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26章:宣戦布告
10話:陸路の行軍(ファウスト)
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第一師団をメインとした陸路隊が、前線ベルーニに到着したのは王都を発って三日目の午後。
状況は、予想していないものだった。
「なに、これ……」
ランバートが思わず呟いた言葉に、ファウストも苦虫を噛みつぶしたような顔をする。
砦には沢山の人が溢れている。ベルーニの町の人々が彼らに温かな飲み物を差し出し、医療府の面々が具合の悪くなった者がいないか声をかけている。
「ファウスト様!」
こちらへと気付いた砦の指揮官レノックスが、何とも言いがたい顔をしている。その肩を叩き、ファウストは背後の隊員に声をかけた。
「砦の中で一時解散! 十分休むように!」
「あの、ですが……」
周囲を気にして、みながザワザワとしている。手伝おうと考えているのかもしれない。だが、ファウストとしてはそこを譲らなかった。
「現状を確かめた後、明日には出る。その前にしっかりここまでの疲れを癒やしてくれ」
「解散!」
アシュレーの厳しい声に、戸惑いながらも砦の奥へと入っていく隊員達。ランバートも躊躇いながらその流れに乗っていく。
「レノ、会議室に」
「分かりました」
静かな声がそれだけを伝えた。
レノックス、グリフィス、ウェイン、エリオットが疲れた様子で座る。それだけで、現状の悪さは手に取るように分かる。特にエリオットとグリフィスの疲弊は目に余るものがあった。
「大丈夫か?」
思わず声をかけたが、大丈夫なはずはない。二人は顔を上げ、それでも苦笑を浮かべた。
「うっす」
「なんとか」
その様子に、アシュレーとオリヴァー、三人で眉根を寄せてしまった。
「現状の報告を頼む、レノ」
「はい」
議事を任されたレノックスが地図を広げる。そこには赤いラインが一本、そして、複数のバツ印がついている。
ラインは目的地リリーまで後一日という所で止まっていた。
「ラインが、現在前線のある場所です」
「バツは」
「襲われ、被害の出た場所です」
「……」
思った以上に多い被害に、やはり噛み締めるような気持ちになる。ここからリリーまでの行程はたったの二日。当初の予定ではとっくに前線はリリーの町まで到達しているはずだった。
「奴等は町の住人達に門扉を閉ざさせ、こちらの野営地を断っています。カーナンが焼かれた事で他の町は余計に自衛に走り常時門を閉じています」
西の地で主なき騎士団が市民生活の助けをしていたのは、デイジーの事件で知った。信頼を集めていたのはこの時の為だったのだろう。
信用させ、言うことを聞けば助かるのだと思わせて、裏切った。周囲の町はカーナンの焼き討ちを騎士団の行いとみるか、違うとみるか。疑心暗鬼な状態で、よそ者を拒絶していることだろう。
「一般人に怪我は」
「多少は。それよりは混乱の方が大きくて」
「他にもあるのか」
アシュレーは頭が痛いと言わんばかりの顔をする。気持ちは同じだが、同じ熱量で会話をしては進まない。重く苦いものを何度も飲み込んで、ファウストは続きを待った。
「周囲のちっせー村を、盗賊が襲ってやがるんですよ」
苦々しい声が低く響く。グリフィスは怒りの浮かぶ瞳でファウストを見る。そして、ソファーを一つ殴った。
「俺達の行く先々で堂々前に立つ奴がいる。多分そいつらはキフラスとかいうジェームダルの奴が率いてやがる。それはいい、堂々と戦える。だが、その側で盗賊が村を襲ってやがって、そっちにも人を出してる。怪我人も出てる」
「多方面に兵を分散しなくちゃいけない状況で、ちょっと疲弊が酷いんです」
ウェインが代弁するなんて珍しい状況に、よほどグリフィスが神経をすり減らしているのが分かる。そもそもの性格が「正々堂々かかってこい」なのだから、仕方のない事だ。
「兵糧と、医薬品も不足しています」
「え?」
エリオットの発言に、ファウストは目を向ける。彼もやはり疲れた顔をして、眉根を寄せている。
「焼き出されたり、村を襲われた民を砦に匿っているので、兵糧の消耗が激しくて。それに、医療機器では注射器と針が。薬はもう傷薬も麻酔も足りず、痛み止めに関しては危機的です。重症を負った者も薬が切れると酷く痛み出して眠れませんし、ストレスから体調を崩す人もいます。圧倒的に足りていません」
「補給の準備はしてきたはずだ」
「……何か、王都であって売れないと。麻酔、血圧関係、抗生物質が不足しそうで」
エリオットの顔に酷い焦燥が浮かぶ。苦しそうな顔をするエリオットには、とにかく疲れが見えている。
「傷の程度が軽い者が薬を我慢してくれています。レイバンは痛むでしょうに町の警備へと向かってくれましたし、ドゥーガルドも。重傷のチェスターすらも抗生剤を断ろうとして」
「深いのか?」
「敗血症など起こせば保ちませんしその危険は高い状態です。太股、肩とに深傷を負っていまして。一時は出血からショック状態に陥りそうでした。今は意識も戻りましたが、薬を止める事はできません」
エリオットは息を吐く。その様子を見たオリヴァーは立ち上がった。
「ファウスト様、部下を少し連れて出ます」
「どうする」
「帝国側の森を探して、薬草を採ってきます。特殊な薬は無理でも、痛み止めや止血薬などはあるでしょう」
「すまない、頼む」
頷いて、オリヴァーが出て行く。それを見送るエリオットは、申し訳なく俯いた。
「お前がそんな顔をするな、エリオット」
「すみません。ただ、不甲斐なくて……」
「お前は十分にやっているよ」
手を伸ばし、肩を叩く。それでもエリオットはなかなか顔を上げる事ができなかった。
「それで、どういたしましょうか?」
アシュレーの言いたい事は分かる。今後の行軍をどうするかだ。
「……グリフィス隊を、周辺の治安維持に当てる」
「ちょっと! そんな!」
思わぬ事だったのだろう、グリフィスは立ち上がって噛みつくような顔をする。だがファウストはそれをはねのけるように睨み付けた。
「行軍の先発を任せるには疲弊が激しい。少し下がってサポートに回れ」
「俺だけでも!」
「お前は師団長だグリフィス!」
その言葉に、グリフィスはビクリと体を震わせた。
酷な事を言っている。不完全燃焼のまま戦いの前線から下りろと言うのは、この男にとっては屈辱的な事だろう。だが、部隊はもうボロボロだ。疲弊した仲間を守り、指揮を執るのも師団長の役割だ。
「これが終わりじゃない。これは始まりだ。また直ぐに暴れてもらう事になる、我慢しろ」
「……はい」
納得はしていない。だが、役割として引き下がった。グリフィスはどっかりとソファーに座ったまま俯いていた。
「アシュレーにはベルーニと港を繋ぐ道と港の警備を頼む」
「輸送路の確保、ということですか?」
「あぁ。俺なら、そこを見過ごす様な事はしない」
兵糧が尽きれば戦いはできない。だからこそ、ルースは薬や兵糧を断とうとしている。これで輸送路まで抑えられたら戦えないだろう。
現在一番早い輸送路はベルーニからほど近い港だ。そこを使えば半日で物資が運べる。ここを見逃すはずがない。
「分かりました」
「ウェインは先発の第二師団を使って連絡係をしてくれ。今回はあちこちでゲリラ的に事が起こっている。迅速で、確かな情報が大事だ」
「分かりました」
「俺はこのまま前線まで行き、そこからリリーを目指して落とす」
「!」
その場に居る全員が強ばった顔をする。それはあまりに強硬な行軍だからだ。
「危険すぎます!」
「そうです!」
「薬も足りていないんですよ! そんな状態で無理矢理押し切るなんて!」
だが、これには理由もあるし譲る気もない。
「時間をかければかけるほど、事は悪化する。キフラス、ルース、レーティスに気をつければ後はどうにかなる」
それに、現在これだけの人を割いている。おそらくリリーにはそう人を残していないだろう。キフラスが主に表立って戦っているのなら、現場にいるはずだ。待ち構えて居るのは、きっとルースのみ。
「……ウェイン、ランバートを借りて行ってもいいか?」
ファウストの呟きに、ウェインは僅かに言葉を飲む。だが、少しして頷いた。
「勿論」
「すまない」
危険な前線に連れて行く事が正しいとは思えない。それでも側にと願うのは、離れがたい気持ちが強いからだった。
突然の吉報が舞い込んできたのは、まさにこんな煮詰まった時だった。
◆◇◆
▼ランバート
港から荷物が届いたと聞いて、ランバートは表に出て搬入を手伝っていた。
のだが、そこに予想していない人物がいるのを見て色んなものが吹っ飛んだ。
「兄上、なにしてるんだ!」
知っている黒いコートのハムレットを見たランバートは思わず厳しい声を投げた。だが、この兄に声の厳しさなんてのはあまりに些細過ぎたのだろう。声を聞いた途端輝いた目をして走ってきたかと思えば、いきなり抱きついてきた。
当然、公衆の面前だ。
「ランバートぉ!」
「止めてくれ兄上!!」
なんなんだこの兄は。そもそもなんでここにいるんだ。
「兄上、どうしてここにいるんだ。ここは戦いの前線基地だぞ!」
「心配できちゃった」
「アホか!」
なんて理由で危険な場所にきているんだ。思わず頭痛がする。
ランバートは困ったように引き離そうとするが、思いのほか力が強い。がっちり腕が回っていて全体重をかけてくる。
バタバタしていると、不意に横から誰かが間に無理矢理体を滑り込ませてきた。
「チェルル?」
「猫くん」
ランバートは不思議そうに、ハムレットは恨みがましく割り込んできた相手を見た。ランバートよりも少し小さな彼が、困った様に息をついた。
「もぉ、先生どれだけ弟大好きなのさ。困ってるじゃん」
「いいでしょ、別に」
「いいけれど、お仕事放り投げちゃダメじゃん。ちゃんと説明してねって、宰相さんに言われてきたんでしょ?」
そう言ったチェルルはほんの少しランバートを見上げる。その目がちょっとだけ強い気がした。でもそれは本当に一瞬で、そんな顔をされる覚えもないので「気のせい」という事にした。
「ハムレットさん?」
表に出て来たエリオットがランバートの背後から声をかける。そして、とても戸惑った顔をしていた。
「これは薬に……医療機器も! どうして」
「それは……」
「ハムレットさん?」
今度は町の入口方向から部下を連れたオリヴァーも顔を出し、周囲を見回して疑問そうな顔をする。その視線を受けて、ハムレットは面倒そうにこの場で王都で起こった事を説明した。
「アレックス……」
話を聞き終えたオリヴァーが、とても幸せそうな顔で左手の薬指に触れる。そこに指輪がはまっているのは全員が気付いていても口にはしなかった事だ。
ランバートは建国祭の時にオリヴァーが男性と一緒にいた事を知っていたから相手を知っていたが、何気に今この話題で持ちきりなのだ。
「では、無事に商人達がこれからは取引を?」
「うん。でも、直ぐにとはいかない。今用意できた分も大事に使わないと」
「えぇ。とりあえず、これで今を乗り切れます」
エリオットも明らかにホッとした顔をする。その様子に苦労が多すぎた。
「これからは僕も医者としてここにいるから、エリオットさんは少し休んで。正直医者にあるまじき不健康な顔色してる」
「兄上!」
「休んで、寝て、それから。その間は僕が診るから」
ハムレットのあまりに不躾な言葉にランバートは怒るが、エリオットの方は苦笑してランバートの肩を叩いた。
「確かに、疲れています。正直、薬が届いたと聞いてホッとしてしまって」
そう言った人は本当に青い顔をしている。寝ていないのか、目の下に隈がある。オリヴァーが支えて、砦の中へと入っていく。
「さて。荷物の搬入終わったら患者のカルテ見て、往診するよ」
ハムレットが途端に医者の顔をする。その側で、チェルルは助ける様に動いている。
ランバートはそれを見て、なにも言わずにその場を去った。
その夜、寝付けずに砦の中を歩き回っていたランバートは庭の一角で同じように寝付けずにいる人を見つけた。
ふと懐かしくなる。恋人になる前は、こうして二人修練場に並んで月を見上げていた。
心が落ち着いていく。ランバートは微笑んで、ゆっくりと近づいていった。
「寝付けませんか?」
声をかければ黒水晶の瞳が苦笑を返してくる。自然と隣りに並び、同じく空を見上げた。
「久しぶりだな、こういうのも」
「いつも会えば抱き合ってばかりですから」
「盛りのついた猫の様に言うな」
「違いますか?」
「……」
なんとも言えない顔で睨むファウストを見ると、思わず笑ってしまう。そうするとますます眉根が寄るのだ。
「……大丈夫ですよ」
「……あぁ」
何を不安に思っているのかは分かっている。チェスターを見舞って、話を聞いた。正直こうまで状況が悪いとは思わなかった。
けれど、だからといって俯いて何になる。既に始まっているのだから、行くところまで行かないと終われないのだ。
「ランバート」
「置いて行ったら恨みますよ」
先制で言えば、ファウストは面食らった顔をして笑う。そしてそっと、髪を撫でて引き寄せた。
「悪い、手放せなくて」
「それでいいんです。側にいます」
「……危険を考えれば、砦を守れと言いたいが」
「怒るぞ」
「分かっている」
こんな事を言いながらも、その心はもう共に戦う事をほのめかせている。だから素直に凭りかかった。
「何があっても、側にいるから」
「守ってみせる」
「俺も、守ってみせる」
互いに肩を寄せ合って呟く様に言って、しばし言葉はなかった。
◆◇◆
▼チェルル
この様子を、少し離れてハムレットが見ていた。いや、見てしまったと言うべきか。
物陰に隠れたまま、動けずにいる人の後ろにいるチェルルはどう声をかけていいか分からなかった。
「あの……」
「……そっか」
「……うん」
短いけれど、理解したみたいだった。
当然だ、二人の距離はとても近い。上司と部下、友人よりもずっと。どこからどう見ても決戦を前に寄りそう二人は恋人だった。
不意にハムレットが振り向いて、覆い被さるみたいに抱きついた。突然かかった加重にジタジタしてしまう。けれどその背が震えていたから、振り払う事もできなかった。
「別にね、恋情じゃないよ」
「分かってるよ」
「……寂しいだけだよ」
「うん」
そんなの分かっている。流石に弟に恋情を抱く人じゃないのは分かった。寂しいから、弟にそれが向いているんだ。
「嫌な奴なら、いびっていびっていびり倒してやるのに」
「いや、それ嫌われる……」
「弟を幸せにできない力ない奴なら良かったのに」
「あぁ、うん」
あの人はそれに当てはまりはしないだろう。
国の軍神、隊を率いる人物。お人好しで、強くて、優しいのだという。
「幸せそうだった」
「え?」
「あんな顔、見た事ない。幸せそうに、強く笑って……悔しい」
ハムレットの背中を叩きながら、チェルルは頷いた。
「大丈夫、寂しいなんてすぐ忘れるよ」
「猫くんが忘れさせてくれるの?」
「俺でいいの?」
思わず問いかける。
けれどハムレットは少し言葉を無くして、小さく呟いた。
「意地悪。元の主が恋しくて泣いてるくせに」
「っ」
言われて、胸が痛んだ。それを言われると痛い。
けれど、最近思うのだ。この人の側が心地よくて、この人の為に何か出来る事が嬉しくて、落ち込んだり誤解されると腹が立つ。
この気持ちは、なんだろう。今も何かしてあげたいのに、何が出来るのか分からなくて自分に腹が立つ。
「猫くんも、僕を捨てるんだ」
呟いて、離れた体が寂しくて、それでも背中は拒絶している。それを見ながら、チェルルはとても寂しくなった。
状況は、予想していないものだった。
「なに、これ……」
ランバートが思わず呟いた言葉に、ファウストも苦虫を噛みつぶしたような顔をする。
砦には沢山の人が溢れている。ベルーニの町の人々が彼らに温かな飲み物を差し出し、医療府の面々が具合の悪くなった者がいないか声をかけている。
「ファウスト様!」
こちらへと気付いた砦の指揮官レノックスが、何とも言いがたい顔をしている。その肩を叩き、ファウストは背後の隊員に声をかけた。
「砦の中で一時解散! 十分休むように!」
「あの、ですが……」
周囲を気にして、みながザワザワとしている。手伝おうと考えているのかもしれない。だが、ファウストとしてはそこを譲らなかった。
「現状を確かめた後、明日には出る。その前にしっかりここまでの疲れを癒やしてくれ」
「解散!」
アシュレーの厳しい声に、戸惑いながらも砦の奥へと入っていく隊員達。ランバートも躊躇いながらその流れに乗っていく。
「レノ、会議室に」
「分かりました」
静かな声がそれだけを伝えた。
レノックス、グリフィス、ウェイン、エリオットが疲れた様子で座る。それだけで、現状の悪さは手に取るように分かる。特にエリオットとグリフィスの疲弊は目に余るものがあった。
「大丈夫か?」
思わず声をかけたが、大丈夫なはずはない。二人は顔を上げ、それでも苦笑を浮かべた。
「うっす」
「なんとか」
その様子に、アシュレーとオリヴァー、三人で眉根を寄せてしまった。
「現状の報告を頼む、レノ」
「はい」
議事を任されたレノックスが地図を広げる。そこには赤いラインが一本、そして、複数のバツ印がついている。
ラインは目的地リリーまで後一日という所で止まっていた。
「ラインが、現在前線のある場所です」
「バツは」
「襲われ、被害の出た場所です」
「……」
思った以上に多い被害に、やはり噛み締めるような気持ちになる。ここからリリーまでの行程はたったの二日。当初の予定ではとっくに前線はリリーの町まで到達しているはずだった。
「奴等は町の住人達に門扉を閉ざさせ、こちらの野営地を断っています。カーナンが焼かれた事で他の町は余計に自衛に走り常時門を閉じています」
西の地で主なき騎士団が市民生活の助けをしていたのは、デイジーの事件で知った。信頼を集めていたのはこの時の為だったのだろう。
信用させ、言うことを聞けば助かるのだと思わせて、裏切った。周囲の町はカーナンの焼き討ちを騎士団の行いとみるか、違うとみるか。疑心暗鬼な状態で、よそ者を拒絶していることだろう。
「一般人に怪我は」
「多少は。それよりは混乱の方が大きくて」
「他にもあるのか」
アシュレーは頭が痛いと言わんばかりの顔をする。気持ちは同じだが、同じ熱量で会話をしては進まない。重く苦いものを何度も飲み込んで、ファウストは続きを待った。
「周囲のちっせー村を、盗賊が襲ってやがるんですよ」
苦々しい声が低く響く。グリフィスは怒りの浮かぶ瞳でファウストを見る。そして、ソファーを一つ殴った。
「俺達の行く先々で堂々前に立つ奴がいる。多分そいつらはキフラスとかいうジェームダルの奴が率いてやがる。それはいい、堂々と戦える。だが、その側で盗賊が村を襲ってやがって、そっちにも人を出してる。怪我人も出てる」
「多方面に兵を分散しなくちゃいけない状況で、ちょっと疲弊が酷いんです」
ウェインが代弁するなんて珍しい状況に、よほどグリフィスが神経をすり減らしているのが分かる。そもそもの性格が「正々堂々かかってこい」なのだから、仕方のない事だ。
「兵糧と、医薬品も不足しています」
「え?」
エリオットの発言に、ファウストは目を向ける。彼もやはり疲れた顔をして、眉根を寄せている。
「焼き出されたり、村を襲われた民を砦に匿っているので、兵糧の消耗が激しくて。それに、医療機器では注射器と針が。薬はもう傷薬も麻酔も足りず、痛み止めに関しては危機的です。重症を負った者も薬が切れると酷く痛み出して眠れませんし、ストレスから体調を崩す人もいます。圧倒的に足りていません」
「補給の準備はしてきたはずだ」
「……何か、王都であって売れないと。麻酔、血圧関係、抗生物質が不足しそうで」
エリオットの顔に酷い焦燥が浮かぶ。苦しそうな顔をするエリオットには、とにかく疲れが見えている。
「傷の程度が軽い者が薬を我慢してくれています。レイバンは痛むでしょうに町の警備へと向かってくれましたし、ドゥーガルドも。重傷のチェスターすらも抗生剤を断ろうとして」
「深いのか?」
「敗血症など起こせば保ちませんしその危険は高い状態です。太股、肩とに深傷を負っていまして。一時は出血からショック状態に陥りそうでした。今は意識も戻りましたが、薬を止める事はできません」
エリオットは息を吐く。その様子を見たオリヴァーは立ち上がった。
「ファウスト様、部下を少し連れて出ます」
「どうする」
「帝国側の森を探して、薬草を採ってきます。特殊な薬は無理でも、痛み止めや止血薬などはあるでしょう」
「すまない、頼む」
頷いて、オリヴァーが出て行く。それを見送るエリオットは、申し訳なく俯いた。
「お前がそんな顔をするな、エリオット」
「すみません。ただ、不甲斐なくて……」
「お前は十分にやっているよ」
手を伸ばし、肩を叩く。それでもエリオットはなかなか顔を上げる事ができなかった。
「それで、どういたしましょうか?」
アシュレーの言いたい事は分かる。今後の行軍をどうするかだ。
「……グリフィス隊を、周辺の治安維持に当てる」
「ちょっと! そんな!」
思わぬ事だったのだろう、グリフィスは立ち上がって噛みつくような顔をする。だがファウストはそれをはねのけるように睨み付けた。
「行軍の先発を任せるには疲弊が激しい。少し下がってサポートに回れ」
「俺だけでも!」
「お前は師団長だグリフィス!」
その言葉に、グリフィスはビクリと体を震わせた。
酷な事を言っている。不完全燃焼のまま戦いの前線から下りろと言うのは、この男にとっては屈辱的な事だろう。だが、部隊はもうボロボロだ。疲弊した仲間を守り、指揮を執るのも師団長の役割だ。
「これが終わりじゃない。これは始まりだ。また直ぐに暴れてもらう事になる、我慢しろ」
「……はい」
納得はしていない。だが、役割として引き下がった。グリフィスはどっかりとソファーに座ったまま俯いていた。
「アシュレーにはベルーニと港を繋ぐ道と港の警備を頼む」
「輸送路の確保、ということですか?」
「あぁ。俺なら、そこを見過ごす様な事はしない」
兵糧が尽きれば戦いはできない。だからこそ、ルースは薬や兵糧を断とうとしている。これで輸送路まで抑えられたら戦えないだろう。
現在一番早い輸送路はベルーニからほど近い港だ。そこを使えば半日で物資が運べる。ここを見逃すはずがない。
「分かりました」
「ウェインは先発の第二師団を使って連絡係をしてくれ。今回はあちこちでゲリラ的に事が起こっている。迅速で、確かな情報が大事だ」
「分かりました」
「俺はこのまま前線まで行き、そこからリリーを目指して落とす」
「!」
その場に居る全員が強ばった顔をする。それはあまりに強硬な行軍だからだ。
「危険すぎます!」
「そうです!」
「薬も足りていないんですよ! そんな状態で無理矢理押し切るなんて!」
だが、これには理由もあるし譲る気もない。
「時間をかければかけるほど、事は悪化する。キフラス、ルース、レーティスに気をつければ後はどうにかなる」
それに、現在これだけの人を割いている。おそらくリリーにはそう人を残していないだろう。キフラスが主に表立って戦っているのなら、現場にいるはずだ。待ち構えて居るのは、きっとルースのみ。
「……ウェイン、ランバートを借りて行ってもいいか?」
ファウストの呟きに、ウェインは僅かに言葉を飲む。だが、少しして頷いた。
「勿論」
「すまない」
危険な前線に連れて行く事が正しいとは思えない。それでも側にと願うのは、離れがたい気持ちが強いからだった。
突然の吉報が舞い込んできたのは、まさにこんな煮詰まった時だった。
◆◇◆
▼ランバート
港から荷物が届いたと聞いて、ランバートは表に出て搬入を手伝っていた。
のだが、そこに予想していない人物がいるのを見て色んなものが吹っ飛んだ。
「兄上、なにしてるんだ!」
知っている黒いコートのハムレットを見たランバートは思わず厳しい声を投げた。だが、この兄に声の厳しさなんてのはあまりに些細過ぎたのだろう。声を聞いた途端輝いた目をして走ってきたかと思えば、いきなり抱きついてきた。
当然、公衆の面前だ。
「ランバートぉ!」
「止めてくれ兄上!!」
なんなんだこの兄は。そもそもなんでここにいるんだ。
「兄上、どうしてここにいるんだ。ここは戦いの前線基地だぞ!」
「心配できちゃった」
「アホか!」
なんて理由で危険な場所にきているんだ。思わず頭痛がする。
ランバートは困ったように引き離そうとするが、思いのほか力が強い。がっちり腕が回っていて全体重をかけてくる。
バタバタしていると、不意に横から誰かが間に無理矢理体を滑り込ませてきた。
「チェルル?」
「猫くん」
ランバートは不思議そうに、ハムレットは恨みがましく割り込んできた相手を見た。ランバートよりも少し小さな彼が、困った様に息をついた。
「もぉ、先生どれだけ弟大好きなのさ。困ってるじゃん」
「いいでしょ、別に」
「いいけれど、お仕事放り投げちゃダメじゃん。ちゃんと説明してねって、宰相さんに言われてきたんでしょ?」
そう言ったチェルルはほんの少しランバートを見上げる。その目がちょっとだけ強い気がした。でもそれは本当に一瞬で、そんな顔をされる覚えもないので「気のせい」という事にした。
「ハムレットさん?」
表に出て来たエリオットがランバートの背後から声をかける。そして、とても戸惑った顔をしていた。
「これは薬に……医療機器も! どうして」
「それは……」
「ハムレットさん?」
今度は町の入口方向から部下を連れたオリヴァーも顔を出し、周囲を見回して疑問そうな顔をする。その視線を受けて、ハムレットは面倒そうにこの場で王都で起こった事を説明した。
「アレックス……」
話を聞き終えたオリヴァーが、とても幸せそうな顔で左手の薬指に触れる。そこに指輪がはまっているのは全員が気付いていても口にはしなかった事だ。
ランバートは建国祭の時にオリヴァーが男性と一緒にいた事を知っていたから相手を知っていたが、何気に今この話題で持ちきりなのだ。
「では、無事に商人達がこれからは取引を?」
「うん。でも、直ぐにとはいかない。今用意できた分も大事に使わないと」
「えぇ。とりあえず、これで今を乗り切れます」
エリオットも明らかにホッとした顔をする。その様子に苦労が多すぎた。
「これからは僕も医者としてここにいるから、エリオットさんは少し休んで。正直医者にあるまじき不健康な顔色してる」
「兄上!」
「休んで、寝て、それから。その間は僕が診るから」
ハムレットのあまりに不躾な言葉にランバートは怒るが、エリオットの方は苦笑してランバートの肩を叩いた。
「確かに、疲れています。正直、薬が届いたと聞いてホッとしてしまって」
そう言った人は本当に青い顔をしている。寝ていないのか、目の下に隈がある。オリヴァーが支えて、砦の中へと入っていく。
「さて。荷物の搬入終わったら患者のカルテ見て、往診するよ」
ハムレットが途端に医者の顔をする。その側で、チェルルは助ける様に動いている。
ランバートはそれを見て、なにも言わずにその場を去った。
その夜、寝付けずに砦の中を歩き回っていたランバートは庭の一角で同じように寝付けずにいる人を見つけた。
ふと懐かしくなる。恋人になる前は、こうして二人修練場に並んで月を見上げていた。
心が落ち着いていく。ランバートは微笑んで、ゆっくりと近づいていった。
「寝付けませんか?」
声をかければ黒水晶の瞳が苦笑を返してくる。自然と隣りに並び、同じく空を見上げた。
「久しぶりだな、こういうのも」
「いつも会えば抱き合ってばかりですから」
「盛りのついた猫の様に言うな」
「違いますか?」
「……」
なんとも言えない顔で睨むファウストを見ると、思わず笑ってしまう。そうするとますます眉根が寄るのだ。
「……大丈夫ですよ」
「……あぁ」
何を不安に思っているのかは分かっている。チェスターを見舞って、話を聞いた。正直こうまで状況が悪いとは思わなかった。
けれど、だからといって俯いて何になる。既に始まっているのだから、行くところまで行かないと終われないのだ。
「ランバート」
「置いて行ったら恨みますよ」
先制で言えば、ファウストは面食らった顔をして笑う。そしてそっと、髪を撫でて引き寄せた。
「悪い、手放せなくて」
「それでいいんです。側にいます」
「……危険を考えれば、砦を守れと言いたいが」
「怒るぞ」
「分かっている」
こんな事を言いながらも、その心はもう共に戦う事をほのめかせている。だから素直に凭りかかった。
「何があっても、側にいるから」
「守ってみせる」
「俺も、守ってみせる」
互いに肩を寄せ合って呟く様に言って、しばし言葉はなかった。
◆◇◆
▼チェルル
この様子を、少し離れてハムレットが見ていた。いや、見てしまったと言うべきか。
物陰に隠れたまま、動けずにいる人の後ろにいるチェルルはどう声をかけていいか分からなかった。
「あの……」
「……そっか」
「……うん」
短いけれど、理解したみたいだった。
当然だ、二人の距離はとても近い。上司と部下、友人よりもずっと。どこからどう見ても決戦を前に寄りそう二人は恋人だった。
不意にハムレットが振り向いて、覆い被さるみたいに抱きついた。突然かかった加重にジタジタしてしまう。けれどその背が震えていたから、振り払う事もできなかった。
「別にね、恋情じゃないよ」
「分かってるよ」
「……寂しいだけだよ」
「うん」
そんなの分かっている。流石に弟に恋情を抱く人じゃないのは分かった。寂しいから、弟にそれが向いているんだ。
「嫌な奴なら、いびっていびっていびり倒してやるのに」
「いや、それ嫌われる……」
「弟を幸せにできない力ない奴なら良かったのに」
「あぁ、うん」
あの人はそれに当てはまりはしないだろう。
国の軍神、隊を率いる人物。お人好しで、強くて、優しいのだという。
「幸せそうだった」
「え?」
「あんな顔、見た事ない。幸せそうに、強く笑って……悔しい」
ハムレットの背中を叩きながら、チェルルは頷いた。
「大丈夫、寂しいなんてすぐ忘れるよ」
「猫くんが忘れさせてくれるの?」
「俺でいいの?」
思わず問いかける。
けれどハムレットは少し言葉を無くして、小さく呟いた。
「意地悪。元の主が恋しくて泣いてるくせに」
「っ」
言われて、胸が痛んだ。それを言われると痛い。
けれど、最近思うのだ。この人の側が心地よくて、この人の為に何か出来る事が嬉しくて、落ち込んだり誤解されると腹が立つ。
この気持ちは、なんだろう。今も何かしてあげたいのに、何が出来るのか分からなくて自分に腹が立つ。
「猫くんも、僕を捨てるんだ」
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