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ゴブリン討伐(5)
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キングが倒れた事で統率されてきたゴブリン達はバラバラに逃げ、後続隊に次々に討ち取られていった。
念のため脱走防止に冒険者もいたことから早々に追うこともやめ、現在は治療や探索が行われている。幸い、近隣の町や村から人が攫われて……なんて事はなさそうだ。
ハインツもリアの治療を受けている。大きなものはないが、ゴブリンキングの体重をかけられていた腕や足には多少の負荷がかかっており、これらを取る処置がされている。
「無茶が過ぎますわ」
「すみません」
少し怒り気味のリアに素直に謝ってしまう。まぁ、なかなか大変だった。
「アーベル様が倒れてしまいますわよ」
「え?」
お説教のように伝えられて、思わずアーベルを見てしまう。
今はローゼンハイム家の騎士と何やら話している。ゴブリンキングの遺体を確認し、記録し、体の一部を持ち帰る。討伐証明だ。
他にもゴブリンジェネラルなどは追加報酬になる。それらも現在査定されているのだ。
「あなたの事が本当にお好きなのよ。自慢するみたいに部下に話しているのですわ」
「恥ずかしいです」
「……あんなに浮かれるアーベル様は、これが初めてです」
やや沈み込むような様子にハインツはなんて言えばいいか分からない。
そういえば自分はアーベルの過去とか、そういう事を知らない。冷静に思えばあのタイミングで助けてくれたのも、領地への根回しや調査も、用意された現金も都合が良すぎる。
以前ハインツに助けられたと彼は言った。それすらハインツは未だに思い出せない。いつだったのか……大事な事のように思うのに。それを暴けば今の関係が崩れそうな、そんな不安があるのだ。
そこに話の終わったアーベルが来て、気遣わしい様子で頬に触れ、髪に手を梳き入れた。
「大丈夫ですか?」
「はい。大きな怪我はないので」
「負荷は軽減しましたわ。でも、戻ったらゆっくり休んでくださいませ。こういうことは休息が一番ですもの」
そう言ってリアは去って行く。残されたハインツとアーベルは少しの間言葉がなかった。
だが、触れてくれる手の動きが優しくて……もどかしくて。ハインツは彼を見つめて頼りない目をしてしまった。
「そのような弱い目をなさるとは、ハインツさんは狡い」
「え?」
「キス、したくなります」
「え!」
うっとりと愛を囁くように伝えられる言葉に、ハインツのチョロい心臓はドキドキしてくる。カッと顔も熱い気がしてオロオロすると、思い切り笑われてしまった。
「あっ、からかったんですか!」
「違いますよ。貴方にキスしたいのは本当です。とても勇ましかった。とても、格好良かった。俺の愛しい人はこんなにも雄々しくて素晴らしい人だと再確認いたしました」
嫁に対する評価としてどうなんだろう。
それでも「愛しい」なんて言われたら素直に嬉しいし照れてしまう。それに、キスしたいというのも……こんなゴブリンの血まみれ、汗臭状態でなければ嬉しいんだ。
オメガだからか、愛されていると感じると胸の奥が切なく熱くなるんだ。
「でも同時に、とても怖かったのです」
「アーベルさん」
「俺は腕力では貴方の隣に立てない。前線で戦い、率先して危険に飛び込み仲間を助けようとする貴方を尊いと思う一方で、何かあればこの胸は潰れるのだろうと感じました。とても、怖かった」
不安そうに揺れる双眸。僅かに手が震えている気がする。お人形のように綺麗で華奢で、なのに格好良くて知的なアーベルの恐怖が、ハインツを失う事。まだ出会って一ヶ月に満たないのに、こんなに愛されている。それが、愛おしい。
気づけば腕を伸ばしていた。汚れるとか、臭いとか、そういう事が一時的に抜けていた。ただ目の前の人が愛しくて抱きしめたら、アーベルもまた背中に腕を回してくれた。
「私は貴方を置いてどこにもゆきません」
「はい、お願いします」
そんな様子をベルタやリベラート達が見守り、微笑んでいる。
とても幸せな気持ちに、ハインツはずっと笑顔だった。
念のため脱走防止に冒険者もいたことから早々に追うこともやめ、現在は治療や探索が行われている。幸い、近隣の町や村から人が攫われて……なんて事はなさそうだ。
ハインツもリアの治療を受けている。大きなものはないが、ゴブリンキングの体重をかけられていた腕や足には多少の負荷がかかっており、これらを取る処置がされている。
「無茶が過ぎますわ」
「すみません」
少し怒り気味のリアに素直に謝ってしまう。まぁ、なかなか大変だった。
「アーベル様が倒れてしまいますわよ」
「え?」
お説教のように伝えられて、思わずアーベルを見てしまう。
今はローゼンハイム家の騎士と何やら話している。ゴブリンキングの遺体を確認し、記録し、体の一部を持ち帰る。討伐証明だ。
他にもゴブリンジェネラルなどは追加報酬になる。それらも現在査定されているのだ。
「あなたの事が本当にお好きなのよ。自慢するみたいに部下に話しているのですわ」
「恥ずかしいです」
「……あんなに浮かれるアーベル様は、これが初めてです」
やや沈み込むような様子にハインツはなんて言えばいいか分からない。
そういえば自分はアーベルの過去とか、そういう事を知らない。冷静に思えばあのタイミングで助けてくれたのも、領地への根回しや調査も、用意された現金も都合が良すぎる。
以前ハインツに助けられたと彼は言った。それすらハインツは未だに思い出せない。いつだったのか……大事な事のように思うのに。それを暴けば今の関係が崩れそうな、そんな不安があるのだ。
そこに話の終わったアーベルが来て、気遣わしい様子で頬に触れ、髪に手を梳き入れた。
「大丈夫ですか?」
「はい。大きな怪我はないので」
「負荷は軽減しましたわ。でも、戻ったらゆっくり休んでくださいませ。こういうことは休息が一番ですもの」
そう言ってリアは去って行く。残されたハインツとアーベルは少しの間言葉がなかった。
だが、触れてくれる手の動きが優しくて……もどかしくて。ハインツは彼を見つめて頼りない目をしてしまった。
「そのような弱い目をなさるとは、ハインツさんは狡い」
「え?」
「キス、したくなります」
「え!」
うっとりと愛を囁くように伝えられる言葉に、ハインツのチョロい心臓はドキドキしてくる。カッと顔も熱い気がしてオロオロすると、思い切り笑われてしまった。
「あっ、からかったんですか!」
「違いますよ。貴方にキスしたいのは本当です。とても勇ましかった。とても、格好良かった。俺の愛しい人はこんなにも雄々しくて素晴らしい人だと再確認いたしました」
嫁に対する評価としてどうなんだろう。
それでも「愛しい」なんて言われたら素直に嬉しいし照れてしまう。それに、キスしたいというのも……こんなゴブリンの血まみれ、汗臭状態でなければ嬉しいんだ。
オメガだからか、愛されていると感じると胸の奥が切なく熱くなるんだ。
「でも同時に、とても怖かったのです」
「アーベルさん」
「俺は腕力では貴方の隣に立てない。前線で戦い、率先して危険に飛び込み仲間を助けようとする貴方を尊いと思う一方で、何かあればこの胸は潰れるのだろうと感じました。とても、怖かった」
不安そうに揺れる双眸。僅かに手が震えている気がする。お人形のように綺麗で華奢で、なのに格好良くて知的なアーベルの恐怖が、ハインツを失う事。まだ出会って一ヶ月に満たないのに、こんなに愛されている。それが、愛おしい。
気づけば腕を伸ばしていた。汚れるとか、臭いとか、そういう事が一時的に抜けていた。ただ目の前の人が愛しくて抱きしめたら、アーベルもまた背中に腕を回してくれた。
「私は貴方を置いてどこにもゆきません」
「はい、お願いします」
そんな様子をベルタやリベラート達が見守り、微笑んでいる。
とても幸せな気持ちに、ハインツはずっと笑顔だった。
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