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浦島太郎外伝3 竜王の祝言
一話
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目が覚めて数ヶ月、体はすっかりよくなり、海も暖かく感じる。
浦島の産んだ子は、皆から「公子」と呼ばれていた。まぁ、確かにそうなのだろう。
そして公子には一人、同じ歳くらいの友達ができていた。
「那亀、あーそぼ!」
「はい、公子」
薄い茶色の髪をふわふわとさせた子亀を亀から紹介されたときは、浦島はもの凄い顔をしてしまった。
那亀はどうやら、亀の神気というものが生まれ落ちたものらしい。河豚に聞いてみたところによると、「産んだ」というよりは「分離した」というほうが正解らしい。力が過剰に体に溜まったので、何らかの形で排出されて形作られた生命らしいのだ。
竜王にも聞いてみたが、あることらしい。竜王は大きな珠を持っていて、そこに溢れそうな神気を流し込んでいる。その力が海に行き渡って豊かにしていくのだそうだ。
亀の神気はどういうわけか卵の形で排出され、それを温めて孵化させた結果、子亀になってすくすくと成長。自我もあり、普通に食事を取って大きくなっている。
だが見た目は……亀とちょっと違う。キラキラしていて綺麗で可愛いのだ。
これについて問うと、亀は何故か大いに赤面して逃げていく。話してもらえないが、鯛は何か知っているのかもの凄い無の顔をする。
「お子様達は元気ですね」
庭に出て子供達が遊んでいるのを見ていると、不意に後ろから声が掛けられお茶の盆が置かれる。鯛と平目がにっこりと笑い、浦島の側に座ってお茶を淹れてくれた。
「本当に元気ですよね。公子も楽しそう」
「公子様は活発な性格のご様子。利発ですしね」
「那亀は少しおっとりな部分がありますよね」
「えぇ、そこは亀に似てしまったのかと。まぁ、もう一方に似なかったのが幸いでございましょう」
「?」
もう一方?
「それって……やっぱり那亀に父親がいるってことですか?」
「明確には違うと思いますが、似たようなものでございましょう。卵に力を更に与えていた人物がいるかと存じます。外見が恐ろしくそちら寄りです」
鯛によると、那亀はある日突然亀が連れてきたのだという。力を分けた分身のような感じで相手はいないという亀の言葉に納得はしたようだが、何があったのかは皆知らない。
唯一知っていそうな竜王は困った顔をしながら「秘密だ」と言って浦島にも教えてくれないのだ。
「そういえば浦島様、祝言のお話は伺っておりますか?」
お茶を飲みながら鯛に問われ、浦島はこくんと頷いた。
竜宮はここの他に三つあり、それぞれ竜王が住んでいる。その竜王達に浦島を紹介する祝言の儀式が、実は行われていなかった。
浦島はとても特殊な事例だし、腹に子もいた。更にその子を産み落とした時に酷く傷つき長く眠ってしまっていた。
目覚めて数ヶ月、体の調子もよさそうだということで改めて、祝言の儀が行われる事となったのだ。
「浦島様の晴れの儀ですし、公子のお披露目でもございます」
「とはいえ、俺は何をしたらいいのでしょう?」
「基本的には何も。当日、竜王様方をお出迎えくださり、後は竜王様の隣におられればそれで良いのです」
「そうなんだ……ていうか、皆名前がないの? なんだかとても呼びにくい」
考えてみれば皆「鯛」とか「平目」とか、種類で呼んでいる。今まではそれで問題なかったが、今はとても呼びにくい。それに、亀の子にはちゃんと那亀という名前があるのだ。
鯛は苦笑し、「ありますが……」と濁してくる。首を傾げると、溜息とともに教えてくれた。
「今まであまり不便がございませんでしたし、竜王様は名を呼びませんので皆それに倣っておりました」
「そうなんですか? 不便そうなのに。ちなみに鯛さんは、なんて名前なの?」
問うと、彼は少し寂しそうな笑みを見せて「朱華です」と答えてくれた。
浦島の産んだ子は、皆から「公子」と呼ばれていた。まぁ、確かにそうなのだろう。
そして公子には一人、同じ歳くらいの友達ができていた。
「那亀、あーそぼ!」
「はい、公子」
薄い茶色の髪をふわふわとさせた子亀を亀から紹介されたときは、浦島はもの凄い顔をしてしまった。
那亀はどうやら、亀の神気というものが生まれ落ちたものらしい。河豚に聞いてみたところによると、「産んだ」というよりは「分離した」というほうが正解らしい。力が過剰に体に溜まったので、何らかの形で排出されて形作られた生命らしいのだ。
竜王にも聞いてみたが、あることらしい。竜王は大きな珠を持っていて、そこに溢れそうな神気を流し込んでいる。その力が海に行き渡って豊かにしていくのだそうだ。
亀の神気はどういうわけか卵の形で排出され、それを温めて孵化させた結果、子亀になってすくすくと成長。自我もあり、普通に食事を取って大きくなっている。
だが見た目は……亀とちょっと違う。キラキラしていて綺麗で可愛いのだ。
これについて問うと、亀は何故か大いに赤面して逃げていく。話してもらえないが、鯛は何か知っているのかもの凄い無の顔をする。
「お子様達は元気ですね」
庭に出て子供達が遊んでいるのを見ていると、不意に後ろから声が掛けられお茶の盆が置かれる。鯛と平目がにっこりと笑い、浦島の側に座ってお茶を淹れてくれた。
「本当に元気ですよね。公子も楽しそう」
「公子様は活発な性格のご様子。利発ですしね」
「那亀は少しおっとりな部分がありますよね」
「えぇ、そこは亀に似てしまったのかと。まぁ、もう一方に似なかったのが幸いでございましょう」
「?」
もう一方?
「それって……やっぱり那亀に父親がいるってことですか?」
「明確には違うと思いますが、似たようなものでございましょう。卵に力を更に与えていた人物がいるかと存じます。外見が恐ろしくそちら寄りです」
鯛によると、那亀はある日突然亀が連れてきたのだという。力を分けた分身のような感じで相手はいないという亀の言葉に納得はしたようだが、何があったのかは皆知らない。
唯一知っていそうな竜王は困った顔をしながら「秘密だ」と言って浦島にも教えてくれないのだ。
「そういえば浦島様、祝言のお話は伺っておりますか?」
お茶を飲みながら鯛に問われ、浦島はこくんと頷いた。
竜宮はここの他に三つあり、それぞれ竜王が住んでいる。その竜王達に浦島を紹介する祝言の儀式が、実は行われていなかった。
浦島はとても特殊な事例だし、腹に子もいた。更にその子を産み落とした時に酷く傷つき長く眠ってしまっていた。
目覚めて数ヶ月、体の調子もよさそうだということで改めて、祝言の儀が行われる事となったのだ。
「浦島様の晴れの儀ですし、公子のお披露目でもございます」
「とはいえ、俺は何をしたらいいのでしょう?」
「基本的には何も。当日、竜王様方をお出迎えくださり、後は竜王様の隣におられればそれで良いのです」
「そうなんだ……ていうか、皆名前がないの? なんだかとても呼びにくい」
考えてみれば皆「鯛」とか「平目」とか、種類で呼んでいる。今まではそれで問題なかったが、今はとても呼びにくい。それに、亀の子にはちゃんと那亀という名前があるのだ。
鯛は苦笑し、「ありますが……」と濁してくる。首を傾げると、溜息とともに教えてくれた。
「今まであまり不便がございませんでしたし、竜王様は名を呼びませんので皆それに倣っておりました」
「そうなんですか? 不便そうなのに。ちなみに鯛さんは、なんて名前なの?」
問うと、彼は少し寂しそうな笑みを見せて「朱華です」と答えてくれた。
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