恋愛騎士物語4~孤独な騎士のヴァージンロード~

凪瀬夜霧

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17章:シュトライザー家のお家騒動

6話:西のハイエナ(スペンサー)

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 捕らえた男から聞いた情報は十分なものだった。これを元手に更なる情報を集める事ができる。
 クラウルに直談判したスペンサーはその足で、下西地区にある見慣れた屋敷を訪ねた。

 なんとも複雑な気分ではあった。ここを出た時、戻る事はないと思っていたのだが案外早く戻る事になった。勿論所属を変えるつもりはないが。

 ノッカーを叩くと、人相の悪いのが数人凄んで出てくる。こいつらは番犬だ。ここの主はこんなのを沢山飼っている。

「誰だ……って、サイモンさんじゃないっすか!」

 その声に、室内にいた番犬がゾロゾロと顔を出して口々に「サイモンさんだ」と嬉しそうに言ってくる。これにはスペンサーも苦笑いだ。こうも捨てた名前を連呼されると、本当に足を洗ったのか疑問に思えてくる。

「何事です」

 一階の騒ぎを聞きつけた黒髪の青年が下りてきて、戸口に立つスペンサーを見て足を止めた。

「サイモン」
「ユアン、久しぶり。九ヶ月くらい?」
「約一年です。どうしました? 抜けて、今はスペンサーと名を変えたと思いましたが」

 訝しげに首を傾げる元同僚に苦笑したスペンサーは、ここのボスである情報屋、シン・ブラックへの取り次ぎをユアンに頼んだのであった。

 程なくして通された部屋で、シンはとても不満そうな顔をして待っていた。これにも苦笑が浮かぶ。想像はしていたのだが。

「お久しぶりです、元ボス」
「当てつけかしら、サイモン」
「いえいえ」

 このくらいは毎度の事。勝手知ったる相手に軽口を叩きながら笑ったスペンサーは、シンの前に腰を下ろす。そこに紅茶が出され、出したユアンを見て同じく苦笑した。

「それで? 今更ここに来た理由はなにかしら? アンタの席はもう無いわよ」
「席はいりません。欲しいのは情報ですよシン。情報屋なんですから、当然ですよ」

 鋭さを見せるシンに対して、スペンサーは軽く流している。それがまた気に障るのか、シンは腕を組んで大きくのけぞった。

「アタシの情報は高いわよ」
「確か、退職金頂いていませんでしたよね?」
「え? た……退職金? え?」
「俺、これでも十代全部を貴方と貴方の組織に捧げたと思うんですよね。勤続十年、その間にどれだけ為になる情報を持ち帰った事か」
「うっ、まぁ、そうねぇ」
「怖い思いも、命の危険もありましたよ」
「そう、ねぇ」
「そんな功労者に、貴方は餞別一つ渡しては下さらない。とても寂しい思いでした」
「アンタが組織を抜けて堅気になるって言い出したんじゃない! アタシは手放すつもりなんてさらさら……」
「一生裏社会にどっぷりなんて嫌ですよ。機会があれば更生したいって思っていたんです。むしろ、偉くないですか?」

 シンを相手にまったく口の減らないスペンサーの笑顔は崩れない。ニコニコしながら話をしている。
 ユアンは苦笑し、シンは呆れる。この話術がこの組織を助けてきたのは、確かな事であった。

 スペンサー・ヴォーンは、騎士団に入る際にランバートが用意したまっさらな経歴。本名はサイモン、下町で生まれ両親を知らず、町に育てられた少年だった。
 昔から大人を相手に聞き役をしたりと、とにかく話を聞くのが好きな少年は少し大きくなると喧嘩の仲裁などをするようになった。
 その話を聞きつけたシン・ブラックが声をかけたのが、スペンサーが十代初めの頃だった。
 そこからずっと、勉強しながら潜入、情報収集、戻るを繰り返してきたのだ。

 けれど二十歳を前に、考えたのだ。自分の人生、このまま闇に紛れて終わってしまうのかと。
 そう思った時に、真っ先に出てきたのが騎士団だ。とても、眩しく明るく見えた。
 可能ならばあそこに行きたい。思って頼ったのはランバートだ。彼は知っていたから、接触しやすかったとも言える。
 そうして何だかんだとお願いして、綺麗な経歴と新しい名前、そして新しい生活を手に入れた。
 シンとは少しもめたけれど、ほぼ家出のような感じで出てきた。だから今も少し、しこりが残っている感じだ。

「シン、サイモンを相手に口で言いくるめようなんて時間の無駄ですよ」
「ユアン!」
「いいではありませんか、餞別くらい。騎士団関係で来たのでしょ?」
「流石ユアン、その通りだよ」
「ということは、サイモンが空振りで戻ると次は何がくるか分かりませんよ」
「今ランバート様、悪魔が泣きべそかいて逃げる程気が立ってますよ」
「いや、でも……」
「ちなみにジョシュア様は魔王そのものの……」
「もう、分かったわよ! そんなの会いたくないわよ!」

 根負けなのか、それとも本当に会いたくないのか、シンは大きな声で負けを宣言する。それを笑いながら、スペンサーは内心頭を下げた。

「それで、何の情報が欲しいのよ」
「西のハイエナ。ご存じですか?」

 問うと、シンの表情が僅かに変わった。ユアンが頭を下げ、ファイルを取りに行く。

「どうしてあんなのの事が知りたいのよ」
「昨夜起こった火災に関わっているようでして」
「……なるほどね。あいつらならやりかねないわ。なんせ金の為ならどんな汚い事もする男だもの。ほんと、プライドないのよね」

 そんな事を言っている間に、ユアンがファイルを持って戻ってくる。そこそこ分厚いファイルを受け取ったスペンサーは中を改めていった。

「……幹部が十人程度? 構成員が五百を越えているのに」
「兵隊が多いだけよ。幹部ったって、初期メンバーってだけ。烏合の衆ってこういうのを言うのよ」

 つまり、統制はほぼ取れていないのだろう。

「ルースの乱であぶれた奴らを再組織したのがこいつね。金に汚くて悪知恵がはたらくわ。絶対に自分は表には出てこないのよ」
「ごろつきや、金に困った人を寄せ集めて指示役だけを送って実行はそいつらですか?」
「そうそう」

 ページをめくり、これまで関わったらしい事案を見ているがそう大きなものはない。ただ、顧客に特徴があった。

「貴族からの依頼が多いですね」
「ヒッテルスバッハに見つかりたくない恫喝や専売、それに伴う暴行事件なんかよ。奴が賢いのはそうした需要にいち早く目を付けて売り込んだ事ね。ハムレットに見つからずにやりたい貴族は多いのよ」
「なるほど。小事であっても貴族や豪商ならば払いがいい」

 なんとも商業的で、小物だ。

「? アジトは持たないのですか?」

 組織というのは大抵アジトがある。組織として集まる場所が必要なのだから。
 だがシンは頷いて、アジトを持たない事を肯定した。

「宿屋や廃れた家、依頼主が提供した場所を根城にしているのよ。基本、そいつがいる場所が本部」
「なるほど、せこい」

 そうなると、今ファウスト達が捕らわれている場所も組織所有の物ではなく、依頼主が用意した場所の可能性が高い。

 一通り読み終わったスペンサーはファイルを閉じてユアンに返し、立ち上がった。

「ファイル、持っていっていいわよ」
「そんな愚は犯しませんよ。一度読んだら覚えろ。貴方が真っ先に俺に仕込んだ事じゃないですか」

 十歳を少々過ぎた程度の子供に膨大な資料を覚えろなんて、無茶を言う人だった。……感謝している。

「……サイモン、アンタ今、楽しい?」

 去り際、不意に問われた寂しげな声にスペンサーは立ち止まり、息を吐く。そして、とても穏やかな笑みを見せた。

「楽しいですよ。気のいい同期の友人もいて、厳しい人に扱かれながらも充実していて」
「そう……」
「……でも、ここで過ごした時間もまた、俺にとっては楽しい時間でした。そればかりではありませんが、確かにここでの時間があっての今なのです」

 初めてこんな隠さない気持ちを口にしたかもしれない。
 シンは驚いたようにスペンサーを見ていた。

「感謝しています、シン。親のない俺にとって貴方は確かに親だった。貴方の教えを胸に、俺は今を生きています。道は分かれても、俺の根っこにはちゃんと貴方がいます」
「サイモン」
「お元気で。あまり飲み過ぎてはいけませんよ。それと、好き嫌いを減らしてください。長生きしてくださいね」
「大きなお世話よ!」
「……新年にはまた、顔を出します」

 伝えたスペンサーは今度こそ踵を返して屋敷を後にする。得た情報を少しでも早く、ランバートに伝えるために。

◇◆◇

「実行犯と思われる男の名はウィルフレッド。ルースの乱であぶれた奴らを取り込んで、金で何でもやる男です。アジトを持たず、金でごろつきなどを雇い大きな事をしているようです」

 ランバートの元に戻ったスペンサーは、ランバートに全てを伝えた。
 数時間ぶりに顔を見るが、やはりあまり顔色が良くないように思う。心労が見える様子に胸が痛んだ。

「有難う、スペンサー」
「いえ」
「悪かったな、せっかく堅気になりたいと言っていたのに古巣に行かせて」

 本当に申し訳なさそうな顔で言うランバートに、スペンサーはにっこりと笑って首を横に振った。

「このくらいの事でしたら気遣い無用です。ランバート様こそ、あまりこちらの世界に寄らぬようにと願います」
「ん?」
「もう昔とは違います。貴方は騎兵府の補佐官、立場があります。悪い噂が立てば貴方がいづらくなってしまう」
「そんなこと」
「貴方を引きずり下ろしたい人間はいます。そういう者にとってこれは、十分な話です。俺は貴方にとても恩があるので、あえて申し上げます。裏との直接的な接触はお控えください。お願いします」

 頭を下げたスペンサーにランバートは困った顔をする。
 ランバートにとってはシンも関わりある人物だ。情のある人だから、簡単に切ってしまえないのも分かる。こんな下町出身の裏家業者にまで情をかけてくれるのだ。
 だが、これがスペンサーの本心だ。その為ならパイプ役くらい、いくらでもしようと思う。

「……シンは、元気そうだったか?」
「え? えぇ。あの人に元気がない時がありませんよ。相変わらずです」
「……そうか。兄上を通して、今度お礼を言っておくよ」
「はい、きっと喜ぶと思います」

 今できる譲歩なのだろう。ランバートは苦笑して、報告を書き留めたファイルを閉じた。

「有難う、スペンサー」
「いえ。それでは、失礼します」

 頭を下げてその場を後にしたスペンサーはのんびりと隊員達のいる宿舎の二階へ上がっていく。時刻はもう夕方だ。
 そうして上がりきると、小さな影が腕を組んで、難しい顔をしてスペンサーを睨んだ。

「コリー?」
「どこ行ってたんだよ」
「いやぁ、昨日の夜からだったろ? 貧血起こして倒れちゃってさ」

 彼らに過去は知られたくない。幸い仮面は驚くほど分厚い。スペンサーはニコニコと笑って友人コリーに返す。

「……心配させるなよな」
「?」

 ぽつんと呟いたコリーに首を傾げたスペンサー。だが次には強引な手がスペンサーを引っ張っていく。

「わっとっと!」
「メシ! 食いっぱぐれるぞ」
「あぁ、そうだね。じゃ、行こうか」

 散歩を強請る子犬みたいなコリーに笑い、スペンサーは日常へと戻っていった。


▼ランバート

 スペンサーの報告から三十分後、待ちに待った報告がコーネリウスからもたらされた。チャールズが事件の報告を受け、アーサーの遺言状の開示を申請したそうだ。
 事件性も高い事を理由に騎士団からシウスともう一名、護衛ということで同行することを条件に開示請求を受理すると伝えたところ、渋々だが了承されたらしい。
 時刻にして一時間後。場所は城の一室が提供された。

 当然のように護衛役を引き受けたランバートの目は、疲労と焦りと憎しみでごちゃ混ぜに光っている。それを見たシウスが前に来て、パンと頬を挟むようにされた。

「それでは鋭すぎる。ゆるめよ」
「……無理ですよ」
「ランバート、冷静になれ。そのような目をしていては奴を喜ばせるぞ」

 そう言われると癪だ。目をギュッとつむり、一つ大きく息を吐き出したランバートは胸の奥で燃える冷たい炎を押し込めた。

「大丈夫です」
「よし。よいか、基本は口を出さぬ。コーネリウス様が明かした内容について、こちらは知らないという反応をする。合わせろよ」
「分かりました」
「決して腹を立てるな。感情的になるな。事件が事件だけあって陛下も列席する。その場で事を起こせばお前もただではすまぬぞ」
「分かりました」

 勿論、カールは一連の流れを知っている。だがあちらも知らぬという体でゆくそうだ。そしてカールの側近兼四大貴族家の代表として、ジョシュアも出席する。
 役者は揃っている。

 時間になり、チャールズは執事を連れて現れた。赤に近いブラウンの髪に、鋭い緑色の目。白い肌に小さな頭で、目鼻立ちははっきりとしている。仕立てのいい赤のジャケットに黒のベストを着たチャールズは中を一瞥し、ランバートを見て眉根を寄せた。

「チャールズ・シュトライザー殿、ようこそ。まずはおかけ下さい」

 コーネリウスがにっこりと正面に座って伝える。それにチャールズは「有難うございます」と一礼して椅子に腰を下ろした。

「この度は大変な事になりましたね」
「えぇ。父の行方は、まだ知れませんか?」

 顔色一つ変えず、当然のように受け答えをするチャールズを見て腹の底が気持ち悪い。お前が攫ったんだろ! とは、言えなかった。

「残念ながら、まだ見つかっておりませぬ。皆、動いてはおりますが」
「ふん、使えない」

 シウスを軽く見やり、嫌みを一つ。それ以上、チャールズは何も言わずにコーネリウスを見た。

「それで、父の遺言状というのはそれですか」

 コーネリウスの前にある封筒へと、チャールズの視線は固定される。まったく表情など崩さぬままだ。

「うむ。ではこれより緊急の事態により、アーサー・シュトライザー卿の遺言を開示する。この場に列席する皆が証人となります」

 改まった声でそう伝えたコーネリウスがペーパーナイフを手にし、慎重に封筒の封を切る。シュトライザー家の封蝋がされた封筒の中から、数枚の紙が出てきた。

「これはアーサー氏、弁護人、最高判事である私コーネリウスが立ち会いの下、執筆官による口頭記録を残した正式な遺言状である。どのような内容であっても、これを覆す事は不可能であることを先にお伝えしておく」

 そう前置きをしてから、コーネリウスは中の紙を開いた。

「私、アーサー・シュトライザーは息子、ファウスト・シュトライザーに家督と共に全ての財産を相続させるものとする。死後速やかに履行されたし」

 ここまでは誰も……チャールズでさえも驚きはしない。
 それを見たシウスが声を上げた。

「驚かないのですね、チャールズ殿」
「えぇ。父が近頃、周囲の者にそのような世迷い言を伝えていると聞き及んでおりましたので。まさかとは思いましたが、予測はしておりました」
「腹立たしくはないので?」
「当然腹立たしくは思っておりますよ。長く囲っていたとはいえ、愛人の息子に家を譲ろうという父の考えには賛同いたしかねる。この件に関しては親子としてじっくりと話し合わなければならないと思っていた所です」

 いけしゃあしゃあと……。ランバートは何も言わずにただ、護衛として立っている。だが、どす黒い感情が炎のように沸き起こっている。許してくれるなら今すぐコイツを捕まえて、無理矢理にでも吐かせるのだが。

 ランバートの視界にちらりとジョシュアが映る。恐ろしいほどに静かな様子はいっそ背が冷たくなる。足下から伝わるのだ、底冷えするような冷気が。

「なるほど。ですがこれで、貴方にも事件の動機が出てきました」
「動機?」
「家督や遺産を巡り、アーサー様とファウストを疎ましく思った。よくある話です。後ほど、話を聞かせてもらえますね?」
「ふん、目障りな番犬だ。いいだろう」

 あくまで知らない。そういうことなんだろう。だが何にしてもシウスが取り調べの許しを得たのは大きな進歩だった。

「さて、遺言がそれだけであればこれで。聴取は明日以降でよろしいですかな?」
「遺言には続きがある」

 さっさと立ち去ろうとしたチャールズに、コーネリウスは静かに伝えた。コーネリウスを見て静かになったチャールズは身を固くし、身構えたようにも見えた。

「続きをどうぞ」
「また、万が一私と息子ファウストが死亡した場合は……シュトライザー家を取り潰し、爵位をカール陛下へとお返しする」
「な!」

 これには流石にチャールズも顔色を変え、立ち上がった。握りしめる手はわなわなと震え、ギュッと唇を噛みしめている。

「また、シュトライザーの全財産は騎士団へと寄贈し、シュトライザーが担った責務もまた騎士団へと引き継ぐものとする」
「ふざけるな! 家を潰し、爵位を返上し、財産を騎士団に寄付だと!」

 激高する様子は以前に見たものと同じだ。ファウストに対して強くあたったヒステリックな声は耳障りだが、同時に「ざまあみろ」という気分にもなる。

「チャールズ殿、陛下の御前だ。行動を慎まれよ」

 ジョシュアの静かな声が窘める。チャールズの目は一瞬ジョシュアと、その傍らのカールへと向かった。

「このような事が認められるのですか! シュトライザーの正当な血筋である私がここにいるというのに、爵位を返す? 家を潰す? そんな横暴が許されるというのか!」
「許される。これは正式な遺言状であり、アーサー以外の者がこれを破棄する事はできない。また、これに準ずる新たな遺言が出ないかぎり、この遺言が正式なものとして履行される」
「陛下!」
「残念だが、アーサーがファウスト以外に家を継がせるに相応しい後継者はいないと判断したのであれば、爵位の返上も受けるしかない」

 あくまで知らない様子で静かに目を閉じ、嘆かわしく首を横に振るカールもなかなかだ。

 ギリッと奥歯を噛みしめるチャールズはおもむろに立ち上がる。そしてその場にいる全員を睨み付けた。

「到底、納得のいく話ではありません」
「アーサーが無事に見つかる事を祈るばかりですな、チャールズ殿」
「!」

 忌々しいと聞こえそうな表情で退室していったチャールズを見て、全員がフゥと息を吐く。カールは少し困った顔だ。

「まぁ、実際この遺言状の通りにと言われても、多少困りはするけれどね」
「そうかな? 私は構わないと思うよ。シュトライザーは表の剣、それを実質の剣である騎士団が兼ねるのだから」
「簡単じゃないよ、コーネリウス。シウスがてんてこ舞いになる」
「そのような莫大な財を押しつけられても管理等が複雑になりますし、実際国の防衛に関わらない事業などもございますので、そちらが困ります」

 それはそれで、運営できそうな人材はいくらでもいそうだと思うのだが。

「さて、動くかな?」

 コーネリウスの笑みを含んだ声に、全員が頷いた。

「実際のところ、これで三人が戻ってくる可能性はどのくらい上がった?」
「半分以上大丈夫でしょう。アーサーばかりか、ファウストまで今死なせるわけにはいかなくなった。もしもファウストが死ねば、何もないまま放り出される」
「そうなると、新しい遺言状が必要になる。ジョシュア、大丈夫なのか?」

 心配そうなカールの言葉に、ジョシュアはにっこりと笑った。

「ご心配には及びませんよ、陛下」
「お前に何かあるとまだ困る。頼むぞ」
「おや、勿体ないお言葉を頂きまして。大丈夫ですよ、陛下」

 にっこりと笑うジョシュアはランバートを見る。ランバートもまた頷いた。
 早くファウストを見つけなければ。気は焦るばかりだった。
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