昨日の続きを期待して、今もまだ幸せの最中。
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