恋愛騎士物語アフター!

凪瀬夜霧

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帝国海軍海上訓練事件

おまけ3 ステンの秘密勉強会

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 ステンが騎士団に仮入団して二ヶ月。日々の業務は順調なようだ。
 当然のように第三に入ったが、既に船の扱いについては完璧。更には荒事もしていたから度胸もある。案外器用だし気遣い上手で痒いところに手が届く。ウルバスはそんな評価をしている。
 来年入団したら第三がもらうと既にウルバスは予約済である。

 が、その入団試験対策が一つの問題でもあるのだ。

 終業後、平日は毎日一時間程度の座学をしている。が、実は当初の目算よりも順調だ。
 それというのもステンの学習レベルが思ったよりも上だった。元々島で売買交渉をしていた事から帝国の主流である大陸公用語、更にはジェームダルの古い言語も習得していた。ただ、書く方は苦手なようだ。
 算術については問題ないレベル。考え方が柔軟なのか面白い発想で答えまで辿り着く。頭もいいのだろう。
 歴史についてが一番ネックだが、ある程度のカバーはできていた。それというのも、どうやら島で昔話として帝国の歴史を教えていたようなのだ。

「それにしても、じっちゃん達の話も聞いておくもんだな」

 今日のテストは八〇点以上の合格ライン。ただ、スペル間違いが玉に瑕だが。

「いざとなった時に常識くらいは教えておこうと思ったんだろう。おかげで歴史も細かな所を詰めていけばどうにかなりそうだぞ」

 これで帝国史は必ず出る。主に建国史だ。建国の王アルフリードと、彼に仕えた者達の名前は勿論、彼らが現在の四大公爵家の始祖となった所はもはや常識だ。

「ランバートのご先祖も、聖人の一人なんだろ?」
「……」

 これについて、ランバートはある個人的な理由で黙秘したかった。それというのも、やはり血筋なのか? と言いたくなる先祖なのだ。

「王弟フェリックス……だっけ? あれだろ? 兄王が小さな地方の領地の領主となった後、最初の大きな戦いの時に駆けつけてきた強烈な人」
「あぁ」

 その登場シーンが最初のやらかしなのだ。

「『おぉ、愛しい兄上様! ご無事ですか? 何故私を置いていったのです。酷いではありませんか。このフェリックス、兄上様の為ならば地獄の悪魔とだって渡り合ってみせますのに。いえ、なんなら狩ってきます』だっけか? 凄い口上だよな」
「笑えない……」

 そう、この性格がハムレットを彷彿とさせてどうにも拒否反応が出るのだ。この時建国の王アルフリードは一言『げっ』と漏らしたと言うが、気持ちは察せられる。
 まぁ、何にしてもこの先祖はもの凄く優秀だった。兄を助け勇敢に戦い、時に単騎で攪乱し、味方の裏切りを察知してそれと知られずに始末した。兄以外は全て等しく無価値だったのだ。
 ファウストに言わせるとフェリックスの行動や動きはランバートに似ていると言うが……だとしたら怖い。
 そしてこの王弟は本当に兄を大切にした。兄が王となったら表だった派手な活躍を控え、さっさと好意を寄せてきた下位貴族の女性と結婚して王位継承権を放棄し、ヒッテルスバッハ家を作った。そして裏の世界を牛耳り、逆らえば血の粛清を、従えば良い待遇で飼い慣らした。
 そして、まだ未熟な王子を残して兄王が倒れた際には政務補佐として宮中に上がり、臣下として若い王を盛り立てた。
 ヒッテルスバッハの教えでは、決して自ら王位に立とうとは思うなかれとある。財を得るのも、権力を得るのも全ては国の為。国と王と民の為に死ぬのがヒッテルスバッハの美学である。

「でも、俺はあの人好きだぜ。なんか滅茶苦茶な事するのに憎めないっていうか」
「……まぁ、ね」

 先祖の事とはいえ褒められるのは、なんだかくすぐったいものだった。

 勉強会の片付けをしていると、不意にステンがランバートを見ている。首を傾げると、彼はちょっと困ったように話し出した。

「なぁ、ランバート。一つ相談なんだけどな」
「どうした?」
「男とセックスする時のコツとかって、あるか?」
「……まぁ、多少は」

 思わずジト目になるランバートに、ステンは目をキラキラさせる。つまり、そういうことだ。

「なんだ、トビーに拒否られてるのか?」

 片付けながら問うと、ステンは苦笑しながらも首を横に振る。でも明らかに困っている。

「拒否じゃないんだけどよ、やせ我慢っていうか」
「あぁ」
「俺の見たらちょっと怖かったんだろうな。それでも男らしく『ひと思いにやれ!』とか言うからさ」

 既に死を前にした捨て台詞じゃないか。

 確かにステンは体格がいいから、アレもそれなりに大きいだろうが……正直、ファウストを見慣れているとあまり驚かない。グリフィスとドゥーガルドは引いた(風呂場で見てしまった)

「俺もさ、気持ち良くないならそんな焦る必要ないって思ってるから進まなくてな。いい加減カミーユの方が爆発しそうなんだ」
「あいつ、そんなに性欲強いのか?」

 意外だ。そんな様子なんてまったくなかったのに。
 が、違うとステンは首を横に振った。

「『お前、俺に手加減してるだろ! いいって言ってんだから突っ込め!』という方向性だな」
「あ……」

 それは想像がつく。なんというか、舐められたままは癪に障るタイプなんだ、トビーは。
 ステンは真面目になんとかしようと思っているのだろう。腕を組んで考えている。それを見て、ランバートは微笑ましい気持ちになった。
 ランバートも最初、ファウストのものを見て引いた。当然だが随分とご立派だった。それが今では抵抗もないしすんなり受け入れている。体が彼を覚えているのだろう。
 そんな道を、誰もがきっと通っている。そのうえで今も繋がっているのだ。

「まず、じっくり慣らさないとな」
「それは毎回少しずつやってる。一応指二本までは余裕」
「三本」
「ちょっと痛がるんだよな」
「二本の時点でグズグズになるまで刺激して解さないとな。あと、中で気持ち良くなれるように後ろ弄りながら他の気持ちいい場所を刺激してやるといい。そのうち尻が気持ち良くなる」
「……考えると、おっかない方法だよな」
「痛いよりいいだろ」

 これにはステンも頷いて「だよな」と言う。その後は真っ白い歯を見せてニッカと笑い「ありがとな!」と言って出ていった。
 少しずつ、人と人との絆が増えていく。それを感じたランバートもまた、早くファウストに会いたくなるのだった。

END
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