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17章:シュトライザー家のお家騒動
3話:遺言(アリア)
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騎士団の人に連れられて、焼け出された多くの人が馬車に乗せられて臨時に用意された宿泊所へと運ばれ、現在話をしている。
けれど左腕を半分切り落とされたリーヴァイと、犯人のターゲットになり得るアリア、メロディ、そして二人の主治医となっているヨシュアの四人はより危険が高いということで城で匿われる事になった。
ルカが連れて行かれた事を知ったメロディは蒼白となって、今は城の侍医もついて安静にしている。精神的な事で今赤ん坊が生まれてしまったら、助けられないと。
リーヴァイの腕の手術は騎士団のエリオットがしてくれている。多少、不自由になるだろうと言っていた。筋肉が完全に切れて、骨にまで多少の傷をつけている。
だがこれはリーヴァイだからこそ、この程度で済んだそうだ。リーヴァイの体はとても七十代とは思えず、骨も筋肉も発達して若い状態らしい。だからこそ、この程度で済んだ。普通なら腕が無くなっていてもおかしくはないそうだ。
アリアは用意された部屋で一人、俯いたまま自責の念を感じていた。
もしも自分が捕まらなければ、ファウストやアーサー、ルカが捕まることはなかった。リーヴァイが怪我をする事もなかった。
捕まったとしても何かできていれば、もっと抵抗できていれば。
さっさと殺されてしまっていたら……。
苦しくて胸元を握った。診察してもらって、落ち着く為の薬を飲んだけれど落ち着かない。苦しくて、辛くて、後悔ばかりが押し寄せてくる。
そんな時、コンコンという音が響いた。
「アリアちゃん、いる?」
「ウルバス、さん?」
穏やかな声が耳に馴染む。頼りなく声をかけると、扉の外で「うん」という声が聞こえた。
「今少し、いいかな?」
「……あの」
「お願い。君の顔が見たいんだ」
静かな声でそう言われたら、足が進み出してしまった。
アリアも不安で苦しくて、誰かを欲したのだと思う。だから、ウルバスの穏やかな声に心が拠り所を求めたのだと思う。
ドアを開けると、とても静かな表情のウルバスがいて、アリアを見ると少しだけほっとした顔をした。
「あの、私……」
「うん、大丈夫だよ」
「私が……」
「アリアちゃんのせいじゃないよ」
「私!」
「うん」
こみ上げる嗚咽が止まらない。涙がボロボロとこぼれて、ギュッとスカートを握りしめる。その体を、ウルバスがそっと包み込むように抱きしめてくれた。
「アリアちゃんはよく戦ったよ。さすがファウスト様の妹だね、強かったよ」
「強くなんてないです! 私……私が捕まったから、兄様達や父様が!」
「そんな事はない。君はメロディさんと、お腹の赤ちゃんを守ったんだよ」
「でも!」
「アリアちゃん」
わんわんと声を上げて泣くアリアを抱きしめたまま、ウルバスはずっと穏やかに声をかけてくれる。泣いて泣いて……胸の中は吐き出す言葉によって少しだけスペースができた。
「大丈夫だよ、アリアちゃん。君のお兄さんは殺そうとしても無理なくらい強い人だから。こんな事に負けたりはしないよ」
「でも……」
「本当だよ。隣国の王様は不思議な力を持つ人でね、人の守護霊が見えるみたいなんだ。その人が言うには、ファウスト様の後ろにはフル武装した軍神がついてるんだって!」
「……え?」
「本当だよ? ねっ、凄いでしょ? そんな人が、そう簡単にどうにかなったりしないよ」
突拍子も無い話。けれどウルバスは大真面目な顔をしている。キョトッとして、また少し心にスペースができた。
穏やかな笑みが優しく包むように見つめている。それを見上げて、アリアは少しだけ息が楽になって吐き出した。
「ファウスト様は大丈夫。絶対に取り戻すからね」
「はい」
「第一、ランバートが手放すわけがないでしょ? 今頃、悪魔も裸足で逃げ出すような顔をして行方を捜しているよ」
「あの……それはちょっと、申し訳ありません」
「ふふっ、大丈夫だよ」
ウルバスはにっこりと笑う。そして次には、とても真剣な顔をした。
「ごめんね、辛い事を思い出すと思うんだけれど、少し話を聞かせて」
「はい、勿論です」
アリアはしっかりとした顔で頷いた。少しでも早く、ファウスト達を見つけられるのならどんな小さな事でも思い出して話をしようと。
▼ランバート
第一報は施設の近隣住民からの火災の報告だった。場所を聞いてすぐにファウストがいる場所だと分かったからある意味安心していた。彼がいるなら既に避難は完了して、初期消火くらいは始まっているだろうと。
だが、準備を終えて向かっている最中に入った施設従業員からの報告に、全身から血の気が引けた。
アリアが人質に取られ、ファウスト、アーサー、ルカが連れ去られた事。閉じ込められて火災が起こった事。マクファーレンの当主が指揮を執って避難は完了したが、マクファーレン氏は負傷していること。
いても立ってもいられずに先に馬で駆けつけたランバートが見たものは、今にも焼け落ちてしまいそうなホテルと、半焼のチャペル、それを呆然と見上げる人々。そして、泣き崩れるアリアだった。
何が起こっているのか、一瞬パニックで分からなかった。理解しようとしなかった。だが、同じく呆けているわけにもいかない。消火活動が始まって、アシュレーに肩を叩かれて、どうにかその場を治めはじめて今にいたる。
「ファウストを攫った犯人は複数……従業員の話では百人前後いたような印象だ」
「アリアちゃんの話を聞くと、犯人はまずホテルに侵入し最初からアリアちゃんを探していた様子だね。おそらくファウスト様の無力化の為だろうけれど」
「速やかなホテルへの侵入、日程の把握を犯人側がしていたことから、おそらく従業員の中に協力者がいるだろう。そちらの調べは?」
「事件直後から一人、男が消えているそうです。ギャンブルが好きな下働きだったようです」
「探すぞ」
何せ被害者も多い。騎兵府で個別に話を聞いているが、とりまとめが大変だった。そこを、慣れているクラウルが手伝ってくれている。
アリアの話を聞いて戻ってきたウルバスは、ずっと見たことのない鋭い表情で話をしている。表情はとても厳しいのに語り口調は変わらなくて、ちぐはぐな感じがしている。
事件現場では今も多くの隊員が消火をしたり、鎮火したチャペルの内部を調べている。会議に参加しているゼロスは現場とここを結ぶ連絡係をしてくれている。現場では今頃、コンラッドとボリスが中心になってくれているだろう。
「ランバート、どう見るかえ?」
「……最初からファウストやアーサー様、ルカくんを狙っての犯行。アリアちゃんの体が弱い事も知っていた動きから考えて、シュトライザー家をターゲットにした計画的な犯行かと思います」
シウスの問いかけに、ランバートは正直に答えた。それにシウスも頷く。
「ファウストから、何か聞いていないかえ?」
「アーサー様がファウストを次期当主と定めているという話だけです。ですが、これが発端ではないかとも思っています」
それ以外で何があるというんだろう。国家転覆を狙った犯行なら、ファウストだけをターゲットにすればいい。連れ去るにしてもアーサーやルカではなく、非力で既に捉えていたアリアを連れていく方が確実で御しやすい。ファウストが従わざるを得ない事は無抵抗で捕まった事でも実証されている。
そうしなかったのは、犯人にとってこの三人が重要だったから。シュトライザー直系の男子に用があった。だからアリアは式場で殺されかけたのだろう。
「ファウストが当主となって不都合がある者」
「チャールズ・シュトライザーだよ」
「!」
不意に会議室の戸口から聞き慣れた声がして、全員がそちらへと振り向く。その戸口にはランバートの父であるジョシュアと、現最高判事であるコーネリウスが立っていた。
ジョシュアは誰もが凍り付くような笑顔を浮かべ、重苦しい空気を纏っている。その隣にいるコーネリウスも変わらない様子ではあるが、空気はあまりに重かった。
「父上」
「アーサーが遺言を書き換えた。おそらくそれが、チャールズの耳に入ったんだろう」
「弁護士からかな? 内容を明かす事は禁じられているけれど、遺言に携わった事を口外してはいけないなんて法はないからね」
二人は近づいて、当然のように会議室の席につく。だが誰も、それに文句は言わなかった。
「俺もその線が濃厚だと思っています。ではコーネリウス様、今から強制捜査の令状出して頂けますか?」
「わーお! ジョシュア聞いた?! 君の息子って本当に君にそっくりなんだね。やることが素早くて、全部の手順すっ飛ばすよ」
「いい息子だろ、コーネリウス」
「出して下さるんですか?」
この場の空気を壊すようなコーネリウスの発言と、それに乗っかるジョシュア。それに苛立ったランバートの声は刺々しいものだが、それに怯むような可愛い狐狸ではない。けろっとした顔をしている。どちらかと言えば間に挟まれているシウスがオロオロしていた。
「残念、関与が疑われる強い証言や証拠が無ければ出せないよ。状況から見た推論では話にならない」
「ではどのような用事でここへいらしたのでしょうか?」
「とても重要なキーマンとしてだとも!」
えっへん! と胸を張るコーネリウスを相手に、ランバートは苛立ちを通り越して頭が痛くなってきた。
以前父が笑いながら言っていた。「コーネリウスという男は場の空気を木っ端微塵に粉砕する天才だ」と。なるほど、納得した。
「では、その重要な要件を述べてください」
「アーサーは今年に入って遺言を書き換えた。全財産をファウストに残す」
「それはファウストが次期当主にと指名された時点で、大方の予想がついています」
「ただし、万が一アーサーとファウスト、両名が死亡した場合、シュトライザーの全財産は騎士団へと寄贈するものとする」
「……え?」
思わぬ言葉に、ランバートを始めシウス、クラウルも目を丸くする。シュトライザーの全財産だ、その額は計り知れない。それを全て騎士団へと寄贈するとなれば、おおよそ扱いきれるものではない。
「全財産って……」
「土地、家屋、保有している美術品、服飾、宝石から武具の類まで、ぜーんぶ!」
「聞いておらぬわ!」
「言ってないもん。そもそもアーサー、死んでないからね」
それもそうだ。遺言が公開されるのは当主が死亡した後のこと。今この内容を知っているのは遺言を残した当人と、その場に立ち会った者だけだ。
「……ちょっと待ってください。そうなるとチャールズは二人を殺害しても、一銭も入らないのでは?」
「それどころか、その場合はシュトライザー家は解体し、爵位は陛下に返す事になっている。チャールズは無一文の無爵位で放り投げられるって寸法だよ。愉快でしょ?」
「はい、かなり」
にっこりといい笑顔を浮かべるコーネリウスに、ランバートも同意を示した。
だがそうなると、なぜチャールズは三人を攫ったのか。ある意味自分の首を絞めている事になるというのに。
「おそらくだが、チャールズも遺言の詳しい内容を知らないのだろうね」
「そうとしか思えぬの。アーサー様が動きを活発化させた事に危機感を覚え、一堂に会するこの機会を狙って動いた。故に、キーとなり得る者を一斉に攫い、まずは遺言の開示を求めるつもりであろう」
シウスの推論にランバートも頷く。それならば納得がいくのだ。
「コーネリウス様、チャールズ・シュトライザーがアーサー様の拉致を理由に遺言の開示を求めてくる可能性はありますか?」
「高いね。当主に万が一の身の危険、この場合重篤な病気や、戦火天災に巻き込まれた場合、突然の失踪や拉致が含まれるけれど、その場合には残された家族が今後の事を考える為に遺言の開示を求め、正当と判断されれば弁護士や役人立ち会いの下に開示されることになっている」
コーネリウスの冷静な言葉を聞いて、クラウルは頷いた。
「この遺言を覆すことは?」
「不可能だよ。アーサーが死亡したと判断された場合、遺言は速やかに履行される。ファウストの死亡も判断されれば、騎士団に全財産入る。これを、遺言に名の上がらないチャールズが覆す事はできない。これが、遺言の恐ろしい部分なんだよ」
「変える為には?」
「アーサーが自分で、遺言の書き換えを申し出て正式な手続きを踏まなければならない。遺言を残す本人と立ち会いの弁護士が必要だけれど、四大貴族家はそれだけじゃいけない」
コーネリウスの言葉にジョシュアも頷く。だが他は何のことだか分からずに首を傾げた。
「四大貴族家は個人財産を勝手にはできない。一家族の勝手が、国家が傾く原因にもなり得るからだ」
「ジョシュアの所は特にね。ヒッテルスバッハの資産は国家予算の数倍。それが全部悪用される形になったら大変だから、当主と弁護士だけでは遺言を残せないんだ」
「立ち会いの為、裁判所の最高責任者、もしくは陛下か陛下の準ずる政務長官、誰かの立ち会いがあり、全員が内容を熟知し、承認して署名捺印しなければ遺言書として機能しないことになっている」
「つまり最高判事の私か、陛下か、政務長官のジョシュアがいないとダメなんだよね」
ニコニコなコーネリウスと真面目なジョシュアを前に、全員が口をあんぐりとする。そして改めて四大貴族家の大きさと、目の前の二人の偉大さを知るのだ。
「この事態だ、アーサーをここに連れてくる事はできないだろう。そうなればコーネリウスか私を連れていくより他にない」
「私は今日から宮中に匿って貰う事にしたよ」
にっこりなコーネリウスはこれで安泰という顔をする。そうなると必然的に、視線はジョシュアに向かった。
「釣りをなさるおつもりか、ジョシュア様」
「餌は高級である方が食いつきがいいとは思わないかい? シウス」
「危険すぎます! ランバートもそう思うだろ?」
クラウルが少し焦ったようにランバートを見た。だがランバートはとても冷静で、何の揺らぎも躊躇いもなかった。
「父上、遺言は?」
「アレクシスに全てを残す。お前とハムレットには財産は残さないけれど、自由をあげよう」
「仕事は?」
「ヴィンセントが育っているし、陛下もいい感じに仕上がっている。問題ないだろうね」
「分かりました。骨は拾います」
「いいよ、気を遣わなくて。あと、後ろ暗いのでよければ兵隊も三千ほど動かしていいよ。騎士団に傷が残るようなら、お前個人で片付けなさい」
「有難うございます」
淡々とした親子の会話に、シウスやクラウル、ゼロスがオロオロしている。だがこの二人はこんなものだ。駒として機能できるならそれでいいという感覚だ。
「私は普通に生活をする。その間に動きがあればそこから探れる」
「その前に突破口を開きます。現在リーヴァイ様が取り押さえて下さった容疑者を取り調べている最中です」
「現場の検証が始まっていないか、調べます」
「俺は従業員達からもう少し話を聞いてみます」
「これらの情報をまとめて、行方を捜そう。そろそろ各関所からの情報も届くであろう」
「俺はいつでも動けるように部隊を整えつつ、チャールズの周囲を探ります」
それぞれの方針が決まったのは、もう日付も変わる頃だった。
けれど左腕を半分切り落とされたリーヴァイと、犯人のターゲットになり得るアリア、メロディ、そして二人の主治医となっているヨシュアの四人はより危険が高いということで城で匿われる事になった。
ルカが連れて行かれた事を知ったメロディは蒼白となって、今は城の侍医もついて安静にしている。精神的な事で今赤ん坊が生まれてしまったら、助けられないと。
リーヴァイの腕の手術は騎士団のエリオットがしてくれている。多少、不自由になるだろうと言っていた。筋肉が完全に切れて、骨にまで多少の傷をつけている。
だがこれはリーヴァイだからこそ、この程度で済んだそうだ。リーヴァイの体はとても七十代とは思えず、骨も筋肉も発達して若い状態らしい。だからこそ、この程度で済んだ。普通なら腕が無くなっていてもおかしくはないそうだ。
アリアは用意された部屋で一人、俯いたまま自責の念を感じていた。
もしも自分が捕まらなければ、ファウストやアーサー、ルカが捕まることはなかった。リーヴァイが怪我をする事もなかった。
捕まったとしても何かできていれば、もっと抵抗できていれば。
さっさと殺されてしまっていたら……。
苦しくて胸元を握った。診察してもらって、落ち着く為の薬を飲んだけれど落ち着かない。苦しくて、辛くて、後悔ばかりが押し寄せてくる。
そんな時、コンコンという音が響いた。
「アリアちゃん、いる?」
「ウルバス、さん?」
穏やかな声が耳に馴染む。頼りなく声をかけると、扉の外で「うん」という声が聞こえた。
「今少し、いいかな?」
「……あの」
「お願い。君の顔が見たいんだ」
静かな声でそう言われたら、足が進み出してしまった。
アリアも不安で苦しくて、誰かを欲したのだと思う。だから、ウルバスの穏やかな声に心が拠り所を求めたのだと思う。
ドアを開けると、とても静かな表情のウルバスがいて、アリアを見ると少しだけほっとした顔をした。
「あの、私……」
「うん、大丈夫だよ」
「私が……」
「アリアちゃんのせいじゃないよ」
「私!」
「うん」
こみ上げる嗚咽が止まらない。涙がボロボロとこぼれて、ギュッとスカートを握りしめる。その体を、ウルバスがそっと包み込むように抱きしめてくれた。
「アリアちゃんはよく戦ったよ。さすがファウスト様の妹だね、強かったよ」
「強くなんてないです! 私……私が捕まったから、兄様達や父様が!」
「そんな事はない。君はメロディさんと、お腹の赤ちゃんを守ったんだよ」
「でも!」
「アリアちゃん」
わんわんと声を上げて泣くアリアを抱きしめたまま、ウルバスはずっと穏やかに声をかけてくれる。泣いて泣いて……胸の中は吐き出す言葉によって少しだけスペースができた。
「大丈夫だよ、アリアちゃん。君のお兄さんは殺そうとしても無理なくらい強い人だから。こんな事に負けたりはしないよ」
「でも……」
「本当だよ。隣国の王様は不思議な力を持つ人でね、人の守護霊が見えるみたいなんだ。その人が言うには、ファウスト様の後ろにはフル武装した軍神がついてるんだって!」
「……え?」
「本当だよ? ねっ、凄いでしょ? そんな人が、そう簡単にどうにかなったりしないよ」
突拍子も無い話。けれどウルバスは大真面目な顔をしている。キョトッとして、また少し心にスペースができた。
穏やかな笑みが優しく包むように見つめている。それを見上げて、アリアは少しだけ息が楽になって吐き出した。
「ファウスト様は大丈夫。絶対に取り戻すからね」
「はい」
「第一、ランバートが手放すわけがないでしょ? 今頃、悪魔も裸足で逃げ出すような顔をして行方を捜しているよ」
「あの……それはちょっと、申し訳ありません」
「ふふっ、大丈夫だよ」
ウルバスはにっこりと笑う。そして次には、とても真剣な顔をした。
「ごめんね、辛い事を思い出すと思うんだけれど、少し話を聞かせて」
「はい、勿論です」
アリアはしっかりとした顔で頷いた。少しでも早く、ファウスト達を見つけられるのならどんな小さな事でも思い出して話をしようと。
▼ランバート
第一報は施設の近隣住民からの火災の報告だった。場所を聞いてすぐにファウストがいる場所だと分かったからある意味安心していた。彼がいるなら既に避難は完了して、初期消火くらいは始まっているだろうと。
だが、準備を終えて向かっている最中に入った施設従業員からの報告に、全身から血の気が引けた。
アリアが人質に取られ、ファウスト、アーサー、ルカが連れ去られた事。閉じ込められて火災が起こった事。マクファーレンの当主が指揮を執って避難は完了したが、マクファーレン氏は負傷していること。
いても立ってもいられずに先に馬で駆けつけたランバートが見たものは、今にも焼け落ちてしまいそうなホテルと、半焼のチャペル、それを呆然と見上げる人々。そして、泣き崩れるアリアだった。
何が起こっているのか、一瞬パニックで分からなかった。理解しようとしなかった。だが、同じく呆けているわけにもいかない。消火活動が始まって、アシュレーに肩を叩かれて、どうにかその場を治めはじめて今にいたる。
「ファウストを攫った犯人は複数……従業員の話では百人前後いたような印象だ」
「アリアちゃんの話を聞くと、犯人はまずホテルに侵入し最初からアリアちゃんを探していた様子だね。おそらくファウスト様の無力化の為だろうけれど」
「速やかなホテルへの侵入、日程の把握を犯人側がしていたことから、おそらく従業員の中に協力者がいるだろう。そちらの調べは?」
「事件直後から一人、男が消えているそうです。ギャンブルが好きな下働きだったようです」
「探すぞ」
何せ被害者も多い。騎兵府で個別に話を聞いているが、とりまとめが大変だった。そこを、慣れているクラウルが手伝ってくれている。
アリアの話を聞いて戻ってきたウルバスは、ずっと見たことのない鋭い表情で話をしている。表情はとても厳しいのに語り口調は変わらなくて、ちぐはぐな感じがしている。
事件現場では今も多くの隊員が消火をしたり、鎮火したチャペルの内部を調べている。会議に参加しているゼロスは現場とここを結ぶ連絡係をしてくれている。現場では今頃、コンラッドとボリスが中心になってくれているだろう。
「ランバート、どう見るかえ?」
「……最初からファウストやアーサー様、ルカくんを狙っての犯行。アリアちゃんの体が弱い事も知っていた動きから考えて、シュトライザー家をターゲットにした計画的な犯行かと思います」
シウスの問いかけに、ランバートは正直に答えた。それにシウスも頷く。
「ファウストから、何か聞いていないかえ?」
「アーサー様がファウストを次期当主と定めているという話だけです。ですが、これが発端ではないかとも思っています」
それ以外で何があるというんだろう。国家転覆を狙った犯行なら、ファウストだけをターゲットにすればいい。連れ去るにしてもアーサーやルカではなく、非力で既に捉えていたアリアを連れていく方が確実で御しやすい。ファウストが従わざるを得ない事は無抵抗で捕まった事でも実証されている。
そうしなかったのは、犯人にとってこの三人が重要だったから。シュトライザー直系の男子に用があった。だからアリアは式場で殺されかけたのだろう。
「ファウストが当主となって不都合がある者」
「チャールズ・シュトライザーだよ」
「!」
不意に会議室の戸口から聞き慣れた声がして、全員がそちらへと振り向く。その戸口にはランバートの父であるジョシュアと、現最高判事であるコーネリウスが立っていた。
ジョシュアは誰もが凍り付くような笑顔を浮かべ、重苦しい空気を纏っている。その隣にいるコーネリウスも変わらない様子ではあるが、空気はあまりに重かった。
「父上」
「アーサーが遺言を書き換えた。おそらくそれが、チャールズの耳に入ったんだろう」
「弁護士からかな? 内容を明かす事は禁じられているけれど、遺言に携わった事を口外してはいけないなんて法はないからね」
二人は近づいて、当然のように会議室の席につく。だが誰も、それに文句は言わなかった。
「俺もその線が濃厚だと思っています。ではコーネリウス様、今から強制捜査の令状出して頂けますか?」
「わーお! ジョシュア聞いた?! 君の息子って本当に君にそっくりなんだね。やることが素早くて、全部の手順すっ飛ばすよ」
「いい息子だろ、コーネリウス」
「出して下さるんですか?」
この場の空気を壊すようなコーネリウスの発言と、それに乗っかるジョシュア。それに苛立ったランバートの声は刺々しいものだが、それに怯むような可愛い狐狸ではない。けろっとした顔をしている。どちらかと言えば間に挟まれているシウスがオロオロしていた。
「残念、関与が疑われる強い証言や証拠が無ければ出せないよ。状況から見た推論では話にならない」
「ではどのような用事でここへいらしたのでしょうか?」
「とても重要なキーマンとしてだとも!」
えっへん! と胸を張るコーネリウスを相手に、ランバートは苛立ちを通り越して頭が痛くなってきた。
以前父が笑いながら言っていた。「コーネリウスという男は場の空気を木っ端微塵に粉砕する天才だ」と。なるほど、納得した。
「では、その重要な要件を述べてください」
「アーサーは今年に入って遺言を書き換えた。全財産をファウストに残す」
「それはファウストが次期当主にと指名された時点で、大方の予想がついています」
「ただし、万が一アーサーとファウスト、両名が死亡した場合、シュトライザーの全財産は騎士団へと寄贈するものとする」
「……え?」
思わぬ言葉に、ランバートを始めシウス、クラウルも目を丸くする。シュトライザーの全財産だ、その額は計り知れない。それを全て騎士団へと寄贈するとなれば、おおよそ扱いきれるものではない。
「全財産って……」
「土地、家屋、保有している美術品、服飾、宝石から武具の類まで、ぜーんぶ!」
「聞いておらぬわ!」
「言ってないもん。そもそもアーサー、死んでないからね」
それもそうだ。遺言が公開されるのは当主が死亡した後のこと。今この内容を知っているのは遺言を残した当人と、その場に立ち会った者だけだ。
「……ちょっと待ってください。そうなるとチャールズは二人を殺害しても、一銭も入らないのでは?」
「それどころか、その場合はシュトライザー家は解体し、爵位は陛下に返す事になっている。チャールズは無一文の無爵位で放り投げられるって寸法だよ。愉快でしょ?」
「はい、かなり」
にっこりといい笑顔を浮かべるコーネリウスに、ランバートも同意を示した。
だがそうなると、なぜチャールズは三人を攫ったのか。ある意味自分の首を絞めている事になるというのに。
「おそらくだが、チャールズも遺言の詳しい内容を知らないのだろうね」
「そうとしか思えぬの。アーサー様が動きを活発化させた事に危機感を覚え、一堂に会するこの機会を狙って動いた。故に、キーとなり得る者を一斉に攫い、まずは遺言の開示を求めるつもりであろう」
シウスの推論にランバートも頷く。それならば納得がいくのだ。
「コーネリウス様、チャールズ・シュトライザーがアーサー様の拉致を理由に遺言の開示を求めてくる可能性はありますか?」
「高いね。当主に万が一の身の危険、この場合重篤な病気や、戦火天災に巻き込まれた場合、突然の失踪や拉致が含まれるけれど、その場合には残された家族が今後の事を考える為に遺言の開示を求め、正当と判断されれば弁護士や役人立ち会いの下に開示されることになっている」
コーネリウスの冷静な言葉を聞いて、クラウルは頷いた。
「この遺言を覆すことは?」
「不可能だよ。アーサーが死亡したと判断された場合、遺言は速やかに履行される。ファウストの死亡も判断されれば、騎士団に全財産入る。これを、遺言に名の上がらないチャールズが覆す事はできない。これが、遺言の恐ろしい部分なんだよ」
「変える為には?」
「アーサーが自分で、遺言の書き換えを申し出て正式な手続きを踏まなければならない。遺言を残す本人と立ち会いの弁護士が必要だけれど、四大貴族家はそれだけじゃいけない」
コーネリウスの言葉にジョシュアも頷く。だが他は何のことだか分からずに首を傾げた。
「四大貴族家は個人財産を勝手にはできない。一家族の勝手が、国家が傾く原因にもなり得るからだ」
「ジョシュアの所は特にね。ヒッテルスバッハの資産は国家予算の数倍。それが全部悪用される形になったら大変だから、当主と弁護士だけでは遺言を残せないんだ」
「立ち会いの為、裁判所の最高責任者、もしくは陛下か陛下の準ずる政務長官、誰かの立ち会いがあり、全員が内容を熟知し、承認して署名捺印しなければ遺言書として機能しないことになっている」
「つまり最高判事の私か、陛下か、政務長官のジョシュアがいないとダメなんだよね」
ニコニコなコーネリウスと真面目なジョシュアを前に、全員が口をあんぐりとする。そして改めて四大貴族家の大きさと、目の前の二人の偉大さを知るのだ。
「この事態だ、アーサーをここに連れてくる事はできないだろう。そうなればコーネリウスか私を連れていくより他にない」
「私は今日から宮中に匿って貰う事にしたよ」
にっこりなコーネリウスはこれで安泰という顔をする。そうなると必然的に、視線はジョシュアに向かった。
「釣りをなさるおつもりか、ジョシュア様」
「餌は高級である方が食いつきがいいとは思わないかい? シウス」
「危険すぎます! ランバートもそう思うだろ?」
クラウルが少し焦ったようにランバートを見た。だがランバートはとても冷静で、何の揺らぎも躊躇いもなかった。
「父上、遺言は?」
「アレクシスに全てを残す。お前とハムレットには財産は残さないけれど、自由をあげよう」
「仕事は?」
「ヴィンセントが育っているし、陛下もいい感じに仕上がっている。問題ないだろうね」
「分かりました。骨は拾います」
「いいよ、気を遣わなくて。あと、後ろ暗いのでよければ兵隊も三千ほど動かしていいよ。騎士団に傷が残るようなら、お前個人で片付けなさい」
「有難うございます」
淡々とした親子の会話に、シウスやクラウル、ゼロスがオロオロしている。だがこの二人はこんなものだ。駒として機能できるならそれでいいという感覚だ。
「私は普通に生活をする。その間に動きがあればそこから探れる」
「その前に突破口を開きます。現在リーヴァイ様が取り押さえて下さった容疑者を取り調べている最中です」
「現場の検証が始まっていないか、調べます」
「俺は従業員達からもう少し話を聞いてみます」
「これらの情報をまとめて、行方を捜そう。そろそろ各関所からの情報も届くであろう」
「俺はいつでも動けるように部隊を整えつつ、チャールズの周囲を探ります」
それぞれの方針が決まったのは、もう日付も変わる頃だった。
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強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
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※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
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