特殊スキル「安産」で異世界を渡り歩く方法

凪瀬夜霧

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【ユーリス編】本編余談

11話:赤い果実【R-18】

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――貴方の子供、産みます

 マコトから出たその言葉を、俺は最初受け止めきれなかった。
 マコトが恐れているのは知っている。俺の事を好きだと言ってくれた今でも、恐れがなくなったとは思えない。戸惑い、でも軋むように鳴る心臓の音を無視もできない。

 嬉しい。愛しい。

 その言葉が溢れていく。

 傷つけたくない。無理をしないでくれ。

 苦しさも同じように、溢れてくる。

 マコトの瞳を覗き込む。柔らかく穏やかで、でも強い意志の光を秘める瞳を。マコトは逃げていない。ジッと、俺を見て望んでいる。前とは明らかに違う、望まれている。そう、分かる瞳だ。
 逃げているのは俺のほうだ。こんなにして、未だに嫌われる事を恐れるなんてバカでしかない。マコトは戻ってきてくれたんだ、こんなにも傷つけた情けない俺の側に。

 そっと、小瓶から薬を取りだした。マコトの手が、そこに静かに重なっていく。そして、沢山の愛しいを乗せてキスをした。
 ぎこちない唇を割って、小さく受け入れる口腔を探っていく。震える舌を絡めて、優しく吸った。ビクンと震えた体を抱きしめたまま、穏やかに、時間をかけて、大切に触れていく。
 自然と離れたその顔は赤くトロリと色香を纏っている。愛らしく、扇情的。小さな体は俺から見ると頼りなく幼くさえ見える事があるのに、この色香は何よりも俺の欲を煽り立てる。匂い立つ肌が、より深く誘っていく。
 力の抜けた蕩けるような笑みを見せるマコトの頬にもそっとキスをして、俺はそっと手の平の薬を見つめた。
 薬は、真っ赤だった。元が白かったなんて誰が思えるのかと言わんばかりに赤い。そういう実かと思ってしまった。
 ドクンと、また一つ鼓動が跳ねる。薬の色は愛情の色。深く赤く色づくのは互いの心の深さ、求める深さだ。
 マコトも俺を求めてくれている。愛してくれている。俺との子を……未来を望んでくれている。
 マコトを盗み見ると、マジマジと薬をみている。戸惑っているようなその表情に俺は内心で笑った。

 これは、君が俺に向けてくれる愛情の証し。そして、俺が君を求める証しだ。

「珍しいな、こんなに色がつくなんて」
「不良品ですか?」

 不安そうにしている彼に、俺は首を横に振る。

「色の濃さは愛情の深さと結びつきの強さだ。色が濃いほどに強い子供が宿る」
「あっ、じゃあいいことなんだ」

 そう言うと、マコトは俺の手からヒョイと薬を取り上げて、躊躇いもなく一呑みにしてしまう。俺は驚いて……でも嬉しさが大きくてそれを見ていた。嚥下される薬が、徐々に体に馴染んで臍の周りに印が浮かぶ。深く濃く浮かぶそれはマコトが俺を受け入れる準備が出来た証拠。俺の子を、宿せる証拠だ。
 心臓の音がうるさい。分かっている、興奮しているのは。こんなに幸せな欲もないんだ。大切にしたい、愛している人が俺を望んでくれるなんて。
 だが同時に、俺はちゃんと言い聞かせなければいけない。マコトにスキルがあっても傷つく事がないわけじゃない。竜人族はアレが大きい。これを受けるのは小さなマコトの体だ。無理などさせれば壊してしまう。
 マコトはしきりに臍の周りにある印を気にしている。これが何かも分からないのに、躊躇いもないなんて。俺は笑っている。とても、温かな気持ちで。

「早いな」
「なに?」
「薬が体に馴染んで、子を成す準備ができた証だ」

 言えば、マコトは真っ赤になった。とても恥ずかしそうな顔をするんだ、可愛い。
 俺はマコトをゆっくりと押し倒し、見下ろしている。黒い瞳が俺を見つめて、柔らかく笑っている。そしてその手は、しきりに印を撫でている。

「痛むのか?」

 心配になって問いかけた。異世界人のマコトには薬が合わなかったのだろうか。思って問えば、マコトは楽しそうに笑って首を横に振っている。

「ん? ううん、願掛け」
「願掛け?」
「父さんに似て生まれろよ。俺に似たらチビだぞって」

 実に楽しそうに笑って言うマコトを、俺はどうしたらいい?
 あまりに可愛く、あまりに愛しく、あまりに疼く。そんな事を言われて疼かない男がいるものか。まだ触れてもいない彼の中に、俺は新たな命を既に見たのかもしれない。いや、もっと先も見える気がする。彼の手に抱かれた愛しく小さな命の姿を、俺は見た気がした。

「可愛い事を言われると困る」
「可愛い?」
「俺はマコトに似た可愛い子でもいい。女の子なら、マコトに似てもらいたい」
「俺似?」
「あぁ。だが、そうだな……嫁に出せなくなるな」
「どこまで先の心配してるの?!」

 焦ったように目をまん丸にしたマコトの顔が赤い。俺はそれに笑った。本当に、愛しい。
 だが本当に、マコトに似た子だったら俺は嫁になど出せるだろうか。相手を既に査定しそうな予感がする。幸せにしてくれる相手じゃなければ認めない。大切にする相手じゃなければ認めない。嫁になど出さない……と言えば、狭量な父と嫌われるだろうな。
 楽しそうに笑うマコトに、俺も同じように笑う。そして、そっと音を立てるようにキスをした。頬にした親愛のキスにマコトは嬉しそうにする。でもどこか、切なくもあるようだ。

「じゃあ、まずはしっかり子作りだね。俺、幸せな家族って憧れだからさ、子供何人いてもいいよ」
「マコト」
「そのかわり、ちゃんと愛情もって育てられるだけにして下さい。愛してあげられないなら、沢山なんていりません」

 ピッと指を立てて宣言したマコトに、俺は確かに誓いを立てる。親の愛情に飢えていたマコトの、最も嫌う事。俺はそんな事は絶対にしない。これからどれだけの子を授かろうとも、その全てを愛し、責任もって育てる事を誓える。
 俺が頷けば、マコトは安心したように微笑んだ。

 マコトの体はとても無垢だった。媚薬に犯されていた時ならいざ知らず、今はとても緊張している。俺はそこを解くように唇で触れた。キスをして、滑るように肌をなぞる。滑らかな肌だ。しっとりと濡れる肌に触れても、マコトの体は緊張に強ばる。

「マコト、もっと緊張解して」

 声をかけてみたが、濡れた瞳が僅かに揺れる。まるで「無理」と言っているようだ。
 それも仕方がない。経験のないことにマコトは弱い。今だって、たっぷりの勇気で抱き合っている。
 少しでも気持ちよくなってもらいたい。俺はゆっくりと触れた。怖いなんて思わないように、気持ちいいと思ってもらえるように、愛していると伝わるように。
 甘い声が我慢出来ずに小さく漏れている。けれどそんな自分の声に顔を赤くしている。なんて愛らしい事をしているのだろう、マコトは。本当に、まっさらだ。
 愛らしい胸の突起に俺は触れた。フルフルと震えるそこを口に含み、転がすと高い声が上がる。直ぐにそこは反応を示して硬く尖り始める。その感触が俺を煽る。切ない声だけでも己の欲望が深くなるのを感じるのに。

「あっ、あの!」
「ん?」

 恥ずかしそうに顔を真っ赤にしたマコトが、声を大きく必死に声を上げる。俺は体を離してその目を見た。何か、焦っている? それとも、困っている? 色気とは違う顔を見て、俺は内心笑った。どこまでいっても、何をしていてもマコトはマコトだと。

「子供、出来るじゃないですか」
「あぁ、そうだな」
「そうしたら俺、その……母乳? 的なものって、出るんですか?」

 しばし沈黙。俺は聞かれた事に一瞬頭がついていかなかった。
 確か……出ると聞いた。ランセルが以前自分の子供の子育て風景をはた迷惑にも語っていた。アレは子供と嫁の事になると少し別人になる。
 っというか、マコトは何を心配しているんだ? 子育ての事なのか? もうそこの心配をしたのか?
 でもふと、笑いたくなる。多分乳首を攻められて、それで思い至ったんだろう。そういう、少し違う角度から来る彼の発想や質問も俺は楽しい。

「出るはずだ。生まれて一ヶ月は出るな」
「出るんだ……」

 今度は遠い目をした。想像できないんだろう、しきりに自分の胸元を見て、手で軽くモミモミしている。それは何かの予行演習か?

「そうか……そうだな」

 ふと浮かんだ妄想に、俺は正直に行動した。マコトの控え目な胸に唇を寄せ、さっきよりも強く吸い付いた。

「え? ふぅ! んぅぅ!」

 高い嬌声は、そのまま快楽に聞こえる。刺激したまま転がしていく。ふと思ったのだ、子が出来てここが薄らと膨らんだ時の姿というものを。どんな反応をするのかと。思ったら、欲望が疼いた。
 マコトは胸が弱いらしい。触れる肌が熱くなっていく。緊張とは違う強張り。俺はそのまま胸への刺激はしつつ、体に触れる。臍の辺りも感じているようだが、上手く伝わっていない。もう少しゆっくりと開発すれば、きっと気持ちよくなるんだろう。
 実際、マコトの高ぶりは随分と濡れている。俺の体に知らず擦り寄せている。手で刺激するだけでガクガクと震えているマコトは溺れていってくれる。たまらず、俺はマコトのものを咥えこんだ。

「ふぅぅ!」

 大分、限界だったんだろう。咥え込んで直ぐに果てたマコトを受け止め、俺はそれを下へと塗り込む。口で、舌で愛撫する事は今までなかった。それでも、体の使い方は嫌ってほどに分かっている。初めてでも口でそこを解していくと、わりと簡単に受け入れていく。
 少しだが違和感はあった。反応を見るにマコトは間違いなくこうした経験がない。なのに後ろは既に男を知っているように柔らかく解れ、感じている。なんともちぐはぐな感じがしている。才能がある……と言えば、マコトはまた顔を真っ赤にして困るのだろう。
 それでも、きっと俺を受け入れるには足りないだろう。すっかり煽られて硬く張り詰めてしまっている。少し恥ずかしいくらいだ。目覚めたばかりの思春期じゃあるまいし、いたいほどに腫れているなんて余裕がなさ過ぎる。

「柔らかい。だが」

 マコトが俺の高ぶりを見て、怖々と動きを止める。それを見て、俺は苦笑した。

「怖い……よな?」
「あぁ……」

 今日にこだわる事はない。怖い思いや、痛い思いをさせてしまっては次もなくなる。今日は気持ちいい事だけをしたっていいはずだ。
 そう理性は俺に言うのに、欲望はどうだ。欲しいとガキのように訴える。分かっているそんな事。欲しいんだ、俺は。どれだけ時間をかけても、このままマコトを抱きたい。暴き立て、押さえつけてでも欲しいんだ。だが、どうして出来る。愛した人が痛みに苦しみ泣き叫ぶ姿を見たいのか。切れて流れ出る血を、俺は見たいのか。それでもまだ、この行為を続けられるのか。

「大丈夫、俺のスキルの中に付属があった」
「付属?」
「えっと……あっ、拡張適応スキル! そうだ、それだ!」

 逡巡する俺の腕を掴んだマコトが必死になって言う。俺は聞いた事の無いスキルに目をパチクリとした。拡張適応? そんな夢のようなスキルがあるのか。

「えっと、安産スキルの付属スキル。どんな大きさでも傷つかないって。そのレベルも高いから、無理しても大丈夫。切れたり、傷がついたりしないから。だから、今更しないとかなし。お願い、俺は欲しい」
「マコト」
「ユーリスさんが欲しい」

 必死に言ってくるマコトの気持ちが伝わる。求められている。それが、俺の最後の迷いを消し去った。
 マコトの体を倒して、奥を解す。ちぐはぐに感じたその違和感の正体が分かってすっきりとした。俺の指を、マコトの中は柔らかく包んで締め付けてくる。その温かさ、締め付けに指だけだというのに欲情する。多少無理をしても本当に裂けない。あっという間に指3本を飲み込み、中で大きく広げてもマコトは苦痛を訴えない。

「ユーリスさん、もっ……ほしぃ」

 その訴えに俺の理性も限界だ。指を抜き去り、擦りつけるようにあてがうと、そのまま腰を進める。飲み込んでいくそこは難なく吸い込んでいく。そのあまりの熱さに入れただけで俺は腰が引けた。こんな事初めてだ。まだカリまでしか入っていないのに、マコトの中は蕩けている。
 ゆっくり時間をかけて奥へと押し入っていく。まるで俺の形を覚えるように、中が蠢いて時折強く絞め殺すような勢いで食いついてくる。

 もしかして、イッてるのか?

 薬を飲めば中が敏感になる。子種を受け入れる口が性感帯になっている。中だけで何度だって極められる。行為の間中ずっとイキっぱなしで狂いそうだった。そんな話を聞いた事がある。
 やがて、俺は根元までマコトの中に押し入った。そして、その奥にある部分を狙うように腰を打ち付けた。

「はぁぁ!」
「マコト」
「そこ……ダメぇ」

 あぁ、そんなのは俺も感じている。先端を飲み込まれるようにも感じる。吸い付かれているようにすら感じて、俺も呻く。腰が抜ける。下手に動けばマコトを満足させる前に俺が陥落だ。流石にそんな体たらくな事にはしたくない。全体を使って、奥ばかりを突かないようにして、俺はマコトと自身を導いていく。
 腕で口元を隠すマコトはとても恥ずかしそうにしている。可愛いのに、どうして隠してしまうんだ。もっと、声を聞きたいのに。
 そっと、邪魔な腕をどかした。真っ赤にして、目を潤ませて、唇が濡れている。魅力的で困る。頼りなく濡れる欲情の瞳が、だらしなく呆けた口元が、甘く泣くその声が俺を魅了して止まない。

「隠さなくていいだろ」
「煩くない?」
「腰にくる」

 実際は、感じすぎてまずいだが。

 ダメだ、もう余裕もない。深く抉るようにマコトを抱き込む。やはり奥が気持ちいいらしい。苦痛もあるはずの行為を、マコトは快楽と取っている。最奥が、吸い付いて離れない。

「ここ、気持ちいいんだろ?」
「ふっ、うん!」
「ここに注ぐんだよ」
「へ?」
「さっきから、随分熱烈だ。吸い付いて離れない」
「そん……ひっ!」

 知らなかったのだろう。教えたら、途端に中の感じも変わった。食い閉められて、俺は墓穴を掘ったのだと知る。言葉で責められるのも弱いのか。恥ずかしい事を教えれば、マコトはよく反応する。

「いいかな、そろそろ。これ以上は俺もダメだ」
「いぃ!」

 許可ももらい、俺は少し乱暴に腰を進める。本当に少しの間だ。マコトは白く細い体を痙攣させて果てていく。それと同時に中で搾り取られ、口で吸い上げられて俺も果てた。飲み込まれていく、そう感じるほどにリアルなものを感じる。マコト自身は欲望を知らないのに、マコトの体は随分と快楽に貪欲だ。体に力が入らずに震えてしまう。まだ吸い付かれている。何もかもを捧げろと言わんばかりだ。
 それでも少しして、力が緩まる。軽くキスをして、見つめる瞳が未だに濡れている。
 長く留まれば抑えられない。思って、抜き去るがほとんど溢れない。そして、マコトの体に表れた印が赤く色を付けたのを見て、俺は目を見開いた。
 赤くなるのは核が俺の子種を受けて受精し、マコトの体内に定着した証。マコトの中に、俺の子が宿った瞬間だ。

「あれ?」
「まさか、一回で」
「何?」

 マコトはまだ自分の体に起こった変化に気づいていない。赤く色を付けた印が消えていくのを不安そうに見つめている。

「え! あの、失敗?」

 オロオロする彼を、俺は強く抱きしめた。嬉しくてたまらない。幸せで目眩がする。これで、俺はマコトを妻とできる。何の憂いも、何の心配もしなくていい。愛しい人を、その間に産まれる子を腕に抱ける。誰がなんと言ってもマコトは俺の妻だ。もう絶対に、手放しはしない。

「成功だよ」
「え?」
「俺の精と核が結びついて、定着したんだ」
「……あ」

 喜びを伝えると、マコトは真っ赤になってしまった。恥ずかしい、けれど嬉しそうでもある。その表情にはもう母のような柔らかさがある。無意識だろう、子の宿る腹部に手を触れたマコトの笑みを、俺は至上の幸福の中で見ていた。
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