32 / 233
5章:締めは楽しく恥ずかしく
2話:余興という名の地獄へようこそ
しおりを挟む
かくしてパーティー当日。いつもより豪勢な夕食を食べて大半の者がラウンジへと来た。ファウストと一緒に来たランバートは入口でカードを渡される。そこには『一九』と書いてあった。
「それでは、今年も一年お疲れ様でした。ファウスト様、挨拶をお願いします」
進行役をしているのはオリヴァーで、その紹介でファウストが前に出る。手には酒の瓶がそのままだ。
「今年も一年、ご苦労だった。大変な事件も多かった中で、一人の欠員も出なかった事を誇りに思う。来年もまた、一人の欠員もなくこうして年末の馬鹿騒ぎができるように願う」
ファウストの言葉に皆がそれぞれ楽しそうに頷きあっている。
「それでは、乾杯!」
「「乾杯!」」
ファウストの声に皆が雄叫びのような声を返す。ランバートも側のゼロス達と乾杯をして、楽しく飲み始めた。
「ランバートって、去年は参加してないよね?」
ハリーが問いかけるのにランバートは頷いた。去年の今頃は風邪で倒れていた。寝ていたのはファウストの部屋だったが。
「おっ、それじゃあ初めて見るな、余興」
「すんごいよ!」
ニヤリと笑ったコンラッドとボリスの笑みが何やら怖い。そうする内に、何やらカウンターの奥からあれこれ出てきたようだった。
「それではお待ちかねの余興タイムです。皆さん、覚悟はいいですか?」
「「おー!」」
酒と年末の開放感からか、いつも以上に熱気がある。ランバートはそれに若干遅れ気味だ。その側にファウストも立つ。
「始まるな」
「楽しいんだろ?」
「巻き込まれなければな」
その言い方、怖いから止めて欲しい。
かくして運命は金色の箱の中。あれこれ入ってそうな箱の中に近くの隊員が手を入れて一枚を引き出す。これがお題のようだ。
二つ折りの紙が出てきて、それがオリヴァーに渡されると内容を読み上げた。
「最初は歌ですね。人数は五人。さぁ、カード五枚を引きますよ!」
また近くの隊員五人をランダムに選んで、今度は黒い箱の中から一枚ずつ引かせる。そうして出た番号をオリヴァーが読み上げていく。
「三八番! 五番! 十五番! 四〇番! 七八番!」
「あ!」
近くでコナンがワナワナ震えている。その手には四〇番のカードがあった。
「どうしよう……」
「行くのが無難だな。歌ならどうってこともない」
恥ずかしそうにしながらも、他の隊員が楽しそうに前に出るので仕方なく出ていく。
「では、毎年おなじみ国歌を」
そうして皆が手拍子をして、その前で野太い男達の酒に酔ったへべれけな国歌が披露される。コナンは真っ赤になっていたが、腕を組まれて飲まれて行けば楽しそうだった。更に軍歌まで歌った所で、盛大な拍手を受けて五人は降りてきた。
「良かったじゃん、コナン」
「緊張したぁ」
「上手かったよ」
レイバンやトレヴァーに迎えられてはにかんだように笑うコナンを見ると、ランバートも笑えた。
「次いきますよ!」
さて次のお題は……耳?
「七番! 二〇番! 八五番!」
読み上げられた人達も随分疑問そうだった。そしてドゥーガルドが前に出て、グリフィスが前に出て、最後の一人は進行役のオリヴァー本人だった。
「耳ってなんだよ、オリヴァー?」
「これですよ」
言って出してきたのは動物耳のついたカチューシャだ。それに、ガタイのデカイ二人がギョッとした顔をする。出てきたのは兎と猫と熊だ。
「ちなみに、パーティー終わるまで外さないように」
「どんな晒し者だ!」
「可愛いですよ? それとも、公開処刑を選びますか?」
「うっ」
グリフィスは最後まで抵抗していたが、さすがにそれには踏み切れないのか言葉に詰まり、手早く熊を手に取って装着した。奔放な黒髪に茶色の熊耳だ。
「グリフィス様、可愛いっす!」
「熊さん似合ってますよ!」
「うっせーな、お前ら!!」
獣の雄叫びみたいに怒鳴るが、顔が真っ赤だ。そしてその横でコソッと、ドゥーガルドが猫耳を付けた。完全にライオンだ。
「私はこれですね」
そう言ってオリヴァーがうさ耳を付けると、何故が「おぉ~」という感嘆めいた声が上がった。色気増しだろう。
「あの人、恋人いますよね」
「いるな」
「襲われそうですけれど」
「返り討ちだ、心配するな」
側のファウストは呆れた様子で息をつく。そのうちにドゥーガルドがしょぼくれた顔で戻って来た。
「似合ってるから平気じゃない?」
「恥ずかしい」
「諦めろ」
レイバンがちょこちょこと耳を触って「柔らか!」と驚いている。ゼロスまでそれに乗っかって触って「リアルだ」と目を丸くした。ランバートまでもがそうして触って「すごいな」と呟いてしまった。
こうして余興はあれこれ進む。「一発芸」とお題を出された暗府の先輩が華麗にカクテルを作り上げて皆に振る舞ったり、「ダンス」を引いた隊員が何故か最終的に組み手になったり。
徐々におかしなテンションになりながらも大勢でワイワイとしているのは楽しくて、ランバートも最後までそれらを楽しんだ。
「さて、最後のお題ですね」
そう言って、最後に残った紙を引き出したオリヴァーがその中身を読み上げた。
「最後は女装です! 人数は二人!」
これに、全員が息を呑んだように思えた。それはランバートも同じだ。女装……は、ハードル高い。
「これ、去年もあったけど凄いんだよね」
「そう、なのか?」
「オリヴァー様の秘蔵コレクションを着るんだけどさ、相手選ぶよ」
レイバンとボリスが言うのに、ランバートも頷く。ドゥーガルドみたいなのが女装しても何の嫌がらせかと思う。見る方もやらされた方もダメージでかい。
「ちなみに、去年は誰が?」
「オリヴァー様とコナン」
「セーフだな」
「アウトだよぉ」
思いだしたのかコナンが真っ赤になって泣きそうになっている。見ている方はセーフでも、やらされた方はたまったもんじゃないのだろう。
「さて、番号は……」
緊張感漂う中、全員が「自分じゃないように!」と願ったに違いない。引き出されたカードが二枚、オリヴァーがかざした。
「二番! 一九番!」
「!」
プルプルしながらランバートは自分のカードを見る。周囲の奴もランバートのカードを覗き込んで「あ!」と声を上げた。
咄嗟にファウストがランバートの腕を引いてこっそり逃げようとしたのだが、当然のように見つかるわけだ。
「逃げはダメです! 公開処刑か連帯責任でファウスト様もですよ!」
「なに!!」
連帯責任はさすがにない。一九〇近い長身が女装って怖いし、何よりこの人の威厳がない。諦めるより他にない。
「……ランバート、公開処刑」
「大人しく女装するよ」
「やらされている」と「自ら相手を選んでのキス」では後々が違う。大人しく前に出たランバートに、オリヴァーは実に嬉しそうな顔をした。
「さて、もう一人は」
会場を見回して、隅っこで震えている人を見つけた。小柄な体を更に小さくした人の肩に、無情にもオリヴァーが手をかけた。
「ウェイン」
「あの、勘弁……」
「では、公開処刑にしますか?」
「それはもっと嫌だぁ!」
泣きそうになるウェインをガッシと掴んだオリヴァーが「では皆様、しばしご歓談」と言ってランバートも引き連れて出て行く。
その背には沢山の同情の視線と、同じくらいの期待の視線を感じたのだった。
◆◇◆
そうして連れてこられたのは何故か三階の未使用の部屋。そこを開け放つと凄い事になっていた。
「な、んでこんな……」
思わず尻込みしてしまう。そこにあったのは沢山の女性物のドレス。おそらく三〇着はある。何故男のオリヴァーがこんなに沢山のドレスを持っているのか。その理由がまたとんでもなかった。
「過去に私を口説いた人からの贈り物ですよ。私を見ると着せたくなるらしくて。十人くらいいて、多い人だと一人で一〇着も贈ってくるんです」
「どんな変態……」
「否定はしませんね」
そう言ってランバートとウェインを部屋の中に押し込んだオリヴァーが、まずはとウェインの服を選び始めた。
「ウェインは小柄なので、可愛い系のカクテルドレスなんていいですね。丈はショートで」
「これ着るのぉ!」
「可愛いですよ?」
そう言いながらあれこれ探る。赤や青はそもそも選ばず、ピンクや黄色といった可愛い暖色系ばかり。かなり離れて見てしまうランバートの前で見つけたそれは、かなり可愛らしい物だった。
オレンジ色のショート丈のカクテルドレスは、胸元もあるし肩もある。むしろシンプルに首の丸い襟元にお花の飾りが付いているだけなのだが……問題はスカート部分だった。
オレンジの生地の上にフワフワと膨らんだ硬めのチュールレースが二重になっていて、その上に白やピンク、黄色や赤の花の飾りがランダムについている。更には模造パールが縫い止めてあって、実に華やかだ。おそらくスカートもたっぷりの布を使っているんだろう。
「無理……」
「可愛いです」
押し切られ、あっという間に身ぐるみ剥がされる。それにしてもオリヴァーは衣服を脱がせるのが上手かった。なんのスキルだろうかと遠い目をする。
かくして着せられたウェインは実に可愛らしかった。愛らしい童顔に明るいオレンジはとても似合っている。フワフワのスカートは膝が見えるか見えないか。そこにカボチャパンツを履かされている。勿論下着はなしだ。
「うぅ、お嫁にいけないよぉ」
「大丈夫ですよ。むしろ旦那を引っかけるのにいいですよ」
「嫌だよぉ!」
泣きそうな目が更に、オリヴァーが持っている可愛らしいオレンジの花を付けたカチューシャに行く。ワナワナ震えても仕方がない。薄茶色の髪にカチューシャがつき、愛らしい耳が見えてしまう。そうなると少年っぽい容貌が少女のようになっていた。
「さて、最後はこれです」
「お化粧までするの!」
「ここまできたら覚悟しなさい」
「うぅぅ……えぇい! もう好きにして!」
スカートの前を恥ずかしそうに掴んでいた手がパッと離れる。どちらにしても背中を紐で編み上げる形で自分じゃ脱げないのだ、後は覚悟を決める方がいい。
されるがままに唇にピンクの口紅が薄らとのり、頬にもほんのりとチークが施される。出来上がったのはどこの美少女かという、なんとも危なっかしい先輩だ。
これは、人前に出して襲われないだろうか……。
微妙に考えたが、おそらくアシュレーが牽制するだろう。そう思えば安心だ。
「おや、ランバートは何を呆けているのですか?」
「え?」
「僕一人で恥なんてかかないからね」
「えぇ?」
目の前からは実にギラギラといい笑顔のオリヴァー。背後からはどこからどう見ても美少女のようなウェイン。その両者に挟まれて、ランバートは悲鳴を上げる事となった。
「それでは、今年も一年お疲れ様でした。ファウスト様、挨拶をお願いします」
進行役をしているのはオリヴァーで、その紹介でファウストが前に出る。手には酒の瓶がそのままだ。
「今年も一年、ご苦労だった。大変な事件も多かった中で、一人の欠員も出なかった事を誇りに思う。来年もまた、一人の欠員もなくこうして年末の馬鹿騒ぎができるように願う」
ファウストの言葉に皆がそれぞれ楽しそうに頷きあっている。
「それでは、乾杯!」
「「乾杯!」」
ファウストの声に皆が雄叫びのような声を返す。ランバートも側のゼロス達と乾杯をして、楽しく飲み始めた。
「ランバートって、去年は参加してないよね?」
ハリーが問いかけるのにランバートは頷いた。去年の今頃は風邪で倒れていた。寝ていたのはファウストの部屋だったが。
「おっ、それじゃあ初めて見るな、余興」
「すんごいよ!」
ニヤリと笑ったコンラッドとボリスの笑みが何やら怖い。そうする内に、何やらカウンターの奥からあれこれ出てきたようだった。
「それではお待ちかねの余興タイムです。皆さん、覚悟はいいですか?」
「「おー!」」
酒と年末の開放感からか、いつも以上に熱気がある。ランバートはそれに若干遅れ気味だ。その側にファウストも立つ。
「始まるな」
「楽しいんだろ?」
「巻き込まれなければな」
その言い方、怖いから止めて欲しい。
かくして運命は金色の箱の中。あれこれ入ってそうな箱の中に近くの隊員が手を入れて一枚を引き出す。これがお題のようだ。
二つ折りの紙が出てきて、それがオリヴァーに渡されると内容を読み上げた。
「最初は歌ですね。人数は五人。さぁ、カード五枚を引きますよ!」
また近くの隊員五人をランダムに選んで、今度は黒い箱の中から一枚ずつ引かせる。そうして出た番号をオリヴァーが読み上げていく。
「三八番! 五番! 十五番! 四〇番! 七八番!」
「あ!」
近くでコナンがワナワナ震えている。その手には四〇番のカードがあった。
「どうしよう……」
「行くのが無難だな。歌ならどうってこともない」
恥ずかしそうにしながらも、他の隊員が楽しそうに前に出るので仕方なく出ていく。
「では、毎年おなじみ国歌を」
そうして皆が手拍子をして、その前で野太い男達の酒に酔ったへべれけな国歌が披露される。コナンは真っ赤になっていたが、腕を組まれて飲まれて行けば楽しそうだった。更に軍歌まで歌った所で、盛大な拍手を受けて五人は降りてきた。
「良かったじゃん、コナン」
「緊張したぁ」
「上手かったよ」
レイバンやトレヴァーに迎えられてはにかんだように笑うコナンを見ると、ランバートも笑えた。
「次いきますよ!」
さて次のお題は……耳?
「七番! 二〇番! 八五番!」
読み上げられた人達も随分疑問そうだった。そしてドゥーガルドが前に出て、グリフィスが前に出て、最後の一人は進行役のオリヴァー本人だった。
「耳ってなんだよ、オリヴァー?」
「これですよ」
言って出してきたのは動物耳のついたカチューシャだ。それに、ガタイのデカイ二人がギョッとした顔をする。出てきたのは兎と猫と熊だ。
「ちなみに、パーティー終わるまで外さないように」
「どんな晒し者だ!」
「可愛いですよ? それとも、公開処刑を選びますか?」
「うっ」
グリフィスは最後まで抵抗していたが、さすがにそれには踏み切れないのか言葉に詰まり、手早く熊を手に取って装着した。奔放な黒髪に茶色の熊耳だ。
「グリフィス様、可愛いっす!」
「熊さん似合ってますよ!」
「うっせーな、お前ら!!」
獣の雄叫びみたいに怒鳴るが、顔が真っ赤だ。そしてその横でコソッと、ドゥーガルドが猫耳を付けた。完全にライオンだ。
「私はこれですね」
そう言ってオリヴァーがうさ耳を付けると、何故が「おぉ~」という感嘆めいた声が上がった。色気増しだろう。
「あの人、恋人いますよね」
「いるな」
「襲われそうですけれど」
「返り討ちだ、心配するな」
側のファウストは呆れた様子で息をつく。そのうちにドゥーガルドがしょぼくれた顔で戻って来た。
「似合ってるから平気じゃない?」
「恥ずかしい」
「諦めろ」
レイバンがちょこちょこと耳を触って「柔らか!」と驚いている。ゼロスまでそれに乗っかって触って「リアルだ」と目を丸くした。ランバートまでもがそうして触って「すごいな」と呟いてしまった。
こうして余興はあれこれ進む。「一発芸」とお題を出された暗府の先輩が華麗にカクテルを作り上げて皆に振る舞ったり、「ダンス」を引いた隊員が何故か最終的に組み手になったり。
徐々におかしなテンションになりながらも大勢でワイワイとしているのは楽しくて、ランバートも最後までそれらを楽しんだ。
「さて、最後のお題ですね」
そう言って、最後に残った紙を引き出したオリヴァーがその中身を読み上げた。
「最後は女装です! 人数は二人!」
これに、全員が息を呑んだように思えた。それはランバートも同じだ。女装……は、ハードル高い。
「これ、去年もあったけど凄いんだよね」
「そう、なのか?」
「オリヴァー様の秘蔵コレクションを着るんだけどさ、相手選ぶよ」
レイバンとボリスが言うのに、ランバートも頷く。ドゥーガルドみたいなのが女装しても何の嫌がらせかと思う。見る方もやらされた方もダメージでかい。
「ちなみに、去年は誰が?」
「オリヴァー様とコナン」
「セーフだな」
「アウトだよぉ」
思いだしたのかコナンが真っ赤になって泣きそうになっている。見ている方はセーフでも、やらされた方はたまったもんじゃないのだろう。
「さて、番号は……」
緊張感漂う中、全員が「自分じゃないように!」と願ったに違いない。引き出されたカードが二枚、オリヴァーがかざした。
「二番! 一九番!」
「!」
プルプルしながらランバートは自分のカードを見る。周囲の奴もランバートのカードを覗き込んで「あ!」と声を上げた。
咄嗟にファウストがランバートの腕を引いてこっそり逃げようとしたのだが、当然のように見つかるわけだ。
「逃げはダメです! 公開処刑か連帯責任でファウスト様もですよ!」
「なに!!」
連帯責任はさすがにない。一九〇近い長身が女装って怖いし、何よりこの人の威厳がない。諦めるより他にない。
「……ランバート、公開処刑」
「大人しく女装するよ」
「やらされている」と「自ら相手を選んでのキス」では後々が違う。大人しく前に出たランバートに、オリヴァーは実に嬉しそうな顔をした。
「さて、もう一人は」
会場を見回して、隅っこで震えている人を見つけた。小柄な体を更に小さくした人の肩に、無情にもオリヴァーが手をかけた。
「ウェイン」
「あの、勘弁……」
「では、公開処刑にしますか?」
「それはもっと嫌だぁ!」
泣きそうになるウェインをガッシと掴んだオリヴァーが「では皆様、しばしご歓談」と言ってランバートも引き連れて出て行く。
その背には沢山の同情の視線と、同じくらいの期待の視線を感じたのだった。
◆◇◆
そうして連れてこられたのは何故か三階の未使用の部屋。そこを開け放つと凄い事になっていた。
「な、んでこんな……」
思わず尻込みしてしまう。そこにあったのは沢山の女性物のドレス。おそらく三〇着はある。何故男のオリヴァーがこんなに沢山のドレスを持っているのか。その理由がまたとんでもなかった。
「過去に私を口説いた人からの贈り物ですよ。私を見ると着せたくなるらしくて。十人くらいいて、多い人だと一人で一〇着も贈ってくるんです」
「どんな変態……」
「否定はしませんね」
そう言ってランバートとウェインを部屋の中に押し込んだオリヴァーが、まずはとウェインの服を選び始めた。
「ウェインは小柄なので、可愛い系のカクテルドレスなんていいですね。丈はショートで」
「これ着るのぉ!」
「可愛いですよ?」
そう言いながらあれこれ探る。赤や青はそもそも選ばず、ピンクや黄色といった可愛い暖色系ばかり。かなり離れて見てしまうランバートの前で見つけたそれは、かなり可愛らしい物だった。
オレンジ色のショート丈のカクテルドレスは、胸元もあるし肩もある。むしろシンプルに首の丸い襟元にお花の飾りが付いているだけなのだが……問題はスカート部分だった。
オレンジの生地の上にフワフワと膨らんだ硬めのチュールレースが二重になっていて、その上に白やピンク、黄色や赤の花の飾りがランダムについている。更には模造パールが縫い止めてあって、実に華やかだ。おそらくスカートもたっぷりの布を使っているんだろう。
「無理……」
「可愛いです」
押し切られ、あっという間に身ぐるみ剥がされる。それにしてもオリヴァーは衣服を脱がせるのが上手かった。なんのスキルだろうかと遠い目をする。
かくして着せられたウェインは実に可愛らしかった。愛らしい童顔に明るいオレンジはとても似合っている。フワフワのスカートは膝が見えるか見えないか。そこにカボチャパンツを履かされている。勿論下着はなしだ。
「うぅ、お嫁にいけないよぉ」
「大丈夫ですよ。むしろ旦那を引っかけるのにいいですよ」
「嫌だよぉ!」
泣きそうな目が更に、オリヴァーが持っている可愛らしいオレンジの花を付けたカチューシャに行く。ワナワナ震えても仕方がない。薄茶色の髪にカチューシャがつき、愛らしい耳が見えてしまう。そうなると少年っぽい容貌が少女のようになっていた。
「さて、最後はこれです」
「お化粧までするの!」
「ここまできたら覚悟しなさい」
「うぅぅ……えぇい! もう好きにして!」
スカートの前を恥ずかしそうに掴んでいた手がパッと離れる。どちらにしても背中を紐で編み上げる形で自分じゃ脱げないのだ、後は覚悟を決める方がいい。
されるがままに唇にピンクの口紅が薄らとのり、頬にもほんのりとチークが施される。出来上がったのはどこの美少女かという、なんとも危なっかしい先輩だ。
これは、人前に出して襲われないだろうか……。
微妙に考えたが、おそらくアシュレーが牽制するだろう。そう思えば安心だ。
「おや、ランバートは何を呆けているのですか?」
「え?」
「僕一人で恥なんてかかないからね」
「えぇ?」
目の前からは実にギラギラといい笑顔のオリヴァー。背後からはどこからどう見ても美少女のようなウェイン。その両者に挟まれて、ランバートは悲鳴を上げる事となった。
11
あなたにおすすめの小説
【完結】愛されたかった僕の人生
Kanade
BL
✯オメガバース
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。
今日も《夫》は帰らない。
《夫》には僕以外の『番』がいる。
ねぇ、どうしてなの?
一目惚れだって言ったじゃない。
愛してるって言ってくれたじゃないか。
ねぇ、僕はもう要らないの…?
独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。
【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします
* ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!?
しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です!
めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので!
ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)
インスタ @yuruyu0
Youtube @BL小説動画 です!
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです!
ヴィル×ノィユのお話です。
本編完結しました!
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました!
時々おまけのお話を更新するかもです。
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。
キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ!
あらすじ
「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」
貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。
冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。
彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。
「旦那様は俺に無関心」
そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。
バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!?
「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」
怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。
えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの?
実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった!
「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」
「過保護すぎて冒険になりません!!」
Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。
すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結、恋愛ルート、トマといっしょに里帰り編、完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
(無自覚)妖精に転生した僕は、騎士の溺愛に気づかない。
キノア9g
BL
※主人公が傷つけられるシーンがありますので、苦手な方はご注意ください。
気がつくと、僕は見知らぬ不思議な森にいた。
木や草花どれもやけに大きく見えるし、自分の体も妙に華奢だった。
色々疑問に思いながらも、1人は寂しくて人間に会うために森をさまよい歩く。
ようやく出会えた初めての人間に思わず話しかけたものの、言葉は通じず、なぜか捕らえられてしまい、無残な目に遭うことに。
捨てられ、意識が薄れる中、僕を助けてくれたのは、優しい騎士だった。
彼の献身的な看病に心が癒される僕だけれど、彼がどんな思いで僕を守っているのかは、まだ気づかないまま。
少しずつ深まっていくこの絆が、僕にどんな運命をもたらすのか──?
騎士×妖精
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結】悪役に転生したので、皇太子を推して生き延びる
ざっしゅ
BL
気づけば、男の婚約者がいる悪役として転生してしまったソウタ。
この小説は、主人公である皇太子ルースが、悪役たちの陰謀によって記憶を失い、最終的に復讐を遂げるという残酷な物語だった。ソウタは、自分の命を守るため、原作の悪役としての行動を改め、記憶を失ったルースを友人として大切にする。
ソウタの献身的な行動は周囲に「ルースへの深い愛」だと噂され、ルース自身もその噂に満更でもない様子を見せ始める。
【完結】僕の大事な魔王様
綾雅(りょうが)今月は2冊出版!
BL
母竜と眠っていた幼いドラゴンは、なぜか人間が住む都市へ召喚された。意味が分からず本能のままに隠れたが発見され、引きずり出されて兵士に殺されそうになる。
「お母さん、お父さん、助けて! 魔王様!!」
魔族の守護者であった魔王様がいない世界で、神様に縋る人間のように叫ぶ。必死の嘆願は幼ドラゴンの魔力を得て、遠くまで響いた。そう、隣接する別の世界から魔王を召喚するほどに……。
俺様魔王×いたいけな幼ドラゴン――成長するまで見守ると決めた魔王は、徐々に真剣な想いを抱くようになる。彼の想いは幼過ぎる竜に届くのか。ハッピーエンド確定
【同時掲載】 小説家になろう、アルファポリス、カクヨム、エブリスタ
2023/12/11……完結
2023/09/28……カクヨム、週間恋愛 57位
2023/09/23……エブリスタ、トレンドBL 5位
2023/09/23……小説家になろう、日間ファンタジー 39位
2023/09/21……連載開始
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる