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帝国海軍海上訓練事件
8話:忘れ去られた少年
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▼ランバート
騎兵府執務室に漂う重苦しい空気に、ランバートは息を吐く。いつもと違うのが、これを発するのがファウストではないということだ。寧ろ彼は困った顔をして、ソファーに座るウルバスを見ている。
「どうしてです、隊長! どうしてトビー捜索の許可が下ろせないんですか!」
そう鋭い声を上げているのはトレヴァーだ。普段にこにこと気安い奴が目をつり上げギリギリと奥歯を噛みしめる様は心が痛む。
いや、ランバートとしては現状も胸が痛むのだが。
トビーが船から落ちて直ぐ、周囲の者が探した。だが夜だった事もあって視界が利かず、同時に敵船舶を拿捕したことで捕縛に人員も取られた。ウルバスの船が救難信号を受けて戻ってきた時には遅かった。
だがそれでも明け方近くまでトレヴァー達は探したのだ。それこそ外海へと少し出て。だが、帰還途中ということで食料面にあまり余裕がなかったこと、船員の練度不足、何よりも船体の破損が原因で中断、帰還せざるを得なかった。
既にトビーが海に消えて一週間以上が経っている。どう頑張っても、遺体を見つける事すら困難だ。
そう、冷静に判断出来る自分がいる。だが同時に、諦められない自分もいる。どこかで生きていてくれるんじゃないか、そんな甘い思いを抱いている。
そう簡単に、割り切れるものでもない。
「許可は下ろせない」
「どうして!」
「既に一週間以上が経っている。外海に流されているならもう見つける事も出来ない。万が一そこで嵐にでもあえば、更なる犠牲が出かねない。そんな危険が伴う事を、何の希望もないのに許可出来ない」
「じゃあ、見捨てるんですか!」
「……そうだね、そうなる」
激しい言葉と剣幕で詰め寄るトレヴァーに、ウルバスは静かに告げる。でも、分かっている。本当はとても悔しいし、苦しいと。
あれこれあるが、ウルバスは部下を大事にする師団長だ。部下に対しては基本朗らかで、悩みなんかも聞いてくれる人だ。そんな人が平気なわけがない。
トレヴァーだって分かっている。ただ、理解と納得は別問題なんだ。
「明るい材料が少しでもあれば、俺から許可を出してもいいんだがな」
「……はい」
こちらはこちらで思い悩む。難しい顔のファウストも気持ちの面では探してやりたいのだろう。実際、事を聞いて酷く悔しい顔をして、その夜は落ち込んだ。船の事は門外漢だというのに、自分の責任だと言うくらいには弱ったのだ。
思い悩む中、不意にドタン! という音がして思慮の海から顔を上げると、トレヴァーがウルバスの胸ぐらを掴んでいる。流石に驚いて止めに入ろうとしたが、ウルバスは静かに首を横に振った。
「いいよ、殴っても。それでも俺は許可を出さない」
「ウルバス様!」
「これ以上、誰も犠牲にできない」
分かっているから、トレヴァーもそこから動けない。こんな状態で膠着状態のまま、不意に執務室のドアを開ける者がいた。
「失礼し……! こら止めろ、バカ!」
書類を持ったキアランが室内の状況を見てギョッとし、とにもかくにも走ってウルバスとトレヴァーの間に入りトレヴァーを座らせた。これは案外あっという間で、なんとも見事な仲裁にランバートもファウストも感心して「おー」と声を上げてしまった。
「関心なさってないで止めてくださいファウスト様!」
「いや、一発殴れば気がすむならそれもいいかと」
「脳筋か! ランバート、お前も止めろ!」
「まぁ、そういう片の付け方もあるといえばあるので」
「似るな!」
ゼーハー言いながらまくし立てるキアランに二人は「すまん」と謝り、仲裁された方は少しだけ冷静になったようだった。
「ウルバス!」
「あー、右に同じ。というか、それで止められるなら安いかなって」
「アホか! トレヴァーも冷静になれ。力で組織は動かないんだぞ」
「そうかもしれないですが! でも、だって……」
俯き、強く拳を握るトレヴァーは恋人の前だからか途端に弱い顔をする。キアランも困った顔をして頭を撫でてやるのだから、見ているこちらも切なさが増してしまった。
「いいか、俺はお前の味方だ。そしてお前の望みを違う方面から支えるのが仕事だ」
そう言うと、キアランはテーブルの上に持ってきた書類を置いた。
「ここ五〇年程の海難事故記録を洗い出しました。そこで、気になる調書が複数ありました」
「気になる調書?」
ファウストも来て、全員でソファーに座る。そして彼が纏めてきた事故調査書を手に取った。
「期間は五〇年、トビーが事故に遭った近辺での事故について絞ってあります」
「生存者がいるな。ほとんどが漁師か」
「あの辺りは漁場としても資源が豊富ですからね。ただ、ルアテ島の事も考えて竿釣りに限っていますし、小さな獲物はその場で逃がす事になっています」
ランバートも書類に手を伸ばす。主に漁の途中で海に落ちた漁師だが、似た所見が多い。夜釣り、ルアテ島付近、大潮。
「この者達は大潮の夜に事故に遭い、ルアテ島に流されそこで命を救われて国に戻っています」
「妙だね。あそこの潮はこの季節外へと向かっているはずだけれど」
「海軍の軍船くらい重いならな」
「!」
ウルバスは目を丸くして、口の端をニッと上げた。
「つまり浅い部分の潮は大潮でルアテ島の方への引きが強い?」
「考えられるのはそうだ。恐らく体重が重い者や装備を着込んだ者なら下に沈むが」
「あの夜は大潮で、トビーはほぼ制服と剣だけで軽かった!」
トレヴァーの目にここしばらくで一番の輝きが宿り、全員の顔にほっとした笑みが浮かんだ。
「ウルバス様!」
「いいよ、行っておいで。そのかわりルアテ島にだ。外海へは許可できない。船は他の隊のものを借りて、船員も十分な相手を選びなさい」
「俺、行ってきます!」
にっこりと笑ったウルバスが頷き、飛び出すようにトレヴァーが走っていく。それを見送り、ランバートもようやく息が吐けた。
「俺も行きます」
「ランバート?」
「ルアテ島は完全に自治の島です。何かあったとき、ある程度の権限を持っている者がいるほうが交渉なども可能です。何より、友人の無事を願う者として」
「……分かった」
もっと渋るかと思ったが、ファウストは案外すんなりと言ってくれる。ふわりと笑い、頷く人を見てランバートも笑みを浮かべた。
「キアラン、助かった」
「いえ」
「キアランは可愛い恋人が心配だったんだもんね」
「ウルバス!」
気が抜けたのか一気に緩くなったウルバスの雰囲気にキアランが顔を赤くして反論する。だが、おそらくそうなんだろう。それくらいトレヴァーの焦りや憔悴は酷かった。
彼が責任者となっている船での事故であり、仲間であり友人が被害者だ。そもそも一年目の隊員の初航海で初の捕縛。事故も一年目が捕虜のロープを放してしまった事で起きたのだ。
責任も感じているトレヴァーは周囲が心配するほど落ち込み、探そうと奮起し、食事が喉を通らない日々だった。
「それで、拿捕した船の乗組員の取り調べと船の検分がほぼ確定しました。今回の事件はウェールズの私掠船が行った事です」
キアランが改めて書類を提出する。これには調査をした暗府と宰相府の印が押されていた。
「私掠船など、帝国では絶対に許される行いではないがな」
「大国のプライドは何処にいったのか、ということですね」
報告書を手にしたファウストは眉根を寄せ、ウルバスは溜息をつく。ランバートも難しい顔をした。
私掠船とは、国家が認めた海賊という認識でよいだろう。
自国に敵対している国の船を襲い略奪行為をしても国は彼らを罰しない。そのかわり認定印のある船は略奪したものの一部を税として国に納める。
国家としてはなんら痛手はない。彼らが壊滅したとて海賊が減るだけで国の兵が傷つくわけでもなく、略奪が成功すれば何かしらの金品が入り、かつ他国の力を僅かでも削げる。
しかもいざ戦争となれば私掠船も戦力として投入する事が出来る。まぁ、常識的とは言えないが。
更に今回のように拿捕されれば知らぬ存ぜぬだ。尻尾切りをし、抗議が酷ければ船などを管轄する港の適当な役人を切って終わりだろう。
胸くそが悪い。
「今回の事は正式な抗議としてウェールズへ文書を出すと共に、周辺国へも同じ内容の文書を出すこととなりました」
「いつも通りだが、それが精々だからな。あの国はやりにくい」
「潰します?」
「ようやく穏やかになったというのに、こちらから仕掛けるのか? 今回の事は国家が率先して行ったとは言いきれないだろうから、理由としては弱い。明らかな侵略行為がないと難しいな」
「その辺があの国の上手い所ですよね。以前みたいにいきなり侵攻してくれれば、もう負けはしないのに」
「止めてくれウルバス、これ以上は俺の胃が無事じゃない……」
なんとも好戦的な騎兵府の発想に、胃の弱いキアランが腹を押さえてげっそりとする。
そんな事で笑っていると、不意にノックの音がしてクリフが急き込んで入ってきた。
「失礼します! ウルバス様!」
「え? 俺?」
思わぬ指名にウルバスが自身を指差して首を傾げる。妙にキリッとしたクリフは前に進み出て、思い切り頭を下げた。
「えぇ! どうしたのクリフ?」
「お願いします! 今回のトビー捜索隊に僕も参加させてください!」
その申し出にウルバスはちょっと驚いた顔をする。だが、もうファウストもランバートも驚きはしなかった。
「どうしたのクリフ」
「今回、僕はトビーに沢山助けられました。なのに僕は何一つ助けられなかったんです。お願いします! 船医として、今度こそ彼を助けたいです!」
「でも、危険もあるかもしれないから」
「同乗してもらいましょう、ウルバス様」
クリフの同行にランバートはにっこりと笑う。勿論理由もあるのだが。
「トビーが怪我をしている可能性も大いにあると思います。もしも無傷なら、これまで通りルアテ島の者が何かのついでに送り届けてくれたでしょう。漁師などは大体そんな感じで、こちらで謝礼を払って彼らは帰っていったとあります。そうなっていない理由に怪我などがあるかと思います」
「確かに、あり得る話だな。あの島ではまともな医療は難しい。万が一流れ着いていたとしても怪我が原因で伏せているというのは、考えられる事だ」
「お願いします!」
ランバート、キアランの見解を聞いたクリフがより一層強くウルバスへと迫る。これにはウルバスもタジタジで、「分かったから!」と声を上げた。
「まったく、頼もしい限りだ」
「見た目は頼りないのに、あの押しは誰が教えたんだろう」
「エリオットとハムレット殿が外科を、オリヴァーが薬学をみっちり仕込んでいるようだからな」
「え、なにその怖いの。いや、俺でもそんなの耐えられませんよ? うわぁ、人間拗れそう」
「皆さんとてもいい人ですよ」
「……君は案外大器だったのだな」
キアランまでもが引きつった顔でクリフを見つめる。だがクリフはにっこりと笑って返している辺り、本当に頼もしい限りだ。
何にしてもようやくトビー捜索に踏み込める。ランバートは気合いを入れ、船を整えているだろうトレヴァーと合流しに向かうのだった。
▼トビー
コポコポと音がする。暗い……真っ暗な底へと沈んでいく感覚。それは覚えのあるものだ。
カミーユ……
声が聞こえる。腕に、足に、体に絡みつく無数の手はまだ小さい。
カミーユ……
「!」
途端、流れ込む水が喉を塞ぐ。肺に流れ込んでいく。苦しくてもがくように手を伸ばしても上に行けない。
カミーユ……
どうして今更責めるんだよ、トビー。そんなに俺が許せなかったのかよ。
意識が沈む。引きずられるように水の底へと。もう、もがく力なんてない。
◇◆◇
「トビー!!」
「!」
強い声に起こされて目が覚めた。喉は引き絞られたように痛んで咳込んでしまう。ステンがコップに水を汲んで持ってきてくれて、ゆっくりと飲ませてくれた。それでも目に見えて手は震えている。
「お前、本当に大丈夫か? 海に行った日からおかしいぞ」
「……大丈夫だって。ちょっと夢見が悪いだけだから」
言っても説得力がない。今日で三日、ステンに起こされている。
あの日、海で見た幻は夢の中まで苛むようになっていた。溺れる夢なんて縁起でもないが、心当たりがあるからどうにもならない。ただ、それを誰かに言う事はできないんだ。
そんなトビーを見るステンはしばらく無言でいたが、やがて大きな溜息をついて隣に座り、そのままグッと抱き寄せてくる。驚いて……でも、居心地がよかった。
「なぁ、トビー。お前、何抱えてんだ」
「そんなんじゃねーよ」
「誤魔化すな。ここ三日のうなされ様は普通じゃない。傷が痛むのとも違うだろ。話してみろって」
「だから!」
「心配なんだよ、マジで」
そっと頬に手が触れて、額にチョンと唇が触れる。しばらく何が起こったのか分からなかったトビーは、理解して飛び上がるように距離を置いた。
「おっ、おま! お前!」
「なんだよ」
「キス!」
「あぁ? あんなの、親がガキを落ち着ける時にするのと変わんないだろうが」
あきれ果てた様子で腰に手を当てるステンだが、次にはニッと悪戯に笑って立ち上がり、ジリジリとトビーに迫ってきた。
「おっ、落ち着けステン。俺男だって」
「おう、知ってるぜ。でも騎士団って男色もありなんだろ?」
「落ち着け! 俺は違う! 違うからぁ!」
慌てふためいて逃げようとするが、まだ調整中の足はそんなに機敏な動きは出来ない。転びそうになった所をステンが腕を引いて助け起こし、トビーはまんまと捕まった。
「落ち着けって。なぁ、トビー。無理してないか?」
「……してない」
「お前、案外意地っ張りだよな」
「うっせぇ!」
「俺達は知り合って間もないし、ここを離れたらもう会うこともないだろうけどよ。だからこそ言える事とか、有るんじゃないか?」
「それ、は……」
そうなのかもしれない。この事が重しになっているのはきっと確かだ。人生で溺れて死にかけたのはこれで二回目。引き金はあの時だ。
それに、この男は案外甘やかすのが上手いのかもしれない。子供達に好かれるのも納得できるくらいには気安くて、優しいんだ。
「トビー」
低く、少し甘く名を呼ばれると甘えたくなる。だがこれは昔の自分だ。トビーはこんなに弱くない。トビーなら、はね除けられるはずなんだ。
でも、出来なかった。頬をスルリと撫でたざらついた指先、甘い海のような瞳が近づいて、そっと頬に唇を落とす。頭を撫で、お姫様抱っこされてベッドに戻された。
「抱え込んだものが重いと溺れるからよ、その前に預けられる奴を見つけないとな」
「……」
いい加減、疲れた。それが、今の正直な気持ちなのかもしれない。
◇◆◇
翌日は島の子供達が連れ出してくれて、少し離れた温泉へと足をむけた。
この島は元々海底火山の隆起によって出来た島らしく、剥き出しの亀裂やゴツゴツした岩はその名残らしい。中央には噴火した火口があるが、もう何百年も噴火なんてない。人が暮らしているのは山の裾野だ。
その為温泉が出る。しかも傷の痛みにいいらしく、今までも島に流れ着いた人が体の痛みを取るのに使っていたらしい。
「トビー兄ちゃん、こち!」
「待てって!」
寝たままでも出来るリハビリは行っていたんだが、それでも岩肌が剥き出しの道を歩くのは大変だ。しかもこの島に慣れた子供達が案内役ではなおさらだった。
それでもどうにか辿り着いたそこは、天然の岩場に湯が溜まったという感じで特に整備などはされていない。それどころか脱衣所もなければ男女も分かれてはいなかった。
「混浴かよ」
「この島じゃそれを気にする奴なんざいないって。皆顔見知りだからな」
保護者としてついてきたステンに言われてもどうにも「そうか」とは言えない。この辺りはやはり文化の違いなのか。
だが子供達は気にしていない。男も女もさっさと脱いで湯に飛び込んでいる。湯量もたっぷりあり、温度も高くないようだ。
トビーも脱いでそっと湯へと足をつける。心地よい湯にほっと息を吐いた。その時だ。
カミーユ……
微風が運ぶようなか細い声と、足に触れたような幻覚。水面に浮かぶのは瓜二つの少年の青白い顔だ。
「!」
心臓が締め付けられるように痛み、息が出来ずにヒュッと鳴る。怖くて震えて後退ろうとしても足場の悪い岩場で濡れている。滑って、体が後ろ向きに倒れていく。
「トビー!」
慌てたステンが駆けてきて後ろから抱き留めなければ無防備に頭を打ち付けただろう。抱き留められて、でもその腕の中で震えが止まらない。
「あ……」
「トビー、しっかりしろ!」
「ちが……トビーは……」
小さな声で訴えかけて口を噤む。引き結ぶ唇が震えている。
カミーユ……
悲しそうに、寂しそうに呼ばれるこれは幻聴なんだって理解はしている。見えているものも幽霊なんかじゃなくて幻だって分かっている。それでも震えは止まらない。犯した罪は消えない。
でももう、戻れないのかもしれない。水が怖い水兵なんて、なんの役に立つんだ。
「お前、本当にどうしたんだ」
「……わかんないよ」
綻びから溢れたものが今更襲ってくる。もう、限界なのかもしれない。
その夜、トビーはそっと家を出て海沿いにきた。月が綺麗で、風は少し冷たい。寄せる波音は心地良いと思えるのに、今はそこに足を入れる事すら怖い。
蹲るその後ろから足音が聞こえる。隠しもしない存在感に、トビーは蹲ったまま声をかけた。
「もう、死んだままでいい」
「なんだよ、らしくなく萎れて。トビー」
「その名で呼ぶな! 俺は……俺はトビーじゃない」
限界に達した何かが口を突く。言わなければ溢れてしまいそうだ。
顔を上げ、後ろを睨むとステンはとても穏やかな様子で腰に手を当てて立っていた。
「カミーユ、か?」
「! どうして」
「どうしてって。うなされてる時に自分で呟いてるぜ。なんかあるなって思うだろ」
「そう、か……」
情けない話にまた俯いてしまう。そんなトビーの隣に腰を落ち着けたステンはそのまま黙っていてくれる。話し出すのを待つみたいに。
「……聞いて、くれるか」
「おう」
「……俺は、小さな田舎の領地で、領主様に仕える爵令家の一人息子だった」
誰にも言わなかったそれは、言えない事。罪であり、鎖だ。
「爵令家?」
「爵位持ちの家令家ってのがあるんだ。ご立派な家柄の家に代々仕えている家令にはそれなりの見栄えが必要になる。だから最下位の男爵の称号が与えられている。とはいえ、実体は主に仕える人間だ。当然国からの補助なんてのはない。まぁ、帝国って爵位に対する補助金とかってない国なんだけどな」
帝国では爵位に対しての補助金はない。そのかわり、爵位に対する増税もない。爵位は見栄えと同時に国の外に有益な人材を流さない措置であり、保護である。なので小貴族と呼ばれる男爵や子爵はそれなりに多いのだ。まぁ、侯爵辺りからグンと減るのだが。
「帝国の貴族の仕組みって複雑だよな」
「まぁな。小貴族なんてのは案外あちこちにいるし、平民みたいに暮らしてる。王都の西にどっかり邸宅構えてるような大貴族は一握りだが、それ以外は案外いるよ」
「んで? お前はその爵令家の息子だったんだろ? そこから騎士団に入ったのか?」
「……騎士団に入りたかったのは、俺じゃないんだよ」
問われ、呟いて。ぼんやりと眺めた海はとても静かだ。
「騎士になりたかったのは俺じゃない。俺がお仕えしていた同じ歳の領主の息子のトビー様さ」
案外すんなりと出てきた言葉に苦笑する。そして、ちょっと懐かしかった。
「トビー様は俺に凄く似ていた。だから俺はトビー様の影武者で、従者で、親友だった。歳の近い子供がいなかったから余計にべったりで、それこそ寝るときも一緒がいいと我が儘を言われて一緒に寝た事もあった。そんな俺達を見て、穏やかな領主夫妻も俺の父親も『双子みたい』なんて言って笑ってたな」
なんとも微笑ましい時間だった。
勝ち気で明るく人をグイグイ引っ張っていくような性格だったトビー様。いつも手を引いてくれたのは、あの人だった。
「……お前の、名前は?」
「……カミーユ・ヘイゼ」
もう十年以上名乗っていない本名。捨てた名前を口にしたら、少しだけ軽くなった。そうしたら、何もかも言いたくなった。
「俺の家は片親で、母親は死んでいた。だから親父と俺は領主様の屋敷に住んでいて、穏やかで優しい領主一家はそんな俺達も家族みたいにしてくれた。トビー様は活発な方で、俺はいつも振り回されていたけれど、楽しかったのは確かだ。騎士になりたいって夢も応援していた」
「領主の息子なのにいいのかよ」
「歳の離れた姉上がいて、少し大きな街の学園に通っていたんだ。ゆくゆくは結婚して領地を継ぐ為にね。トビー様は年を取ってから出来た子供だったから、けっこう甘やかされてた」
本当に穏やかだったんだ。まるでぽかぽかの日向みたいに。
八歳の夏までは……。
「……八歳の夏。領主一家と俺と親父で川遊びに出たんだ。川幅はあったし、中央まで行けば深いけれど浅瀬は足首程度の川で、水が澄んで綺麗で魚なんかも泳いでいる川だった」
その日も暑くて、領主夫妻は川から少し離れた草地で笑って見ていて、親父は比較的川の近くにいて、俺達は足を川に浸して遊んでいた。
『深い所に行くなよ!』という親父の声に『分かってるよ-』と二人で返して笑って、冷たい水を楽しんでいた。
なのに、悲劇は突然だった。
「……」
「……何があった?」
「……鉄砲水が出たんだ」
「鉄砲水?」
眉根を寄せたステンに、トビーは静かに頷いた。
「原因は、上流にあった貯水池の堰が限界に達し、老朽化もあって決壊したこと。泥や流木混じりの水が一気に、何の前触れもなく流れ込んできた。俺達はそれに巻き込まれたんだ」
それは、一瞬の出来事だった。
突然ゴゴゴゴゴッという轟音と共に木がへし折れるミシミシという音が混じって近づいてきた。それからたった数十秒後には、壁のような水が目の前にあった。
領主夫妻の悲鳴と、親父の声と、側にいたトビー様の手を握って背中を向けた。そこから、記憶が途絶えている。
「元々川から離れていた領主夫妻は無事だったけれど、親父とトビー様は死んだ。俺は奇跡的に近くの木に引っかかって、流されて見つかった」
隣でステンは押し黙ってしまった。それが申し訳ないような気がしてくる。こんな話、好んで聞きたいわけもないんだから。
「……そんで、カミーユ。どうしてお前がトビーになったんだ」
「……領主様の、奥様が精神を病んでしまったから、かな」
思えばそれが、更なる罪の始まりだった。
「年を取ってから授かったトビー様を、奥様は殊の外愛されていた。だから、息子の死を受け止められなかった。俺が目を覚ました時、奥様はトビー様に瓜二つの俺をトビー様だと思い込んでいた。領主様が否定しても認めないし、ヒステリックになって暴れる。そして俺も、親父が死んだ事で未来が見えなくなってた」
怖かった、何の後ろ盾もなくて。頼りだった親父は死んで、仕えていた主は守れなくて。何の力もない弱虫で非力な自分だけが生き残ってしまった。八歳だ、何も分からない。ままごと遊びみたいな主従ごっこしか経験がない。
「そんな状態が一ヶ月くらい続いた時、領主様が俺にお願いしてきた。トビー様として生きてくれないかと」
「な!」
この事実にステンは思わず立ち上がって睨み付けた。それに、トビーは力なく笑うしかなかった。
「奥様の精神状態の安定の為だ。そして俺は、偽物でも家族が出来る。領主家の息子なら路頭に迷う事はない。家は継がなくていい。俺も、安心が欲しかった」
「それで入れ替わったってのか!」
「……あぁ」
事故で死んだのはカミーユとして届け、主を守って亡くなった尊い父子として領主家が手厚く葬ってくれた。そしてそこから、しがない男爵の子は領主の息子のトビーとなった。
「そこからはまぁ、安定してたな。トビー様になるよう、思い出しながら演じている間に身についた。奥様は穏やかな笑顔を取り戻した。領主様だけは申し訳ない顔をしていて、戻られた姉上も事情を知って泣きながら謝っていて……俺はこの事実を封印した」
だってこれは立派な罪だ。知れたら何かしらの咎めがある。だからって真実では誰も幸せにはなれなかった。
少なくとも、当時は。
「それから成人して、俺はトビー様がなりたがった騎士になった。もう、カミーユの頃の自分なんて思い出せなかった。第三に入って、船に乗って、今までも水に落ちた事なんかはあったけれど平気で。なのに突然、今になって聞こえるんだ。トビー様が、俺を呼ぶんだ」
それはいつも水の中。触れる手は死んだときと同じくらいの小さなもの。寂しそうで、悲しそうで。それがまるで恨んでいるように思える。
当然だ。トビー様からしたらカミーユは自分の人生を盗んだ事になる。本当は歩むはずだった未来。カミーユのままならどうなっていた。領主が保護してくれたとしても騎士なんて考えなかった。
「俺、恨まれてるんだろうな。人生奪ったんだ、当然か」
「違うだろ! 死んだのはそいつの運命でお前のせいじゃない! その後の事だってお前に選択の余地なんてなかっただろ!」
「だとしてもさ。生死については運命でも、その後のことについては違う。俺も、選んでそう振る舞ったんだ」
「八歳のガキだぞ! 生きるのに必死になって何が悪い! お前は自分を生かすのに選んだんだ!」
「分かってる。分かってるけど……じゃあなんで今更、俺の前に現れるんだ。なんで責めるんだよ。断罪だって思って当然じゃないか」
忘れるなって、言われているみたいだ。自分を踏み潰していった罪を忘れるなと。夢に出て、水に出て。このままでは騎士団にも戻れない。騎士団を出たら、どうなるんだ。今更どんな顔をして領主様の前に出ればいい。これ以上、紛い物の家族を続けていくのか。
答えが出ない問いかけを続けている。でもこれでは進めない。生きているなら食べなきゃ死ぬし、食べるためには何かしらしなければいけない。
「……もう、いっそさ。死んだ事にしてここで生活していこうか」
思わず呟いた弱音。トビー様なら言わないだろう言葉。騎士団に居た頃は言わなかった言葉。でもずっとどこかで、カミーユは叫んでいた。怖い事を怖いと、痛い事を痛いと。悲しい事を辛いと。
弱く笑ったトビーの腕を、不意にステンが引き寄せて腕の中に入れてしまう。強い力は守られているように思う。弱くなった気持ちは、これを心地よく思ってしまう。
「いいぜ、それでも」
「え?」
「居たいなら好きなだけ居ろ。傷が治った後も」
「……いいのかな?」
「いいぜ、カミーユ。お前一人くらい、俺がどうとでもしてやれる」
「ステン……」
強い男の声に何処かほっとした。それは一つ、縛られていた鎖が綻び切れた瞬間だった。
この日、名前を封じた少年はようやくトビーからカミーユに戻ったのだった。
騎兵府執務室に漂う重苦しい空気に、ランバートは息を吐く。いつもと違うのが、これを発するのがファウストではないということだ。寧ろ彼は困った顔をして、ソファーに座るウルバスを見ている。
「どうしてです、隊長! どうしてトビー捜索の許可が下ろせないんですか!」
そう鋭い声を上げているのはトレヴァーだ。普段にこにこと気安い奴が目をつり上げギリギリと奥歯を噛みしめる様は心が痛む。
いや、ランバートとしては現状も胸が痛むのだが。
トビーが船から落ちて直ぐ、周囲の者が探した。だが夜だった事もあって視界が利かず、同時に敵船舶を拿捕したことで捕縛に人員も取られた。ウルバスの船が救難信号を受けて戻ってきた時には遅かった。
だがそれでも明け方近くまでトレヴァー達は探したのだ。それこそ外海へと少し出て。だが、帰還途中ということで食料面にあまり余裕がなかったこと、船員の練度不足、何よりも船体の破損が原因で中断、帰還せざるを得なかった。
既にトビーが海に消えて一週間以上が経っている。どう頑張っても、遺体を見つける事すら困難だ。
そう、冷静に判断出来る自分がいる。だが同時に、諦められない自分もいる。どこかで生きていてくれるんじゃないか、そんな甘い思いを抱いている。
そう簡単に、割り切れるものでもない。
「許可は下ろせない」
「どうして!」
「既に一週間以上が経っている。外海に流されているならもう見つける事も出来ない。万が一そこで嵐にでもあえば、更なる犠牲が出かねない。そんな危険が伴う事を、何の希望もないのに許可出来ない」
「じゃあ、見捨てるんですか!」
「……そうだね、そうなる」
激しい言葉と剣幕で詰め寄るトレヴァーに、ウルバスは静かに告げる。でも、分かっている。本当はとても悔しいし、苦しいと。
あれこれあるが、ウルバスは部下を大事にする師団長だ。部下に対しては基本朗らかで、悩みなんかも聞いてくれる人だ。そんな人が平気なわけがない。
トレヴァーだって分かっている。ただ、理解と納得は別問題なんだ。
「明るい材料が少しでもあれば、俺から許可を出してもいいんだがな」
「……はい」
こちらはこちらで思い悩む。難しい顔のファウストも気持ちの面では探してやりたいのだろう。実際、事を聞いて酷く悔しい顔をして、その夜は落ち込んだ。船の事は門外漢だというのに、自分の責任だと言うくらいには弱ったのだ。
思い悩む中、不意にドタン! という音がして思慮の海から顔を上げると、トレヴァーがウルバスの胸ぐらを掴んでいる。流石に驚いて止めに入ろうとしたが、ウルバスは静かに首を横に振った。
「いいよ、殴っても。それでも俺は許可を出さない」
「ウルバス様!」
「これ以上、誰も犠牲にできない」
分かっているから、トレヴァーもそこから動けない。こんな状態で膠着状態のまま、不意に執務室のドアを開ける者がいた。
「失礼し……! こら止めろ、バカ!」
書類を持ったキアランが室内の状況を見てギョッとし、とにもかくにも走ってウルバスとトレヴァーの間に入りトレヴァーを座らせた。これは案外あっという間で、なんとも見事な仲裁にランバートもファウストも感心して「おー」と声を上げてしまった。
「関心なさってないで止めてくださいファウスト様!」
「いや、一発殴れば気がすむならそれもいいかと」
「脳筋か! ランバート、お前も止めろ!」
「まぁ、そういう片の付け方もあるといえばあるので」
「似るな!」
ゼーハー言いながらまくし立てるキアランに二人は「すまん」と謝り、仲裁された方は少しだけ冷静になったようだった。
「ウルバス!」
「あー、右に同じ。というか、それで止められるなら安いかなって」
「アホか! トレヴァーも冷静になれ。力で組織は動かないんだぞ」
「そうかもしれないですが! でも、だって……」
俯き、強く拳を握るトレヴァーは恋人の前だからか途端に弱い顔をする。キアランも困った顔をして頭を撫でてやるのだから、見ているこちらも切なさが増してしまった。
「いいか、俺はお前の味方だ。そしてお前の望みを違う方面から支えるのが仕事だ」
そう言うと、キアランはテーブルの上に持ってきた書類を置いた。
「ここ五〇年程の海難事故記録を洗い出しました。そこで、気になる調書が複数ありました」
「気になる調書?」
ファウストも来て、全員でソファーに座る。そして彼が纏めてきた事故調査書を手に取った。
「期間は五〇年、トビーが事故に遭った近辺での事故について絞ってあります」
「生存者がいるな。ほとんどが漁師か」
「あの辺りは漁場としても資源が豊富ですからね。ただ、ルアテ島の事も考えて竿釣りに限っていますし、小さな獲物はその場で逃がす事になっています」
ランバートも書類に手を伸ばす。主に漁の途中で海に落ちた漁師だが、似た所見が多い。夜釣り、ルアテ島付近、大潮。
「この者達は大潮の夜に事故に遭い、ルアテ島に流されそこで命を救われて国に戻っています」
「妙だね。あそこの潮はこの季節外へと向かっているはずだけれど」
「海軍の軍船くらい重いならな」
「!」
ウルバスは目を丸くして、口の端をニッと上げた。
「つまり浅い部分の潮は大潮でルアテ島の方への引きが強い?」
「考えられるのはそうだ。恐らく体重が重い者や装備を着込んだ者なら下に沈むが」
「あの夜は大潮で、トビーはほぼ制服と剣だけで軽かった!」
トレヴァーの目にここしばらくで一番の輝きが宿り、全員の顔にほっとした笑みが浮かんだ。
「ウルバス様!」
「いいよ、行っておいで。そのかわりルアテ島にだ。外海へは許可できない。船は他の隊のものを借りて、船員も十分な相手を選びなさい」
「俺、行ってきます!」
にっこりと笑ったウルバスが頷き、飛び出すようにトレヴァーが走っていく。それを見送り、ランバートもようやく息が吐けた。
「俺も行きます」
「ランバート?」
「ルアテ島は完全に自治の島です。何かあったとき、ある程度の権限を持っている者がいるほうが交渉なども可能です。何より、友人の無事を願う者として」
「……分かった」
もっと渋るかと思ったが、ファウストは案外すんなりと言ってくれる。ふわりと笑い、頷く人を見てランバートも笑みを浮かべた。
「キアラン、助かった」
「いえ」
「キアランは可愛い恋人が心配だったんだもんね」
「ウルバス!」
気が抜けたのか一気に緩くなったウルバスの雰囲気にキアランが顔を赤くして反論する。だが、おそらくそうなんだろう。それくらいトレヴァーの焦りや憔悴は酷かった。
彼が責任者となっている船での事故であり、仲間であり友人が被害者だ。そもそも一年目の隊員の初航海で初の捕縛。事故も一年目が捕虜のロープを放してしまった事で起きたのだ。
責任も感じているトレヴァーは周囲が心配するほど落ち込み、探そうと奮起し、食事が喉を通らない日々だった。
「それで、拿捕した船の乗組員の取り調べと船の検分がほぼ確定しました。今回の事件はウェールズの私掠船が行った事です」
キアランが改めて書類を提出する。これには調査をした暗府と宰相府の印が押されていた。
「私掠船など、帝国では絶対に許される行いではないがな」
「大国のプライドは何処にいったのか、ということですね」
報告書を手にしたファウストは眉根を寄せ、ウルバスは溜息をつく。ランバートも難しい顔をした。
私掠船とは、国家が認めた海賊という認識でよいだろう。
自国に敵対している国の船を襲い略奪行為をしても国は彼らを罰しない。そのかわり認定印のある船は略奪したものの一部を税として国に納める。
国家としてはなんら痛手はない。彼らが壊滅したとて海賊が減るだけで国の兵が傷つくわけでもなく、略奪が成功すれば何かしらの金品が入り、かつ他国の力を僅かでも削げる。
しかもいざ戦争となれば私掠船も戦力として投入する事が出来る。まぁ、常識的とは言えないが。
更に今回のように拿捕されれば知らぬ存ぜぬだ。尻尾切りをし、抗議が酷ければ船などを管轄する港の適当な役人を切って終わりだろう。
胸くそが悪い。
「今回の事は正式な抗議としてウェールズへ文書を出すと共に、周辺国へも同じ内容の文書を出すこととなりました」
「いつも通りだが、それが精々だからな。あの国はやりにくい」
「潰します?」
「ようやく穏やかになったというのに、こちらから仕掛けるのか? 今回の事は国家が率先して行ったとは言いきれないだろうから、理由としては弱い。明らかな侵略行為がないと難しいな」
「その辺があの国の上手い所ですよね。以前みたいにいきなり侵攻してくれれば、もう負けはしないのに」
「止めてくれウルバス、これ以上は俺の胃が無事じゃない……」
なんとも好戦的な騎兵府の発想に、胃の弱いキアランが腹を押さえてげっそりとする。
そんな事で笑っていると、不意にノックの音がしてクリフが急き込んで入ってきた。
「失礼します! ウルバス様!」
「え? 俺?」
思わぬ指名にウルバスが自身を指差して首を傾げる。妙にキリッとしたクリフは前に進み出て、思い切り頭を下げた。
「えぇ! どうしたのクリフ?」
「お願いします! 今回のトビー捜索隊に僕も参加させてください!」
その申し出にウルバスはちょっと驚いた顔をする。だが、もうファウストもランバートも驚きはしなかった。
「どうしたのクリフ」
「今回、僕はトビーに沢山助けられました。なのに僕は何一つ助けられなかったんです。お願いします! 船医として、今度こそ彼を助けたいです!」
「でも、危険もあるかもしれないから」
「同乗してもらいましょう、ウルバス様」
クリフの同行にランバートはにっこりと笑う。勿論理由もあるのだが。
「トビーが怪我をしている可能性も大いにあると思います。もしも無傷なら、これまで通りルアテ島の者が何かのついでに送り届けてくれたでしょう。漁師などは大体そんな感じで、こちらで謝礼を払って彼らは帰っていったとあります。そうなっていない理由に怪我などがあるかと思います」
「確かに、あり得る話だな。あの島ではまともな医療は難しい。万が一流れ着いていたとしても怪我が原因で伏せているというのは、考えられる事だ」
「お願いします!」
ランバート、キアランの見解を聞いたクリフがより一層強くウルバスへと迫る。これにはウルバスもタジタジで、「分かったから!」と声を上げた。
「まったく、頼もしい限りだ」
「見た目は頼りないのに、あの押しは誰が教えたんだろう」
「エリオットとハムレット殿が外科を、オリヴァーが薬学をみっちり仕込んでいるようだからな」
「え、なにその怖いの。いや、俺でもそんなの耐えられませんよ? うわぁ、人間拗れそう」
「皆さんとてもいい人ですよ」
「……君は案外大器だったのだな」
キアランまでもが引きつった顔でクリフを見つめる。だがクリフはにっこりと笑って返している辺り、本当に頼もしい限りだ。
何にしてもようやくトビー捜索に踏み込める。ランバートは気合いを入れ、船を整えているだろうトレヴァーと合流しに向かうのだった。
▼トビー
コポコポと音がする。暗い……真っ暗な底へと沈んでいく感覚。それは覚えのあるものだ。
カミーユ……
声が聞こえる。腕に、足に、体に絡みつく無数の手はまだ小さい。
カミーユ……
「!」
途端、流れ込む水が喉を塞ぐ。肺に流れ込んでいく。苦しくてもがくように手を伸ばしても上に行けない。
カミーユ……
どうして今更責めるんだよ、トビー。そんなに俺が許せなかったのかよ。
意識が沈む。引きずられるように水の底へと。もう、もがく力なんてない。
◇◆◇
「トビー!!」
「!」
強い声に起こされて目が覚めた。喉は引き絞られたように痛んで咳込んでしまう。ステンがコップに水を汲んで持ってきてくれて、ゆっくりと飲ませてくれた。それでも目に見えて手は震えている。
「お前、本当に大丈夫か? 海に行った日からおかしいぞ」
「……大丈夫だって。ちょっと夢見が悪いだけだから」
言っても説得力がない。今日で三日、ステンに起こされている。
あの日、海で見た幻は夢の中まで苛むようになっていた。溺れる夢なんて縁起でもないが、心当たりがあるからどうにもならない。ただ、それを誰かに言う事はできないんだ。
そんなトビーを見るステンはしばらく無言でいたが、やがて大きな溜息をついて隣に座り、そのままグッと抱き寄せてくる。驚いて……でも、居心地がよかった。
「なぁ、トビー。お前、何抱えてんだ」
「そんなんじゃねーよ」
「誤魔化すな。ここ三日のうなされ様は普通じゃない。傷が痛むのとも違うだろ。話してみろって」
「だから!」
「心配なんだよ、マジで」
そっと頬に手が触れて、額にチョンと唇が触れる。しばらく何が起こったのか分からなかったトビーは、理解して飛び上がるように距離を置いた。
「おっ、おま! お前!」
「なんだよ」
「キス!」
「あぁ? あんなの、親がガキを落ち着ける時にするのと変わんないだろうが」
あきれ果てた様子で腰に手を当てるステンだが、次にはニッと悪戯に笑って立ち上がり、ジリジリとトビーに迫ってきた。
「おっ、落ち着けステン。俺男だって」
「おう、知ってるぜ。でも騎士団って男色もありなんだろ?」
「落ち着け! 俺は違う! 違うからぁ!」
慌てふためいて逃げようとするが、まだ調整中の足はそんなに機敏な動きは出来ない。転びそうになった所をステンが腕を引いて助け起こし、トビーはまんまと捕まった。
「落ち着けって。なぁ、トビー。無理してないか?」
「……してない」
「お前、案外意地っ張りだよな」
「うっせぇ!」
「俺達は知り合って間もないし、ここを離れたらもう会うこともないだろうけどよ。だからこそ言える事とか、有るんじゃないか?」
「それ、は……」
そうなのかもしれない。この事が重しになっているのはきっと確かだ。人生で溺れて死にかけたのはこれで二回目。引き金はあの時だ。
それに、この男は案外甘やかすのが上手いのかもしれない。子供達に好かれるのも納得できるくらいには気安くて、優しいんだ。
「トビー」
低く、少し甘く名を呼ばれると甘えたくなる。だがこれは昔の自分だ。トビーはこんなに弱くない。トビーなら、はね除けられるはずなんだ。
でも、出来なかった。頬をスルリと撫でたざらついた指先、甘い海のような瞳が近づいて、そっと頬に唇を落とす。頭を撫で、お姫様抱っこされてベッドに戻された。
「抱え込んだものが重いと溺れるからよ、その前に預けられる奴を見つけないとな」
「……」
いい加減、疲れた。それが、今の正直な気持ちなのかもしれない。
◇◆◇
翌日は島の子供達が連れ出してくれて、少し離れた温泉へと足をむけた。
この島は元々海底火山の隆起によって出来た島らしく、剥き出しの亀裂やゴツゴツした岩はその名残らしい。中央には噴火した火口があるが、もう何百年も噴火なんてない。人が暮らしているのは山の裾野だ。
その為温泉が出る。しかも傷の痛みにいいらしく、今までも島に流れ着いた人が体の痛みを取るのに使っていたらしい。
「トビー兄ちゃん、こち!」
「待てって!」
寝たままでも出来るリハビリは行っていたんだが、それでも岩肌が剥き出しの道を歩くのは大変だ。しかもこの島に慣れた子供達が案内役ではなおさらだった。
それでもどうにか辿り着いたそこは、天然の岩場に湯が溜まったという感じで特に整備などはされていない。それどころか脱衣所もなければ男女も分かれてはいなかった。
「混浴かよ」
「この島じゃそれを気にする奴なんざいないって。皆顔見知りだからな」
保護者としてついてきたステンに言われてもどうにも「そうか」とは言えない。この辺りはやはり文化の違いなのか。
だが子供達は気にしていない。男も女もさっさと脱いで湯に飛び込んでいる。湯量もたっぷりあり、温度も高くないようだ。
トビーも脱いでそっと湯へと足をつける。心地よい湯にほっと息を吐いた。その時だ。
カミーユ……
微風が運ぶようなか細い声と、足に触れたような幻覚。水面に浮かぶのは瓜二つの少年の青白い顔だ。
「!」
心臓が締め付けられるように痛み、息が出来ずにヒュッと鳴る。怖くて震えて後退ろうとしても足場の悪い岩場で濡れている。滑って、体が後ろ向きに倒れていく。
「トビー!」
慌てたステンが駆けてきて後ろから抱き留めなければ無防備に頭を打ち付けただろう。抱き留められて、でもその腕の中で震えが止まらない。
「あ……」
「トビー、しっかりしろ!」
「ちが……トビーは……」
小さな声で訴えかけて口を噤む。引き結ぶ唇が震えている。
カミーユ……
悲しそうに、寂しそうに呼ばれるこれは幻聴なんだって理解はしている。見えているものも幽霊なんかじゃなくて幻だって分かっている。それでも震えは止まらない。犯した罪は消えない。
でももう、戻れないのかもしれない。水が怖い水兵なんて、なんの役に立つんだ。
「お前、本当にどうしたんだ」
「……わかんないよ」
綻びから溢れたものが今更襲ってくる。もう、限界なのかもしれない。
その夜、トビーはそっと家を出て海沿いにきた。月が綺麗で、風は少し冷たい。寄せる波音は心地良いと思えるのに、今はそこに足を入れる事すら怖い。
蹲るその後ろから足音が聞こえる。隠しもしない存在感に、トビーは蹲ったまま声をかけた。
「もう、死んだままでいい」
「なんだよ、らしくなく萎れて。トビー」
「その名で呼ぶな! 俺は……俺はトビーじゃない」
限界に達した何かが口を突く。言わなければ溢れてしまいそうだ。
顔を上げ、後ろを睨むとステンはとても穏やかな様子で腰に手を当てて立っていた。
「カミーユ、か?」
「! どうして」
「どうしてって。うなされてる時に自分で呟いてるぜ。なんかあるなって思うだろ」
「そう、か……」
情けない話にまた俯いてしまう。そんなトビーの隣に腰を落ち着けたステンはそのまま黙っていてくれる。話し出すのを待つみたいに。
「……聞いて、くれるか」
「おう」
「……俺は、小さな田舎の領地で、領主様に仕える爵令家の一人息子だった」
誰にも言わなかったそれは、言えない事。罪であり、鎖だ。
「爵令家?」
「爵位持ちの家令家ってのがあるんだ。ご立派な家柄の家に代々仕えている家令にはそれなりの見栄えが必要になる。だから最下位の男爵の称号が与えられている。とはいえ、実体は主に仕える人間だ。当然国からの補助なんてのはない。まぁ、帝国って爵位に対する補助金とかってない国なんだけどな」
帝国では爵位に対しての補助金はない。そのかわり、爵位に対する増税もない。爵位は見栄えと同時に国の外に有益な人材を流さない措置であり、保護である。なので小貴族と呼ばれる男爵や子爵はそれなりに多いのだ。まぁ、侯爵辺りからグンと減るのだが。
「帝国の貴族の仕組みって複雑だよな」
「まぁな。小貴族なんてのは案外あちこちにいるし、平民みたいに暮らしてる。王都の西にどっかり邸宅構えてるような大貴族は一握りだが、それ以外は案外いるよ」
「んで? お前はその爵令家の息子だったんだろ? そこから騎士団に入ったのか?」
「……騎士団に入りたかったのは、俺じゃないんだよ」
問われ、呟いて。ぼんやりと眺めた海はとても静かだ。
「騎士になりたかったのは俺じゃない。俺がお仕えしていた同じ歳の領主の息子のトビー様さ」
案外すんなりと出てきた言葉に苦笑する。そして、ちょっと懐かしかった。
「トビー様は俺に凄く似ていた。だから俺はトビー様の影武者で、従者で、親友だった。歳の近い子供がいなかったから余計にべったりで、それこそ寝るときも一緒がいいと我が儘を言われて一緒に寝た事もあった。そんな俺達を見て、穏やかな領主夫妻も俺の父親も『双子みたい』なんて言って笑ってたな」
なんとも微笑ましい時間だった。
勝ち気で明るく人をグイグイ引っ張っていくような性格だったトビー様。いつも手を引いてくれたのは、あの人だった。
「……お前の、名前は?」
「……カミーユ・ヘイゼ」
もう十年以上名乗っていない本名。捨てた名前を口にしたら、少しだけ軽くなった。そうしたら、何もかも言いたくなった。
「俺の家は片親で、母親は死んでいた。だから親父と俺は領主様の屋敷に住んでいて、穏やかで優しい領主一家はそんな俺達も家族みたいにしてくれた。トビー様は活発な方で、俺はいつも振り回されていたけれど、楽しかったのは確かだ。騎士になりたいって夢も応援していた」
「領主の息子なのにいいのかよ」
「歳の離れた姉上がいて、少し大きな街の学園に通っていたんだ。ゆくゆくは結婚して領地を継ぐ為にね。トビー様は年を取ってから出来た子供だったから、けっこう甘やかされてた」
本当に穏やかだったんだ。まるでぽかぽかの日向みたいに。
八歳の夏までは……。
「……八歳の夏。領主一家と俺と親父で川遊びに出たんだ。川幅はあったし、中央まで行けば深いけれど浅瀬は足首程度の川で、水が澄んで綺麗で魚なんかも泳いでいる川だった」
その日も暑くて、領主夫妻は川から少し離れた草地で笑って見ていて、親父は比較的川の近くにいて、俺達は足を川に浸して遊んでいた。
『深い所に行くなよ!』という親父の声に『分かってるよ-』と二人で返して笑って、冷たい水を楽しんでいた。
なのに、悲劇は突然だった。
「……」
「……何があった?」
「……鉄砲水が出たんだ」
「鉄砲水?」
眉根を寄せたステンに、トビーは静かに頷いた。
「原因は、上流にあった貯水池の堰が限界に達し、老朽化もあって決壊したこと。泥や流木混じりの水が一気に、何の前触れもなく流れ込んできた。俺達はそれに巻き込まれたんだ」
それは、一瞬の出来事だった。
突然ゴゴゴゴゴッという轟音と共に木がへし折れるミシミシという音が混じって近づいてきた。それからたった数十秒後には、壁のような水が目の前にあった。
領主夫妻の悲鳴と、親父の声と、側にいたトビー様の手を握って背中を向けた。そこから、記憶が途絶えている。
「元々川から離れていた領主夫妻は無事だったけれど、親父とトビー様は死んだ。俺は奇跡的に近くの木に引っかかって、流されて見つかった」
隣でステンは押し黙ってしまった。それが申し訳ないような気がしてくる。こんな話、好んで聞きたいわけもないんだから。
「……そんで、カミーユ。どうしてお前がトビーになったんだ」
「……領主様の、奥様が精神を病んでしまったから、かな」
思えばそれが、更なる罪の始まりだった。
「年を取ってから授かったトビー様を、奥様は殊の外愛されていた。だから、息子の死を受け止められなかった。俺が目を覚ました時、奥様はトビー様に瓜二つの俺をトビー様だと思い込んでいた。領主様が否定しても認めないし、ヒステリックになって暴れる。そして俺も、親父が死んだ事で未来が見えなくなってた」
怖かった、何の後ろ盾もなくて。頼りだった親父は死んで、仕えていた主は守れなくて。何の力もない弱虫で非力な自分だけが生き残ってしまった。八歳だ、何も分からない。ままごと遊びみたいな主従ごっこしか経験がない。
「そんな状態が一ヶ月くらい続いた時、領主様が俺にお願いしてきた。トビー様として生きてくれないかと」
「な!」
この事実にステンは思わず立ち上がって睨み付けた。それに、トビーは力なく笑うしかなかった。
「奥様の精神状態の安定の為だ。そして俺は、偽物でも家族が出来る。領主家の息子なら路頭に迷う事はない。家は継がなくていい。俺も、安心が欲しかった」
「それで入れ替わったってのか!」
「……あぁ」
事故で死んだのはカミーユとして届け、主を守って亡くなった尊い父子として領主家が手厚く葬ってくれた。そしてそこから、しがない男爵の子は領主の息子のトビーとなった。
「そこからはまぁ、安定してたな。トビー様になるよう、思い出しながら演じている間に身についた。奥様は穏やかな笑顔を取り戻した。領主様だけは申し訳ない顔をしていて、戻られた姉上も事情を知って泣きながら謝っていて……俺はこの事実を封印した」
だってこれは立派な罪だ。知れたら何かしらの咎めがある。だからって真実では誰も幸せにはなれなかった。
少なくとも、当時は。
「それから成人して、俺はトビー様がなりたがった騎士になった。もう、カミーユの頃の自分なんて思い出せなかった。第三に入って、船に乗って、今までも水に落ちた事なんかはあったけれど平気で。なのに突然、今になって聞こえるんだ。トビー様が、俺を呼ぶんだ」
それはいつも水の中。触れる手は死んだときと同じくらいの小さなもの。寂しそうで、悲しそうで。それがまるで恨んでいるように思える。
当然だ。トビー様からしたらカミーユは自分の人生を盗んだ事になる。本当は歩むはずだった未来。カミーユのままならどうなっていた。領主が保護してくれたとしても騎士なんて考えなかった。
「俺、恨まれてるんだろうな。人生奪ったんだ、当然か」
「違うだろ! 死んだのはそいつの運命でお前のせいじゃない! その後の事だってお前に選択の余地なんてなかっただろ!」
「だとしてもさ。生死については運命でも、その後のことについては違う。俺も、選んでそう振る舞ったんだ」
「八歳のガキだぞ! 生きるのに必死になって何が悪い! お前は自分を生かすのに選んだんだ!」
「分かってる。分かってるけど……じゃあなんで今更、俺の前に現れるんだ。なんで責めるんだよ。断罪だって思って当然じゃないか」
忘れるなって、言われているみたいだ。自分を踏み潰していった罪を忘れるなと。夢に出て、水に出て。このままでは騎士団にも戻れない。騎士団を出たら、どうなるんだ。今更どんな顔をして領主様の前に出ればいい。これ以上、紛い物の家族を続けていくのか。
答えが出ない問いかけを続けている。でもこれでは進めない。生きているなら食べなきゃ死ぬし、食べるためには何かしらしなければいけない。
「……もう、いっそさ。死んだ事にしてここで生活していこうか」
思わず呟いた弱音。トビー様なら言わないだろう言葉。騎士団に居た頃は言わなかった言葉。でもずっとどこかで、カミーユは叫んでいた。怖い事を怖いと、痛い事を痛いと。悲しい事を辛いと。
弱く笑ったトビーの腕を、不意にステンが引き寄せて腕の中に入れてしまう。強い力は守られているように思う。弱くなった気持ちは、これを心地よく思ってしまう。
「いいぜ、それでも」
「え?」
「居たいなら好きなだけ居ろ。傷が治った後も」
「……いいのかな?」
「いいぜ、カミーユ。お前一人くらい、俺がどうとでもしてやれる」
「ステン……」
強い男の声に何処かほっとした。それは一つ、縛られていた鎖が綻び切れた瞬間だった。
この日、名前を封じた少年はようやくトビーからカミーユに戻ったのだった。
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