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18章:お嬢様の恋愛事情
9話:ウルバスの覚悟(ウルバス)
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翌日、快晴。
夜に降っていた雪は止んで、道に薄らと降り積もっている。
少しひんやりとした冬の空気と清涼な朝日を浴びて、ウルバスはがっくりと肩を落とした。
正直、色んな意味で王都に戻りたくない。
多分、ファウストは怒っている。迷惑もかけた。減俸とか謹慎とか、なんなら降格とかはあまり執着ないのだけれど、あの人の拳骨は本当に脳みそが揺れる感じがして嫌いだ。身長数ミリ縮むのではないだろうか。
そしてウェイン達が怒る。そもそも迷惑をかけてしまったし、キアランには怪我もさせた。怒るんだろうな……殴られるのは大した事ないんだけれど、泣かれたら嫌だな。あと、キアランに無理を言えなくなってしまう。
他にも迷惑かけてるからな。エリオットとか。今度こそ簀巻きにされてベッドに固定されるのではないだろうか。あの人ならやりかねない。上官時代から意外と短気で怒ると怖い人だったからな。ウェインなんて未だに涙目になることがあるし。
どうしよう。バッくれようかな。
そんな事が頭をよぎる中、不意にドアがノックされてウルバスは返事を返した。
「アリアです。今少しだけよろしいでしょうか?」
「あぁ、うん」
ダメだ、王都に戻らないとそもそも話が進まない。とりあえずアーサーに謝罪と挨拶をしなければ。
ウルバスはまだベッドの中。しかも起き抜けで起きる気力がなくてローブ姿のままだ。そこに入ってきたアリアがウルバスを見て顔を真っ赤にするものだから、ウルバスは自分の格好を目視で確認した。
結構大胆に胸元の合わせがはだけている。
「……珍しい? ファウスト様の方が凄いよ」
「あの、あの! あ…………うぅぅぅ」
困って顔を赤くして口を大きく開けて。なんだか雛鳥みたいで可愛いな。初心な感じがまたたまらなく。初心なんだろうけれど。
そこまで漠然と思って、ウルバスは爽やかな笑みできっちりと合わせを直し、邪なものを追い出した。
「ごめんね、見苦しくて。起き抜けだったものだから」
「あの、いえ……むしろ眼福でした」
「ん?」
「なっ! 何でもありません!」
顔を真っ赤に否定したけれど、案外耳がいいんだ。そうか、眼福だったのか。これ、維持していかないとな。
「ところで、何か話? 下で待っていればそろそろ起きたのに」
本当は怒られるのが嫌な子供みたいに心の葛藤繰り広げ、なおかつ逃走を考えたなんて間違っても言わない。笑顔は爽やか好青年そのものだ。
ウルバスに問われて、アリアも真面目な顔をする。そして、一枚の手紙をウルバスの前に出した。
それは、ウルバスの退団届けだった。
「あぁ、それね。アリアちゃんに任せるよ。色々あるだろうけれど、アーサー様が許してくれて直ぐにでもってなら、出さないといけないしね」
「そのことなんですが。あの……数年、これを預からせて頂いてもいいでしょうか?」
アリアの真剣な眼差しを、ウルバスも真面目な顔で見返す。彼女の考えをちゃんと聞くためだ。
「私、やっぱりまだ自分には色んなものが足りていないと思うんです」
「だから、俺とは一緒になれない?」
離れたら狂うよ、色々。また、胸の奥がザワザワするから。
けれどアリアは首を横に振って、ウルバスの手をしっかりと握った。
「恋人で、居させて下さい。勿論、結婚を前提とした。私は家の事とか、自分の事とか、ちゃんと向き合います。そしてウルバスさんに相応しい女性になりたい。何年経っても好きだと言ってもらえる、そんな淑女になりたいです」
「今のままで十分可愛いし、とても綺麗で目が離せないし、あまり魅力的になって他の虫が寄ってきたら俺、全力でひねり潰しに行きそうなんだけれど」
「全力で捻り潰すのはやめてください!!」
アリアが全力の声でそこを止めるのが面白い。でも多分、やるよな。
ウルバスは考える。実は少し時間ができるのはウルバスにとっても好都合なのだ。その間に第三を指揮できる後任を育てたい。引き継ぎなんてほとんどないから大丈夫だけれど、隊を率いる人望とか方法とか、海軍としての訓練はけっこう必要だと思う。その人材育成に時間が欲しいのだ。
「そうだな…………じゃあ婚約というか、ご挨拶にはちゃんと行く。そのうえで、正式に恋人という形を取れれば俺も安心できる」
「はい、私も嬉しいです」
「そのうえで、恋人の時間を楽しむなんてのはどうかな? 手始めに建国記念日、俺とデートしよう。王都はとても賑やかだよ」
「素敵です!」
「社交場に出るときは教えて。俺も一緒に行くから」
勿論虫除けだ。彼女に手を出す男は何人も近寄らせない。
そういえば昨日のコート、誰のなんだろう?
「そういえば、昨日君が着ていたコートって」
「フランクリンさんがお見舞いに来て下さっている時に、ランバート義兄様が来てウルバスさんの事を教えてくれたんです。急いでいたので薄着のまま出ようとした私に、フランクリンさんが貸してくれたんです。他にも、外出禁止の私の代わりに父に話をしてくれると」
「そっか、親切な人なんだね」
フランクリン・ベルギウス。物静かで目立つ事のない人物だったが一年前の事件後に台頭してきていた。柔和な人柄だが、商売に関しては手抜きがなくなったと聞く。
ジェームダルで会った時はあんなにも頼りなかったのに。
だが、聞いた話しでは恋人候補がいるような噂もある。あの人物ならとりあえず静観で平気だろう。ウルバスはそう判断した。
「……やっぱり、心が狭いかな」
「え?」
「君に近づく男が全部敵に見えそうで怖いよ。俺、よほど心が狭いんだね」
苦笑して、ふと置きっぱなしの手錠が見えた。そして思いつきで片方を自分につけ、片方をアリアにつけた。
「えぇ!」
「あっ、わりと嬉しい」
「ウルバスさん、変です!」
「俺もそう思うよ。あ…………あっ! 妙案」
「……なんですか?」
「俺が君を縛るのは問題ありだから、君が俺を閉じ込めればいいんじゃないかな?」
そうだ、それでもいいんだ。自分の世界に彼女だけを置けばいい。彼女だけに独占されるのも結構嬉しい。
けれど当然、アリアは慌てて首をぶんぶん横に振った。
「ダメです! 出来ません!」
「ダメ?」
「当たり前です!」
「俺はいいけれどね。君が縛ってくれるのは結構甘美な気がする」
現にこの手錠が繋がりに思えるのだから。
「ねぇ、アリアちゃん。猛獣は檻に入れないとさ」
「ウルバスさん人間ですよね!」
「もしくは大きな犬だと思ってもいいけれど」
「思いません! 私、そういうのは……」
言いかけた所でドアがガチャッと開いてランバートが入ってくる。そして二人を繋ぐ手錠を見て、もの凄く遠い目をした。
「……羨ましい?」
「誰がですか! ウルバス様、勘弁してください。ほら、ふざけてないでそろそろ支度してください。帰りますよ」
「うーん、仕方がないな。じゃ、怒られに戻ろうか」
手錠を外して晴れて自由。目に見える拘束は外したけれど、ちゃんと繋がっている感じは残っている。
「さて、お姫様。最後まで俺に送らせてください」
優雅に一礼。それにアリアは頬を染めながらも嬉しそうに笑って頷いてくれた。
◇◆◇
王都に戻り、真っ先にアリアを送っていった。出迎えたアーサーは多少厳しい顔をしたものの、「今度ゆっくりときなさい」と言ってくれた。心が広い人だ。
そうして宿舎に戻ると、仁王立ちの同期達が凄い目で睨み付けながら待っていてくれた。特に中央のウェインがもの凄く睨み付けてくる。
「あ…………ただいま」
なんて言っていいか分からず誤魔化すように笑ったら、ウェインが片足を引く。そして走り込みからのジャンピンググーパンチを見舞った。
流石に頬骨が痛く、衝撃を逃がしきれなくて後ろに倒れたら、ウェインはその腹にどっかりと馬乗りになる。そしてウルバスの胸倉を掴んで……目に涙を浮かばせた。
「どこ行ってたんだよ、バカァァ!!」
「ウェイン」
「心配したんだぞ! もしかしてウルバス……死んじゃったらどうしようって!」
ごめん、そのつもりで出たんだよ。
元気いっぱいで強気な彼の目から涙がこぼれるのは胸が痛む。子供に泣かれるみたいな感じがして罪悪感で一杯になっていく。今回ばかりはウルバスが悪くて、だから余計に申し訳ない。
「も……止めろよぉ、どっか行くなよぉ。困ってるなら言えよぉ。僕じゃ大してぢがらになれないけど、ちゃんときぐからぁぁ」
「ウェイン」
「どもだぢなのにぃぃ」
もう、顔中ぐちゃぐちゃでボロボロだ。そしてアシュレーがもの凄い顔で睨み付けている。泣かせたくて泣かせたんじゃないよ。悪いの自分だけど。
手を伸ばして、柔らかいウェインの髪を撫でた。そして本当に申し訳なく苦笑した。
「ごめん」
「許さない!」
「ごめん、ウェイン。もう、無断でどこかに行ったりはしないから」
「ウルバスのばぁぁがぁぁ!」
「ごめんって。本当にごめん。心配かけてごめんね」
しゃくり上げるウェインの背中を撫でながら、ウルバスはひたすら謝り続ける。
その姿を見た他の面々が近づいてきて、アシュレーがウェインを引き取り、グリフィスがウルバスを助け起こしてくれた。
「まぁ、私たち同期の思いですよ」
「オリヴァー」
「まったく、面倒くさい男だ。頭は冷えたか?」
「キアラン」
「お前にしては今回の事、スマートではなかったぞ。コナン以外の子守は金輪際ごめんだ」
「ルイーズ」
沢山面倒をかけたはずの人達が穏やかな笑みで迎えてくれた。友の有り難みがひしひしと伝わってきて、ウルバスは申し訳なく苦笑して頷いた。
「ったく、ウェインは荒れるし第三はパニックで大変だったぜ。今度おごれよ」
「よろこんで」
グリフィスが癖の強い髪をガシガシとかいて言う。苦労をかけた友人に、ウルバスは有り難く頭を下げた。
「ごめん、皆。後でちゃんと話すから、今はこれで許してほしい」
言えない闇が結構あったけれど、今なら言える気がする。それは多分アリアがいてくれて、この際彼女に嫌われなければ他を失っても平気だと思える、妙な自棄があるのかもしれない。
けれど同時に思うのは、彼らは話しても逃げないんじゃないか。そんな妙な確信があった。
同期達と分かれて騎兵府執務室へと行くと、そこには静かな様子のファウストが鎮座している。ランバートもいない、二人だけの空間に妙な緊張感があって喉が渇く。やっぱり何だかんだと言って、この人の迫力や圧迫感は凄いと思う。
「戻ったか」
「はい。大変、お手数をおかけしました」
丁寧に一礼して詫びを口にすると、立ち上がる気配がする。それは徐々に近づいてきて、直ぐ触れる距離にきた。
拳骨が落ちるだろうか。覚悟して身を固くしているが……下りてきたのは柔らかな手の感触だった。
「戻ったならいい。ランバートから話は聞いた」
「……すみません。俺、アリアちゃんにもう少しで酷い事をしそうになりました。俺が驚かせたから、彼女は発作を」
「お前で良かったよ。俺なら間違いなく容疑者二人をたたき切っていた」
苦笑するファウストを見て、ウルバスは妙に力が抜けてその場にへたり込んだ。
「殴られるの、覚悟していました」
「それはウェイン達がしただろ。それに、アリアが関わっている問題だからな。俺はどうしても身びいきをしてしまう。お前の処分についてはシウス達に任せて、俺は引いた。ただ、どんな処分が下っても俺は最後まで面倒を見る。あまり心配するな」
嫁に対してはあれだけ腰が低くヘタレなのに、こういう時は妙にかっこいい。これが部下を惹きつけて放さないこの人の手の悪さだと思う。人タラシだ。
「それで、話はついたのか?」
「はい」
「……騎士団を、出て行くか?」
やはり少し、躊躇うのだろう。ファウストは伺うようにウルバスを見る。そしてウルバスも隠さずに頷いた。
「いつだ?」
「数年、猶予を頂きました。その間に後任を育てます」
「人選はどうする」
「俺の後任には、補佐をしてくれているルシアンをと思っています。あいつは既に俺の代わりに隊をまとめる事も出来る奴なので、大所帯でも的確に動いてくれるでしょう」
「あぁ、それは納得がいく。だが、ルシアンはあまり海上に明るくないぞ。海軍総督としてはあまり期待できない。どうする」
「ルシアンの補佐に、トレヴァーをつけます」
淀みないウルバスの言葉に、ファウストは静かな眼差しを向けた。
「トレヴァーは俺の持っている感覚を共有できます。潮を読み、風を読み、海上に自らが進む道をちゃんと見つける事ができる。足りないのは自信だけだと思っています。残りの年数であいつに、俺の船を操れるようになるまで仕込みます」
「大丈夫か?」
それについてはなんとも言えない。ただやると決めてきた。
「……分かった。サポートが必要なら言ってくれ」
「有難うございます」
上官からの心強い言葉をウルバスは素直に受け取ることにした。実際二人を育てるのだから、多少他がおろそかになりそうだ。ルシアンはもう少し強くなって欲しいし、トレヴァーには操船技術の他に陣形の事とかももっと学んでもらわなければならない。正直休日返上とかもありえる。
……これ、キアランがもの凄く怒るんじゃないだろうか。
だが、まぁ、仕方がない。諦めてもらおうとウルバスは速攻で切り替えた。
「それにしても、お前が弟か」
「あー、ですね」
「変な感じがする」
「あはは、末永くですよ」
そうか、本気でこの人が兄になるのか。なんだか想像ができない。上官としてのファウストは知っているのだが、兄となるとまた違うのか?
「まぁ、あまり変わらないだろう。よろしく頼む」
「いいんですか、こんなんで?」
「それを選ぶのは俺ではなく、アリアだろう」
そう言われてしまうと、そうなのだが。
「何にしても数年の猶予をしっかり頼む。引き継ぎが十分でなかったときにはお前から申請があっても通せないぞ」
「あっ、それは困ります。分かりました、しばき倒します」
「……程ほどで頼むな?」
困った顔で言うファウストだが、この人の訓練以上に過酷なものなんてないだろう。だから多分大丈夫……だと思う。
「何にしても処分が決まるまでは謹慎して、大人しくしていろ」
「分かりました、できるだけ早くお願いします。降格でも減俸でも覚悟はできているので」
あっさりと言ってのけたウルバスに、ファウストの方が溜息をつく。そしてジトリとした目で睨み付けた。
「やっぱり、拳骨が一番きくか?」
「嫌ですよ!」
パッと自分の頭を手で隠したウルバスを見て、ファウストは可笑しそうに声を上げて笑った。
◇◆◇
数日は大人しく謹慎。……と、思っていたのだが。
「ウ~ル~バァスゥ~、や゛め゛るのやぁだぁぁ!」
「ねぇ、誰がこんなにしたの?」
謹慎くらった当日の夜、突然大量の酒瓶と軽食を持ち込んだ同期達にあれよあれよと押し切られ、グイグイ飲んだウェインは現在ウルバスの膝に向かい合わせに座って胸倉掴んで揺すっている。
今日の酔い方、酷くないか?
「お前が消えた日の夜からこれだぜ」
「泣き上戸とか通り越して、ひたすら迷惑ですよね」
呆れたように溜息をつくグリフィスと、サラッと笑って毒を吐いたオリヴァー。そして彼氏のアシュレーは気にしつつも放置している。
「ねぇ、そこの彼。これどうにかしてよ」
「無理だ」
「ちょっと、無責任だよ。俺にどうしろって?」
「慰めてはどうだ、ウルバス。そうすればアシュレーも涼しくはしていられないだろ」
「ルイーズ、無責任な事言わないでくれる?」
呆れ顔のウルバスがウェインの背中を撫でる。涙も鼻水も出てるんだけれど、いいのか?
「ほらウェイン、そんなに泣かないでよ。今すぐ辞めるなんて言ってないでしょ?」
「ざびじぃ」
「今生の別れじゃないんだから」
まぁ、気持ちは少し嬉しいんだけれど。
苦笑して、髪を撫でて、ウルバスはそのままウェインをギュッと腕の中にしまい込んだ。案外抱き心地のいいサイズだ。ちゃんと包んであげられる。
「ふぎゃぁ!」
「っ!」
「ウェインは可愛いな。そんなに俺がいなくなるの、悲しいの?」
腕の中でウェインが変な声を上げ、静観していたアシュレーは焦って立ち上がるが、ウルバスはにっこりと笑って全部を牽制した。こうなるまで放置したのはこいつらだ。
「ウ……ウルバス?」
「俺、可愛い子は好きだよ。ウェインはどう?」
「う、ウルバスの事は友達として好きです……」
「友達として?」
一気に酔いが醒めたのだろう。涙目のまま目を丸くしてちょっと震え始めている。言葉も丁寧語だ。面白い。
「一晩くらい試そうか? 恋人だけなんて、マンネリするでしょ?」
「そういう刺激はいらないの!」
叫んだ所でアシュレーがきっちりと確保して、ウルバスを一睨みする。おどけたウルバスは手をひらひらさせて笑った。
「恋人の手綱はちゃんと取らないとね、アシュレー」
「以後、気をつける」
「はいはい、ウルバスに軍配」
オリヴァーが楽しそうに笑って言う。思えばここにいる全員、既婚者か恋人持ちじゃないか。
「お前、人畜無害そうなのに意外と有害だよな」
「こいつが無害? ありえませんね」
グリフィスが酒をチビチビやりながらこちらを見る。それにオリヴァーはうんざりという様子で溜息をついた。
「新人時代に相手をしましたが、痛いんですよこいつ。噛み癖が酷いし、たまに血が出て」
「血が出る? 人間の犬歯でそこまでとなると、相当強い力で噛まないとならないと思うが」
ルイーズが真面目な顔で疑問そうにする。こんな話をしているのにワイン片手にかっこつけられるなんて、流石ルイーズだと思う。
「あぁ。俺、人より犬歯大きくて鋭いんだ」
言って、ほんの少し自分の口を広げて見せる。ヴァンパイアの王を殺した呪いを信じるくらいには発達した犬歯に、皆が引きつった顔をした。
「ぜってー痛いだろそれ!」
「これで噛みついたんですか!」
「見事だな」
グリフィス、オリヴァー、ルイーズがまじまじと見ている中、ふと酔い潰れて沈んでいたキアランが顔を上げた。
「サスカッチ族の特徴だ」
「え?」
酒に酔っていながらもキアランの目は死んでいない。立ち上がり、ふらつきながらもウルバスの隣にきて、手紙を差し出してくる。差出人はランバートだった。
「お前の家の事について調べたらしい。ヴァンパイアの呪いなんてものは最初からない。そもそも、ヴァンパイアなんてものは存在しなかった」
「それ、どういうこと?」
なんだか、胸の奥がザワザワする。皆が一度黙り込む中、ウルバスは報告書を読んだ。
それによると、ウルバスの生家のあるハイデ領は建国記の時代、東端に位置した。そこはサスカッチ族という部族の地だった。
そこに建国の戦いに敗れた現在の帝国人が間借りするように住み始め、農夫という形で生計を立てていた。
サスカッチ族というのは戦えば勇敢だが、平時は気性が穏やかで大らか。外部を拒む事もなかったそうで、力も強く背が高く、犬歯が発達していたという。狩猟民族であったことが関係しているという説がある。だが外見的には帝国人とさして変わらず、文化レベルも同じくらい。身体的特徴くらいしか差がないものだった。
やがて建国の戦いが終わり、穏やかになるとハイデ領は帝国に帰属し、領地を安泰される。
だが面白くないのはここに農夫として間借りしている帝国人だ。帝国の領地となったのに、自分たちはしがない農夫だ。
そこで彼らは一計を案じる。誰かにサスカッチ族を排除してもらい、自分たちがこの土地の所有者となる。
サスカッチ族は戦いの部族でもあったが、帝国人が入った段階で夫婦となる者が多く力も衰えてきていた。身長はやや低くなり、農耕を始めて武器の扱いも昔ほど手練れていない。
豪農サリス家当主はそこで旅の若者を引き入れる。
彼は人がよく笑顔が多く、とても素直な人物だった。そのくせ、使い込んだ剣や防具を見るに手練れに見えた。
彼にヴァンパイアが住んでいて、領民の生き血を求めてくる。既に娘が数人攫われたと嘘を言い、男衆を集めて領主の城を襲い、他のサスカッチ族を追い払った。
サリス家当主は若者を領主として尽かせ、娘を宛がい子が生まれ、その子に更にサリスの一族から子を宛がい。そうして徐々にチャートンの血すらも薄めていった。
これが、ヴァンパイア伝説の正体だろう。
ランバートの報告に驚きつつも、よくこんな古い話を持ち出せたと感心する。隣のキアランはまたチビチビ飲み始めた。
「これ、どこから?」
「教会に親戚がいると言って、そこの秘蔵書を見せてもらったらしい。あと、アイゼンシュタイン家の蔵書だ。マーロウが涎垂らして目を血走らせて羨ましがっていた」
「あぁ、オーウェンさんか」
ランバートの従兄弟のオーウェンは現在王都勤務。しかも枢機卿ランスロット・アイゼンシュタインについている。更にアイゼンシュタイン家とは縁戚関係にあるらしい。それなら少しは顔が利くだろう。
ヴァンパイアなんていなかった。全ては人の欲が招いた結果。
「ヴァンパイアの呪いはかなり後の時代になってから始まったそうだ。マーロウの話では、近親での婚姻を繰り返した事で血が濃くなり、様々な異常が起こったのだろうということだ。呪いなんてなかった」
「そうだね」
「では、貴方が恐れたそれは呪いではなく性癖ですかね? 束縛癖。重いですね」
「あ……ははっ。そうなのかもね」
オリヴァーがちびりと酒を飲んで言う言葉は、呪いだと思い込んでいた頃に比べれば大分ニュアンスが軽い。そして性癖と言われると多少納得もできる。
「まぁ、相手を縛りたいと思う気持ちは誰もが多少あるでしょう。私もアレックスを独り占めしたい気分の時があります」
「そういう時は、どうするの?」
「素直に言います。今だけ仕事をやめて、私だけにしてと。そのくらい許してくれないなら、私の旦那など務まりませんよ」
「流石お前の旦那になれた奴だな。器がでかい」
呆れ顔のグリフィスだが……そうか、素直に言えばいいのか。アリアはどんな反応をするだろう。困る? それとも違う反応?
「お前だってリッツが突然甘えて『俺だけを見て』とか言い出したら、どう思うんですか?」
「…………まぁ、悪くないな」
考えて、ちょっと赤くなったグリフィスは「悪くない」なんて言葉以上に嬉しそうだ。そうか、独占されるのは嬉しいのか。時と場合と頻度によるのだろうけれど。
「独占したいという気持ちは、時に心地よい。コナンももう少し私を欲してくれれば嬉しいのだが、控えめだからな」
「はいはい。お前こそ独占欲の塊ですよね、ルイーズ」
「虫は払う。夫としては当然だろ?」
まさかルイーズと同じとは思わなかったが、ウルバスもそう思う。好きな相手に虫がつけば払うのが当然だ。
「どうだ? お前の悩みは案外そこら中にあるものだろ」
「アシュレー」
寝てしまったらしいウェインをベッドに横たえ、一つ頭を撫でたアシュレーがこちらへと近づいてくる。そしてどっかりとソファーに腰を下ろした。
「お前の呪いはお前自身がかけていたものだ。度合いはそれぞれだが、悩むほど特別危険でもない」
「まっ、そういうこった。気持ちが爆発する前に吐き出せばいいんだよ」
「ウェイン見習え。あいつは思った事と口が直結だから毎日元気だぞ」
「それもどうかとは思うが。まぁ、執着と独占欲で言えば私もお前と大差がない。私とお前の違いは単純に、それを隠さない事だ」
「まぁ、少し隠したほうがいいとは思いますがね。ため込まないのはいいことです。男がしっかりしなければとか、年上だからとかかっこつけないで、素直に寄りかかってみてはいかがです? 案外相手も嬉しいかもしれませんよ」
彼らなりに考えて、励ましの言葉を、大丈夫という気持ちを伝えてくれる。ここには得がたい友情が確かにあるのだ。
「ウルバス?」
「もっ、やめてよ。顔見ないで」
彼らといられるのは、どのくらいなんだろう? 一年? 二年? それとももっと? 考えたら、目頭が熱くなってきた。
頬に伝った一滴を手の甲で拭ったウルバスは、限りのできた時間を初めて惜しいと思ってしまった。でもそれは言わないまま。少し、恥ずかしいから。
夜に降っていた雪は止んで、道に薄らと降り積もっている。
少しひんやりとした冬の空気と清涼な朝日を浴びて、ウルバスはがっくりと肩を落とした。
正直、色んな意味で王都に戻りたくない。
多分、ファウストは怒っている。迷惑もかけた。減俸とか謹慎とか、なんなら降格とかはあまり執着ないのだけれど、あの人の拳骨は本当に脳みそが揺れる感じがして嫌いだ。身長数ミリ縮むのではないだろうか。
そしてウェイン達が怒る。そもそも迷惑をかけてしまったし、キアランには怪我もさせた。怒るんだろうな……殴られるのは大した事ないんだけれど、泣かれたら嫌だな。あと、キアランに無理を言えなくなってしまう。
他にも迷惑かけてるからな。エリオットとか。今度こそ簀巻きにされてベッドに固定されるのではないだろうか。あの人ならやりかねない。上官時代から意外と短気で怒ると怖い人だったからな。ウェインなんて未だに涙目になることがあるし。
どうしよう。バッくれようかな。
そんな事が頭をよぎる中、不意にドアがノックされてウルバスは返事を返した。
「アリアです。今少しだけよろしいでしょうか?」
「あぁ、うん」
ダメだ、王都に戻らないとそもそも話が進まない。とりあえずアーサーに謝罪と挨拶をしなければ。
ウルバスはまだベッドの中。しかも起き抜けで起きる気力がなくてローブ姿のままだ。そこに入ってきたアリアがウルバスを見て顔を真っ赤にするものだから、ウルバスは自分の格好を目視で確認した。
結構大胆に胸元の合わせがはだけている。
「……珍しい? ファウスト様の方が凄いよ」
「あの、あの! あ…………うぅぅぅ」
困って顔を赤くして口を大きく開けて。なんだか雛鳥みたいで可愛いな。初心な感じがまたたまらなく。初心なんだろうけれど。
そこまで漠然と思って、ウルバスは爽やかな笑みできっちりと合わせを直し、邪なものを追い出した。
「ごめんね、見苦しくて。起き抜けだったものだから」
「あの、いえ……むしろ眼福でした」
「ん?」
「なっ! 何でもありません!」
顔を真っ赤に否定したけれど、案外耳がいいんだ。そうか、眼福だったのか。これ、維持していかないとな。
「ところで、何か話? 下で待っていればそろそろ起きたのに」
本当は怒られるのが嫌な子供みたいに心の葛藤繰り広げ、なおかつ逃走を考えたなんて間違っても言わない。笑顔は爽やか好青年そのものだ。
ウルバスに問われて、アリアも真面目な顔をする。そして、一枚の手紙をウルバスの前に出した。
それは、ウルバスの退団届けだった。
「あぁ、それね。アリアちゃんに任せるよ。色々あるだろうけれど、アーサー様が許してくれて直ぐにでもってなら、出さないといけないしね」
「そのことなんですが。あの……数年、これを預からせて頂いてもいいでしょうか?」
アリアの真剣な眼差しを、ウルバスも真面目な顔で見返す。彼女の考えをちゃんと聞くためだ。
「私、やっぱりまだ自分には色んなものが足りていないと思うんです」
「だから、俺とは一緒になれない?」
離れたら狂うよ、色々。また、胸の奥がザワザワするから。
けれどアリアは首を横に振って、ウルバスの手をしっかりと握った。
「恋人で、居させて下さい。勿論、結婚を前提とした。私は家の事とか、自分の事とか、ちゃんと向き合います。そしてウルバスさんに相応しい女性になりたい。何年経っても好きだと言ってもらえる、そんな淑女になりたいです」
「今のままで十分可愛いし、とても綺麗で目が離せないし、あまり魅力的になって他の虫が寄ってきたら俺、全力でひねり潰しに行きそうなんだけれど」
「全力で捻り潰すのはやめてください!!」
アリアが全力の声でそこを止めるのが面白い。でも多分、やるよな。
ウルバスは考える。実は少し時間ができるのはウルバスにとっても好都合なのだ。その間に第三を指揮できる後任を育てたい。引き継ぎなんてほとんどないから大丈夫だけれど、隊を率いる人望とか方法とか、海軍としての訓練はけっこう必要だと思う。その人材育成に時間が欲しいのだ。
「そうだな…………じゃあ婚約というか、ご挨拶にはちゃんと行く。そのうえで、正式に恋人という形を取れれば俺も安心できる」
「はい、私も嬉しいです」
「そのうえで、恋人の時間を楽しむなんてのはどうかな? 手始めに建国記念日、俺とデートしよう。王都はとても賑やかだよ」
「素敵です!」
「社交場に出るときは教えて。俺も一緒に行くから」
勿論虫除けだ。彼女に手を出す男は何人も近寄らせない。
そういえば昨日のコート、誰のなんだろう?
「そういえば、昨日君が着ていたコートって」
「フランクリンさんがお見舞いに来て下さっている時に、ランバート義兄様が来てウルバスさんの事を教えてくれたんです。急いでいたので薄着のまま出ようとした私に、フランクリンさんが貸してくれたんです。他にも、外出禁止の私の代わりに父に話をしてくれると」
「そっか、親切な人なんだね」
フランクリン・ベルギウス。物静かで目立つ事のない人物だったが一年前の事件後に台頭してきていた。柔和な人柄だが、商売に関しては手抜きがなくなったと聞く。
ジェームダルで会った時はあんなにも頼りなかったのに。
だが、聞いた話しでは恋人候補がいるような噂もある。あの人物ならとりあえず静観で平気だろう。ウルバスはそう判断した。
「……やっぱり、心が狭いかな」
「え?」
「君に近づく男が全部敵に見えそうで怖いよ。俺、よほど心が狭いんだね」
苦笑して、ふと置きっぱなしの手錠が見えた。そして思いつきで片方を自分につけ、片方をアリアにつけた。
「えぇ!」
「あっ、わりと嬉しい」
「ウルバスさん、変です!」
「俺もそう思うよ。あ…………あっ! 妙案」
「……なんですか?」
「俺が君を縛るのは問題ありだから、君が俺を閉じ込めればいいんじゃないかな?」
そうだ、それでもいいんだ。自分の世界に彼女だけを置けばいい。彼女だけに独占されるのも結構嬉しい。
けれど当然、アリアは慌てて首をぶんぶん横に振った。
「ダメです! 出来ません!」
「ダメ?」
「当たり前です!」
「俺はいいけれどね。君が縛ってくれるのは結構甘美な気がする」
現にこの手錠が繋がりに思えるのだから。
「ねぇ、アリアちゃん。猛獣は檻に入れないとさ」
「ウルバスさん人間ですよね!」
「もしくは大きな犬だと思ってもいいけれど」
「思いません! 私、そういうのは……」
言いかけた所でドアがガチャッと開いてランバートが入ってくる。そして二人を繋ぐ手錠を見て、もの凄く遠い目をした。
「……羨ましい?」
「誰がですか! ウルバス様、勘弁してください。ほら、ふざけてないでそろそろ支度してください。帰りますよ」
「うーん、仕方がないな。じゃ、怒られに戻ろうか」
手錠を外して晴れて自由。目に見える拘束は外したけれど、ちゃんと繋がっている感じは残っている。
「さて、お姫様。最後まで俺に送らせてください」
優雅に一礼。それにアリアは頬を染めながらも嬉しそうに笑って頷いてくれた。
◇◆◇
王都に戻り、真っ先にアリアを送っていった。出迎えたアーサーは多少厳しい顔をしたものの、「今度ゆっくりときなさい」と言ってくれた。心が広い人だ。
そうして宿舎に戻ると、仁王立ちの同期達が凄い目で睨み付けながら待っていてくれた。特に中央のウェインがもの凄く睨み付けてくる。
「あ…………ただいま」
なんて言っていいか分からず誤魔化すように笑ったら、ウェインが片足を引く。そして走り込みからのジャンピンググーパンチを見舞った。
流石に頬骨が痛く、衝撃を逃がしきれなくて後ろに倒れたら、ウェインはその腹にどっかりと馬乗りになる。そしてウルバスの胸倉を掴んで……目に涙を浮かばせた。
「どこ行ってたんだよ、バカァァ!!」
「ウェイン」
「心配したんだぞ! もしかしてウルバス……死んじゃったらどうしようって!」
ごめん、そのつもりで出たんだよ。
元気いっぱいで強気な彼の目から涙がこぼれるのは胸が痛む。子供に泣かれるみたいな感じがして罪悪感で一杯になっていく。今回ばかりはウルバスが悪くて、だから余計に申し訳ない。
「も……止めろよぉ、どっか行くなよぉ。困ってるなら言えよぉ。僕じゃ大してぢがらになれないけど、ちゃんときぐからぁぁ」
「ウェイン」
「どもだぢなのにぃぃ」
もう、顔中ぐちゃぐちゃでボロボロだ。そしてアシュレーがもの凄い顔で睨み付けている。泣かせたくて泣かせたんじゃないよ。悪いの自分だけど。
手を伸ばして、柔らかいウェインの髪を撫でた。そして本当に申し訳なく苦笑した。
「ごめん」
「許さない!」
「ごめん、ウェイン。もう、無断でどこかに行ったりはしないから」
「ウルバスのばぁぁがぁぁ!」
「ごめんって。本当にごめん。心配かけてごめんね」
しゃくり上げるウェインの背中を撫でながら、ウルバスはひたすら謝り続ける。
その姿を見た他の面々が近づいてきて、アシュレーがウェインを引き取り、グリフィスがウルバスを助け起こしてくれた。
「まぁ、私たち同期の思いですよ」
「オリヴァー」
「まったく、面倒くさい男だ。頭は冷えたか?」
「キアラン」
「お前にしては今回の事、スマートではなかったぞ。コナン以外の子守は金輪際ごめんだ」
「ルイーズ」
沢山面倒をかけたはずの人達が穏やかな笑みで迎えてくれた。友の有り難みがひしひしと伝わってきて、ウルバスは申し訳なく苦笑して頷いた。
「ったく、ウェインは荒れるし第三はパニックで大変だったぜ。今度おごれよ」
「よろこんで」
グリフィスが癖の強い髪をガシガシとかいて言う。苦労をかけた友人に、ウルバスは有り難く頭を下げた。
「ごめん、皆。後でちゃんと話すから、今はこれで許してほしい」
言えない闇が結構あったけれど、今なら言える気がする。それは多分アリアがいてくれて、この際彼女に嫌われなければ他を失っても平気だと思える、妙な自棄があるのかもしれない。
けれど同時に思うのは、彼らは話しても逃げないんじゃないか。そんな妙な確信があった。
同期達と分かれて騎兵府執務室へと行くと、そこには静かな様子のファウストが鎮座している。ランバートもいない、二人だけの空間に妙な緊張感があって喉が渇く。やっぱり何だかんだと言って、この人の迫力や圧迫感は凄いと思う。
「戻ったか」
「はい。大変、お手数をおかけしました」
丁寧に一礼して詫びを口にすると、立ち上がる気配がする。それは徐々に近づいてきて、直ぐ触れる距離にきた。
拳骨が落ちるだろうか。覚悟して身を固くしているが……下りてきたのは柔らかな手の感触だった。
「戻ったならいい。ランバートから話は聞いた」
「……すみません。俺、アリアちゃんにもう少しで酷い事をしそうになりました。俺が驚かせたから、彼女は発作を」
「お前で良かったよ。俺なら間違いなく容疑者二人をたたき切っていた」
苦笑するファウストを見て、ウルバスは妙に力が抜けてその場にへたり込んだ。
「殴られるの、覚悟していました」
「それはウェイン達がしただろ。それに、アリアが関わっている問題だからな。俺はどうしても身びいきをしてしまう。お前の処分についてはシウス達に任せて、俺は引いた。ただ、どんな処分が下っても俺は最後まで面倒を見る。あまり心配するな」
嫁に対してはあれだけ腰が低くヘタレなのに、こういう時は妙にかっこいい。これが部下を惹きつけて放さないこの人の手の悪さだと思う。人タラシだ。
「それで、話はついたのか?」
「はい」
「……騎士団を、出て行くか?」
やはり少し、躊躇うのだろう。ファウストは伺うようにウルバスを見る。そしてウルバスも隠さずに頷いた。
「いつだ?」
「数年、猶予を頂きました。その間に後任を育てます」
「人選はどうする」
「俺の後任には、補佐をしてくれているルシアンをと思っています。あいつは既に俺の代わりに隊をまとめる事も出来る奴なので、大所帯でも的確に動いてくれるでしょう」
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「ルシアンの補佐に、トレヴァーをつけます」
淀みないウルバスの言葉に、ファウストは静かな眼差しを向けた。
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「大丈夫か?」
それについてはなんとも言えない。ただやると決めてきた。
「……分かった。サポートが必要なら言ってくれ」
「有難うございます」
上官からの心強い言葉をウルバスは素直に受け取ることにした。実際二人を育てるのだから、多少他がおろそかになりそうだ。ルシアンはもう少し強くなって欲しいし、トレヴァーには操船技術の他に陣形の事とかももっと学んでもらわなければならない。正直休日返上とかもありえる。
……これ、キアランがもの凄く怒るんじゃないだろうか。
だが、まぁ、仕方がない。諦めてもらおうとウルバスは速攻で切り替えた。
「それにしても、お前が弟か」
「あー、ですね」
「変な感じがする」
「あはは、末永くですよ」
そうか、本気でこの人が兄になるのか。なんだか想像ができない。上官としてのファウストは知っているのだが、兄となるとまた違うのか?
「まぁ、あまり変わらないだろう。よろしく頼む」
「いいんですか、こんなんで?」
「それを選ぶのは俺ではなく、アリアだろう」
そう言われてしまうと、そうなのだが。
「何にしても数年の猶予をしっかり頼む。引き継ぎが十分でなかったときにはお前から申請があっても通せないぞ」
「あっ、それは困ります。分かりました、しばき倒します」
「……程ほどで頼むな?」
困った顔で言うファウストだが、この人の訓練以上に過酷なものなんてないだろう。だから多分大丈夫……だと思う。
「何にしても処分が決まるまでは謹慎して、大人しくしていろ」
「分かりました、できるだけ早くお願いします。降格でも減俸でも覚悟はできているので」
あっさりと言ってのけたウルバスに、ファウストの方が溜息をつく。そしてジトリとした目で睨み付けた。
「やっぱり、拳骨が一番きくか?」
「嫌ですよ!」
パッと自分の頭を手で隠したウルバスを見て、ファウストは可笑しそうに声を上げて笑った。
◇◆◇
数日は大人しく謹慎。……と、思っていたのだが。
「ウ~ル~バァスゥ~、や゛め゛るのやぁだぁぁ!」
「ねぇ、誰がこんなにしたの?」
謹慎くらった当日の夜、突然大量の酒瓶と軽食を持ち込んだ同期達にあれよあれよと押し切られ、グイグイ飲んだウェインは現在ウルバスの膝に向かい合わせに座って胸倉掴んで揺すっている。
今日の酔い方、酷くないか?
「お前が消えた日の夜からこれだぜ」
「泣き上戸とか通り越して、ひたすら迷惑ですよね」
呆れたように溜息をつくグリフィスと、サラッと笑って毒を吐いたオリヴァー。そして彼氏のアシュレーは気にしつつも放置している。
「ねぇ、そこの彼。これどうにかしてよ」
「無理だ」
「ちょっと、無責任だよ。俺にどうしろって?」
「慰めてはどうだ、ウルバス。そうすればアシュレーも涼しくはしていられないだろ」
「ルイーズ、無責任な事言わないでくれる?」
呆れ顔のウルバスがウェインの背中を撫でる。涙も鼻水も出てるんだけれど、いいのか?
「ほらウェイン、そんなに泣かないでよ。今すぐ辞めるなんて言ってないでしょ?」
「ざびじぃ」
「今生の別れじゃないんだから」
まぁ、気持ちは少し嬉しいんだけれど。
苦笑して、髪を撫でて、ウルバスはそのままウェインをギュッと腕の中にしまい込んだ。案外抱き心地のいいサイズだ。ちゃんと包んであげられる。
「ふぎゃぁ!」
「っ!」
「ウェインは可愛いな。そんなに俺がいなくなるの、悲しいの?」
腕の中でウェインが変な声を上げ、静観していたアシュレーは焦って立ち上がるが、ウルバスはにっこりと笑って全部を牽制した。こうなるまで放置したのはこいつらだ。
「ウ……ウルバス?」
「俺、可愛い子は好きだよ。ウェインはどう?」
「う、ウルバスの事は友達として好きです……」
「友達として?」
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「一晩くらい試そうか? 恋人だけなんて、マンネリするでしょ?」
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叫んだ所でアシュレーがきっちりと確保して、ウルバスを一睨みする。おどけたウルバスは手をひらひらさせて笑った。
「恋人の手綱はちゃんと取らないとね、アシュレー」
「以後、気をつける」
「はいはい、ウルバスに軍配」
オリヴァーが楽しそうに笑って言う。思えばここにいる全員、既婚者か恋人持ちじゃないか。
「お前、人畜無害そうなのに意外と有害だよな」
「こいつが無害? ありえませんね」
グリフィスが酒をチビチビやりながらこちらを見る。それにオリヴァーはうんざりという様子で溜息をついた。
「新人時代に相手をしましたが、痛いんですよこいつ。噛み癖が酷いし、たまに血が出て」
「血が出る? 人間の犬歯でそこまでとなると、相当強い力で噛まないとならないと思うが」
ルイーズが真面目な顔で疑問そうにする。こんな話をしているのにワイン片手にかっこつけられるなんて、流石ルイーズだと思う。
「あぁ。俺、人より犬歯大きくて鋭いんだ」
言って、ほんの少し自分の口を広げて見せる。ヴァンパイアの王を殺した呪いを信じるくらいには発達した犬歯に、皆が引きつった顔をした。
「ぜってー痛いだろそれ!」
「これで噛みついたんですか!」
「見事だな」
グリフィス、オリヴァー、ルイーズがまじまじと見ている中、ふと酔い潰れて沈んでいたキアランが顔を上げた。
「サスカッチ族の特徴だ」
「え?」
酒に酔っていながらもキアランの目は死んでいない。立ち上がり、ふらつきながらもウルバスの隣にきて、手紙を差し出してくる。差出人はランバートだった。
「お前の家の事について調べたらしい。ヴァンパイアの呪いなんてものは最初からない。そもそも、ヴァンパイアなんてものは存在しなかった」
「それ、どういうこと?」
なんだか、胸の奥がザワザワする。皆が一度黙り込む中、ウルバスは報告書を読んだ。
それによると、ウルバスの生家のあるハイデ領は建国記の時代、東端に位置した。そこはサスカッチ族という部族の地だった。
そこに建国の戦いに敗れた現在の帝国人が間借りするように住み始め、農夫という形で生計を立てていた。
サスカッチ族というのは戦えば勇敢だが、平時は気性が穏やかで大らか。外部を拒む事もなかったそうで、力も強く背が高く、犬歯が発達していたという。狩猟民族であったことが関係しているという説がある。だが外見的には帝国人とさして変わらず、文化レベルも同じくらい。身体的特徴くらいしか差がないものだった。
やがて建国の戦いが終わり、穏やかになるとハイデ領は帝国に帰属し、領地を安泰される。
だが面白くないのはここに農夫として間借りしている帝国人だ。帝国の領地となったのに、自分たちはしがない農夫だ。
そこで彼らは一計を案じる。誰かにサスカッチ族を排除してもらい、自分たちがこの土地の所有者となる。
サスカッチ族は戦いの部族でもあったが、帝国人が入った段階で夫婦となる者が多く力も衰えてきていた。身長はやや低くなり、農耕を始めて武器の扱いも昔ほど手練れていない。
豪農サリス家当主はそこで旅の若者を引き入れる。
彼は人がよく笑顔が多く、とても素直な人物だった。そのくせ、使い込んだ剣や防具を見るに手練れに見えた。
彼にヴァンパイアが住んでいて、領民の生き血を求めてくる。既に娘が数人攫われたと嘘を言い、男衆を集めて領主の城を襲い、他のサスカッチ族を追い払った。
サリス家当主は若者を領主として尽かせ、娘を宛がい子が生まれ、その子に更にサリスの一族から子を宛がい。そうして徐々にチャートンの血すらも薄めていった。
これが、ヴァンパイア伝説の正体だろう。
ランバートの報告に驚きつつも、よくこんな古い話を持ち出せたと感心する。隣のキアランはまたチビチビ飲み始めた。
「これ、どこから?」
「教会に親戚がいると言って、そこの秘蔵書を見せてもらったらしい。あと、アイゼンシュタイン家の蔵書だ。マーロウが涎垂らして目を血走らせて羨ましがっていた」
「あぁ、オーウェンさんか」
ランバートの従兄弟のオーウェンは現在王都勤務。しかも枢機卿ランスロット・アイゼンシュタインについている。更にアイゼンシュタイン家とは縁戚関係にあるらしい。それなら少しは顔が利くだろう。
ヴァンパイアなんていなかった。全ては人の欲が招いた結果。
「ヴァンパイアの呪いはかなり後の時代になってから始まったそうだ。マーロウの話では、近親での婚姻を繰り返した事で血が濃くなり、様々な異常が起こったのだろうということだ。呪いなんてなかった」
「そうだね」
「では、貴方が恐れたそれは呪いではなく性癖ですかね? 束縛癖。重いですね」
「あ……ははっ。そうなのかもね」
オリヴァーがちびりと酒を飲んで言う言葉は、呪いだと思い込んでいた頃に比べれば大分ニュアンスが軽い。そして性癖と言われると多少納得もできる。
「まぁ、相手を縛りたいと思う気持ちは誰もが多少あるでしょう。私もアレックスを独り占めしたい気分の時があります」
「そういう時は、どうするの?」
「素直に言います。今だけ仕事をやめて、私だけにしてと。そのくらい許してくれないなら、私の旦那など務まりませんよ」
「流石お前の旦那になれた奴だな。器がでかい」
呆れ顔のグリフィスだが……そうか、素直に言えばいいのか。アリアはどんな反応をするだろう。困る? それとも違う反応?
「お前だってリッツが突然甘えて『俺だけを見て』とか言い出したら、どう思うんですか?」
「…………まぁ、悪くないな」
考えて、ちょっと赤くなったグリフィスは「悪くない」なんて言葉以上に嬉しそうだ。そうか、独占されるのは嬉しいのか。時と場合と頻度によるのだろうけれど。
「独占したいという気持ちは、時に心地よい。コナンももう少し私を欲してくれれば嬉しいのだが、控えめだからな」
「はいはい。お前こそ独占欲の塊ですよね、ルイーズ」
「虫は払う。夫としては当然だろ?」
まさかルイーズと同じとは思わなかったが、ウルバスもそう思う。好きな相手に虫がつけば払うのが当然だ。
「どうだ? お前の悩みは案外そこら中にあるものだろ」
「アシュレー」
寝てしまったらしいウェインをベッドに横たえ、一つ頭を撫でたアシュレーがこちらへと近づいてくる。そしてどっかりとソファーに腰を下ろした。
「お前の呪いはお前自身がかけていたものだ。度合いはそれぞれだが、悩むほど特別危険でもない」
「まっ、そういうこった。気持ちが爆発する前に吐き出せばいいんだよ」
「ウェイン見習え。あいつは思った事と口が直結だから毎日元気だぞ」
「それもどうかとは思うが。まぁ、執着と独占欲で言えば私もお前と大差がない。私とお前の違いは単純に、それを隠さない事だ」
「まぁ、少し隠したほうがいいとは思いますがね。ため込まないのはいいことです。男がしっかりしなければとか、年上だからとかかっこつけないで、素直に寄りかかってみてはいかがです? 案外相手も嬉しいかもしれませんよ」
彼らなりに考えて、励ましの言葉を、大丈夫という気持ちを伝えてくれる。ここには得がたい友情が確かにあるのだ。
「ウルバス?」
「もっ、やめてよ。顔見ないで」
彼らといられるのは、どのくらいなんだろう? 一年? 二年? それとももっと? 考えたら、目頭が熱くなってきた。
頬に伝った一滴を手の甲で拭ったウルバスは、限りのできた時間を初めて惜しいと思ってしまった。でもそれは言わないまま。少し、恥ずかしいから。
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