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帝国海軍海上訓練事件
9話:騎士の資格
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ステンに全てを打ち明けたら楽になった。勝ち気で明るくちょっとムキになるトビー様ではなく、臆病で弱虫なカミーユに戻れた。例えそれがステンの前だけだとしても、全てを知って受け入れてくれる相手がいるというのは心強い。
「おーい、カミーユ! 釣り行くぞー!」
「え? 俺、水場はあまり」
言い淀むカミーユに、ステンは大丈夫という顔をする。
「岩場に座って釣るから平気だって。水には入らない」
「でも」
未だに水が怖い。あれから何度か水に足を浸したが、その度にトビー様は見えた。その度に怯えるカミーユは仕方なく体を拭くくらいしか出来ていない。
そんな迷惑をかけているのに、ステンは一切嫌な顔をしなかった。いつも笑って甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。髪まで洗ってくれるんだ。「目を瞑れば見えないだろ?」と言って。
渋るカミーユを前に腕を組んだステンはニッと悪い顔をする。
「釣れなきゃ今日の夕飯は野草スープだぞ。ほぼ具無しの塩汁だ」
「うっ、それは辛い」
ここに来てそんな夕飯もちょっと慣れ始めた。
この状況を変えたいとも思うのだが。
「ほら、立てって。二人なら確率二倍。具無し汁が魚汁にランクアップだ」
「分かったよ」
背に腹はかえられない。立ち上がったカミーユがバケツを、ステンが二人分の釣り竿を持って先を歩く。向かうのはこの場所から反対側だ。
連れてこられたのは集落から山側へと少し行った洞窟。そこに入り、ランタンに火を入れる。魚油が燃えて臭うが、明かりがなければ進めない。そうして何度か通ったこの通路はとても不思議なものだった。
炎の揺らめきで壁の一部が光る。層になっていたり、転がっていたり。概ね透明な物が多いが、中には水色だったり黄色だったりもある。色も薄い物から濃い物まで。そしてここに落ちている石にもこれらの結晶が含まれている。
「何度か通ったが、不思議な洞窟だよな」
これが洞窟の間ずっと続いている。向かうのは釣り場にいい岩浜だ。この洞窟はその辺りまで伸びている。
「なぁ、やっぱこれって宝石じゃね?」
「かもな。でもご先祖さんから持ち出すなって言われてんだ。売ったところで二束三文だったって記録もある」
「そういうものなのか?」
宝石というと高いイメージがあるが、カミーユはそういうものは門外漢。実際そういう記録があるのならそうなんだろう。
そのうちに向こう側の明かりが見え始め、二人は無事に釣り場に到着した。
適当な岩に腰を下ろして釣り糸を垂れる。ぷかぷかと浮かぶ浮きを見ながらものんびりとした時間が過ぎている。隣にはステンがいて、同じような感じだ。
「もう、足の調子はいいんだよな」
不意に問われ、カミーユは頷く。足はもう痛まないし、足場の悪い岩場を歩いているから足腰の筋力も戻った。
でもそうなると、帰るのが本当なんだ。それでもここにいるのは、帰ってもどんな顔をしていいか分からないから。
トビー様のメッキは剥がれた。以前のように振る舞えるか分からない。アレは全部作り物だったから。
だからって真実は話せない。偽物の息子だったかもしれないけれど、領主夫妻と過ごした時間は十年近かった。その間、本当に息子として良くしてくれた。十分な教育も受けさせてくれたし、病気をすれば二人で心配そうに看病してくれた。それは真実なんだ。
この人達が不幸になるような事はしたくない。その思いもまた確かだ。
「……帰るか?」
重く沈んだ真剣な声で問われて、カミーユは即答できない。
何より一つ大事な事がある。
「俺の制服と剣、何処隠したんだよステン」
「……」
この問いかけに、彼は答えなかった。
ここではずっと他の島民の着なくなった服を借りている。だが着ていたはずの制服と剣は行方不明のままだ。
以前は「自由に歩けるようになったら返す」なんて言っていたが、今はこれに水を向けてもだんまりだ。
まぁ、必死に取り戻していないのだけれど。
「……なぁ、カミーユ」
「いいよ、隠したままで。何なら売る……わけにはいかないか。剣もしっかり国章入ってるもんな。そんなん、ジェームダルでだって訝しがられる」
国王により下賜される剣には国章が入っている。退団すると返す事になっている。もしも無断で売れば暗府がきて尋問されるだろう。
「いいよ、言うなって。第一、戻れないだろ。水が怖い海兵なんてありえないし、そうなりゃ部署異動だ。そんなん……ついて行けるかよ」
今だって必死に駆け上がってきた。休む間もなくやってきた。昔から努力は嫌いじゃなかったんだ。知らない事を知る楽しさもあったし、出来たら嬉しいから。
でも、もう疲れた。キラキラした同期達の中に戻れる気がしない。そもそもこの嘘が露見するのが怖くて最初の頃にナルシストキャラを作ったから、ちょっと距離がある。
何よりもう、諦めてるだろ。
「カミーユ、本当にここで暮らせよ」
「そのつもりだって。世話になってるステンには迷惑な話だろうけどさ」
「迷惑なんかじゃないって。惚れた奴の世話くらいなんてことないだろ?」
「……惚れた?」
幻聴かと思ってゆっくりと噛みしめ、飲み込んでも疑問しか出てこない。見ればステンはちょっと照れているのか顔が赤い。そんな反応をされたから、急に何かが湧いてきてカミーユは思いきり動揺した。
「おま!」
「しゃーないだろ! 最初はなんか、頑張ってるの可愛いなって思ってただけだったんだよ。なのにお前、島の奴らの為にってあれこれしてくれて感謝してるし、危なっかしいのは助けてやりたいし。何より泣きそうな顔見ると無性に抱きしめて守ってやりたいって思うんだよ」
「ハズ! ガチのじゃねーか!」
「ガチだよ!」
思わぬ事にこっちの方こそ体の中がカッカしてくる。恥ずかしくてムズムズして居ても立ってもいられないのにどこかで嬉しいとか訳が分からない!
パニックなカミーユだったが、次の瞬間右手を強く引かれて思わずバランスを崩した。
「カミーユ!」
逞しい腕を捕まえて引き寄せてくれる。その間にも右手に握った竿がしなっている。
「でかいぞ!」
「分かってる!」
適度に引き、緩めて魚の疲弊を待っている。最初は勢いよく逃げ回っていた魚も徐々にその力を弱めていった。
「行くぞ!」
「おう!」
後ろからステンが抱え込むように竿を握り、カミーユも同じようにする。そして一気に釣り上げた。
輝く水面から跳ねたのは黒光りする大きなクロダイだ。形もいい。
「大物だ!」
「具無し回避!」
しっかりと吊り上げて、その場で小刀で締めて血を海に流してやる。釣った直後にやると身の臭みが違う。十分に血抜きしたらバケツに投入だ。
「さーて、飯も釣れたし帰るか。こりゃスープだけじゃなくて焼きも行ける大きさだな」
「うおぉ、マジか。焼きいいな」
二人で今夜の夕飯に思いをはせながらまた洞窟を通って帰っていく。さっきの話なんてどこかに飛んで消えて行ったようだ。
それでいい。それがいい。でも……トビーとしては無理でも、カミーユとしてなら。
そんな思いが掠めたが首を振って知らんぷりを決め込む。それがきっと、平和なんだから。
夕飯は豪勢だった。三枚に下ろしてアラで出汁を取って半身はぶつ切りにしてスープの具材に。残り半身は串に刺して塩を振って囲炉裏で焼いた。これで結構食いでがあって満足したら寝るだけだ。
「ほら、来いって」
「あー、いやー」
ここにベッドは一つ。普段は二人で抱き合うように眠っている。けれど今日はちょっと遠慮気味だ。何故かって、日中の話を思い出してしまったからだ。
べつに偏見はない。トレヴァーだってピアースだってパートナーは男だ。騎士団の中にいれば珍しい事もない。というか、同期全員パートナーが男ってとち狂ってるな!
でも、自分がそんな風に想われるとは想像すらしていなかったんだ。そして、ちょっとはありだと思うなんて考えてなかったんだ。
ステンは溜息をつく。そしてゆっくりと近づいて、ポンポンと頭を撫でた。
「心配しなくても、襲いやしないって」
「分かってるけどよ」
「惚れた相手なら余計に、乱暴な事なんてしない。お前に笑って欲しいんだ、泣かせないって」
「……それも、分かってるよ」
一ヶ月近くステンと過ごしている。二人の時間は長くて、過去を打ち明けた分とても近くて。そんな相手が乱暴をするなんて考えていない。それでも……。
「気恥ずかしいんだっての」
顔がサッと熱くなる。こんなのらしくないとは思うんだけれど。
そんなカミーユの反応を見たステンが目を丸くして、次には辛そうに眉根を寄せた。
「くそ、可愛い」
「はぁ!」
「顔赤くすんな!」
「してねぇし!」
「してるっての!」
そんな事を言い合って……可笑しくなって二人で笑った。
「ほら、寝るぞ」
「分かったっての」
連れられて結局一緒のベッドで抱き合って眠る。自分よりも熱い体温、感じる鼓動。触れている体に身を預けてしまえば思ったよりも安心できる。
ここに居たい。いて、いいだろうか……。
不安が込み上げるのは今を繋ぎ止めたいから。でもどこかで、このままじゃダメだって思う。この島の今を変えないと生活は立ちゆかない。食べ物は少なく、病気になれば助かるかどうかも分からない。そんなのおかしい。
せめて何かあれば。なんだっていい。仕事になるものがあればいい。
でもカミーユではそんなものを見つける事はできない。見つけてもそれでお金を稼ぐ方法を持たない。
誰か……きっとランバート辺りなら知恵を貸してくれるのに。
その彼に頼るということは、この島を離れる事を意味している。ステンから、離れる事を意味している。
立ちゆかない。全てを叶えようなんて都合のいいことはできないのに、全てが欲しい自分がいる。いつの間にこんな欲張りになったんだろう。
考えれば考える程眠れなくて、その日カミーユはずっと狸寝入りをする事となった。
◇◆◇
その後もステンは側にいてくれる。カミーユは島の人に勉強を教えたり、田を耕す手伝いをしている。それでも一日が長い。田は本当に少しだけで十五分も作業をしたら終わってしまう。島に自生している野草の採集だって少しだ。
食糧問題を海の恵みだけに頼らざるを得ない。ここで作った干物なんかを帝国やジェームダルに売ったって大した外貨にならない。
学問、医療なんて二の次だ。圧倒的に生きにくい。なのに外の世界に行く人間は少ない。
「なぁ、メーナさん」
「ん?」
枯れ草を縒り合わせて縄を作りながら、近くで同じく作業をしているステンの姉に声をかける。足の処置をしてくれた人で、豪快な人だ。
「なんで外の世界に行かないんだ?」
問いかけに、彼女は空を見上げた。
「アタシ等は流刑にあった人達の子孫だからね。外は怖いと言われて育った」
「でも交易してればそんな事は無いって分かるだろ?」
「善良な人間ならね。だけど、そうじゃないのが多すぎる。過去にも外の世界に出て行った奴がいるが、あまりいい結果にはならなかったよ」
「なんで……」
「学がない。他国の常識を知らない。使えないなら肉体労働でもしないと金がない。帝国は先進国で移民の受け入れに寛容だけど、実力主義でもある。力がないと生きられない。この島の人間に、その力はないのさ」
そう言われてしまったらなんて言い返せばいいか分からない。否定できないんだ。
騎士団の中だってそうだ。実力があれば年齢に関わらずそれなりの役割が与えられる。トレヴァーなんて先輩を押しのけて未来の海軍総督候補だ。同時に、プレッシャーは凄まじいが。
そこに力を持たない人が入っていっても潰れる。それは火を見るより明らかだ。
「でも……」
それでも、関わったこの島の人が苦しまない生活をしないために何かないか。自分にはそんな力もないのか。惨めで小さくてたまらない。騎士団に居た頃はもっと自信を持てたはずなんだ。
トビー様なら、きっと……っ!
そう、俯いていた頭を不意に撫でられる。見ればメーナが微笑んで頭を撫でていた。
「お前のおかげで少しだけど、希望を見ているよ」
「え?」
「お前が教えている勉強さ。今まではそうしたことはしてこなかったけれど、お前のおかげで興味を持つ子供が増えた。ありがとうね」
「そんな! あんなの、名前が書けてちょっと足し算と引き算が分かるようになっただけで! 俺なんて、全然」
「それでもさ。確実に新しい一歩を踏み出したんだ。それが大事なんだよ」
そう、言って貰えることに勇気をもらえた。大した事はできていないと思っていた事が、誰かの何かになっている。そう、言ってもらえた気がした。
その時、どこからか大きな声が聞こえた。切迫した声だ。
「誰か! チビ助が裂け目に落ちた!」
「!」
それに、カミーユは持っていた縄を持ったまま一直線に走って行く。高い木のない場所だ、人が集まれば分かる。声の先に人垣を見つけて、カミーユは迷わず飛び込んだ。
「大丈夫か!」
「子供が」
「!」
裂け目を見ると五歳程の子供が滑落し、途中の岩にどうにか引っかかっている。声を上げて泣いているが足場は不安定で、最後まで落ちきったら確実に命はない。
だが裂け目が狭くて大人は降りていけないんだろう。この島の大人は皆体格がいい。ステンを始め屈強な海の男と女だ。
ただカミーユならギリギリ入っていける。
「俺が行く」
グッと縄を握ったカミーユはそれを解いて括り付けられる場所を探したが、そんなものはない。耐えられる木もないし、ひっかけられる岩もない。だが、流石に命綱無しは無理だ。
「カミーユ!」
「ステン!」
騒ぎを聞きつけたらしいステンが慌てて近づいてくる。そこに、カミーユは縄を投げた。
「俺が降りる。それ握って離さないでくれ」
「な! 危ないだろ!」
「んな事言ってる場合じゃねーだろ!」
助けるんだ、出来るはずだ。縄を腰に括り付けて裂け目に背を向けてゆっくりと降りていく。案外ゴツゴツしているから手も足もかかる。慎重に、訓練を思い出せ!
「おーい! 大丈夫か!」
「トビーお兄ちゃん」
頼りない声にほっとする。その声を頼りに暗い中を進んで、どうにかその手を取る事が出来た。
「よし、頑張った。今引き上げてもらうからな」
子供が引っかかっていたのは少し大きめの出っ張りだ。足場をしっかり確認してから子供の腰に自分の着けている縄を括り付け、持つように言った。
「ステン! 上げてくれ!」
声を上げてしばらくで、子供を縛った綱が引き上げられていく。それを見ながら今度は登りだ。これまで以上に慎重に手元と足元を確認して登っていく。徐々に明るい世界が近づいてくる。そうして地上に手をかけた、その手をグッと引き上げられた。
「うわぁ!」
「カミーユ!」
いきなり明るい世界に出て眩しい。そんな中、強く折れそうな程に抱きしめられる。他からもワーワー歓声が上がっている。
「凄いじゃないかトビー!」
「有り難うトビー!」
声が沢山だ。誰かを救えた。トビー様じゃなくなった自分が、誰かの命を助けた。それに、涙が出るほど嬉しかった。
知った気がする。どんな言い訳をしても騎士なんだって。騎士でいたいんだって。誰かを助けられる、守る力がある。弱虫で引っ込み思案なカミーユも、いつの間にかそれに喜びを感じていたんだって。
その夜、ステンはカミーユに制服と剣を返した。
「え?」
「……お前は、騎士なんだよ」
そう言う彼はとても寂しそうだった。
「昼間の見て、思ったんだ。お前はやっぱり騎士だ。お前はトビーの代わりだって言ったけど、努力し続けてきたのはお前なんだ。騎士で居続けたのはお前なんだ。だから、戻るべきなんだよ」
「でも!」
そうしたらきっと、ここに戻ってこられない。ステンとも、島の人達とも別れる。今やこの島の人は他人じゃないんだ。
ステンは苦笑して、首を横に振った。そして、似合わない作り笑いを浮かべた。
「水恐怖症の訓練、しような! そしたら帝国に送っていく。お前はあっちで生きろ」
「っ!」
嫌だ、そんな見放した言い方するな!
苦しくて、気づいたら走ってステンの胸ぐらを掴んで……そこに額を押し当てていた。そこに腕が回って、優しく抱きしめてくれた。
「甘えたくなったら、たまに来ればいいって」
「俺は」
「なぁ、カミーユ。お前はトビー様の人生乗っ取ったって言うけどよ、違うと俺は思う。必死に生きたのはカミーユだ。お前の友人が知ってる姿も、確かにお前だ。トビー様を真似てたって言うし、多少無理をしてたのもあると思うけどよ、基本は全部お前の中から出てきたもんだろ?」
そうかもしれない。でも、カミーユのままなら歩めなかった人生だ。
それでもステンはやんわり頭を撫でて宥めてくれる。大丈夫と言ってくれる。
「自信もて、カミーユ。お前は立派な騎士だ」
その言葉を、どう扱っていいかまだ混乱している。騎士に戻ればやれる事は増える。でもまたトビーとして生きるんだ。大事だった親友で主の人生を紛い物が歩んでいくんだ。
「まぁ、その前に水恐怖症、どうにかしような」
優しくあやす声は「まだしばらくは」と言ってくれる。それにまた、甘えてしまう。
だが事は翌日動いた。
帝国の軍船が、島へと近づいてきたのだ。
「おーい、カミーユ! 釣り行くぞー!」
「え? 俺、水場はあまり」
言い淀むカミーユに、ステンは大丈夫という顔をする。
「岩場に座って釣るから平気だって。水には入らない」
「でも」
未だに水が怖い。あれから何度か水に足を浸したが、その度にトビー様は見えた。その度に怯えるカミーユは仕方なく体を拭くくらいしか出来ていない。
そんな迷惑をかけているのに、ステンは一切嫌な顔をしなかった。いつも笑って甲斐甲斐しく世話を焼いてくれる。髪まで洗ってくれるんだ。「目を瞑れば見えないだろ?」と言って。
渋るカミーユを前に腕を組んだステンはニッと悪い顔をする。
「釣れなきゃ今日の夕飯は野草スープだぞ。ほぼ具無しの塩汁だ」
「うっ、それは辛い」
ここに来てそんな夕飯もちょっと慣れ始めた。
この状況を変えたいとも思うのだが。
「ほら、立てって。二人なら確率二倍。具無し汁が魚汁にランクアップだ」
「分かったよ」
背に腹はかえられない。立ち上がったカミーユがバケツを、ステンが二人分の釣り竿を持って先を歩く。向かうのはこの場所から反対側だ。
連れてこられたのは集落から山側へと少し行った洞窟。そこに入り、ランタンに火を入れる。魚油が燃えて臭うが、明かりがなければ進めない。そうして何度か通ったこの通路はとても不思議なものだった。
炎の揺らめきで壁の一部が光る。層になっていたり、転がっていたり。概ね透明な物が多いが、中には水色だったり黄色だったりもある。色も薄い物から濃い物まで。そしてここに落ちている石にもこれらの結晶が含まれている。
「何度か通ったが、不思議な洞窟だよな」
これが洞窟の間ずっと続いている。向かうのは釣り場にいい岩浜だ。この洞窟はその辺りまで伸びている。
「なぁ、やっぱこれって宝石じゃね?」
「かもな。でもご先祖さんから持ち出すなって言われてんだ。売ったところで二束三文だったって記録もある」
「そういうものなのか?」
宝石というと高いイメージがあるが、カミーユはそういうものは門外漢。実際そういう記録があるのならそうなんだろう。
そのうちに向こう側の明かりが見え始め、二人は無事に釣り場に到着した。
適当な岩に腰を下ろして釣り糸を垂れる。ぷかぷかと浮かぶ浮きを見ながらものんびりとした時間が過ぎている。隣にはステンがいて、同じような感じだ。
「もう、足の調子はいいんだよな」
不意に問われ、カミーユは頷く。足はもう痛まないし、足場の悪い岩場を歩いているから足腰の筋力も戻った。
でもそうなると、帰るのが本当なんだ。それでもここにいるのは、帰ってもどんな顔をしていいか分からないから。
トビー様のメッキは剥がれた。以前のように振る舞えるか分からない。アレは全部作り物だったから。
だからって真実は話せない。偽物の息子だったかもしれないけれど、領主夫妻と過ごした時間は十年近かった。その間、本当に息子として良くしてくれた。十分な教育も受けさせてくれたし、病気をすれば二人で心配そうに看病してくれた。それは真実なんだ。
この人達が不幸になるような事はしたくない。その思いもまた確かだ。
「……帰るか?」
重く沈んだ真剣な声で問われて、カミーユは即答できない。
何より一つ大事な事がある。
「俺の制服と剣、何処隠したんだよステン」
「……」
この問いかけに、彼は答えなかった。
ここではずっと他の島民の着なくなった服を借りている。だが着ていたはずの制服と剣は行方不明のままだ。
以前は「自由に歩けるようになったら返す」なんて言っていたが、今はこれに水を向けてもだんまりだ。
まぁ、必死に取り戻していないのだけれど。
「……なぁ、カミーユ」
「いいよ、隠したままで。何なら売る……わけにはいかないか。剣もしっかり国章入ってるもんな。そんなん、ジェームダルでだって訝しがられる」
国王により下賜される剣には国章が入っている。退団すると返す事になっている。もしも無断で売れば暗府がきて尋問されるだろう。
「いいよ、言うなって。第一、戻れないだろ。水が怖い海兵なんてありえないし、そうなりゃ部署異動だ。そんなん……ついて行けるかよ」
今だって必死に駆け上がってきた。休む間もなくやってきた。昔から努力は嫌いじゃなかったんだ。知らない事を知る楽しさもあったし、出来たら嬉しいから。
でも、もう疲れた。キラキラした同期達の中に戻れる気がしない。そもそもこの嘘が露見するのが怖くて最初の頃にナルシストキャラを作ったから、ちょっと距離がある。
何よりもう、諦めてるだろ。
「カミーユ、本当にここで暮らせよ」
「そのつもりだって。世話になってるステンには迷惑な話だろうけどさ」
「迷惑なんかじゃないって。惚れた奴の世話くらいなんてことないだろ?」
「……惚れた?」
幻聴かと思ってゆっくりと噛みしめ、飲み込んでも疑問しか出てこない。見ればステンはちょっと照れているのか顔が赤い。そんな反応をされたから、急に何かが湧いてきてカミーユは思いきり動揺した。
「おま!」
「しゃーないだろ! 最初はなんか、頑張ってるの可愛いなって思ってただけだったんだよ。なのにお前、島の奴らの為にってあれこれしてくれて感謝してるし、危なっかしいのは助けてやりたいし。何より泣きそうな顔見ると無性に抱きしめて守ってやりたいって思うんだよ」
「ハズ! ガチのじゃねーか!」
「ガチだよ!」
思わぬ事にこっちの方こそ体の中がカッカしてくる。恥ずかしくてムズムズして居ても立ってもいられないのにどこかで嬉しいとか訳が分からない!
パニックなカミーユだったが、次の瞬間右手を強く引かれて思わずバランスを崩した。
「カミーユ!」
逞しい腕を捕まえて引き寄せてくれる。その間にも右手に握った竿がしなっている。
「でかいぞ!」
「分かってる!」
適度に引き、緩めて魚の疲弊を待っている。最初は勢いよく逃げ回っていた魚も徐々にその力を弱めていった。
「行くぞ!」
「おう!」
後ろからステンが抱え込むように竿を握り、カミーユも同じようにする。そして一気に釣り上げた。
輝く水面から跳ねたのは黒光りする大きなクロダイだ。形もいい。
「大物だ!」
「具無し回避!」
しっかりと吊り上げて、その場で小刀で締めて血を海に流してやる。釣った直後にやると身の臭みが違う。十分に血抜きしたらバケツに投入だ。
「さーて、飯も釣れたし帰るか。こりゃスープだけじゃなくて焼きも行ける大きさだな」
「うおぉ、マジか。焼きいいな」
二人で今夜の夕飯に思いをはせながらまた洞窟を通って帰っていく。さっきの話なんてどこかに飛んで消えて行ったようだ。
それでいい。それがいい。でも……トビーとしては無理でも、カミーユとしてなら。
そんな思いが掠めたが首を振って知らんぷりを決め込む。それがきっと、平和なんだから。
夕飯は豪勢だった。三枚に下ろしてアラで出汁を取って半身はぶつ切りにしてスープの具材に。残り半身は串に刺して塩を振って囲炉裏で焼いた。これで結構食いでがあって満足したら寝るだけだ。
「ほら、来いって」
「あー、いやー」
ここにベッドは一つ。普段は二人で抱き合うように眠っている。けれど今日はちょっと遠慮気味だ。何故かって、日中の話を思い出してしまったからだ。
べつに偏見はない。トレヴァーだってピアースだってパートナーは男だ。騎士団の中にいれば珍しい事もない。というか、同期全員パートナーが男ってとち狂ってるな!
でも、自分がそんな風に想われるとは想像すらしていなかったんだ。そして、ちょっとはありだと思うなんて考えてなかったんだ。
ステンは溜息をつく。そしてゆっくりと近づいて、ポンポンと頭を撫でた。
「心配しなくても、襲いやしないって」
「分かってるけどよ」
「惚れた相手なら余計に、乱暴な事なんてしない。お前に笑って欲しいんだ、泣かせないって」
「……それも、分かってるよ」
一ヶ月近くステンと過ごしている。二人の時間は長くて、過去を打ち明けた分とても近くて。そんな相手が乱暴をするなんて考えていない。それでも……。
「気恥ずかしいんだっての」
顔がサッと熱くなる。こんなのらしくないとは思うんだけれど。
そんなカミーユの反応を見たステンが目を丸くして、次には辛そうに眉根を寄せた。
「くそ、可愛い」
「はぁ!」
「顔赤くすんな!」
「してねぇし!」
「してるっての!」
そんな事を言い合って……可笑しくなって二人で笑った。
「ほら、寝るぞ」
「分かったっての」
連れられて結局一緒のベッドで抱き合って眠る。自分よりも熱い体温、感じる鼓動。触れている体に身を預けてしまえば思ったよりも安心できる。
ここに居たい。いて、いいだろうか……。
不安が込み上げるのは今を繋ぎ止めたいから。でもどこかで、このままじゃダメだって思う。この島の今を変えないと生活は立ちゆかない。食べ物は少なく、病気になれば助かるかどうかも分からない。そんなのおかしい。
せめて何かあれば。なんだっていい。仕事になるものがあればいい。
でもカミーユではそんなものを見つける事はできない。見つけてもそれでお金を稼ぐ方法を持たない。
誰か……きっとランバート辺りなら知恵を貸してくれるのに。
その彼に頼るということは、この島を離れる事を意味している。ステンから、離れる事を意味している。
立ちゆかない。全てを叶えようなんて都合のいいことはできないのに、全てが欲しい自分がいる。いつの間にこんな欲張りになったんだろう。
考えれば考える程眠れなくて、その日カミーユはずっと狸寝入りをする事となった。
◇◆◇
その後もステンは側にいてくれる。カミーユは島の人に勉強を教えたり、田を耕す手伝いをしている。それでも一日が長い。田は本当に少しだけで十五分も作業をしたら終わってしまう。島に自生している野草の採集だって少しだ。
食糧問題を海の恵みだけに頼らざるを得ない。ここで作った干物なんかを帝国やジェームダルに売ったって大した外貨にならない。
学問、医療なんて二の次だ。圧倒的に生きにくい。なのに外の世界に行く人間は少ない。
「なぁ、メーナさん」
「ん?」
枯れ草を縒り合わせて縄を作りながら、近くで同じく作業をしているステンの姉に声をかける。足の処置をしてくれた人で、豪快な人だ。
「なんで外の世界に行かないんだ?」
問いかけに、彼女は空を見上げた。
「アタシ等は流刑にあった人達の子孫だからね。外は怖いと言われて育った」
「でも交易してればそんな事は無いって分かるだろ?」
「善良な人間ならね。だけど、そうじゃないのが多すぎる。過去にも外の世界に出て行った奴がいるが、あまりいい結果にはならなかったよ」
「なんで……」
「学がない。他国の常識を知らない。使えないなら肉体労働でもしないと金がない。帝国は先進国で移民の受け入れに寛容だけど、実力主義でもある。力がないと生きられない。この島の人間に、その力はないのさ」
そう言われてしまったらなんて言い返せばいいか分からない。否定できないんだ。
騎士団の中だってそうだ。実力があれば年齢に関わらずそれなりの役割が与えられる。トレヴァーなんて先輩を押しのけて未来の海軍総督候補だ。同時に、プレッシャーは凄まじいが。
そこに力を持たない人が入っていっても潰れる。それは火を見るより明らかだ。
「でも……」
それでも、関わったこの島の人が苦しまない生活をしないために何かないか。自分にはそんな力もないのか。惨めで小さくてたまらない。騎士団に居た頃はもっと自信を持てたはずなんだ。
トビー様なら、きっと……っ!
そう、俯いていた頭を不意に撫でられる。見ればメーナが微笑んで頭を撫でていた。
「お前のおかげで少しだけど、希望を見ているよ」
「え?」
「お前が教えている勉強さ。今まではそうしたことはしてこなかったけれど、お前のおかげで興味を持つ子供が増えた。ありがとうね」
「そんな! あんなの、名前が書けてちょっと足し算と引き算が分かるようになっただけで! 俺なんて、全然」
「それでもさ。確実に新しい一歩を踏み出したんだ。それが大事なんだよ」
そう、言って貰えることに勇気をもらえた。大した事はできていないと思っていた事が、誰かの何かになっている。そう、言ってもらえた気がした。
その時、どこからか大きな声が聞こえた。切迫した声だ。
「誰か! チビ助が裂け目に落ちた!」
「!」
それに、カミーユは持っていた縄を持ったまま一直線に走って行く。高い木のない場所だ、人が集まれば分かる。声の先に人垣を見つけて、カミーユは迷わず飛び込んだ。
「大丈夫か!」
「子供が」
「!」
裂け目を見ると五歳程の子供が滑落し、途中の岩にどうにか引っかかっている。声を上げて泣いているが足場は不安定で、最後まで落ちきったら確実に命はない。
だが裂け目が狭くて大人は降りていけないんだろう。この島の大人は皆体格がいい。ステンを始め屈強な海の男と女だ。
ただカミーユならギリギリ入っていける。
「俺が行く」
グッと縄を握ったカミーユはそれを解いて括り付けられる場所を探したが、そんなものはない。耐えられる木もないし、ひっかけられる岩もない。だが、流石に命綱無しは無理だ。
「カミーユ!」
「ステン!」
騒ぎを聞きつけたらしいステンが慌てて近づいてくる。そこに、カミーユは縄を投げた。
「俺が降りる。それ握って離さないでくれ」
「な! 危ないだろ!」
「んな事言ってる場合じゃねーだろ!」
助けるんだ、出来るはずだ。縄を腰に括り付けて裂け目に背を向けてゆっくりと降りていく。案外ゴツゴツしているから手も足もかかる。慎重に、訓練を思い出せ!
「おーい! 大丈夫か!」
「トビーお兄ちゃん」
頼りない声にほっとする。その声を頼りに暗い中を進んで、どうにかその手を取る事が出来た。
「よし、頑張った。今引き上げてもらうからな」
子供が引っかかっていたのは少し大きめの出っ張りだ。足場をしっかり確認してから子供の腰に自分の着けている縄を括り付け、持つように言った。
「ステン! 上げてくれ!」
声を上げてしばらくで、子供を縛った綱が引き上げられていく。それを見ながら今度は登りだ。これまで以上に慎重に手元と足元を確認して登っていく。徐々に明るい世界が近づいてくる。そうして地上に手をかけた、その手をグッと引き上げられた。
「うわぁ!」
「カミーユ!」
いきなり明るい世界に出て眩しい。そんな中、強く折れそうな程に抱きしめられる。他からもワーワー歓声が上がっている。
「凄いじゃないかトビー!」
「有り難うトビー!」
声が沢山だ。誰かを救えた。トビー様じゃなくなった自分が、誰かの命を助けた。それに、涙が出るほど嬉しかった。
知った気がする。どんな言い訳をしても騎士なんだって。騎士でいたいんだって。誰かを助けられる、守る力がある。弱虫で引っ込み思案なカミーユも、いつの間にかそれに喜びを感じていたんだって。
その夜、ステンはカミーユに制服と剣を返した。
「え?」
「……お前は、騎士なんだよ」
そう言う彼はとても寂しそうだった。
「昼間の見て、思ったんだ。お前はやっぱり騎士だ。お前はトビーの代わりだって言ったけど、努力し続けてきたのはお前なんだ。騎士で居続けたのはお前なんだ。だから、戻るべきなんだよ」
「でも!」
そうしたらきっと、ここに戻ってこられない。ステンとも、島の人達とも別れる。今やこの島の人は他人じゃないんだ。
ステンは苦笑して、首を横に振った。そして、似合わない作り笑いを浮かべた。
「水恐怖症の訓練、しような! そしたら帝国に送っていく。お前はあっちで生きろ」
「っ!」
嫌だ、そんな見放した言い方するな!
苦しくて、気づいたら走ってステンの胸ぐらを掴んで……そこに額を押し当てていた。そこに腕が回って、優しく抱きしめてくれた。
「甘えたくなったら、たまに来ればいいって」
「俺は」
「なぁ、カミーユ。お前はトビー様の人生乗っ取ったって言うけどよ、違うと俺は思う。必死に生きたのはカミーユだ。お前の友人が知ってる姿も、確かにお前だ。トビー様を真似てたって言うし、多少無理をしてたのもあると思うけどよ、基本は全部お前の中から出てきたもんだろ?」
そうかもしれない。でも、カミーユのままなら歩めなかった人生だ。
それでもステンはやんわり頭を撫でて宥めてくれる。大丈夫と言ってくれる。
「自信もて、カミーユ。お前は立派な騎士だ」
その言葉を、どう扱っていいかまだ混乱している。騎士に戻ればやれる事は増える。でもまたトビーとして生きるんだ。大事だった親友で主の人生を紛い物が歩んでいくんだ。
「まぁ、その前に水恐怖症、どうにかしような」
優しくあやす声は「まだしばらくは」と言ってくれる。それにまた、甘えてしまう。
だが事は翌日動いた。
帝国の軍船が、島へと近づいてきたのだ。
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