178 / 217
19章:建国祭ラブステップ
20話:ご主人様にはなれません1(ネイサン×イーデン)
しおりを挟む
まだ早い時間、暗府が持つ屋敷からはスコーンを焼くいい匂いと紅茶の香りが漂ってくる。
青年貴族の格好をしたイーデンは現在、モノクルを嵌めた執事状態のネイサンを前に戸惑いつつも、彼の遊びにつきあっていた。
「今朝はスコーンをご用意いたしました。ブルーベリージャムとクリームチーズを付けてお召し上がりください」
「あぁ」
「紅茶はアッサムをミルクで」
カチャリッという小さな音がして、目の前に焼きたてのスコーンとブルーベリージャム、クリームチーズが添えられた皿が置かれる。側には美味しそうな紅茶もある。
小さなサラダボール、スープは野菜とベーコンもついている。
「どうぞ、お召し上がりください」
「あぁ、頂くよ」
恭しい態度で頭を下げたネイサンが一歩下がる。視線は常にイーデンを見つめていて、雰囲気は楽しげ。けれどその視線があるととても食べづらいのだ。
どうしてこうなったのか。それは暗府の余興の話が出始めた頃からだった。
◇◆◇
「暗府はミスコン出られないなんて、不公平です」
不満そうに文句を言うラウルの側で、イーデンは苦笑を漏らした。
「仕方がないよ、本職がアマチュアに混じっちゃ困るでしょ」
「ランバート出るのに」
「それについてはピンチヒッターだったんだから」
苦笑するネイサンもラウルを宥めている。そして、困った子を見るような顔をした。
確かに豪華すぎる景品に目がくらんだが、ネイサンの言う事が正論のように思う。ラウルがこんなにも言う理由は、どうやら年末の予定が狂った事にあるらしい。
「まさか予約が全然取れないなんて。シウスと一緒にのんびりしたかったな」
「近場は人気だからね~。貸別荘とかは?」
「それもダメでした。近郊の別荘地は殆ど貴族の持ち家だし、そもそも貸別荘とか少ないし」
「だな。移動に一日かかっちゃ新年の連休あっという間におわっちまうし」
「そうなんだ。シウス、休み取れないし」
団長とお付き合いをするのはこういう面が大変そうだ。イーデンはそんな事を思って、ふとネイサンを見た。
この人も何をしているのか謎なのに忙しい。気がついたらいないし、気づいたらいる。どこに行くとか、何をするとか、そういうことを恋人にも言わない人だ。
とはいえもう年末。雪も深くなるこの季節は暗府といえど動きは控える。現在進行形の仕事以外はもうほぼ休みに入ったようなものだ。
そこにクラウルが入って来て、何やら溜息をついた。
「どうしました、ボス?」
「あぁ……年末のパーティーで余興が欲しいと言われてな」
「余興?」
ネイサンが綺麗に片眉を上げる。そしてこの場にいる面々も顔を見合わせた。
年末のパーティーは主に騎兵府が中心となって行われる無礼講パーティーだ。宰相府や近衛府などは不参加も多いが、暗府は案外出る人が多い。
「俺も今年は参加予定だから、何かと言われれば協力はするが」
「嫁ちゃんにいい格好見せたいんでしょ、ボス」
ニヤリとカーティスが笑うのに、クラウルは少し恥ずかしそうな顔をした。
同期のゼロスを恋人にしているクラウルは、雰囲気が柔らかくなった。勿論仕事ではない場面でだ。執務室や暗府の控え室に詰める事が多いから、そういう顔を見る事も多くなった。
「ところで、ラウルは一体何を嘆いているんだ?」
「あぁ、ミスコンに出たかったって」
「あれか。今年は景品が豪華で参加者もそれなりに出ていると聞くな」
「暗府は出られません」
「当たり前だ、それを含めて俺達の武器だ。プロがアマと張り合うな」
「クラウル様までそんな事言わないでください。理解はしているんです、納得できてないだけで」
ブーブー文句を言うラウルを皆が笑う。その中で一人、ネイサンだけが何かを考えてポンと手を打った。
「では、余興にしましょう」
「は?」
「余興です。女形は女装を、男役は男装をしてステージに出ましょう。暗府のお仕事紹介にもなりますし、ラウルはシウス様の気を引けるでしょ」
「……うん!」
少し考え、ラウルはガタンと立ち上がって目を輝かせている。
「見世物じゃ……」
「嫁ちゃんに、いつもとは違うドレスアップした姿を見せたいと思いませんか?」
「…………」
……考えている。
イーデンはネイサンを見た。その視線に、ネイサンがニヤリと笑う。この顔はこの人にも何か思惑があることなんだと分かった。
かくして色んな人間が相手に見せびらかしたいという私欲で、余興は貴族の結婚式を想定したコスプレとなったのである。
◇◆◇
ネイサンがしたかったのは、執事と主人を想定した遊びだったようだ。当日、イーデンは花嫁の侍女役だったが今は男の格好で若い貴族の青年状態。まぁ、この程度は簡単に揃えられる。
執事のネイサンはまんまあの時の格好だ。わざわざ暗府の隠れ家まで整えて今いる。
まぁ、更に言えばこれは役になりきる演技力の訓練とも取れる。だからこそ今も気が抜けないのだ。
ナプキンで口元を拭いテーブルに置くと、すかさずネイサンが椅子を引いてくれる。立ち上がり、この後どうしようかと思っていると恭しく礼をしたネイサンが口を開いた。
「よろしければ、この後ゲームなどいたしませんか、イーデン様?」
「ゲーム?」
既に嫌な予感しかない。ゲームと名の付くもので未だかつて勝てた例しがない。
が、ネイサンは譲る気はないのだろう。執事だというのに随分鋭く、そして有無を言わせぬ目をしている。
「ゲームとは、なんだ?」
「チェスでも、カードでも」
「……分かった」
「勝った者には、何か褒美を頂きたいのですが」
「……ものによる」
一回負けるごとにとんでもない事を要求されては身がもたない。絶倫に近いこの人はどれだけ抱いても余裕なのだろうが、受け入れるイーデンの方はそうではない。新年早々腹上死なんてまっぴらごめんだ。
分かっているのか、ネイサンはとても嬉しそうに目を細めて笑う。絶対に何かある目に、イーデンは早まったかと既に後悔し始めていた。
ゲームは最初はチェス。だが、既に負けが見えて投了した。指導的なチェスではなく、わりと叩き潰す感じでこられたのが意外だった。
「俺の勝ちですね。では、愛していると貴方の言葉で聞きたいのですが」
「それは、強要して嬉しいのか?」
「言って欲しいと願っただけで、貴方の言葉でお願いします」
凄くいい顔で笑っている。机に両肘をついて組んだ手に顎を乗せて待てをしている姿なんて、レアなのに。
妙に、緊張してきた。普段、あまり愛の言葉は囁かない。言わなくても伝わっていると感じるし、この人からも伝わっている。何より恥ずかしいんだ、改めては。
心臓が少し加速する感じがする。耳が熱くなる。目を、合わせていられない。
「……愛している、ネイサン」
「それだけ?」
「あっ、いや…………緊張してしまって、言葉が上手く出てこないんだ」
正直な事を口にすると、目の前で立ち上がる音。それにハッとした時には、ネイサンの顔がとても近くにあった。
「お可愛らしいご主人様だ、こんなに顔を赤くして。まるで林檎のよう」
「あの、ネイサ……」
「このような貴方も好ましいのですが、貴方を愛する下僕は時に甘い甘い褒美が欲しくなるのです。貴方の心が離れていないと、確かめられる鎖が欲しいのですよ」
唇が、触れてしまいそう。心臓が壊れてしまいそう。ドキドキして、今度は逆に目が離せない。唇が近づいて、イーデンは目を瞑った。だが触れたのは、額だった。
「では、次はポーカーなどいかがでしょう?」
「あ……あぁ」
肩すかし? 意地悪? いや、これは焦らされているだけ。駆け引きだ。どちらが音を上げるかを待っている。
そうなると負けたくないのもまた確か。結末も少し見えているけれど、だからといって今から白旗なんて男じゃない。
せめて一勝! これが目標だ。
にもかかわらず、また負ける。圧倒的に負けた。
「では、キスをしていただけますか?」
「……」
どこにと、あえて言わなかったな。
意趣返しで額にしてもいい。でも、年下のイーデンからとなるとちょっと……。頬はあまりに他人行儀。
近づいて、ドキドキしながら首に手を回して、唇に触れた。舌を交えなかったのがせめてもの抵抗だ。
離れた、その瞬間に見せるネイサンの嬉しそうな顔にドキリとする。そういえば、こちらからキスは最近していなかった。
「では、次は何をいたしましょう」
カードを切りながら、ネイサンはまだまだ要求があるのか止める気配がなかった。
結局夕方を過ぎてもネイサンには一勝もできていない。その間に、数々の恥ずかしい行為を要求、もしくは容認した。
「あ……ネイサンそれ嫌だっ」
靴を脱がされ、靴下も脱がされ、ネイサンはそこに跪いてキスをしていく。これは嫌なんだ、この人を侮辱するみたいで。自分が、高慢な人間になったようで。
でもネイサンは時々したいと言う。足の甲に唇が触れて、舌が触れる。足の指にも。
「っ!」
僅かにゾクリと背に走った痺れは十分に快楽と言える。視覚と感覚の両方から犯されて、イーデンは体を震わせた。
「綺麗な足をなさっていますよね」
「お風呂がまだだから、嫌だっ」
「むしろご褒美ですが」
「ネイサン!」
手がふくらはぎの辺りを撫で、服の上から唇が触れる。陶酔する視線を見下ろして、イーデンは制止を要求した。
「嫌です、これは。俺は貴方にそんな事してほしくない」
「愛しているという証ですが」
「服従の証です!」
貴方に服従されたいなんて思わないんだから、好まないのは当然なのに。
ジッと見上げる瞳が、寂しげに伏せられる。そうして立ち上がったネイサンは丁寧に靴を履かせてくれて、ゲームを片付けてしまった。
「夕食にいたしましょう」
「……はい」
怒らせてしまっただろうか。それにしてもどうして突然、こんな事をしたがるのか。
戸惑うイーデンを誘うように、ネイサンは食堂の方へと案内し始めていた。
青年貴族の格好をしたイーデンは現在、モノクルを嵌めた執事状態のネイサンを前に戸惑いつつも、彼の遊びにつきあっていた。
「今朝はスコーンをご用意いたしました。ブルーベリージャムとクリームチーズを付けてお召し上がりください」
「あぁ」
「紅茶はアッサムをミルクで」
カチャリッという小さな音がして、目の前に焼きたてのスコーンとブルーベリージャム、クリームチーズが添えられた皿が置かれる。側には美味しそうな紅茶もある。
小さなサラダボール、スープは野菜とベーコンもついている。
「どうぞ、お召し上がりください」
「あぁ、頂くよ」
恭しい態度で頭を下げたネイサンが一歩下がる。視線は常にイーデンを見つめていて、雰囲気は楽しげ。けれどその視線があるととても食べづらいのだ。
どうしてこうなったのか。それは暗府の余興の話が出始めた頃からだった。
◇◆◇
「暗府はミスコン出られないなんて、不公平です」
不満そうに文句を言うラウルの側で、イーデンは苦笑を漏らした。
「仕方がないよ、本職がアマチュアに混じっちゃ困るでしょ」
「ランバート出るのに」
「それについてはピンチヒッターだったんだから」
苦笑するネイサンもラウルを宥めている。そして、困った子を見るような顔をした。
確かに豪華すぎる景品に目がくらんだが、ネイサンの言う事が正論のように思う。ラウルがこんなにも言う理由は、どうやら年末の予定が狂った事にあるらしい。
「まさか予約が全然取れないなんて。シウスと一緒にのんびりしたかったな」
「近場は人気だからね~。貸別荘とかは?」
「それもダメでした。近郊の別荘地は殆ど貴族の持ち家だし、そもそも貸別荘とか少ないし」
「だな。移動に一日かかっちゃ新年の連休あっという間におわっちまうし」
「そうなんだ。シウス、休み取れないし」
団長とお付き合いをするのはこういう面が大変そうだ。イーデンはそんな事を思って、ふとネイサンを見た。
この人も何をしているのか謎なのに忙しい。気がついたらいないし、気づいたらいる。どこに行くとか、何をするとか、そういうことを恋人にも言わない人だ。
とはいえもう年末。雪も深くなるこの季節は暗府といえど動きは控える。現在進行形の仕事以外はもうほぼ休みに入ったようなものだ。
そこにクラウルが入って来て、何やら溜息をついた。
「どうしました、ボス?」
「あぁ……年末のパーティーで余興が欲しいと言われてな」
「余興?」
ネイサンが綺麗に片眉を上げる。そしてこの場にいる面々も顔を見合わせた。
年末のパーティーは主に騎兵府が中心となって行われる無礼講パーティーだ。宰相府や近衛府などは不参加も多いが、暗府は案外出る人が多い。
「俺も今年は参加予定だから、何かと言われれば協力はするが」
「嫁ちゃんにいい格好見せたいんでしょ、ボス」
ニヤリとカーティスが笑うのに、クラウルは少し恥ずかしそうな顔をした。
同期のゼロスを恋人にしているクラウルは、雰囲気が柔らかくなった。勿論仕事ではない場面でだ。執務室や暗府の控え室に詰める事が多いから、そういう顔を見る事も多くなった。
「ところで、ラウルは一体何を嘆いているんだ?」
「あぁ、ミスコンに出たかったって」
「あれか。今年は景品が豪華で参加者もそれなりに出ていると聞くな」
「暗府は出られません」
「当たり前だ、それを含めて俺達の武器だ。プロがアマと張り合うな」
「クラウル様までそんな事言わないでください。理解はしているんです、納得できてないだけで」
ブーブー文句を言うラウルを皆が笑う。その中で一人、ネイサンだけが何かを考えてポンと手を打った。
「では、余興にしましょう」
「は?」
「余興です。女形は女装を、男役は男装をしてステージに出ましょう。暗府のお仕事紹介にもなりますし、ラウルはシウス様の気を引けるでしょ」
「……うん!」
少し考え、ラウルはガタンと立ち上がって目を輝かせている。
「見世物じゃ……」
「嫁ちゃんに、いつもとは違うドレスアップした姿を見せたいと思いませんか?」
「…………」
……考えている。
イーデンはネイサンを見た。その視線に、ネイサンがニヤリと笑う。この顔はこの人にも何か思惑があることなんだと分かった。
かくして色んな人間が相手に見せびらかしたいという私欲で、余興は貴族の結婚式を想定したコスプレとなったのである。
◇◆◇
ネイサンがしたかったのは、執事と主人を想定した遊びだったようだ。当日、イーデンは花嫁の侍女役だったが今は男の格好で若い貴族の青年状態。まぁ、この程度は簡単に揃えられる。
執事のネイサンはまんまあの時の格好だ。わざわざ暗府の隠れ家まで整えて今いる。
まぁ、更に言えばこれは役になりきる演技力の訓練とも取れる。だからこそ今も気が抜けないのだ。
ナプキンで口元を拭いテーブルに置くと、すかさずネイサンが椅子を引いてくれる。立ち上がり、この後どうしようかと思っていると恭しく礼をしたネイサンが口を開いた。
「よろしければ、この後ゲームなどいたしませんか、イーデン様?」
「ゲーム?」
既に嫌な予感しかない。ゲームと名の付くもので未だかつて勝てた例しがない。
が、ネイサンは譲る気はないのだろう。執事だというのに随分鋭く、そして有無を言わせぬ目をしている。
「ゲームとは、なんだ?」
「チェスでも、カードでも」
「……分かった」
「勝った者には、何か褒美を頂きたいのですが」
「……ものによる」
一回負けるごとにとんでもない事を要求されては身がもたない。絶倫に近いこの人はどれだけ抱いても余裕なのだろうが、受け入れるイーデンの方はそうではない。新年早々腹上死なんてまっぴらごめんだ。
分かっているのか、ネイサンはとても嬉しそうに目を細めて笑う。絶対に何かある目に、イーデンは早まったかと既に後悔し始めていた。
ゲームは最初はチェス。だが、既に負けが見えて投了した。指導的なチェスではなく、わりと叩き潰す感じでこられたのが意外だった。
「俺の勝ちですね。では、愛していると貴方の言葉で聞きたいのですが」
「それは、強要して嬉しいのか?」
「言って欲しいと願っただけで、貴方の言葉でお願いします」
凄くいい顔で笑っている。机に両肘をついて組んだ手に顎を乗せて待てをしている姿なんて、レアなのに。
妙に、緊張してきた。普段、あまり愛の言葉は囁かない。言わなくても伝わっていると感じるし、この人からも伝わっている。何より恥ずかしいんだ、改めては。
心臓が少し加速する感じがする。耳が熱くなる。目を、合わせていられない。
「……愛している、ネイサン」
「それだけ?」
「あっ、いや…………緊張してしまって、言葉が上手く出てこないんだ」
正直な事を口にすると、目の前で立ち上がる音。それにハッとした時には、ネイサンの顔がとても近くにあった。
「お可愛らしいご主人様だ、こんなに顔を赤くして。まるで林檎のよう」
「あの、ネイサ……」
「このような貴方も好ましいのですが、貴方を愛する下僕は時に甘い甘い褒美が欲しくなるのです。貴方の心が離れていないと、確かめられる鎖が欲しいのですよ」
唇が、触れてしまいそう。心臓が壊れてしまいそう。ドキドキして、今度は逆に目が離せない。唇が近づいて、イーデンは目を瞑った。だが触れたのは、額だった。
「では、次はポーカーなどいかがでしょう?」
「あ……あぁ」
肩すかし? 意地悪? いや、これは焦らされているだけ。駆け引きだ。どちらが音を上げるかを待っている。
そうなると負けたくないのもまた確か。結末も少し見えているけれど、だからといって今から白旗なんて男じゃない。
せめて一勝! これが目標だ。
にもかかわらず、また負ける。圧倒的に負けた。
「では、キスをしていただけますか?」
「……」
どこにと、あえて言わなかったな。
意趣返しで額にしてもいい。でも、年下のイーデンからとなるとちょっと……。頬はあまりに他人行儀。
近づいて、ドキドキしながら首に手を回して、唇に触れた。舌を交えなかったのがせめてもの抵抗だ。
離れた、その瞬間に見せるネイサンの嬉しそうな顔にドキリとする。そういえば、こちらからキスは最近していなかった。
「では、次は何をいたしましょう」
カードを切りながら、ネイサンはまだまだ要求があるのか止める気配がなかった。
結局夕方を過ぎてもネイサンには一勝もできていない。その間に、数々の恥ずかしい行為を要求、もしくは容認した。
「あ……ネイサンそれ嫌だっ」
靴を脱がされ、靴下も脱がされ、ネイサンはそこに跪いてキスをしていく。これは嫌なんだ、この人を侮辱するみたいで。自分が、高慢な人間になったようで。
でもネイサンは時々したいと言う。足の甲に唇が触れて、舌が触れる。足の指にも。
「っ!」
僅かにゾクリと背に走った痺れは十分に快楽と言える。視覚と感覚の両方から犯されて、イーデンは体を震わせた。
「綺麗な足をなさっていますよね」
「お風呂がまだだから、嫌だっ」
「むしろご褒美ですが」
「ネイサン!」
手がふくらはぎの辺りを撫で、服の上から唇が触れる。陶酔する視線を見下ろして、イーデンは制止を要求した。
「嫌です、これは。俺は貴方にそんな事してほしくない」
「愛しているという証ですが」
「服従の証です!」
貴方に服従されたいなんて思わないんだから、好まないのは当然なのに。
ジッと見上げる瞳が、寂しげに伏せられる。そうして立ち上がったネイサンは丁寧に靴を履かせてくれて、ゲームを片付けてしまった。
「夕食にいたしましょう」
「……はい」
怒らせてしまっただろうか。それにしてもどうして突然、こんな事をしたがるのか。
戸惑うイーデンを誘うように、ネイサンは食堂の方へと案内し始めていた。
10
あなたにおすすめの小説
やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。
毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。
そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。
彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。
「これでやっと安心して退場できる」
これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。
目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。
「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」
その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。
「あなた……Ωになっていますよ」
「へ?」
そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て――
オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。
希少なΩだと隠して生きてきた薬師は、視察に来た冷徹なα騎士団長に一瞬で見抜かれ「お前は俺の番だ」と帝都に連れ去られてしまう
水凪しおん
BL
「君は、今日から俺のものだ」
辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。
ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。
「お前のその特異な力を、帝国のために使え」
強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。
しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。
運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。
偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】
ゆらり
BL
帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。
着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。
凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。
撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。
帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。
独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。
甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。
※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。
★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!
異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!
めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈
社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。
もらった能力は“全言語理解”と“回復力”!
……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈
キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん!
出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。
最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈
攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉
--------------------
※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!
異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします
み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。
わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!?
これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。
おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。
※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。
★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★
★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる