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ブラックドラゴン討伐編
118話 プレイヤースキルの概念
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-バンボゥ国 入口付近の宿屋-
降り注ぐ朝日と奇妙な呻き声で目を覚ます。
窓から射す朝日が窓ガラスに反射してプリズムを造る。
どうやら今日も良い天気だ。
少し眩しくて手で遮る。
部屋の入口と私のベッドの近くから聞こえる呻きの原因は寝呆けている今の私の脳でも容易に想像は付く。
呻き声の元凶の1つで有るベッドの下に目をやると寝る前に仕掛けた【粘着麻痺罠】にシャルが引っ掛かり簀巻き状態で痺れていた。
「おはようシャル、そんな場所で這いつくばって何をしているのかな?」
「私、寝相が悪くて転げ落ちた先に敵の罠が仕掛けて有ったんです!」
この旅が始まった頃にどこぞの侍から同じ様な台詞を言われた事が有る気がする。
そう、そこの部屋入口で【粘着麻痺罠】に引っ掛かっているネカマだ。
いつも私の寝室を守ってくれているDOSは夜間警備で城壁待機任務に就いている。
その為、寝室の防衛は自分でする必要が有ったので久々に複数個の罠を仕掛けていた。
シャルの罠を解除して入口の簀巻き侍を宿屋の窓から頬り投げ、私達は1階へ朝食を食べに降りる。
寝呆けていたから忘れていたけど私達の部屋は3階の角部屋だった。
まぁサクラなら死ぬ事は無いだろう・・・むしろダメージを与えてから頬り投げれば良かった。
この国は水産・畜産加工品の生産が主流でベーコンやソーセージ、魚介の干物や燻製等の加工食材が多く他国で食べていた食品はバンボゥ国から輸出された物と言う話だ。
確かに美味しい。
ゲームでは語られて無い裏設定は面白い。
ゲーム制作に携わった暗黒神ハーデスはストーリーモード設定の約半分作成に関わったそうだが、それ以降は別ゲームの製作チームに参加する事になったと言っていた。
多少手伝いはしたがサービス2年目以降は簡単なデバック作業とプレイヤーとしてしか関わって無いらしいのでバンボゥ国の事は詳しい内部設定知らないと話す。
その暗黒神ハーデスは昨日の戦闘を見た蜥蜴人間種の魔法騎士隊から魔法の手解きをして欲しいとせがまれ、街の外で魔法訓練を行っていた。
ミカさんも同様に狼人間種の戦士隊の大勢が志願し訓練をしている様だ。
ただ狼人間種の戦士隊は男性が多く、あの尻尾をパタパタと振る仕草を見ると単純に懐いているんじゃないか勘ぐってしまう。
私は何故か右手にアルラト、左手にシャルがしがみ付き引きずられる様に街を散歩していた。
少し後ろを暇な咲耶が着いてくると言う奇妙な一行だ。
「この泥棒猫!いい加減離れなさいよ!」
「猫はあんたでしょ!シノは僕と出かけるんだよ!」
この2人は私よりも筋力が高いらしく、私は振り解く事が出来ずにいる。
朝からスキンシップ過剰なシャルに嫉妬したのか、普段そこまでベタベタ纏わり着かないアルラトまでもが懐いてきて面倒な状況になっていた。
私は年下の同性にモテる属性が有ったのは驚きだな。
「シノブはお子ちゃまからモテモテですね。」
後方から咲耶が茶化す様に笑う。
「誰がお子ちゃまですか!?私は結婚出来る年齢です!」
「お子ちゃまはそこの猫だけだよ!」
「おっぱいスキャナーは黙ってて!」
「おっぱいスキャナーって・・・。」
シャルに妙な綽名を付けられて咲耶が多少凹んでいた。
そう言えばサクラと咲耶は女湯でシャルの裸体を見ていると調書で見た。
案外その事を音に持っているのかも知れない。
ギャーギャーと騒がしい2人に挟まれながら街の大通りを歩く。
只でさえ英雄として国王直々に召喚されている為、目立っているのに何の罰ゲームなんだか。
2人が言い合いをしている隙に特殊技能【空蝉の術】を使い、私そっくりの擬態を造りこっそり抜け出す。
「よし!成功だ。」
木片になる前の物体に3人共まだ気付いていない様子。
真横の裏路地に移動した私は【抜き足】を使用して気配を消し、この場から姿を晦ます事に成功した。
1分もしない内に木片に変化してバレると覆うけどね。
・
・
・
城壁の上部へ上がる階段を見つけ、城壁上部を歩いているとDOSの待機している場所に辿り着く。
常に監視業務をしている彼に屋台の食物でも差し入れでもしたい所だが、機械種の彼は食事をしないので無意味になる。
「DOS!お疲れ様!」
「ああ、シノブか。」
監視任務に就いているDOSの隣に腰掛ける。
彼は城壁の上から監視しながら、剣術訓練部隊と魔術訓練部隊を眺めていた。
良く見ると朝外に投げ捨てたサクラも剣術訓練の指南役として参加していた。
「DOS大丈夫?疲れてない?」
「あ、ああ・・・シノブか。問題無いよ、ありがとう。それよりも声が変だが、あのジュースを飲んだのか?」
昨晩から城壁上部で待機していて宿屋に戻っていないDOSは【シヌイ・コーク】を飲んでから話をしていなかったので、最初私の声だとは気が付かなかった様だ。
まぁ気配を消して行動していた私も悪いんだけどね。
のどかな日差しを浴びながら訓練風景を眺める。
ミカさんとサクラが模擬戦をする様で金属で出来た刃の無い模造刀をお互い構えている。
「サクラじゃミカさんには勝てないね。」
「どうだろう、ゲームではミカエルの方がプレイヤースキルは高い。だが・・・この世界でのリアルな戦闘経験はサクラの方が多いんじゃないか?」
ゲームキャラクターに合わせて肉体的運動能力補正はされ、自分で動いているのと大差は無いから特殊技能自体を使わなければ実戦経験の豊富なサクラにも分が有るって事か。
なるほど、言われてみればそうかも知れない。
コントローラーやキーボード操作とは違い、自分の体を動かし戦うと言うのは身体能力が同じなら経験勝る方が有利になるのか。
いつの間にか魔法師団も訓練の手を止めて2人の戦闘を見学している。
互いの切っ先を合わせ数歩後ろに下がり構え直す。
「始め!」エウルゥが試合の合図を出すとサクラが【縮地】で間合いを詰め先制攻撃を加える。
ああ、体技的な特殊技能はOKなんだ。
ミカさんが難無く捌き華麗な動きでサクラのバックを取り、横薙ぎで反撃をするがサクラも体を反らしギリギリで回避する。
サクラは態勢を整え同時に繰り出された剣がぶつかり合い、切っ先から火花が飛び散る。
そこからは互いの剣撃の連打が続く。
「凄い!」「なんと言う華麗な剣捌きだ!」
「ミカエル様頑張れ!」「俺はサクラ様を推すぜ!」
模擬戦には見えない高レベルな2人の戦いに、外野の応援もヒートアップする。
この世界のプレイヤースキルは現実で格闘技の達人を目指す事に似ているんだ。
ゲームでは圧倒的に強いミカさんでも今はサクラと互角の戦いをしているのが確たる証明だろう。
ギィィィン!
最終的にミカさんがサクラの模造刀を弾き飛ばし勝利を納めギャラリーから拍手が起きる。
うん、良い勝負だった。
サクラが使い慣れている主力武器だったら更に良い勝負が出来たかも知れない。
やはり間合いとか武器の重さによる攻撃速度の補正とかは影響がでかい。
そうか、考え方次第ではキャラクターレベルはカンストしてるけど武術や体術での身体能力向上は出来ると言う事だ。
装備品以外にも私達には成長の余地が残されていると言う事だ。
私もDOSに訓練して貰おうかな。
「あーーー!シノ発見!」
街の方からアルラトの大声聞こえ、振り向くとアルラトとシャルが宿屋前に居て捜索に付き合わされたのか疲れ切った咲耶が息を切らせていた。
やばっ見つかっちゃった!取り敢えず城壁の上を逃げる事にする。
後方から「待ってー!」とか「シノブ!」と聞こえてくる。
あの2人と追っかけっこをしていたら身体能力が上がるだろうか?
・・・なんやかんやで今日は1日平和に過ごす事が出来た。
私も頑張って訓練をしよう。
降り注ぐ朝日と奇妙な呻き声で目を覚ます。
窓から射す朝日が窓ガラスに反射してプリズムを造る。
どうやら今日も良い天気だ。
少し眩しくて手で遮る。
部屋の入口と私のベッドの近くから聞こえる呻きの原因は寝呆けている今の私の脳でも容易に想像は付く。
呻き声の元凶の1つで有るベッドの下に目をやると寝る前に仕掛けた【粘着麻痺罠】にシャルが引っ掛かり簀巻き状態で痺れていた。
「おはようシャル、そんな場所で這いつくばって何をしているのかな?」
「私、寝相が悪くて転げ落ちた先に敵の罠が仕掛けて有ったんです!」
この旅が始まった頃にどこぞの侍から同じ様な台詞を言われた事が有る気がする。
そう、そこの部屋入口で【粘着麻痺罠】に引っ掛かっているネカマだ。
いつも私の寝室を守ってくれているDOSは夜間警備で城壁待機任務に就いている。
その為、寝室の防衛は自分でする必要が有ったので久々に複数個の罠を仕掛けていた。
シャルの罠を解除して入口の簀巻き侍を宿屋の窓から頬り投げ、私達は1階へ朝食を食べに降りる。
寝呆けていたから忘れていたけど私達の部屋は3階の角部屋だった。
まぁサクラなら死ぬ事は無いだろう・・・むしろダメージを与えてから頬り投げれば良かった。
この国は水産・畜産加工品の生産が主流でベーコンやソーセージ、魚介の干物や燻製等の加工食材が多く他国で食べていた食品はバンボゥ国から輸出された物と言う話だ。
確かに美味しい。
ゲームでは語られて無い裏設定は面白い。
ゲーム制作に携わった暗黒神ハーデスはストーリーモード設定の約半分作成に関わったそうだが、それ以降は別ゲームの製作チームに参加する事になったと言っていた。
多少手伝いはしたがサービス2年目以降は簡単なデバック作業とプレイヤーとしてしか関わって無いらしいのでバンボゥ国の事は詳しい内部設定知らないと話す。
その暗黒神ハーデスは昨日の戦闘を見た蜥蜴人間種の魔法騎士隊から魔法の手解きをして欲しいとせがまれ、街の外で魔法訓練を行っていた。
ミカさんも同様に狼人間種の戦士隊の大勢が志願し訓練をしている様だ。
ただ狼人間種の戦士隊は男性が多く、あの尻尾をパタパタと振る仕草を見ると単純に懐いているんじゃないか勘ぐってしまう。
私は何故か右手にアルラト、左手にシャルがしがみ付き引きずられる様に街を散歩していた。
少し後ろを暇な咲耶が着いてくると言う奇妙な一行だ。
「この泥棒猫!いい加減離れなさいよ!」
「猫はあんたでしょ!シノは僕と出かけるんだよ!」
この2人は私よりも筋力が高いらしく、私は振り解く事が出来ずにいる。
朝からスキンシップ過剰なシャルに嫉妬したのか、普段そこまでベタベタ纏わり着かないアルラトまでもが懐いてきて面倒な状況になっていた。
私は年下の同性にモテる属性が有ったのは驚きだな。
「シノブはお子ちゃまからモテモテですね。」
後方から咲耶が茶化す様に笑う。
「誰がお子ちゃまですか!?私は結婚出来る年齢です!」
「お子ちゃまはそこの猫だけだよ!」
「おっぱいスキャナーは黙ってて!」
「おっぱいスキャナーって・・・。」
シャルに妙な綽名を付けられて咲耶が多少凹んでいた。
そう言えばサクラと咲耶は女湯でシャルの裸体を見ていると調書で見た。
案外その事を音に持っているのかも知れない。
ギャーギャーと騒がしい2人に挟まれながら街の大通りを歩く。
只でさえ英雄として国王直々に召喚されている為、目立っているのに何の罰ゲームなんだか。
2人が言い合いをしている隙に特殊技能【空蝉の術】を使い、私そっくりの擬態を造りこっそり抜け出す。
「よし!成功だ。」
木片になる前の物体に3人共まだ気付いていない様子。
真横の裏路地に移動した私は【抜き足】を使用して気配を消し、この場から姿を晦ます事に成功した。
1分もしない内に木片に変化してバレると覆うけどね。
・
・
・
城壁の上部へ上がる階段を見つけ、城壁上部を歩いているとDOSの待機している場所に辿り着く。
常に監視業務をしている彼に屋台の食物でも差し入れでもしたい所だが、機械種の彼は食事をしないので無意味になる。
「DOS!お疲れ様!」
「ああ、シノブか。」
監視任務に就いているDOSの隣に腰掛ける。
彼は城壁の上から監視しながら、剣術訓練部隊と魔術訓練部隊を眺めていた。
良く見ると朝外に投げ捨てたサクラも剣術訓練の指南役として参加していた。
「DOS大丈夫?疲れてない?」
「あ、ああ・・・シノブか。問題無いよ、ありがとう。それよりも声が変だが、あのジュースを飲んだのか?」
昨晩から城壁上部で待機していて宿屋に戻っていないDOSは【シヌイ・コーク】を飲んでから話をしていなかったので、最初私の声だとは気が付かなかった様だ。
まぁ気配を消して行動していた私も悪いんだけどね。
のどかな日差しを浴びながら訓練風景を眺める。
ミカさんとサクラが模擬戦をする様で金属で出来た刃の無い模造刀をお互い構えている。
「サクラじゃミカさんには勝てないね。」
「どうだろう、ゲームではミカエルの方がプレイヤースキルは高い。だが・・・この世界でのリアルな戦闘経験はサクラの方が多いんじゃないか?」
ゲームキャラクターに合わせて肉体的運動能力補正はされ、自分で動いているのと大差は無いから特殊技能自体を使わなければ実戦経験の豊富なサクラにも分が有るって事か。
なるほど、言われてみればそうかも知れない。
コントローラーやキーボード操作とは違い、自分の体を動かし戦うと言うのは身体能力が同じなら経験勝る方が有利になるのか。
いつの間にか魔法師団も訓練の手を止めて2人の戦闘を見学している。
互いの切っ先を合わせ数歩後ろに下がり構え直す。
「始め!」エウルゥが試合の合図を出すとサクラが【縮地】で間合いを詰め先制攻撃を加える。
ああ、体技的な特殊技能はOKなんだ。
ミカさんが難無く捌き華麗な動きでサクラのバックを取り、横薙ぎで反撃をするがサクラも体を反らしギリギリで回避する。
サクラは態勢を整え同時に繰り出された剣がぶつかり合い、切っ先から火花が飛び散る。
そこからは互いの剣撃の連打が続く。
「凄い!」「なんと言う華麗な剣捌きだ!」
「ミカエル様頑張れ!」「俺はサクラ様を推すぜ!」
模擬戦には見えない高レベルな2人の戦いに、外野の応援もヒートアップする。
この世界のプレイヤースキルは現実で格闘技の達人を目指す事に似ているんだ。
ゲームでは圧倒的に強いミカさんでも今はサクラと互角の戦いをしているのが確たる証明だろう。
ギィィィン!
最終的にミカさんがサクラの模造刀を弾き飛ばし勝利を納めギャラリーから拍手が起きる。
うん、良い勝負だった。
サクラが使い慣れている主力武器だったら更に良い勝負が出来たかも知れない。
やはり間合いとか武器の重さによる攻撃速度の補正とかは影響がでかい。
そうか、考え方次第ではキャラクターレベルはカンストしてるけど武術や体術での身体能力向上は出来ると言う事だ。
装備品以外にも私達には成長の余地が残されていると言う事だ。
私もDOSに訓練して貰おうかな。
「あーーー!シノ発見!」
街の方からアルラトの大声聞こえ、振り向くとアルラトとシャルが宿屋前に居て捜索に付き合わされたのか疲れ切った咲耶が息を切らせていた。
やばっ見つかっちゃった!取り敢えず城壁の上を逃げる事にする。
後方から「待ってー!」とか「シノブ!」と聞こえてくる。
あの2人と追っかけっこをしていたら身体能力が上がるだろうか?
・・・なんやかんやで今日は1日平和に過ごす事が出来た。
私も頑張って訓練をしよう。
応援ありがとうございます!
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