恋愛騎士物語4~孤独な騎士のヴァージンロード~

凪瀬夜霧

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最終章:最強騎士に愛されて

18話:十年後の君へ(再会編)

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 東の森を抜ける。ここまでの旅は順調そのものだ。
 十年の年月を経てもこの森はあまり変わらない。整備された道を通す事もなく、案内人のフェレスと子飼いの狼が側をいく。だが、世代交代はここも進んでいるだろう。
 マケは既に死んだが、沢山の子孫を残した。今フェレスに付き従っている二頭はマケの息子になる。そしてこの息子達にも既に子があるという。

「もう少しだぜ。王子さん、大丈夫か?」
「な……なんとか……」

 あまり旅慣れないリシャールはヨレヨレだ。まぁ、森の道は足元も悪く疲れやすい。それでもフェレスは歩きやすい道を案内しているし、適度に休憩もしている。ここだけは徒歩じゃなければ進めないのだから仕方がない。

「フェオは大丈夫?」
「平気だ。何度も通った道だしな。狼達とも顔見知りになった」

 隣を歩くフェオドールは涼しいものだ。流石に騎士団のように早足で重い荷物を持ってとなれば無理だが、今は軽装で荷物は先に王都に送ってある。身軽なものだ。

「フェオドールさんは案外逞しいよな」
「根性と我慢強さには少し自信があるんだよ」

 まぁ、五年も拷問みたいな嫌がらせに耐えてきたからね。
 とは、流石に口にしなかったが。

 そうして森を中を進み、休憩もしながら更に帝国側へ。お茶の時間が近いくらいでようやく東の街へと到着した。

 帝国の東の玄関口はこの十年で様子が変わった。全体的に明るくなったのだ。エルとの関係悪化で沈み込んだ空気が漂っていた場所は、その門を開放して活気に溢れている。
 今ではエルの作る工芸品や上質な毛皮を加工する工房、珍しい薬草を研究するための公的な施設などもある。エルはそれらに毛皮や薬草を卸して金品を受け取り、日用品を買ったり医者にかかったりしている。
 関所の門を境に静と動が分かれてはいるが、ちゃんと交流ができている。これがここの理想なんだと思える。

 狼たちを門よりも遠い場所で待機させたフェレスが、そのまま関所門へと向かっていく。大きな鉄柵の入口を潜った先で、ボリスは懐かしい仲間を見て思わず足を止めた。

「ゼロス、コンラッド」

 もう、一年くらい帰っていない。帰りたくないとかではなく、ずぼらだった。でもなんとなく帰らずにいたのだ。
 二人は腰に手を当てて苦笑し、ゼロスが代表で前に出る。そして代表のフェオドール、そして国賓のリシャールに深く頭を下げた。

「ようこそお越しくださいました、フェオドール王弟殿下、リシャール王太子殿下。ここからの護衛を務めさせていただきます、第一師団師団長のゼロスと申します」
「あぁ、ご苦労。だがゼロス、私とお前の間でそんな堅苦しい挨拶は抜きで構わない。知らぬ仲でもないからな」
「一応は形式というものがありまして、殿下。内輪では良いことも人目があると途端に厄介事に発展する事が多々あります」
「まぁ、そうか。少し寂しいものだな」

 そう言って苦笑するフェオドールが、気遣わしくボリスを見る。だが今は何も言わずに護衛隊長という立場を貫いた。
 ゼロスはその間にここまで案内してくれたフェレスへと向き直り、知人に向ける笑みを浮かべている。

「久しぶりです、フェレスさん」
「おう、ゼロス。お前もあまり変わらないな」
「フェレスさんこそ」
「まだ衰えるにゃ早いだろ。元気にしてるさ。セヴェルス……じゃないか。シウスは元気か?」
「えぇ、相変わらずです」
「そりゃ何よりだ。今度おちついたら遊びにこいと伝えてくれ」
「分かりました。有り難うございます」
「おう」

 ニッカと笑い、ボリスやフェオドールにも一言かけて森へと戻っていくフェレスを見送り、ゼロスは改めてフェオドールへと視線を向けた。

「では、砦へとご案内いたします。今日はこのまま砦へお泊まりいただき、明日からは馬車を用意しております」
「有り難う。私はまだ平気だが、リシャールがな」
「申し訳ありません、叔父上」

 ヘロヘロながらも苦笑したリシャールを伴い、ゼロスとコンラッドは砦へと案内を始める。
 ……少し、冷たいじゃないか。そりゃ、帰ってこなかったのは悪いと思っている。明確な理由もないし、言い訳もできない。でも少しくらい何かあってもいいだろうに。
 少し苛々するボリスの隣で、フェオドールはとても気遣わしい目をしていた。


 砦の中は更に雰囲気が違う。昔は怯えたようだったが、今は若い隊員が多く声が煩いくらいだ。そこで迎えてくれたのはまだ若い砦の首座だ。

「ようこそお越しくださいました。部屋の準備は整っておりますので、ご案内いたします」
「世話になる。リシャールは少し休むといい」
「はい、叔父上」
「私も少し休む」
「じゃあ俺も」
「ボリスはゼロス達と明日からの日程を確認してくれないか? 今日はここを出ないから」

 小さく笑みを見せてそう言われたら従うより他にない、仕事だ。それに多分、気を遣われた。こいつらと一緒になれるように。

「分かった。じゃあ、部屋の前まで」
「うん」
「俺達もそこまで同行します」

 ゼロス達も苦笑している。そうして、全員で部屋の前まで移動して確かに見届け、その後はゼロスとコンラッドと一緒に会議室へと移った。

 会議室ではあるが、小さな部屋だ。テーブルと椅子があるばかりの部屋に最後に入り、ドアを閉めた。そして、一つ溜息をついた。

「ねぇ、悪かったと思ってるってば。そんなに怒らないでよ」

 こいつらに他人行儀な顔をされるのが嫌だ。伝えても、ゼロスもコンラッドも背中を見せるだけ。でもその背が微かに震えている。

「もう! 性格悪いったら! 帰らなくて悪かったよ! ごめん!」

 帰れなかったんじゃなくて、帰らなくてもいいかなと思ってしまった。半年に一度くらいは帰ると言ったのに、ずぼらをしたのはボリスの方だ。分かってる、帰らなかったことを彼等は咎めているんじゃない。便りもなく約束を反故にしたことに心配したんだ。
 ガバリと頭を深く下げた。目の前には床がある。その肩に二人分の手がポンと軽く触れた。
 顔を上げる、その先には二人分の笑顔がある。おかしそうに少し意地悪に笑うゼロスと、困ったように笑うコンラッド。分かるよ、許されたんだって。

「ったく、怠け者」
「元気そうでよかったよ。みんなどうしてるのかって話してたんだ」

 ほら、昔と変わらない。だから時々帰る事を戸惑うんだ。フェオドールと共に生きて死ぬんだと決めたのに、ここはいつまでも心地よくボリスの場所を空けておいてくれる。今が幸せなのにふと、懐かしく居着いてしまいたくなるんだ。

「元気にしてるよ、大丈夫。俺、ちゃんとあっちでやってるからさ」

 これは、本当の事なんだよ。

 何にしても迎えられて、昔と変わらない距離感で座る。ルートの確認とか今更いらないからすっかり雑談だ。

「皆は元気?」
「あぁ。レイバンとドゥーがグリフィス様に挑んでたまにボコボコにされるくらいだ」
「あぁ、少し楽をさせたいってやつ? 第五って脳筋の集まりだからそういうの苦労するよね」
「実力主義って言ってやれよ、ボリス。まぁ、気持ちは分かるけれどな」

 ゼロスが呆れ、コンラッドがフォローする。これも相変わらずだ。

「お前はどうなんだ? アルヌール陛下とも上手くやってるのか?」
「相変わらずかな」
「フェオドール殿下が心配だと、以前手紙に書いてきたみたいだけれど」
「口喧嘩がエスカレートして殺傷事件にならないか心配してるの。でも、そんな事はないよ。割と二人で飲むしさ、その時には素直に話をしてるよ」

 おもにアルヌールが色々言ってくれるんだけれど。
 サシで飲むが、アルヌールは一定量を超えると話したがりになる。そこでよく「フェオが幸せそうで兄ちゃん安心した」というのだ。
 心配されていたのは知っている。自分でもそうだと思う。けれどそんな事もなく二人で寄り添っていられる。それを見て、アルヌールも少し安心したみたいなんだ。

「あんまり心配かけてやるなよ」
「分かってる。俺達の飲みの席にフェオも居ればいいのにさ、酒に弱くて真っ先に潰れるんだもん」
「確かに、あまり強そうじゃないね」
「式典のパーティーでもあまり飲ませないように気をつけないと。どこでも寝ちゃうからさ」
「ははっ、それはらしいな」
「こっちはヒヤヒヤするって」

 そんな所も可愛いけれど。

「ところで、式典は間に合うよね?」
「あぁ、間に合う。順調にいけば前夜祭の前日。同じ頃にジェームダルからの船も到着して城で合流になる。この日は城に到着したら陛下と食事をして、その後は就寝。翌日は前夜祭ということで城から教会までパレードがあり、教会で犠牲者の慰霊。その後は自由時間だ」
「自由時間多いな。街にも出られるってことだよね?」
「護衛はつくし、変装する事になるが」
「出るって言うだろうな。まぁ、仕方ないか。了解」

 護衛する方としては出来るだけ大人しくしておいてもらいたいが、久々の王都デートはそれなりに魅力的だ。

「リシャール殿下には近衛府の人間が護衛につく。今夜の夕食の時に紹介する」
「はいよ、了解」

 打ち合わせなんてこんなもんだった。

「それにしても十年か。年月って早いよな」

 壮絶な戦争だった。その前の潜入作戦からずっと気を張っていた気がする。西の時も大変だったけれど、精神的な疲労はジェームダルとの戦争の方が大変だった気がする。それから十年と少し。同盟が締結して比較的平和になってから十年だ。

「このままだと俺、あっという間にじじぃになるかも」
「止めろ、考えたくない」
「ゼロスも少し老けた?」
「ボリス」

 ジロリと睨むゼロスを笑う。そしてふと、まったく変わらない人達を思い出した。

「ランバートとファウスト様って、変わらないよな」
「人外と人間を比べるのか? 虚しくなるぞ」
「あ、とうとうランバートもそっちの枠に入った」

 溜息一つのゼロスと苦笑のコンラッド。でも確かに一年前に会ったランバートは、結婚した辺りから加齢を感じない。何故。

「特別な事はしていないんだろうがな。恐ろしい」
「それを言うなら団長達もそんな感じがするよ。シウス様も変わらないし、何よりクラウル様もだろ?」
「あの人、もう四〇だぞ。どうして筋力が衰えない。手に少し皺が見える程度で他が変わらないのは何故だ」
「おーい、ゼロスー。こんな所で愚痴るなよー」
「あの人の隣に立つのにこっちがどれだけ悪あがきしてるか。トレーニングしても未だに追いつけない」
「苦労してるんだね」

 愚痴モードに突入したゼロスを笑い、ボリスはすっかり力が抜けた事に安堵の笑みを浮かべた。妙に力んでいたのが取れたみたいだ。

「うん、会うの楽しみになってきた」

 言うと、ゼロスとコンラッドは顔を見合わせて笑った。

◆◇◆

 予定通り、ジェームダルからの船が到着する。王都内の軍港で到着を待つ間、ベリアンスはずっと青い顔をしている。油断すると心臓くらいは口から飛び出すんじゃないかと思う。
 そんな様子をずっと隣で見ているランバートが、とうとう堪らずという様子で吹き出した。

「ちょ、もう。緊張しすぎじゃないか?」
「いや、だが……そう、だろうな」

 随分親しげに言われると気恥ずかしくなるが、隠せていない自覚もある。結局は溜息だ。

「妙な事だ、知らない相手ではないはずなのにこんなに……。いや、知っている相手だからだ。どんな顔をしていいか、未だに分からない」

 昔の仲間として会うのがいいのか、帝国の人間として会うのがいいのか。いや、そもそもそんな器用に立ち位置を選べるのか? 自分はそんなに器用な人間だったか? それすらも疑問でグルグルする。
 それを見て、ランバートは困った顔で笑った。

「そんなの、実際に会えば分かりますよ」
「え?」
「ベリアンスはそんな器用じゃないし、それでいいと思う。感じた事が全てでいいよ。それに、向こうも分かってるだろ?」

 穏やかに言われて、はたと気づく。彼はベリアンス本人よりも分かっているかもしれない。
 確かに、演技などが出来るタイプではない。隠し事すらもアルフォンスに直ぐにバレてしまうんだ。そんな奴が取り繕おうなんて無理な話だ。
 肩に手が置かれる。ランバートが指さす、その先に小さく船が見える。心臓が、ドクンと重く鳴った。不安もある、罪悪感もある。でもそれ以上に、会って言葉を交わしたい。大丈夫だと伝えたい。すまないと伝えたい。元気でいるのだと、伝えたい。

 遠く、僅かに影が見える。誰かが大きく手を振っている。まだその顔までは見えないけれど、あれはきっとハクインだろう。そんな気がする。
 十年会わなかった。戦争の間も殆ど会わなかったし、私的な話など出来る状態じゃなかった。もう、何年言葉を交わしていないんだろう。必死に生きて、必死に守って進んできた仲間達だったのに、まともに話ができなくなってしまった。

 こみ上げる塊を吐き出せないまま飲み込んで、その度に温かなものが伝い落ちていく。声が届く。伝えたい事が沢山あるんだ。この国で得た沢山の事を話したい。そして聞きたい、皆はどうして過ごしてきたのかを。

 船が接岸され、タラップがかけられる。真っ先に降りてきた青年は記憶の中よりもずっと背が伸びてスラリとして、でも浮かべる表情は昔と何も変わらないままだ。泣きながら走ってきて、飛び込むように抱きしめる身長差はもう殆どない。

「ベリアンス様ぁぁ!」
「ハクイン」
「あ゛い゛だがっっだぁぁぁ!」
「あぁ、俺もだ」

 血の繋がらない、努力家な弟。人一倍負けん気が強くて、勝てない事に悔しい思いをして。影でこっそりと鍛錬を詰んでいたのを知っている。身長が伸びないと悔しがっていたのも知っている。

「ベリアンス様」

 追いついたらしいリオガンが困った顔でハクインを引っぺがし、とても優しい目で微笑む。感情表現が不器用で、言葉が拙い彼は今こうして微笑む事ができる。随分優しい目が出来るようになった。一歩近づいて、少し硬い銀の髪を撫でるとくすぐったそうにまた笑う。お前は、そんな風に笑う子だったんだな。

「ベリアンス様」
「レーティス」

 沢山の荷物を持ったレーティスが立ち尽くし、次には大粒の涙を零す。慌てて駆け寄って、その顔を隠すようにして抱きしめた。
 優しい奴だった。誰よりも優しくて、争い事が嫌いで、なのに仲間の為に頑張ってきた。なのに一番、辛い思いをさせてしまった。
 なにもかもを押しつけてしまった事を申し訳なく思っている。なのにこの国に残りたいなんて、言っていいのか分からなくなる。決めたのに、揺らいでしまう。
 だが次に顔を上げたレーティスは目を細めて笑ってくれた。安心したように、優しく。

「良かった、お元気になられて。良かった」
「レーティス」
「もう、お体のほうはいいのですね?」
「あぁ」
「この国で、騎士となれたのですね?」
「! あぁ、そうだ。俺はまた、騎士になれた」
「良かった。本当に良かったです、ベリアンス様」

 責めないのか、お前は。こんなに嬉しそうに笑って、押しつけて逃げた奴を迎えてくれるのか。
 こみ上げる涙が止まらない。もう、どちらが泣きはらしているか分からない。
 その前にキフラスとアルブレヒトが立って、とても温かく見守っている。

「アルブレヒト様」
「いいよ、ベリアンス。私はもうお前の主ではないからね」
「え?」
「ここに、残るのだろ?」

 問われて、ハクインやリオガンが少し寂しい顔をする。でもレーティスとキフラスは確かに頷いてくれた。既にこの心を理解していると言わんばかりに。

「すまない、皆。俺は、この国で受けた恩を返したい。何より大切な人が出来てしまったんだ。ここを離れるわけにはいかない」
「えぇ、分かっていますよ。送り出した時、何故かもう手元を離れた感じがありました。息災なら、それでいいのです。お前の人生を、今度こそお前の為に使いなさい。何も気にすることはない。こちらも皆、息災ですよ」

 寛大で大らかな主は、その恩に報いよとは言わず手を離してくれた。分かっていると言って、分かっていたと言って。

「それに、これからは互いの地を行き来できるのです。会いたければ会えますから」
「! はい! あの、アルブレヒト様」
「なんですか?」
「俺の伴侶に、会っていただけますか。挨拶がしたいと彼も言っています。何よりも俺は、皆に紹介したいんです」

 伝えると、皆が笑って頷いてくれた。

「えぇ、勿論喜んで」
「! 有り難うございます!」

 良かった。思うとまたこみ上げてきて、困ったようにアルブレヒトが歩み寄ってハンカチを貸してくれて背を叩いてくれる。キフラスが少し驚いた顔をしながらも笑っている。
 良かった、ここにダングラートがいなくて。あいつがいたらこんなみっともない姿、到底見せられなかったから。

「アルブレヒト陛下、お久しぶりです」
「ランバート、久しぶりですね。相変わらず美しいままです」
「陛下も色々とお変わりないようで安心いたしました。馬車を用意しておりますので」
「歩いてはダメかい?」
「いけませんね。いくら平和になったからと言っても、皆さんは大変に目立ちます。明日の自由時間も本当は懸念が多すぎるくらいです。どうか今日くらいは近衛府の心労をおもんばかっていただければと」
「うん、口うるさくなったね。でもまぁ、今日は従うとするよ」

 苦笑したアルブレヒトが背中を軽く叩く。頷き、ベリアンスは先に立って歩き出した。その背はかつてのように堂々と風を切り、騎士ベリアンスの復活をかつての仲間に見せつける。そうして互いに顔を見合わせ、ほんの少し涙をにじませるのだった。

◆◇◆

 ベリアンスはこの国に戻ってはこないだろう。
 その事をアルブレヒトは事前に、ダンクラートを含むかつての仲間全員に伝えていた。

「どうしてですか!」

 ハクインは嫌だと拒絶する。立ち上がり、抗議するように。
 だが意外にもレーティスとキフラスは静かなままだった。

「帝国がそのような意向を?」
「いえ、帝国としては既に咎人ではないので自由意志に任せると通達がありました。ですがベリアンスの縁はもう薄らいでいます。あちらに残る事を決めたのでしょう」

 それを聞き、キフラスは静かに考え込んでいる。

 なんとなく、こうなるのではないかと思っていた。アルブレヒトにもこの未来は明確に見えていなかった。十年と少し前、彼がこの国を離れた時には何も見えていなかった。だが、予感のようなものはあったのだ。あの背が、少し薄く見えたから。
 不遇ならば十年と言わず戻すつもりでいた。まぁ、カーライルの人柄も騎士団の温かさも知っていたから心配はしていなかったが。もしや何かしらの事故や病気で命を落とすのかととも考えたが、杞憂だった。
 ベリアンスから時々送られてくる手紙。それに書かれる内容が少しずつ、柔らかなものになっていく。最初はお堅い報告書のようだったのに、徐々に近況が伝えられ、思う所が綴られるようになっていく。
 安心した。もう、大丈夫なのだ。手元を離れるのは彼がそれを望むからなのだ。
 手紙を通じて伝わった。ベリアンスを包むような、とても大らかで優しい、まるで父親のような光り。それがしっかりと結びついている。一方的ではなく、互いの意志で。
 嬉しかった。傷は深かった。あのまま立ち直れなくても仕方がないと言える程だった。でも、立ち直りこうして踏み出してくれた。それでもう、いいのだ。

「ベリアンス様は、帝国で幸せになれますか?」

 不意にレーティスが心配そうに問いかけてくる。彼の傷もまたこの十年で癒えたと言える。傷跡は残ってもしっかりと塞がり、今は痛みはないのだろう。
 だからこそ誰かの幸せを願う優しさと柔らかさを取り戻した。取り戻させてくれたのは、帝国のオーギュストだ。

「幸せになれますよ。彼を守るとても大きな存在があります。おそらくその人と添い遂げたいのでしょう。それとこれはランバートからの手紙にありましたが、彼は帝国で傷を癒やし、レイピアを習得して軍神をひやりとさせているとか。今は第一師団の若い師団長を補佐しているようです。仕事も充実していると」
「おい、大丈夫なのかよそれ。一応は敵国の捕虜だろあいつ。そんなのに重席って」
「それほどに信頼を置き、謀反の疑いもない。帝国流でいくと『信じている』ということです。あの国は手が悪いですね。信頼という言葉で人の心を絡め取る。人タラシが過ぎます」

 本当にそう思う。大丈夫だと思った途端に手を広げるんだ、なんの疑いもせずに。慈母のように微笑み、裏切りなど考えもしていない顔で飛び込むことを前提にしている。悪い考えの者がしれっと飛び込んでもまずは飲み込む。そうして懐柔してしまうんだ。

 レーティスは少し安心したように微笑む。心からベリアンスの幸せを願い、この話を前向きに受け止めただろう。

「……せっかく会えるのに、またさようならなんて」

 ハクインは未だに寂しいのか、大きな目に涙を浮かべている。だがそれを断ち切ったのは、意外にもダンクラートだった。

「大事な奴の祝いの門出だ、んなしみったれた顔するなハクイン」
「ダンクラート様はいいのかよ」
「あぁ、いいさ」

 それが、意外でもあった。
 ダンクラートは未だに「俺はジェームダル軍総長代理だ」と言う。ベリアンスの場所を空けている。戻ってくると思っているのに。

「いいのですか?」
「いいだろうよ。友の門出に出席できないのは悔しいが、これからは好きに会える。時期をずらして会いに行けばいい。それに、これがあいつの決断なんだろ?」

 すっきりと、そしてにっかりと笑う顔に偽りはない。次には真剣な顔をした。

「総長代理も、ボチボチ改めるさ。戻って来たらその辺、お願いできますか」
「えぇ、勿論」
「次にあいつに会うのが楽しみだ。幸せボケしたあいつを突き倒してやるよ」
「そうですね」

 寂しくない訳がないのだろう。でも笑顔で手を離す事がこいつなりの友情なのだ。生きる場所が離れても、ダンクラートにとってベリアンスは友で相棒。そしてそれはベリアンスもきっと同じだ。

 かくしてジェームダル組は再会の前に気持ちを作ってきていたのだ。


 今、馬車の中にアルブレヒトとルートヴィヒとエルヴァ、そしてホストとしてランバートがいる。他の面々は馬車の護衛として随行している。
 エルヴァは一瞬ランバートを見て顔を赤らめて止まった。まぁ、分かる気はする。

「ベリアンスは思った以上に元気で、柔らかくなりましたね」
「えぇ、とても。最初は心配もしていましたが」
「ちなみに、彼の伴侶について聞いても?」
「はい。料理府長のアルフォンスです。とても大らかで優しく、怒った所など見た事のない方です。一人でいるベリアンスを心配して声をかけた事がきっかけだったようです。今では随分と想い合い、部屋も同室です。事実婚、と言っても過言ではないでしょう」
「あの方、左手の薬指に指輪をしていましたわ。プロポーズを受けたのですわね」
「えぇ、そのように聞いております。皆さんとお会いするにあたり悩んでいた時に、背を押してプロポーズをしてくれたと。どのような決断をしても側にいると言ってくれたそうです」
「ほぉ、それは惜しい事をしましたね。ベリアンスが戻る決断をしていたら、私はその者の美味しい料理が食べ放題だったのに」

 なんて言えば、ランバートは苦笑して「引き抜きはご遠慮ください」と言ってきた。その気はないが、まぁ惜しい事はした。
 それにしてもエルヴァだ、よく見ている。流石女の子というところか。

「ランバート、クシュナートのご一行はもうお付きですか?」
「えぇ、今日の午前中に到着して城で過ごしておりますよ」
「リシャール様もですか?」
「えぇ。リシャール殿下は着いて早々に、カール陛下のご子息とご息女に捕まって散策される事になりましたよ。大らかでお優しい方ですから、子供に人気なのです」
「ふふっ、流石ですわ」

 嬉しそうなエルヴァが微笑む。その自信は時に彼女の実父を思わせるが、決して悪いものではない。自信過剰ではないし、卑屈でもない。自らに磨きをかけ、確かな信念を持つからこそ自信が生れ、堂々と立ち振る舞うのだ。そういう輝きはエルヴァが一番強いだろう。
 キルヒアイスも本来はこういう性質だったのではないかと思う。幼い魂は柔らかく、故に周囲の人間次第で歪み穢れる。キルヒアイスはアルブレヒトと出会った時にはもう、矯正など不可能なほどだったのだ。
 十年をかけて少しずつ、アルブレヒトも許す事を覚え始めた。最初こそ憎くてたまらなかったが、今はその境遇を憐れむくらいにはなった。そうしてくれたのは、彼が残した幼い子供達との時間だっただろう。皆、素直に育ってくれている。

「ランバート様」
「ルートヴィヒ様、私は一介の騎士です。貴方様に敬称をつけられるのは些か不都合がございます。どうかランバートと呼び捨ててください」
「……ランバート、明日は午後から自由に過ごして良いとあった。街に出ても構わないということだろうか」
「はい、その通りです。地味な服に着替え、近衛府の者と此方から随行されている誰かを連れて行く事が条件ではありますが」

 ルートヴィヒの表情が僅かに明るくなる。アルブレヒトを見上げる目は年相応に輝いていた。

「父上」
「構わないよ」
「本当ですか!」
「あぁ。若いうちに他国の文化などに触れておくことはいい事です。自分の考えが広がってゆきますよ」

 自国が全てだと思ってもらいたくはない。手を伸ばせばもっと広い世界がある。当然全てが良いことだとは限らないが、それを学ぶのもまた一つだろう。
 なんならルートヴィヒには少し留学などもさせたいと思っている。この子はどうにも遠慮があり、あまり我が儘を言わない。それは親としては助かるのだが、同時に寂しくもある。自国にいたのでは分からない輝きを、驚きを、思いをその胸に沢山詰め込んで欲しいとも願う。それがやがて自国を豊かにしてくれるだろう。
 今回の式典は色々と話す事が多そうだ。そんな予感をアルブレヒトは感じていた。


 程なく馬車は帝国の城へと到着し、ランバートとベリアンスは近衛府の者に引き継いで一時離れた。
 そうして通されたのは謁見の間ではあるが、良き友は玉座には座らず立ったままアルブレヒト達を待っていてくれた。

「お久しぶりですね、アルブレヒトさん」
「えぇ、お久しぶりですカーライルさん。フェオドールさんも、久しいですね」
「アルブレヒト陛下、ご無沙汰しております」

 カーライルの側で話をしていたクシュナートのフェオドールが、きっちりと礼をする。それにアルブレヒトは笑って応えた。

「そう畏まらなくてよいのですよ。貴方はアルヌールの代理、相応の振る舞いでよいのです」
「このような大切な式典に名代の私が出る事になっただけでも、お二方には申し訳なく思っております。私は一介の外交官ですし」
「ダメだよフェオドール。君は今国の代表なのだから顔を上げて。これでは対等な同盟と見えないじゃないか」
「その通りですよ、フェオドール。我等三国の同盟は対等な立場で結ばれているもの。貴方は確かに名代かもしれませんが、今は国の代表なのです。アルヌールのように振る舞ってよいのですよ」
「我等が王のように振る舞えと仰るのでしたらそれは不可能です」

 そこはキッパリとした顔で言い切ったフェオドールが、いっそ面白かった。
 確かにアルヌールという王は面白く不遜な王だ。まるで道化のように振る舞い、垣根などないような顔をする。だがあの男は強かな策略家だ。さりげない言葉を聞き逃さず、必要ならばそれを元手に探りを入れる。あれで他国の侵略という野心を持っていたなら、最も警戒しなければならない相手だっただろう。
 だがあの男、自国を富ませる事は考えてもその手段として侵略という手は考えていない。元々の性格が卑怯を好まないのだろう。敵に回せば厄介で苛烈だろうが、味方でいる分には面白い王だ。
 それに比べてフェオドールという青年は真面目で控え目。幼さすらも残るが補佐に適した人間と言える。弱い部分もありそうだが、それは周囲の人間が支えている。特にボリスだろう、とても強い。彼はどちらかと言えばアルヌールに性質が近い。言葉遊びを好み、言葉尻を逃さず、敵と見なした瞬間に一切の慈悲を忘れ苛烈で残酷な手法を躊躇いなく選ぶ。生れながらにして加虐の癖があり、敵の苦痛を考慮しない。
 この点においてはアルヌールよりも顕著だが、逆を返せば懐に入れた人間を命の限り守るのだ。
 フェオドールにはこの二人がまるで守護者のようについている。故に安定している。

「まぁ、アルのようにとは言わないけれどね。でもフェオドール、頭は下げなくていいんだ。私達だけの時はいいけれど、人前に出たら堂々と。王と王という立場なのだからね」
「……はい、心得ました。お気遣いと助言、痛み入ります」
「その言葉選びもどうかと思うんだけれど……」

 そこでふと、悪い事が思い浮かんだアルブレヒトはニッと笑う。それを見たカーライルも何かを感じたようだった。

「ではフェオドール、今日の晩餐の後に少し話をしませんか?」
「え?」
「いいね。王同士の親睦を深めるのもまた、強固な同盟の維持にはいいことだよ」
「あの、私はあくまで名代で王では!」
「硬いことは言わないのですよ、フェオ。三国の未来について語らうのも楽しいものです」
「名代でもここに立つのは君なんだからいいんだよ。楽しく飲むのもいいものだ。そういうことなら談話室を用意させよう! オスカル~」
「本気ですか! あっ、えっと……もう! 分かりましたからぁ」

 楽しそうなカーライルが奥に声をかけて控えているオスカルを呼び、フェオドールがやけくそな様子で叫ぶ。それを見て、なんと楽しい事か。

 十年と少し、こんなに穏やかで楽しい時間が巡ってきた。花は綻び、甘い香を放つ。まだ実を結ぶには早いが、きっとこの太平は長く続いていくだろう。そんな予感を、アルブレヒトは感じていた。
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「君は、今日から俺のものだ」 辺境の村で薬師として静かに暮らす青年カイリ。彼には誰にも言えない秘密があった。それは希少なΩ(オメガ)でありながら、その性を偽りβ(ベータ)として生きていること。 ある日、村を訪れたのは『帝国の氷盾』と畏れられる冷徹な騎士団総長、リアム。彼は最上級のα(アルファ)であり、カイリが必死に隠してきたΩの資質をいとも簡単に見抜いてしまう。 「お前のその特異な力を、帝国のために使え」 強引に帝都へ連れ去られ、リアムの屋敷で“偽りの主従関係”を結ぶことになったカイリ。冷たい命令とは裏腹に、リアムが時折見せる不器用な優しさと孤独を秘めた瞳に、カイリの心は次第に揺らいでいく。 しかし、カイリの持つ特別なフェロモンは帝国の覇権を揺るがす甘美な毒。やがて二人は、宮廷を渦巻く巨大な陰謀に巻き込まれていく――。 運命の番(つがい)に抗う不遇のΩと、愛を知らない最強α騎士。 偽りの関係から始まる、甘く切ない身分差ファンタジー・ラブ!

バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?

cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき) ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。 「そうだ、バイトをしよう!」 一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。 教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった! なんで元カレがここにいるんだよ! 俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。 「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」 「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」 なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ! もう一度期待したら、また傷つく? あの時、俺たちが別れた本当の理由は──? 「そろそろ我慢の限界かも」

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話に、真紀ちゃん(攻)視点を追加して、倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました

  *  ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。 BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑) 本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 きーちゃんと皆の動画をつくりました! もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら! 本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

【本編完結】最強魔導騎士は、騎士団長に頭を撫でて欲しい【番外編あり】

ゆらり
BL
 帝国の侵略から国境を守る、レゲムアーク皇国第一魔導騎士団の駐屯地に派遣された、新人の魔導騎士ネウクレア。  着任当日に勃発した砲撃防衛戦で、彼は敵の砲撃部隊を単独で壊滅に追いやった。  凄まじい能力を持つ彼を部下として迎え入れた騎士団長セディウスは、研究機関育ちであるネウクレアの独特な言動に戸惑いながらも、全身鎧の下に隠された……どこか歪ではあるが、純粋無垢であどけない姿に触れたことで、彼に対して強い庇護欲を抱いてしまう。  撫でて、抱きしめて、甘やかしたい。  帝国との全面戦争が迫るなか、ネウクレアへの深い想いと、皇国の守護者たる騎士としての責務の間で、セディウスは葛藤する。  独身なのに父性強めな騎士団長×不憫な生い立ちで情緒薄めな甘えたがり魔導騎士+仲が良すぎる副官コンビ。  甘いだけじゃない、骨太文体でお送りする軍記物BL小説です。番外は日常エピソード中心。ややダーク・ファンタジー寄り。  ※ぼかしなし、本当の意味で全年齢向け。 ★お気に入りやいいね、エールをありがとうございます! お気に召しましたらぜひポチリとお願いします。凄く励みになります!

異世界転移した元コンビニ店長は、獣人騎士様に嫁入りする夢は……見ない!

めがねあざらし
BL
過労死→異世界転移→体液ヒーラー⁈ 社畜すぎて魂が擦り減っていたコンビニ店長・蓮は、女神の凡ミスで異世界送りに。 もらった能力は“全言語理解”と“回復力”! ……ただし、回復スキルの発動条件は「体液経由」です⁈ キスで癒す? 舐めて治す? そんなの変態じゃん! 出会ったのは、狼耳の超絶無骨な騎士・ロナルドと、豹耳騎士・ルース。 最初は“保護対象”だったのに、気づけば戦場の最前線⁈ 攻めも受けも騒がしい異世界で、蓮の安眠と尊厳は守れるのか⁉ -------------------- ※現在同時掲載中の「捨てられΩ、癒しの異能で獣人将軍に囲われてます!?」の元ネタです。出しちゃった!

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

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