【完結】兄狂いなところ以外は完璧な僕の弟

ふくやまぴーす

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計画のはじまり

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「身体、おっも……」

いつもより早く目が覚めた。横には全身にしっかりと腕を巻き付けるようにして、自分を抱きしめて眠る弟の姿。
今日は大学の入学式。遥が初めて俺と同じ大学へと登校する日だ。


「あれ…にいさ…おきたの…?」
「うん、おはよ、遥」
「兄さん…昨日は無理させちゃったかな…?身体大丈夫?」
「あ、…まあ。大丈夫、」


朝からイケメンな弟は、俺の腰をさすりながら、心配そうにこちらを見つめた。正直あんまり大丈夫ではない、昨日のセックスも一段と激しかった気がする。

(それにしても、朝から真っ裸の兄弟が抱き合っている絵面を見るのはなんとなく精神的にくるな…)

俺は身体を起こそうと力を入れるが、それ以上の力で弟に拘束された。


「遥…?起きないと…」
「うん、そうだね」
「いやいや、離してよ、だいたい今日入学式…」
「兄さん…ん、」


隣同士ベットに横になりながら、遥は少しだけ唇を突き出して見せた。


「して?キス…」
「な、なんで今…」
「おはようのキス、して欲しい、兄さんに」
「…ッ」


こういう発言がいちいち恥ずかしい。毎晩俺を獣のように襲ってきておいて、なんでこういう時だけちょっと恥ずかしそうにするんだ。遥の、いわゆるキス待ち顔も爽やかなイケメンで、気恥ずかしいのと同時に、少しだけどきっとしてしまう。こうなったら要望を聞くまで離してもらえないのは目に見えていたので、俺は黙って唇を寄せた。

――ちゅ。

触れるだけの軽いキスしてやると、遥は目をキラキラ輝かせながら、口元と綻ばせていた。


「嬉しい、兄さん…」
「こんなんでいいの?」
「朝起きたら腕の中に兄さんが居るだけで、幸せすぎて死んでもいい…」
「ほんと、変わってるね遥…」


兄弟で、男同士で、裸で抱き合っている異常な光景のはずなのに、不覚にもその遥の言動や表情に心臓がきゅっと締め付けられる自分がいた。少し赤くなってしまった頬を隠すように顔を逸らす。

ああ、早く飽きてくれればいいのに、こんな、弟と比べたら勉強もスポーツも凡人レベルで、見た目だって遥みたいに筋肉がかっこよくついている訳でもなければ、イケメンでもないのに。なんだかいたたまれない。


「ふふ。シャワー、一緒に浴びようか、兄さん」
「それは嫌だ。」
「えぇ…洗ってあげたいのに」
「いいから先に入ってこい!」








大学に到着すると、父さん母さんも既に校門前で遥の到着を待っていた。


「あら!二人仲良く揃って通学なんていいわねぇ。」
「遥はスーツもビシッと決まってるなあ!さすが俺の息子だ」
「ありがとう。父さん、母さん。」


自慢の息子の入学式に浮き足立っている様子の両親。二人ともやたらとニコニコしている。父さんの言う通り、スーツを身に纏った遥はぶっちゃけ誰でも足を止めて見入ってしまうくらいかっこよかった。控えめに言っても似合いすぎている、大人びていてどこぞのいい会社のサラリーマンにすら見える。


「悠人はいつも通りの格好なのね」
「そりゃ俺は式に出るわけじゃないし、在学生だから…」
「今日から授業やってるの?」
「いや、今日はサークルのビラ配りとかやらされるんだよ」
「なんだお前、サークルなんて入ってたのか」
「いや…入ってるっちゃ入ってるけど…幽霊部員みたいなものだけどね」
「何に入ってるんだ?」
「演劇、部?的な…?」


そう、俺は友人の頼みにより、サークルに入ってはいるが、実際にはただのヘルプ要員で、公演の時の裏方とか荷物の搬入手伝ったり、衣装の試着とか…今日のビラ配りもそうだ。友人に無理くり押し付けられた。まあ、大事な弟の晴れの日を少しでもそばで観てやりたかったっていう気持ちもあるが。


「じゃあ、遥、またね」
「兄さんは、親族席とか来ないの…?」
「俺はそろそろ行かなきゃ。遥、改めて入学おめでとう」


弟の肩をポン、と叩くと、表情は笑っていたが、悲しそうな目をして見せた。そんな目で見られると心苦しい、けど悪いが、今日から計画は本格的に始まっているのだ。遥の脱兄計画。この大学生活で、遥かにはたくさんのリア充生活を送ってもらい、俺のことなんて興味を無くして欲しいんだ。

身を翻してその場を後にしようとした時、突然母さんが手を叩いて思い出したように言葉を発した。


「なんか、懐かしいわねぇ。あなたほら、覚えてる?悠人が中学に入学する時!遥ったら、お兄ちゃんと離れ離れになっちゃう~って、家の前で泣きじゃくってたの」
「ああ、そうだな、しばらく言うこと聞かなくて、あの時は俺たちも困ったなぁ」
「なんか恥ずかしいな…確かに、兄さんに縋り付いてそんなこと言ってた時もあったね」


突然始まった昔話。そういや、そんなこと、あったかもしれないと俺も思い出を遡る。


「でも…あの時遥、なんで突然泣き止んでご機嫌になったんだっけか?母さん」
「ん~そうねえ。言われてみれば確かに…遥すっかり機嫌直って顔真っ赤にして笑ってたのよねぇ。遥、覚えてる?」
「うん。しっかり覚えてるよ。でも、恥ずかしいから内緒にしとくね」
「なによそれ~気になるじゃない!」


もはや俺そっちのけで3人でワイワイとはしゃいでいる。全く人の気も知らないで…と少しため息をついた。けど、こうやって家族みんな集まって和気藹々としている様を見るのは久しぶりだ。4年間、この輪の中に遥は居なかった。少しだけ、懐かしく安心した気持ちになる。

笑い合う3人を見つめていると、遥が俺の視線に気がつき、目が合う。ニコッとこちらに笑いかけた。悔しいけれど、圧倒的にビジュが良すぎて兄である俺でも心臓に悪い。


「じゃ、じゃあ俺もう行くね!二人とも遥のことよろしく!」


俺は3人に手を振って、その場を後にした。

俺が中学に入学するときのエピソードを思い出そうと考えながら歩いたが、残念ながらすぐには記憶は蘇っては来なかった。

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