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19章:建国祭ラブステップ
6話:誕生を待ちわびて2(ウルバス&アリア)
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たっぷりとデートを満喫してシュトライザー家に戻ってきたのが、夕方五時近い時間だった。
戻ってみると、とにかく屋敷中が慌ただしく、メイドも従者も執事までもがバタバタ走り回っている状態だった。
「あの、もしかしてこれ……」
「あー、多分?」
呆然としているアリアにウルバスも返す。
そのうちに執事長がこちらへと駆けてきた。
「アリアお嬢様! お出迎えが遅れまして」
「そんな事はいいの。それより、もしかして……」
「はい、メロディ様の陣痛が始まりまして」
予想通りの展開にウルバスはなんとも居場所のない感じがした。今日はここに泊まる予定ではあったが、この様子では見合わせたほうがいいかもしれない。結婚を前提としたお付き合いではあるが、これは間違いなく家族間の大事な時だ。居ていいものか困る。
だが、隣のアリアはまるで我が事のようにオロオロし始めた。
「どうしましょう! あの、義姉様はどのような」
「それが、陣痛が始まってからかれこれ六時間が経つのですが、進みが遅いようで。初産ですので時間はかかると言われておりましたが、皆心配で」
「そんな! あっ、でもその、どのくらい時間がかかるのでしょう?」
「それが私も遙か昔の記憶で、全く覚えておりませんで」
……ツッコんだほうがいいのかな?
なんだかちょっと場の雰囲気にそぐわないけれど目の前の二人が面白くてたまらない。でもまずは落ち着いてもらわなければ。
「アリアちゃん、落ち着いて。ヨシュア先生も産婆さんもいるんだから、専門家に任せておけばとりあえず大丈夫だよ」
「でも、あの。なんだかとても落ち着かなくて」
そわそわしたりオロオロしたりだ。さて、どうしたものか。
「アーサー様はどうしていますか?」
「少し離れたお部屋にずっと待機しておりますが、落ち着かない様子で」
「メロディ嬢のご両親は?」
「同じくでございます」
「全滅か……」
いっそ面白い。これにファウストが加わると更に絵面が面白いと思ってしまったウルバスは、その妄想を必死に打ち消した。
「助産の先生が最悪切る事も考えなければと仰るので、今ハムレット先生に相談に行っております」
「そこまでなのかい?」
「私には判断がつきませんが」
そんな事を玄関先で話していると、外で馬車の止まる音がする。そして直ぐにハムレットが屋敷へと入ってきた。
「あれ、ウルバス? あぁ、アリアのお供だったのか」
「お久しぶりです、ハムレットさん」
緊急事態なのかもしれないが、全くもって落ち着いているハムレットが屋敷内のドタバタに溜息をつく。その後ろからは診察鞄を持ったチェルルが、やっぱり苦笑しながらついてきた。
「ウルバス様、お久しぶり」
「やぁ、チェルル。先生の助手が板についてきたね」
「本当? けっこう嬉しいよ」
にっこり笑ったチェルルは以前よりもずっと自然で毒がない。今がとても幸せなんだと察せられる笑顔だった。
「それにしても、凄い荷物だね」
チェルルが途中まで下ろしたのだろう荷物は木箱で二つある。しかも、どれも重そうだ。
「帝王切開の可能性ありとなると必要な道具や薬が沢山ある。あぁ、そうだ。ウルバス、暇なら手伝ってよ。力のある奴が欲しい」
「俺は構わないけれど」
「じゃ、そこの荷物運び込んでおいて」
そう言うとハムレットは案内に従ってメロディのいるだろう部屋へと向かっていく。ウルバスは言われたとおり木箱を一遍に抱えてついていったが、予想よりもずっと重たかった。
「アリアちゃんはアーサー様達と一緒にいてね。俺は手伝えるみたいだから、手伝ってくる」
「あの、私も」
「力仕事だから大丈夫だよ。疲れて具合が悪くなったりしたら俺が心配でたまらないから、ちゃんと休んで待っていてね」
やんわりと微笑んだウルバスに、アリアは不安そうにしながらも頷いてくれた。
ハムレットの後について屋敷の一番端の部屋に入ると、ベッドの上で体を丸くし、苦しげに息を吐いているメロディと、その背中をさすりながら不安そうにしているルカ。そしてお腹に聴診器をあてながら女性と話しているヨシュアがいた。
「ハムレット先生」
「やぁ。大体話は聞いたけれど、今はどんな状態?」
コートをチェルルに預け、綺麗な水で丁寧に手を隅々まで洗ったハムレットが近づいていく。指定された部屋の隅に箱を置いたウルバスは緊張感漂う様子を見ていた。
「私が説明します。産婆のアリオーネと申します」
「よろしく」
「こちらこそ。メロディさんの陣痛が始まったのは今日の十一時頃。弱いながらも間隔が整っていたので来たのですが、そこからなかなか進みません」
「産道は?」
「三センチ程度です」
話を聞き、ハムレットは真剣な顔をする。そしてメロディの側へと向かい、とても穏やかな笑みを見せた。
「初めまして、ハムレットと言います。今から少し診させてもらいます。少し痛いかもしれないけれど、気持ちを楽に、息を深く吐いて下さいね」
そう言うと彼はメロディの足を思い切り広げ、あろうことか指を深く突っ込んだように見えた。
「んぅぅ!!」
苦悶に満ちた声が聞こえて、ルカが心配そうな顔をして手を握っている。にもかかわらず、ハムレットは結構長いあいだ指を入れたままだ。
「衝撃映像だよね」
「チェルル」
「俺も二回くらい立ち会ったけど、衝撃映像の連発だよ」
それでも落ち着いているチェルルは、本当に医者の助手という貫禄が出てきた。
「三センチ。しかも硬くなってる。お通じは順調にある?」
指を抜いて綺麗に洗いながら、ハムレットは問いかけている。それにメロディは首を横に微かに振った。
「今のうちに綺麗にしておいた方がいいかな。進んじゃうと破水の危険もあるし」
ハムレットはチェルルに指示を出し、チェルルは早速 ウルバスが持ってきた箱の中から何かを取り出す。一つは薬のようだが、もう一つはオリヴァーの部屋で見たことがある気がした。
「アリオーネさん、お手洗いはこの部屋から近い?」
「すぐそこです。水場の近くに部屋をお願いしたので」
「じゃあ、腸内洗浄をお願いします。こっちが薬、こっちがプラグです。薬を入れた直ぐにプラグで栓をして、最低でも十分は我慢させてください。この砂時計が十分です」
あれこれと荷物を持たせ、ルカにも「支えて連れて行ってあげて」と指示を出し、三人はゆっくりと部屋を出ていく。
それを見送ってから、ハムレットはパンと手を打った。
「今のうちにベッドの用意をするよ。ウルバス、もう一つの箱から布出して」
言われるがままに箱を開けると、そこには見慣れた布がベッドよりも一回り大きなサイズで三枚も入っていた。どうりで重いはずだ。
「帆布ですか?」
「流石だね。今あるシーツを全部剥がして、三枚重ねて敷いて。さもないと、ベッドが使い物にならなくなるから」
「?」
「血みどろになるってことだよ」
首を傾げながらもテキパキと行動はする。何せ普段扱い慣れた布だ。いとも簡単に指示通りに出来た。
「そしたら箱の中のロープをベッドヘッドの真ん中に結んでくれる? 簡単に外れないように強い結び方で」
「何故?」
「出産にはとても力がいる。そういう時に、握るものがあると効率よく力がこめられるんだ」
つまりこのロープを握ってお産をするらしい。
これもテキパキとこなす。何せ普段やっている基本中の基本だ。どんな大嵐だって乗り越えてきた船乗りのロープ結びなのだから、簡単にはほどけたりしない。
「うん、完璧」
その出来に、ハムレットも満足そうだ。
「チェルル、今のうちに厨房に行って一口サイズのサンドイッチお願いしてきて」
「了解、ジャムだね」
「それと、待機してる人達の軽食もあると嬉しい」
「頼んでくる」
チェルルは分かっているように出ていく。これにもウルバスは首を傾げた。
「お産を進めるには糖分と水分が必要なんだ。だから、甘い物を食べてもらう。これで少しでも進みが早くなれば今日の深夜にでも生まれるよ。そうならなかったら長期戦。彼女の体力とか赤ん坊の状態によっては切る事になるけれど、そうなると回復も遅いし他の危険も出てくる。だからできれば自然分娩にしたい」
なんだかとてもテキパキとしている。これが医者というものか。
幸いウルバスはハムレットの世話になったことはない。切れ者で腕の良い鬼才。それを感じるものだった。
「ところでヨシュア先生はお産の経験は?」
「それが、一度もないんだ。正直どうしていいものか分からず、アリオーネ氏の補助くらいしかできていない」
「分かった。ではヨシュア先生はアリオーネさんの助手を務めてくれ。長丁場になれば一人でやりきるのは少し大変だから交代制にしよう。ウルバス、今日はここに泊まるのかい?」
「その予定でしたが」
「僕の補助になってほしい。案外力仕事が多いから、居てくれると助かる」
「? 俺で手伝えるならかまわないけれど」
そんなに力のいることがあるのだろうか。何せ経験の無いことなので分からないが、必要というなら手は貸す。
何より今メロディに何かあれば、その後のシュトライザー家に響く。彼女には健康的に子を産んでもらい、元気で過ごしてもらわなければ。
そんなこんなと話していると、げっそりとしたメロディが戻ってくる。だが心なしか、とてもスッキリとした顔をしていた。
最初はアリオーネとヨシュアがつくことになり、異変があったらハムレットに知らせる事になった。メロディは小さな甘いサンドイッチを、蜂蜜を入れた紅茶と一緒に少しずつ食べている。
が、その間にも陣痛が進んでいるのか、時折辛そうな声を上げていた。
今はアリアの側で少しの時間を過ごしているが、彼女はとても不安そうだ。
「大丈夫でしょうか、あんなに苦しそうな声で」
「平気、病気じゃないんだし」
「でも、お産は命がけってききます先生」
仮眠用の部屋にはチェルルとハムレットもいて、今のうちにと簡単な食事をしている。
「確かに命がけだけど」
「じゃあ!」
「あのね、僕がいるんだよ? 絶対に母子ともに元気な状態にしてあげるから、心配しないの」
他の医者がこれを言っても「本当か?」という疑念をウルバスは持つだろう。だがこの人とエリオットが言うときには、もの凄く安心できる。それだけこの人は騎士団の危機を救ってくれたのだ。
「それより、アリアも寝ておきなよ。夜中に生まれるとなれば多分声で寝ていられないから」
「今の時点で寝られるきがしません」
今も声が聞こえるが、少し離れているせいか意識をしなければどうにかなる。
だが心配性のアリアはそうもいかないようだ。
「君が体調崩すと人手を割かないといけないんだから、しっかりしてよ」
「それは分かっているつもりなのですが」
「まったく。あっ、そうだ! それならそこのデカい抱き枕にしがみついて寝なよ。夜中に交代だから、それまで寝られるよ」
にやりと意地悪に笑うハムレットが誰を指して抱き枕と言ったのかなんて明白だ。アリアも当然気づいただろう、途端に顔を真っ赤にした。
「あの、そんな! あのぉ!」
「恋人なのに、添い寝もしたことないの?」
「ありません!!」
あーぁ、からかわれてる。
こんな初心な反応をしたら、余計にこの人を楽しませるばかりなのに。
それならと、ウルバスはちょっと考えてアリアの手を引いた。
「そういうことなら、先に俺は休みます。こっちだよ、アリアちゃん」
「え? えぇ! ちょ、ウルバスさん!!」
立ち上がったウルバスはアリアの手を引いたまま、空いているベッドに潜り込む。客室でツインベッドの片方をウルバスとアリアが占拠した。
「うわぁ、本当にやった」
「先生がからかうからでしょ。ほら、俺達も食べて寝よう」
あっちはあっちで仲良く二人で寝るつもりなのだろう。それならお互い様だ。
「あの、ウルバスさん」
「何もしないから、安心して」
ふわっと笑い、ウルバスは目を閉じる。腕の中が温かくて、とても良く眠れそうだ。
「とても温かいね」
「そう、ですね」
小さく身じろぐアリアに笑いながら、ウルバスはそのままストンと眠りに落ちた。
引き継ぎを兼ねて少し早めの深夜十一時に起床したウルバスとハムレット、チェルルはメロディの居る部屋へと向かう。
中に居たヨシュアとアリオーネは、三人を見るとほっとしたようだった。
「どう?」
「七センチまで開きました」
「順調だね! これなら今夜中には生まれるかな」
その分、辛そうな声が時折聞こえる。側にいるルカもとても心配そうだ。
「じゃ、ここで交代。ルカも寝ていいよ」
「でも!」
「ルカ、君はお産に立ち会わない方がいい。けっこうショッキングだから」
真顔で言うハムレットに、ルカはそれでも何か言いたげな顔をしている。だが、ハムレットは更に続けた。
「お産は男性にはかなりグロテスクというか、ショックの大きな光景だよ。医者でもお産は嫌だという男性医師は多い。若い夫婦だとその光景にショックを受けて、セックスレスになる人もいるみたいだし」
「ですが」
「今回はやめておきなよ。それに奥さんだって、あられもない姿を旦那に見せるのは後々恥ずかしいって言う人もいるよ」
ルカはメロディを見て、メロディは額に汗を浮かべながら頷く。それで、諦めがついたのだろう。
「……わかりました」
「生まれたら直ぐに知らせる。アリオーネさんとヨシュア先生はどうする?」
「私はこの部屋で仮眠を取らせてもらいます」
「俺はルカの側にいる。その……」
「無理しなくていいよ。さっきも言った通り、男にはショッキングだから」
申し訳なさそうな顔をして、ヨシュアはルカと一緒に退室していった。
「それで、俺には拒否権ないんだね?」
「ないね。まずは水を沢山運んで湧かして冷まして。産湯を先に作っておきたいし」
「確かに、力仕事だね」
幸い暖炉に火がある。そこに大きめの鍋を借りてきて何往復もして水を入れていく。
その間にもメロディの声は逼迫したものになっていった。
「踏ん張らないで」
先ほどとは全く違う優しい声で語りかけるハムレットがメロディの側に座る。そして丸まっている腰の辺りを強く撫でた。
「痛み出したら深く短く息を吐いて、今僕が摩っている辺りに痛みを流すイメージをしてごらん」
「は…………はぃぃ!」
「そうそう、上手。苦しかったら少し声を出してもいいよ」
「ふっ、ふっ……ふぅぅ!」
「上手。これで進んでいくからね」
しっかりと腰を摩りながら時計を見て時間を計る彼は、とても優しく映る。ランバートの話では解剖好きのマットサイエンティストらしいのだが。
「チェルルは産着とかも用意しておいて。綺麗な布とタオルも。あと、桶と秤」
「そんなのも必要なのかい?」
「出血の量が多ければ、最悪輸血もしなきゃいけない。急激に血圧が変化することもあるからそれも注意しないと。とにかく、何が起こっても対処できるようにしないといけないんだ」
チェルルはテキパキと動いている。それを手伝ったりしながら二時間ほどが経った時、メロディの様子は更に逼迫したものになっていた。
「九センチ。これなら」
ハムレットが少し明るい声で言った直後、メロディが唸るような声を上げる。それと同時に、側に控えていたアリオーネが「破水した」と動き出した。
「まだですよ、メロディさん!」
「む……無理ですぅぅ!」
力が入るのか、仰向けのまま丸まるように体が収縮している。その側でアリオーネはテキパキと動き、メロディにロープを握らせ、足を大きく開かせた。
「ウルバス、足が閉じないようにしっかり開いたまま固定して!」
「え! あっ、うん!」
もの凄く気の引ける役割が与えられたものだ。シーツを足元にかけていて直接は見えないが、それでも何をしているのかは分かる距離。若い女性を大股開かせたままで押さえて固定なんて、どうしたらいいものか。
「大分羊水が出てきてますね」
「でも頭もちゃんと見えてきた。それに、もうすぐ全開だ」
足の間を注視する二人の医者を目の前に、背後ではもの凄く切迫した声と息づかい。もの凄いカオスだ。
「力が入る瞬間にしっかり息を吐ききって、自分のおへそを見る感じで。もう降りてきてるから大丈夫だよ」
言われた通りにメロディはしているのだろう。だが、ハムレットの表情を見るに思うようにはいっていないようだった。
「なかなか子宮口を出られない。時間がかかると辛いな」
「鉗子は?」
「あるけれど、できれば使いたくない。母胎や胎児を傷つける可能性もすてきれない」
そう言うと、ハムレットは念入りに手を洗い、そこに薄いシルクの長手袋を嵌める。そして、メロディがいきむのに合わせて腕を突っ込んだ。
「いっ! たい!! 痛い!」
「一気に出すからしっかりそのままもう少し力入れて!」
一気に、出す?
腕を入れっぱなしの彼が何をしているのか想像がつかないが、メロディの苦しみようは尋常ではなく、それでも続けて息を吐き力を込めている。なるほど、硬くロープを結ぶ必要があるわけだ。
「もう、少し…………」
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
「! 出た!」
彼がそう歓喜の声を上げた次の瞬間、まるで滑り出るように赤ん坊が彼の手の中に収まるのを見た。
もっと、小さく頼りないものかと思ったが意外と大きい。血まみれの赤ん坊の鼻や口を綺麗な布で拭い、口の中も同じようにすると、赤ん坊は大きく元気な声で泣いた。
「とりあえず良かった。チェルル、時間は?」
「午前二時十分」
「書き留めておいて。あと、はさみ」
ハムレットが赤ん坊のへその緒を切り、そこをギュッと結ぶ。アリオーネがその子を受け取って産湯につけて綺麗に洗っている。
そして疲れ果てたメロディは力の抜けた顔で笑いながら涙を流していた。
「お疲れ様、頑張ったね」
「はい……」
「全身辛いと思うけれど、もう少し頑張ってね」
ハムレットがお腹を軽く解すように押す。それだけでメロディは、今度はとてもはっきりとした声で「痛い!」を連発している。ただ、先ほどまでの異様な緊張感や切迫感はもうなかった。
「胎盤を綺麗に剥がさないと産後に響くからね。ほら、もう一度頑張って踏ん張って」
言われた通りにすると、赤黒い、そこそこの大きさの塊が出てくる。そして帆布の上に更に重ねていたらしいタオルは全部血の海だ。
「よし、綺麗な形。チェルル、血の量計っておいて」
「はーい」
持っている桶に汚れたタオルやらを入れたチェルルが、慣れたように計っている。その間にハムレットは糸と針を取り出して、麻酔も何もせずに縫い始めている。
「痛そう」
「お産で麻痺してるから平気。メロディ、痛い?」
「チクチクしますけれど、平気です」
平気、なんだ……。
「出血は五百ってところです」
「少し多いけれど、輸血まではいらないね」
「赤ん坊は三三〇〇グラムです」
「大きいね! どうりで大変だったわけだ。立派な男の子だよ」
途端に安堵するメロディの所に、綺麗になった赤ん坊が産着を着せられて戻ってくる。それを抱きしめる彼女はもう母親の顔をしているようだ。
自分も、生まれた瞬間はこんな感じだったのだろうか?
少なくとも、母が望んだ子ではなかっただろう。それでも、生まれた瞬間くらいはこんなふうに、優しく笑いかけてくれたのだろうか。
「診察終わったら乳母の所に。メロディは今日一日寝てること」
「はい」
「夕方くらいには一度連れてきて、授乳させてみて。出るようならそのまま飲ませてあげてね」
「はい」
縫い終わったのだろうハムレットがちょんと糸を切る。そして思い切り体を伸ばした。
「さて、今夜は僕がここにいるから、何か体調に変化があったり辛い部分があったら教えて」
まだ人がバタバタと動くなか、ハムレットはソファーに横になってしまう。放置されたウルバスはどうしたらいいものか。
「あっ、ウルバスもお疲れ。適当に寝ていいよ」
「あー、はい」
そう言われても、なんだか眠れる気がしない。とりあえずその足でアリアの寝る部屋に戻ったウルバスは、再び隣に寝転ぶ。そして、眠る彼女の顔を見ながらまた少し、モヤモヤと考えるのだった。
◇◆◇
翌日、眠そうなハムレットを捕まえたウルバスは別室で二人きりになった。正直ハムレットは眠そうであまり機嫌はよくなさそうだが、真剣な話だと分かると黙って構えてくれた。
「それで、話ってなに?」
「アリアちゃんの事です。彼女は、女性としての機能は正常ですよね?」
「生殖能力ってこと? 正常だよ」
「では、彼女に万が一子供ができた場合、彼女の体はどうなりますか?」
そこまで言うと、ハムレットも真剣な顔をした。
昨夜の様子を見て、思ったのだ。万が一の場合、彼女はきっとこんなの耐えられないだろうと。それほどに鬼気迫るものがあり、壮絶だった。人が人を産むということの素晴らしさを感じたと同時に、これがアリアだと思ったら怖くなった。
勿論ウルバスは自分の子供など望んでいない。だがウルバスも男で、生殖能力としては正常。夫婦の時間を今後取ることになって、万が一があっては困る。
「耐えられない。一番良くて子供は助かってもアリアは無理という可能性が高い。最悪、子供も彼女も亡くなる可能性だってかなりの確率になる。だからといって堕胎だって負担になる」
「ですよね」
「夫婦の時間とか、やっぱり考えるわけ?」
「一応は。貴方だってチェルルとなさるでしょ?」
「そうだね、分かる。それで? 君の考えを聞こうか」
やはり、想像通りの返答だ。ウルバスは眠れぬ間に考えていたことを、ハムレットに明かした。
「彼女に負担はかけたくありません。俺の方で、生殖能力をなくす事は可能ですか?」
万が一を潰したい。最初から子供なんて考えていないのだからそれでいい。
だがハムレットの方は腕を組んで難色を示した。
「去勢。つまり玉を取ると、君の若さだと色々障害がある。睾丸っていうのは精子作るばかりじゃなく、男性を男性たらしめる物質も作っている。低下すると筋力が落ちて肥満になるし、精神的には不眠や不安、倦怠感、気分の沈み込みという症状が出る。更には勃起不全だね」
「それは困ります。騎士として役に立たなくなるのは困ります」
「そればかりじゃなく、シュトライザーを継ぐにしても胆力が無くなるのは問題が多い。だからおすすめしない」
では、どうしろと言うのか。動物の腸などを使った避妊具はあるにはあるが、破けたなどの事例をよくきく。夫婦の時間を作るなと言われればそれまでだし、ウルバスの方はいくらでも我慢する。だがアリアは若く、彼女の方から求められれば無下にできない。
「……一つ、最近東国で確立されつつある方法がある」
「え?」
腕を組んだまま、ハムレットはゆっくりと話し出した。
「睾丸と、精子を貯蔵しておく精嚢線を繋ぐ管を切って、縛る方法。これだと睾丸は取らないから胆力はそのままだし、精液は普通に作られるから勃起もする。ただ、その精液に精子が混ざらないようにするんだ」
「そんな事が可能なのかい?」
「東国で確立されかけているもので、帝国じゃ事例がない。僕もしたことがない。だから失敗する可能性もあるし、デメリットもある」
「例えば?」
「まずは、カットしても再生する可能性は残る。経過観察と検査が必要だ。そして当然だけれど、子供はできない。途中で望んでも無理」
「構わないよ、子供はいらない。経過観察もしてもらったほうが安心だ」
それでアリアを護れるなら、負担はこちらが負う。
「……分かった。僕の方も解剖なんかでちょっとシミュレーションしておく」
「有難うございます」
「その時の費用はいらない。昨日のお礼ってことで」
「助かります」
苦笑したウルバスにしっかりとハムレットは頷き、話は終わりとばかりに大きな欠伸の後で伸びをした。
「さーて、話はお終い。僕はこれで失礼するよ」
「はい、お疲れ様です。あと、この件についてはアリアちゃんには秘密で」
「勿論言わないよ」
約束してくれて、ハムレットは部屋を出て行く。今日の夕刻にはヒッテルスバッハ本邸に移ると言っていた。
ウルバスも部屋を出る。するとそこからしばらくでアリアに出会った。
「あっ、ウルバスさん!」
「どうしたの? なんだか興奮気味だけれど」
「はい! 先ほど赤ちゃんに会わせてもらいました。とても小さくて。それで、メロディ義姉様とも少しだけ会えると言われたので、お祝いを渡してきたんです」
「喜んでもらえた?」
「はい! お守りとして持たせると言ってくれました」
彼女が選んだのはターコイズ。魔除けや災難よけの宝石なのだと、昨日の女性が言っていた。
願わくば、災いなどありませんように。この国が、穏やかであるように。それを実現する為の力を、ウルバスはまだ持っている。
「災いなんて払いのけるよ、必ずね」
「? はい」
守る者の出来たウルバスはにっこりと笑い、アリアの頭を一つ撫でた。
戻ってみると、とにかく屋敷中が慌ただしく、メイドも従者も執事までもがバタバタ走り回っている状態だった。
「あの、もしかしてこれ……」
「あー、多分?」
呆然としているアリアにウルバスも返す。
そのうちに執事長がこちらへと駆けてきた。
「アリアお嬢様! お出迎えが遅れまして」
「そんな事はいいの。それより、もしかして……」
「はい、メロディ様の陣痛が始まりまして」
予想通りの展開にウルバスはなんとも居場所のない感じがした。今日はここに泊まる予定ではあったが、この様子では見合わせたほうがいいかもしれない。結婚を前提としたお付き合いではあるが、これは間違いなく家族間の大事な時だ。居ていいものか困る。
だが、隣のアリアはまるで我が事のようにオロオロし始めた。
「どうしましょう! あの、義姉様はどのような」
「それが、陣痛が始まってからかれこれ六時間が経つのですが、進みが遅いようで。初産ですので時間はかかると言われておりましたが、皆心配で」
「そんな! あっ、でもその、どのくらい時間がかかるのでしょう?」
「それが私も遙か昔の記憶で、全く覚えておりませんで」
……ツッコんだほうがいいのかな?
なんだかちょっと場の雰囲気にそぐわないけれど目の前の二人が面白くてたまらない。でもまずは落ち着いてもらわなければ。
「アリアちゃん、落ち着いて。ヨシュア先生も産婆さんもいるんだから、専門家に任せておけばとりあえず大丈夫だよ」
「でも、あの。なんだかとても落ち着かなくて」
そわそわしたりオロオロしたりだ。さて、どうしたものか。
「アーサー様はどうしていますか?」
「少し離れたお部屋にずっと待機しておりますが、落ち着かない様子で」
「メロディ嬢のご両親は?」
「同じくでございます」
「全滅か……」
いっそ面白い。これにファウストが加わると更に絵面が面白いと思ってしまったウルバスは、その妄想を必死に打ち消した。
「助産の先生が最悪切る事も考えなければと仰るので、今ハムレット先生に相談に行っております」
「そこまでなのかい?」
「私には判断がつきませんが」
そんな事を玄関先で話していると、外で馬車の止まる音がする。そして直ぐにハムレットが屋敷へと入ってきた。
「あれ、ウルバス? あぁ、アリアのお供だったのか」
「お久しぶりです、ハムレットさん」
緊急事態なのかもしれないが、全くもって落ち着いているハムレットが屋敷内のドタバタに溜息をつく。その後ろからは診察鞄を持ったチェルルが、やっぱり苦笑しながらついてきた。
「ウルバス様、お久しぶり」
「やぁ、チェルル。先生の助手が板についてきたね」
「本当? けっこう嬉しいよ」
にっこり笑ったチェルルは以前よりもずっと自然で毒がない。今がとても幸せなんだと察せられる笑顔だった。
「それにしても、凄い荷物だね」
チェルルが途中まで下ろしたのだろう荷物は木箱で二つある。しかも、どれも重そうだ。
「帝王切開の可能性ありとなると必要な道具や薬が沢山ある。あぁ、そうだ。ウルバス、暇なら手伝ってよ。力のある奴が欲しい」
「俺は構わないけれど」
「じゃ、そこの荷物運び込んでおいて」
そう言うとハムレットは案内に従ってメロディのいるだろう部屋へと向かっていく。ウルバスは言われたとおり木箱を一遍に抱えてついていったが、予想よりもずっと重たかった。
「アリアちゃんはアーサー様達と一緒にいてね。俺は手伝えるみたいだから、手伝ってくる」
「あの、私も」
「力仕事だから大丈夫だよ。疲れて具合が悪くなったりしたら俺が心配でたまらないから、ちゃんと休んで待っていてね」
やんわりと微笑んだウルバスに、アリアは不安そうにしながらも頷いてくれた。
ハムレットの後について屋敷の一番端の部屋に入ると、ベッドの上で体を丸くし、苦しげに息を吐いているメロディと、その背中をさすりながら不安そうにしているルカ。そしてお腹に聴診器をあてながら女性と話しているヨシュアがいた。
「ハムレット先生」
「やぁ。大体話は聞いたけれど、今はどんな状態?」
コートをチェルルに預け、綺麗な水で丁寧に手を隅々まで洗ったハムレットが近づいていく。指定された部屋の隅に箱を置いたウルバスは緊張感漂う様子を見ていた。
「私が説明します。産婆のアリオーネと申します」
「よろしく」
「こちらこそ。メロディさんの陣痛が始まったのは今日の十一時頃。弱いながらも間隔が整っていたので来たのですが、そこからなかなか進みません」
「産道は?」
「三センチ程度です」
話を聞き、ハムレットは真剣な顔をする。そしてメロディの側へと向かい、とても穏やかな笑みを見せた。
「初めまして、ハムレットと言います。今から少し診させてもらいます。少し痛いかもしれないけれど、気持ちを楽に、息を深く吐いて下さいね」
そう言うと彼はメロディの足を思い切り広げ、あろうことか指を深く突っ込んだように見えた。
「んぅぅ!!」
苦悶に満ちた声が聞こえて、ルカが心配そうな顔をして手を握っている。にもかかわらず、ハムレットは結構長いあいだ指を入れたままだ。
「衝撃映像だよね」
「チェルル」
「俺も二回くらい立ち会ったけど、衝撃映像の連発だよ」
それでも落ち着いているチェルルは、本当に医者の助手という貫禄が出てきた。
「三センチ。しかも硬くなってる。お通じは順調にある?」
指を抜いて綺麗に洗いながら、ハムレットは問いかけている。それにメロディは首を横に微かに振った。
「今のうちに綺麗にしておいた方がいいかな。進んじゃうと破水の危険もあるし」
ハムレットはチェルルに指示を出し、チェルルは早速 ウルバスが持ってきた箱の中から何かを取り出す。一つは薬のようだが、もう一つはオリヴァーの部屋で見たことがある気がした。
「アリオーネさん、お手洗いはこの部屋から近い?」
「すぐそこです。水場の近くに部屋をお願いしたので」
「じゃあ、腸内洗浄をお願いします。こっちが薬、こっちがプラグです。薬を入れた直ぐにプラグで栓をして、最低でも十分は我慢させてください。この砂時計が十分です」
あれこれと荷物を持たせ、ルカにも「支えて連れて行ってあげて」と指示を出し、三人はゆっくりと部屋を出ていく。
それを見送ってから、ハムレットはパンと手を打った。
「今のうちにベッドの用意をするよ。ウルバス、もう一つの箱から布出して」
言われるがままに箱を開けると、そこには見慣れた布がベッドよりも一回り大きなサイズで三枚も入っていた。どうりで重いはずだ。
「帆布ですか?」
「流石だね。今あるシーツを全部剥がして、三枚重ねて敷いて。さもないと、ベッドが使い物にならなくなるから」
「?」
「血みどろになるってことだよ」
首を傾げながらもテキパキと行動はする。何せ普段扱い慣れた布だ。いとも簡単に指示通りに出来た。
「そしたら箱の中のロープをベッドヘッドの真ん中に結んでくれる? 簡単に外れないように強い結び方で」
「何故?」
「出産にはとても力がいる。そういう時に、握るものがあると効率よく力がこめられるんだ」
つまりこのロープを握ってお産をするらしい。
これもテキパキとこなす。何せ普段やっている基本中の基本だ。どんな大嵐だって乗り越えてきた船乗りのロープ結びなのだから、簡単にはほどけたりしない。
「うん、完璧」
その出来に、ハムレットも満足そうだ。
「チェルル、今のうちに厨房に行って一口サイズのサンドイッチお願いしてきて」
「了解、ジャムだね」
「それと、待機してる人達の軽食もあると嬉しい」
「頼んでくる」
チェルルは分かっているように出ていく。これにもウルバスは首を傾げた。
「お産を進めるには糖分と水分が必要なんだ。だから、甘い物を食べてもらう。これで少しでも進みが早くなれば今日の深夜にでも生まれるよ。そうならなかったら長期戦。彼女の体力とか赤ん坊の状態によっては切る事になるけれど、そうなると回復も遅いし他の危険も出てくる。だからできれば自然分娩にしたい」
なんだかとてもテキパキとしている。これが医者というものか。
幸いウルバスはハムレットの世話になったことはない。切れ者で腕の良い鬼才。それを感じるものだった。
「ところでヨシュア先生はお産の経験は?」
「それが、一度もないんだ。正直どうしていいものか分からず、アリオーネ氏の補助くらいしかできていない」
「分かった。ではヨシュア先生はアリオーネさんの助手を務めてくれ。長丁場になれば一人でやりきるのは少し大変だから交代制にしよう。ウルバス、今日はここに泊まるのかい?」
「その予定でしたが」
「僕の補助になってほしい。案外力仕事が多いから、居てくれると助かる」
「? 俺で手伝えるならかまわないけれど」
そんなに力のいることがあるのだろうか。何せ経験の無いことなので分からないが、必要というなら手は貸す。
何より今メロディに何かあれば、その後のシュトライザー家に響く。彼女には健康的に子を産んでもらい、元気で過ごしてもらわなければ。
そんなこんなと話していると、げっそりとしたメロディが戻ってくる。だが心なしか、とてもスッキリとした顔をしていた。
最初はアリオーネとヨシュアがつくことになり、異変があったらハムレットに知らせる事になった。メロディは小さな甘いサンドイッチを、蜂蜜を入れた紅茶と一緒に少しずつ食べている。
が、その間にも陣痛が進んでいるのか、時折辛そうな声を上げていた。
今はアリアの側で少しの時間を過ごしているが、彼女はとても不安そうだ。
「大丈夫でしょうか、あんなに苦しそうな声で」
「平気、病気じゃないんだし」
「でも、お産は命がけってききます先生」
仮眠用の部屋にはチェルルとハムレットもいて、今のうちにと簡単な食事をしている。
「確かに命がけだけど」
「じゃあ!」
「あのね、僕がいるんだよ? 絶対に母子ともに元気な状態にしてあげるから、心配しないの」
他の医者がこれを言っても「本当か?」という疑念をウルバスは持つだろう。だがこの人とエリオットが言うときには、もの凄く安心できる。それだけこの人は騎士団の危機を救ってくれたのだ。
「それより、アリアも寝ておきなよ。夜中に生まれるとなれば多分声で寝ていられないから」
「今の時点で寝られるきがしません」
今も声が聞こえるが、少し離れているせいか意識をしなければどうにかなる。
だが心配性のアリアはそうもいかないようだ。
「君が体調崩すと人手を割かないといけないんだから、しっかりしてよ」
「それは分かっているつもりなのですが」
「まったく。あっ、そうだ! それならそこのデカい抱き枕にしがみついて寝なよ。夜中に交代だから、それまで寝られるよ」
にやりと意地悪に笑うハムレットが誰を指して抱き枕と言ったのかなんて明白だ。アリアも当然気づいただろう、途端に顔を真っ赤にした。
「あの、そんな! あのぉ!」
「恋人なのに、添い寝もしたことないの?」
「ありません!!」
あーぁ、からかわれてる。
こんな初心な反応をしたら、余計にこの人を楽しませるばかりなのに。
それならと、ウルバスはちょっと考えてアリアの手を引いた。
「そういうことなら、先に俺は休みます。こっちだよ、アリアちゃん」
「え? えぇ! ちょ、ウルバスさん!!」
立ち上がったウルバスはアリアの手を引いたまま、空いているベッドに潜り込む。客室でツインベッドの片方をウルバスとアリアが占拠した。
「うわぁ、本当にやった」
「先生がからかうからでしょ。ほら、俺達も食べて寝よう」
あっちはあっちで仲良く二人で寝るつもりなのだろう。それならお互い様だ。
「あの、ウルバスさん」
「何もしないから、安心して」
ふわっと笑い、ウルバスは目を閉じる。腕の中が温かくて、とても良く眠れそうだ。
「とても温かいね」
「そう、ですね」
小さく身じろぐアリアに笑いながら、ウルバスはそのままストンと眠りに落ちた。
引き継ぎを兼ねて少し早めの深夜十一時に起床したウルバスとハムレット、チェルルはメロディの居る部屋へと向かう。
中に居たヨシュアとアリオーネは、三人を見るとほっとしたようだった。
「どう?」
「七センチまで開きました」
「順調だね! これなら今夜中には生まれるかな」
その分、辛そうな声が時折聞こえる。側にいるルカもとても心配そうだ。
「じゃ、ここで交代。ルカも寝ていいよ」
「でも!」
「ルカ、君はお産に立ち会わない方がいい。けっこうショッキングだから」
真顔で言うハムレットに、ルカはそれでも何か言いたげな顔をしている。だが、ハムレットは更に続けた。
「お産は男性にはかなりグロテスクというか、ショックの大きな光景だよ。医者でもお産は嫌だという男性医師は多い。若い夫婦だとその光景にショックを受けて、セックスレスになる人もいるみたいだし」
「ですが」
「今回はやめておきなよ。それに奥さんだって、あられもない姿を旦那に見せるのは後々恥ずかしいって言う人もいるよ」
ルカはメロディを見て、メロディは額に汗を浮かべながら頷く。それで、諦めがついたのだろう。
「……わかりました」
「生まれたら直ぐに知らせる。アリオーネさんとヨシュア先生はどうする?」
「私はこの部屋で仮眠を取らせてもらいます」
「俺はルカの側にいる。その……」
「無理しなくていいよ。さっきも言った通り、男にはショッキングだから」
申し訳なさそうな顔をして、ヨシュアはルカと一緒に退室していった。
「それで、俺には拒否権ないんだね?」
「ないね。まずは水を沢山運んで湧かして冷まして。産湯を先に作っておきたいし」
「確かに、力仕事だね」
幸い暖炉に火がある。そこに大きめの鍋を借りてきて何往復もして水を入れていく。
その間にもメロディの声は逼迫したものになっていった。
「踏ん張らないで」
先ほどとは全く違う優しい声で語りかけるハムレットがメロディの側に座る。そして丸まっている腰の辺りを強く撫でた。
「痛み出したら深く短く息を吐いて、今僕が摩っている辺りに痛みを流すイメージをしてごらん」
「は…………はぃぃ!」
「そうそう、上手。苦しかったら少し声を出してもいいよ」
「ふっ、ふっ……ふぅぅ!」
「上手。これで進んでいくからね」
しっかりと腰を摩りながら時計を見て時間を計る彼は、とても優しく映る。ランバートの話では解剖好きのマットサイエンティストらしいのだが。
「チェルルは産着とかも用意しておいて。綺麗な布とタオルも。あと、桶と秤」
「そんなのも必要なのかい?」
「出血の量が多ければ、最悪輸血もしなきゃいけない。急激に血圧が変化することもあるからそれも注意しないと。とにかく、何が起こっても対処できるようにしないといけないんだ」
チェルルはテキパキと動いている。それを手伝ったりしながら二時間ほどが経った時、メロディの様子は更に逼迫したものになっていた。
「九センチ。これなら」
ハムレットが少し明るい声で言った直後、メロディが唸るような声を上げる。それと同時に、側に控えていたアリオーネが「破水した」と動き出した。
「まだですよ、メロディさん!」
「む……無理ですぅぅ!」
力が入るのか、仰向けのまま丸まるように体が収縮している。その側でアリオーネはテキパキと動き、メロディにロープを握らせ、足を大きく開かせた。
「ウルバス、足が閉じないようにしっかり開いたまま固定して!」
「え! あっ、うん!」
もの凄く気の引ける役割が与えられたものだ。シーツを足元にかけていて直接は見えないが、それでも何をしているのかは分かる距離。若い女性を大股開かせたままで押さえて固定なんて、どうしたらいいものか。
「大分羊水が出てきてますね」
「でも頭もちゃんと見えてきた。それに、もうすぐ全開だ」
足の間を注視する二人の医者を目の前に、背後ではもの凄く切迫した声と息づかい。もの凄いカオスだ。
「力が入る瞬間にしっかり息を吐ききって、自分のおへそを見る感じで。もう降りてきてるから大丈夫だよ」
言われた通りにメロディはしているのだろう。だが、ハムレットの表情を見るに思うようにはいっていないようだった。
「なかなか子宮口を出られない。時間がかかると辛いな」
「鉗子は?」
「あるけれど、できれば使いたくない。母胎や胎児を傷つける可能性もすてきれない」
そう言うと、ハムレットは念入りに手を洗い、そこに薄いシルクの長手袋を嵌める。そして、メロディがいきむのに合わせて腕を突っ込んだ。
「いっ! たい!! 痛い!」
「一気に出すからしっかりそのままもう少し力入れて!」
一気に、出す?
腕を入れっぱなしの彼が何をしているのか想像がつかないが、メロディの苦しみようは尋常ではなく、それでも続けて息を吐き力を込めている。なるほど、硬くロープを結ぶ必要があるわけだ。
「もう、少し…………」
「ふぅぅぅぅぅぅぅぅ!」
「! 出た!」
彼がそう歓喜の声を上げた次の瞬間、まるで滑り出るように赤ん坊が彼の手の中に収まるのを見た。
もっと、小さく頼りないものかと思ったが意外と大きい。血まみれの赤ん坊の鼻や口を綺麗な布で拭い、口の中も同じようにすると、赤ん坊は大きく元気な声で泣いた。
「とりあえず良かった。チェルル、時間は?」
「午前二時十分」
「書き留めておいて。あと、はさみ」
ハムレットが赤ん坊のへその緒を切り、そこをギュッと結ぶ。アリオーネがその子を受け取って産湯につけて綺麗に洗っている。
そして疲れ果てたメロディは力の抜けた顔で笑いながら涙を流していた。
「お疲れ様、頑張ったね」
「はい……」
「全身辛いと思うけれど、もう少し頑張ってね」
ハムレットがお腹を軽く解すように押す。それだけでメロディは、今度はとてもはっきりとした声で「痛い!」を連発している。ただ、先ほどまでの異様な緊張感や切迫感はもうなかった。
「胎盤を綺麗に剥がさないと産後に響くからね。ほら、もう一度頑張って踏ん張って」
言われた通りにすると、赤黒い、そこそこの大きさの塊が出てくる。そして帆布の上に更に重ねていたらしいタオルは全部血の海だ。
「よし、綺麗な形。チェルル、血の量計っておいて」
「はーい」
持っている桶に汚れたタオルやらを入れたチェルルが、慣れたように計っている。その間にハムレットは糸と針を取り出して、麻酔も何もせずに縫い始めている。
「痛そう」
「お産で麻痺してるから平気。メロディ、痛い?」
「チクチクしますけれど、平気です」
平気、なんだ……。
「出血は五百ってところです」
「少し多いけれど、輸血まではいらないね」
「赤ん坊は三三〇〇グラムです」
「大きいね! どうりで大変だったわけだ。立派な男の子だよ」
途端に安堵するメロディの所に、綺麗になった赤ん坊が産着を着せられて戻ってくる。それを抱きしめる彼女はもう母親の顔をしているようだ。
自分も、生まれた瞬間はこんな感じだったのだろうか?
少なくとも、母が望んだ子ではなかっただろう。それでも、生まれた瞬間くらいはこんなふうに、優しく笑いかけてくれたのだろうか。
「診察終わったら乳母の所に。メロディは今日一日寝てること」
「はい」
「夕方くらいには一度連れてきて、授乳させてみて。出るようならそのまま飲ませてあげてね」
「はい」
縫い終わったのだろうハムレットがちょんと糸を切る。そして思い切り体を伸ばした。
「さて、今夜は僕がここにいるから、何か体調に変化があったり辛い部分があったら教えて」
まだ人がバタバタと動くなか、ハムレットはソファーに横になってしまう。放置されたウルバスはどうしたらいいものか。
「あっ、ウルバスもお疲れ。適当に寝ていいよ」
「あー、はい」
そう言われても、なんだか眠れる気がしない。とりあえずその足でアリアの寝る部屋に戻ったウルバスは、再び隣に寝転ぶ。そして、眠る彼女の顔を見ながらまた少し、モヤモヤと考えるのだった。
◇◆◇
翌日、眠そうなハムレットを捕まえたウルバスは別室で二人きりになった。正直ハムレットは眠そうであまり機嫌はよくなさそうだが、真剣な話だと分かると黙って構えてくれた。
「それで、話ってなに?」
「アリアちゃんの事です。彼女は、女性としての機能は正常ですよね?」
「生殖能力ってこと? 正常だよ」
「では、彼女に万が一子供ができた場合、彼女の体はどうなりますか?」
そこまで言うと、ハムレットも真剣な顔をした。
昨夜の様子を見て、思ったのだ。万が一の場合、彼女はきっとこんなの耐えられないだろうと。それほどに鬼気迫るものがあり、壮絶だった。人が人を産むということの素晴らしさを感じたと同時に、これがアリアだと思ったら怖くなった。
勿論ウルバスは自分の子供など望んでいない。だがウルバスも男で、生殖能力としては正常。夫婦の時間を今後取ることになって、万が一があっては困る。
「耐えられない。一番良くて子供は助かってもアリアは無理という可能性が高い。最悪、子供も彼女も亡くなる可能性だってかなりの確率になる。だからといって堕胎だって負担になる」
「ですよね」
「夫婦の時間とか、やっぱり考えるわけ?」
「一応は。貴方だってチェルルとなさるでしょ?」
「そうだね、分かる。それで? 君の考えを聞こうか」
やはり、想像通りの返答だ。ウルバスは眠れぬ間に考えていたことを、ハムレットに明かした。
「彼女に負担はかけたくありません。俺の方で、生殖能力をなくす事は可能ですか?」
万が一を潰したい。最初から子供なんて考えていないのだからそれでいい。
だがハムレットの方は腕を組んで難色を示した。
「去勢。つまり玉を取ると、君の若さだと色々障害がある。睾丸っていうのは精子作るばかりじゃなく、男性を男性たらしめる物質も作っている。低下すると筋力が落ちて肥満になるし、精神的には不眠や不安、倦怠感、気分の沈み込みという症状が出る。更には勃起不全だね」
「それは困ります。騎士として役に立たなくなるのは困ります」
「そればかりじゃなく、シュトライザーを継ぐにしても胆力が無くなるのは問題が多い。だからおすすめしない」
では、どうしろと言うのか。動物の腸などを使った避妊具はあるにはあるが、破けたなどの事例をよくきく。夫婦の時間を作るなと言われればそれまでだし、ウルバスの方はいくらでも我慢する。だがアリアは若く、彼女の方から求められれば無下にできない。
「……一つ、最近東国で確立されつつある方法がある」
「え?」
腕を組んだまま、ハムレットはゆっくりと話し出した。
「睾丸と、精子を貯蔵しておく精嚢線を繋ぐ管を切って、縛る方法。これだと睾丸は取らないから胆力はそのままだし、精液は普通に作られるから勃起もする。ただ、その精液に精子が混ざらないようにするんだ」
「そんな事が可能なのかい?」
「東国で確立されかけているもので、帝国じゃ事例がない。僕もしたことがない。だから失敗する可能性もあるし、デメリットもある」
「例えば?」
「まずは、カットしても再生する可能性は残る。経過観察と検査が必要だ。そして当然だけれど、子供はできない。途中で望んでも無理」
「構わないよ、子供はいらない。経過観察もしてもらったほうが安心だ」
それでアリアを護れるなら、負担はこちらが負う。
「……分かった。僕の方も解剖なんかでちょっとシミュレーションしておく」
「有難うございます」
「その時の費用はいらない。昨日のお礼ってことで」
「助かります」
苦笑したウルバスにしっかりとハムレットは頷き、話は終わりとばかりに大きな欠伸の後で伸びをした。
「さーて、話はお終い。僕はこれで失礼するよ」
「はい、お疲れ様です。あと、この件についてはアリアちゃんには秘密で」
「勿論言わないよ」
約束してくれて、ハムレットは部屋を出て行く。今日の夕刻にはヒッテルスバッハ本邸に移ると言っていた。
ウルバスも部屋を出る。するとそこからしばらくでアリアに出会った。
「あっ、ウルバスさん!」
「どうしたの? なんだか興奮気味だけれど」
「はい! 先ほど赤ちゃんに会わせてもらいました。とても小さくて。それで、メロディ義姉様とも少しだけ会えると言われたので、お祝いを渡してきたんです」
「喜んでもらえた?」
「はい! お守りとして持たせると言ってくれました」
彼女が選んだのはターコイズ。魔除けや災難よけの宝石なのだと、昨日の女性が言っていた。
願わくば、災いなどありませんように。この国が、穏やかであるように。それを実現する為の力を、ウルバスはまだ持っている。
「災いなんて払いのけるよ、必ずね」
「? はい」
守る者の出来たウルバスはにっこりと笑い、アリアの頭を一つ撫でた。
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