恋愛騎士物語2~愛しい騎士の隣にいる為~

凪瀬夜霧

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23章:愛したのは君だから

5話:宮中の夜(コナン)

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 ルイーズに説得され、騎士団に留まる事を決めたコナンは翌日直ぐにオリヴァーの所へと向かった。渡した退団願いを取り下げに行ったのだ。
 そこで、とっくの昔にアシュレーが破り捨ててしまった事を知った。
 心配して一緒にきてくれたルイーズと一緒に、とてもほっとした顔をしたのだ。

 何事もなく平和に……とはいかなかった。
 程なくオスカルを伴ったルイーズと、上官オリヴァーとファウストを交えての秘密会議が行われ、コナンは特殊で秘密の任務を受ける事とした。
 自分にしか出来ない仕事だと心に決めて。


 王宮の一角は、国の賓客だけが泊まれる場所がある。その中でも最奥は特に重要な客人が泊まる豪華な部屋だ。
 落ち着いた緑色を基調にした部屋は重厚な中にも気品がある。暖炉の前にコの字に置かれたソファーセットの下には美しい柄の絨毯が敷かれ、ベッドには天蓋がつき、机にも一通りの文具が揃っている。
 棚には本が並び、お茶を楽しむ四人掛けのテーブルセットは精緻な彫り込みがされている。

 夕食の時間を過ぎ、そろそろ就寝という頃、そのテーブルセットに一組の男女が座っていた。
 一人は長い茶色の髪を下ろし、ふっくらとした頬に眼鏡をかけた少女。
 もう一人は彼女の護衛を仰せつかったルイーズだった。

「デイジー様、お茶をどうぞ」
「有り難うございます」
「本日はアンブレでございます」

 目の前に出された紅茶は濃いオレンジ色をしており、飲めば蜂蜜のような甘さと柑橘の爽やかさを感じた。

「美味しいです」
「それは良かった」

 とても嬉しそうに笑ったルイーズは、長い茶の髪を一房取って口づける。それにドキリとした。

「あの」
「愛しているよ」
「あの、だから、その。この格好では、色々と誤解がありますルイーズ様」

 思わず黄色いドレスの前を握ってモジモジしていると、ルイーズは楽しげに笑って額をチョンと指でこついた。

「駄目だよ、ルイーズ様じゃなくてルイーズさん。あくまで君は今姫なのだから、下の者に様などつけてはいけないよ」

 楽しげに言われ、こつかれた額を手で撫でてデイジーに扮したコナンは恥ずかしく頬を染めた。

 コナンが受けた特殊な任務は、デイジーの影武者だった。それというのも、ジェームダルの暗殺者チェルルを警戒して本物のデイジーを早々に隠す事になったのだ。
 本物のデイジーを隠し、影武者で誘き出す。これを持ちかけられた時、ルイーズは「危険だから受けるな」と言っていた。けれど、体格的にもコナンはぴったりで、顔立ちもふっくらとした少女顔だった。カツラをかぶり、ドレスを着たらデイジーそっくりに変装できたのだ。
 自分に出来る事、求められる事をしたい。騎士団に残る事を決めたコナンはこの申し出を受けたのだ。

 使命感を持って受けた仕事だったのだが、思わぬ喜びもあった。デイジー付きの護衛であるルイーズが常に側にいることになった。これはルイーズの申し出でもあったし、オスカルからの指示でもあった。
 ルイーズがデイジーの側を離れる事はむしろ不自然。だから本物の方には違う人がつき、影武者のコナンの側にルイーズがつく事となった。
 そうして今も、こうしてデイジーの部屋で何となく甘い空気を漂わせているのである。

「さて、それを飲み終わったら就寝時間ですよ」

 ルイーズは微笑み、重厚なカーテンを引く。こうなれば室内の様子は外からはまったく分からなくなる。室内の灯りも遮断するほどにこの部屋のカーテンは厚い。

 隙間なくカーテンを引いてしまうと、ルイーズは戻って来てコナンの目から度の入っていない眼鏡を丁寧に外し、そのまま深く口づけてくる。舌が絡まるようなキスは余裕のあるルイーズからは想像出来ない程に性急なものだった。

「ふぅ」

 唇が離れても余韻が残る。ぼんやりと見つめていると、端正な顔が真剣に見つめていた。

「一日中君といられる事はこの上ない喜びなんだが、拷問だ」
「え?」
「可愛い君を日中は抱きしめる事ができない」

 とても真面目な顔でそんな事を言うルイーズを、コナンはマジマジと見つめた。綺麗な眉が寄り、瞳は切なげに揺れ、唇はへの字になっている。とても冗談を言っているような表情ではないのだ。
 顔が熱くなっていく。本当に、本気でそんな事を言っているんだ。思うと、日中に交わされる視線の意味まで考えてしまう。思いだして、心臓がドキドキと音を立て始めた。

「さぁ、おいで。布団に人形もセッティングしたから、これからは私達の時間だよ」
「はい」

 顔が火照るのを感じながら、コナンはドレスのまま内扉を通って隣の部屋へと入った。


 内扉で繋がった部屋は主人の従者の部屋。内装はもっと簡素で、大きさも半分程度だが使い勝手もいい。
 ルイーズはコナンを立たせ、窮屈なドレスの紐を緩めながらその背をなぞる。コルセットを通してもその手の感触は伝わってきた。

「あの」
「毎日着せ、毎日脱がせる。至福だ」
「あはは」

 女装した少年に欲情する。ルイーズのそうした部分は相変わらずだが、それでも構わなかった。むしろ、少し愛しさを感じてしまう。完璧すぎるとやっぱりちょっと釣り合わない気がしてしまうから。

 ドレスの前に手が回り、悪戯に内股の柔らかな部分に触れてくる。もどかしいその感触に何となくゾクゾクしてしまう。困った様な顔をすると、ルイーズは満足そうに笑う。

「誘っているようだ」
「あの、服が」
「分かっているよ」

 そう言いながらもルイーズの手は内股を撫でる。抱き寄せられ、ルイーズの胸に体が触れる。熱くなっているのは感じる熱で知る事ができる。

「ふぅ」

 服の背が開き、続いてコルセットが緩められる。開かれていく背はそのまま素肌だ。そしてその背には、大きな傷跡がある。
 ルイーズはその傷の一つ一つに唇を寄せてくる。薄い皮膚はゾワゾワとした感覚をコナンに与えた。

「痛まないかい?」
「はい、もう」
「済まないな、こんな傷を残してしまって」

 申し訳なく言われたが、コナンはそれに笑って首を横に振った。そして、体を捻ってルイーズの唇に触れるだけのキスをした。

「平気です」
「……そうか」
「はい」

 だってこの傷は、忘れない為に大切なんだ。大切な人が出来た事、弱いままではその人を失ってしまうかもしれない事、その為に強くなる事。コナンは消えない傷に意味を与えた。
 すっかり裸にされたコナンは恥ずかしくモジモジとルイーズの前に立った。見られる事に居心地の悪さと興奮を同時に感じている。視線が熱ければ熱いほど、いたたまれなくなってしまう。

「緊張しているのかい?」
「だって」
「私も、脱がせてくれるかい?」

 コナンは頷いて、ルイーズの前に立った。緊張に硬くなりながらもボタンを外し、ジャケットを脱がせ、シャツのボタンも外していく。
 そうして露わになるルイーズの体は引き締まって綺麗だ。けれどその腹部には色の違う傷がある。コナンはそこに指を這わせ、申し訳ない顔をした。

「気にするな」
「でも」
「丁度いいんだ、これで。これは、私の戒めだ。馬鹿をした対価だからいい。これを見て、二度と君を悲しませるような事をしないと何度でも確認する」

 自嘲気味に笑うルイーズを見て、コナンはそっと彼の傷に触れ、膝を折ってキスをした。背にルイーズの唇が触れるのを心地よく思ったからだ。痛まないのなら、こうしたら少しは気持ちいいのではないか。そう思ってだった。
 ヒクリとルイーズの体が震える。痛んだのだろうかと見上げれば、濡れた瞳が見つめていた。

「コナン」
「あの……気持ちいい、ですか?」
「あぁ、とても。これ以上されたら、我慢が出来ないくらいに」
「!」

 するりと頬を撫でる形の良い指がくすぐったい。でも、くすぐったいばかりじゃない。余韻が肌に残っている。何かを期待するみたいにドキドキが止まらない。

「おいで、コナン」

 両脇に手を入れたルイーズが軽々とコナンを抱き上げる。声を上げたコナンは、あっという間にベッドの上へと上げられた。

 灯りを落とした室内でコナンはくすぐったく、もどかしい感覚にか細い声を上げている。ルイーズの唇が体のそこかしこを撫でていく。唇に、頬に、首筋に、胸に、腹に。足を持ち上げ露わになった内股の柔らかな部分にも、優しい口づけが落とされる。

「はぁ……」

 優しくもどかしい、くすぐったい感覚は慣れない。慣れないけれど、このムズムズする感覚の奥には熱いものがある。ゾクゾクっと、もどかしい感覚が駆け上がっていく。

「気持ちいいんだね」
「あっ、気持ち、いい?」

 これが、気持ちいいって事なんだろうか。経験がないから分からない。でも、モゾモゾしてゾクゾクして、それが全身に走っていく。駆け上がってくるこの熱い感覚は、なんだろう?

「分からないか。だが」
「っ!」

 唇が優しく胸の突起を含み、柔らかく舌を絡めた時に今までと違う感覚が湧いてくる。体が言う事をきかない。もっとそうして欲しいような、そわそわした気持ちになる。
 ルイーズは分かっているように尚も胸を刺激してくる。コリコリと芯を持ったようなそこから、じわじわと広がっていく。

「何も知らない体に、私だけを刻んでいくのもいいものだ」
「んぅ、ルイーズ様」
「今日は少しずつ、だな」

 苦笑したルイーズがコナンの体を抱き上げ、膝の上に乗せてしまう。後ろから抱きしめられるようにされ、温かな腕に抱かれている。けれど手はもどかしく胸を触り、唇は背中を撫でる。意図せずに息が上がって、心臓が音を立て始めた。

「んぅ」
「気持ちいいだろ?」
「はい……っ」

 恥ずかしくなってきて、隠そうと体を捩った。けれど後ろから抱き込まれているから上手くいかない。顎を取られ、唇を奪われる。これは明確に気持ちがいい。舌が絡まる度、チリッとしたものが背に走った。

「あ、ルイーズ様……」

 手が半分立ち上がった昂ぶりに触れ、緩く撫でていく。驚いて、でも全身に痺れが走る。カッと火がついたように熱くなる体が、ルイーズの腕の中でピンと強ばった。

「流石にこれには反応するな。自分ではするだろ?」
「でも、こんな……そんなにするわけじゃ」
「まぁ、性欲が強いタイプというわけではなさそうだからな。だが」
「ふぁあ!」

 先端を撫で回され、同時に乳首を強く捻られるとたまらない感覚が流れる。ヒクヒクと腰の辺りが揺れてしまう。一緒に昂ぶりの先端からぷくりと透明な滴が溢れた。
 塗り込むように握り込まれ、扱かれてルイーズの手の中でドンドン形を変えていく。クチュクチュといやらしい音が耳につく。何より自分でそれを見ているというのが恥ずかしくて興奮する。

「自分でするのとは、違うだろ?」
「あっ、ちがっ……っ!」

 違い過ぎる。自分でするのとは桁違いの気持ちよさにいても立ってもいられなくなる。息が乱れて、心臓がドキドキしていく。
 でもそうしてルイーズに体を預けていると、ふと背に違う熱を感じてしまう。

「あっ、ルイーズ……様も?」

 興奮してくれている?

 感じるのが嬉しい。何も出来ていないけれど、それでも興奮してくれている。
 けれどルイーズは「気にしなくていいよ」と熱い息で言うばかり。そして、扱き上げる手を早めてしまう。

「うぁ! あぁ、だめ……だめですそんなぁ」

 貴方にも気持ち良くなって欲しいのに。
 けれど追い上げるように全体を刺激され、乳首を捏ねられ唇を覆われる。優しい舌が口腔を舐め、手がイイ部分を引っかけるように何度も刺激していくのに勝てはしない。ドクドクと心臓が脈を打って頭の芯が痺れていって、呆然と受け入れている間に上り詰めてしまう。
 溢れ出た熱はいつまでも吐き出している。ルイーズの手を汚す白濁が溢れ出るのを見ていると、恥ずかしさに顔が熱くなった。気持ち良く前を何度か扱かれ、最後まで吐き出したのをただ見ていると、ルイーズは汚れた手を大切に舐めとる様に舌を伸ばしている。
 その姿を見て興奮してしまうのは浅ましいだろうか。どうしようもなく疼くのは、間違いだろうか。

 見ればルイーズの前もすっかり張りつめている。熱くそそり立つ部分が少し前のコナンと同じように先走りを流している。
 思わず、コナンは正面からルイーズの股座へと身を屈めて跪き、唇を寄せた。途端、ルイーズが低く息を詰めた。

「コナン、それは」
「僕にもさせてください。お願いします、僕もルイーズ様を気持ち良くしたい」

 上手くはないと思う。けれど、したい気持ちはある。先端を思いきって咥えてみる。そんの少し苦くて塩辛くて、でも嫌悪なんてない。咥えただけで口の中が一杯になって、ちょっと苦しかった。

「っ! コナン」
「させてください」

 上手く出来るだろうか。聞いた話をとにかく集めて、不器用に根元を柔らかく握り先端を咥えて体ごと上下に動かしてみる。じゅぶっじゅぶっという唾液と先走りの混ざった物が溢れてくる。

「むうぅ、ふっ」

 優しく頭を撫でられて、見上げれば優しく濡れて息を詰めるルイーズがいる。優しい動きで頭を撫でる姿に勇気づけられる。これでいいんだって、思えてくる。

「上手だよ、コナン」
「ひもひいぃれふか? (気持ちいいですか?)」
「あぁ、気持ちいいよ」

 髪を梳かれながら微笑んで言われたら、それだけで嬉しい。頑張って、全体を刺激するように口を窄めてしゃぶってみる。ルイーズが息を詰め、眉根が寄る。端正な顔が色に歪む姿に興奮するなんて思ってもみなかった。
 コナンもまたドキドキしてくる。もっと気持ち良くなってもらいたい。その気持ちのまま、一生懸命に口を動かし舌を動かした。拙いけれど、必死に。口の中で形も硬さも変えたそれを喉奥まで咥え込んでみた。

「コナン、それは!」

 苦しいけれど、嫌じゃない。もっと、もっとちゃんと、ルイーズと繋がっていたい。本当はちゃんと繋がりたいけれど、今はまだ。

「んっ、コナン、口を!」

 モゴモゴとだるくなりながらも口を動かして、もう一度喉の奥まで咥え込んだ。吸い込むようにすると苦しくて涙目になる。でも、ちゃんと伝わってくるんだ。口の中のルイーズは徐々に熱も硬さも増して脈打っている。

「コナン!」
「っ!」

 絶対に離したくない。だから、一杯に開いて根元まで飲み込む勢いだった。途端、喉の奥にドロリと絡むような熱が放たれる。咽せるように咳き込んだかれど、流し込まれた物は全部飲み込んだ。
 見上げれば、ルイーズが心配そうにしている。こんな事は何でもないのに心配性だ。

「無理をして飲まなくても」
「したかったんです。駄目、でしたか?」

 いけない事をしただろうか。でも、自分一人が気持ち良くしてもらって、それを返せないのは嫌だった。年上で、自分よりも沢山の事を知っているルイーズと対等に並ぶのは難しいけれど、でも、出来る事を諦めたくはない。
 ルイーズが困った顔をして頭を撫でてくれる。これがとても嬉しい。子供っぽいかもしれないけれど、ほっとする。

「嫌じゃなかったか?」
「いえ。その」
「ん?」

 モジモジと前を隠してむずがるコナンを見たルイーズが、何かに気付いて目を丸くし、嬉しそうに笑う。抱き上げられて、甘やかすようなキスをして抱きしめられる。この腕の中がとても幸せだ。

「繋がるのは十分に慣らしてからだが……いいだろうか」
「あの、少しくらい無理をしても」
「焦らなくてもいい。けれどたまにはこうして、二人で気持ちのいいことをしよう」
「はい」

 ゆっくり、とても焦れったい。でも、何も知らないから少しずつ進んでいけるのはいいのかもしれない。それを、ルイーズが許してくれるのならば。
 温かな場所を得て、コナンは幸せに微笑んだ。
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