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砂漠の国編
124話 残酷な天使のアンチテーゼ
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-蜃気楼の街-
蜃気楼の街内部は全てが白一色で他の色は存在しない世界。
ゲームと同じ造りで1階層しかないがダンジョン構造になった広大なMAPで迷い易い造りとなっている。
この世界にはミニMAPが表示と言うコマンドが存在しない為気を付けないと迷ってしまう可能性が有る。
それよりも・・・
シノブが蜃気楼の街に入れなかった。
正確には間に合わなかった感じだ。
彼女はプレイヤースキルが高い。
回避技術に関しては職業補正やステータスカスタマイズによる物も有るが僕から見たら天才的な才能が有る様に見える。
彼女はその素早い動きで敵を翻弄し隙を作り出す戦闘スタイルだ。
本人はダメージ総量が少ない事でボス戦で貢献出来て無いと勘違いしているが、それは全く違う。
彼女が隙を作るからこそ僕やDOS、サクラにハーデスと言った火力重視タイプの攻撃が有効打へと変わるのだ。
ゲーム内で聞いた時はコントローラー操作をしていたと言っていたが、この世界でもその時の動きを再現した様な身のこなしを出来ている。
人懐っこい性格からギルドの中でも人気が高く現在このギルドでも紅一点で皆も信頼を寄せている。
パーティーとして彼女が居る居ないでは、戦略も連携も大幅に変更する必要が出て来るのだ。
特にレイドボス戦は難易度が跳ね上がると考えた方が良さそうだ。
「・・・間に合わなかったでござるな。」
「ええ、お留守番ですね。」
「・・・・・」
「まぁ、さっさと終わらせるれば問題無かろう。」
皆は意外と楽観的に考えている様で少しだけ不安になる。
ゲームの時よりも強化されているボス戦は油断が1番命取りになるはずだ。
しかし、悩んでいても仕方が無い。
とにかく先に進むしかない。
「そうですね、皆さん行きましょう。冒険者の・・・・ってもう、居ませんね。」
「オッチャン達はさっき走って行っちゃったよ。」
僕はギルドメンバーの皆と話し合いを行う。
このダンジョンは平面で目印が無く広いので攻略が難しい。
京都の街並みに似て同じ様な建物と十字路が目立つ。
何より色が真っ白なのでマッピングし難い。
目印を付ける為に試しに建築物のオブジェクトを破壊しようと試みるが、テクスチャにブロックノイズが走る様なエフェクトが掛かり貫通した様な手応えで破壊出来無かった。
しかし建物に触ると硬い。
破壊しようとしたり傷付けたりは出来ないが通り抜けたりは出来ない様だ。
良く見ると遠くの方で戦闘が行われているのか魔法による爆発が起きている。
冒険者達が雑魚モンスターと戦闘を行っているのだろう。
「皆、再充填時間の長い高威力の特殊技能はボスまで温存して下さい。DOSはマッピングをお願いできますか?」
DOSは無言で頷く。
彼はサブマスターとして頼りになる優秀な右腕だ。
僕達は蜃気楼の街の散策を始める。
周囲の景色は相変わらず変化が乏しく何度か迷いそうになるがDOSの補助もありダンジョン構造の街の全体像が見え始めた。
このダンジョンの出現モンスターは様々な地域で出現したモンスターのステータスを再調整し白色に塗りつぶした様な感じで多種類出現する。
・・・言ってみれば手抜きだ。
だがこの世界の難易度に調整されているので雑魚モンスターと言えど激強い。
道中死に倒れている冒険者を【ヒルドルの盾】で蘇生し、同行して行く。
その結果、僕達は既に23人パーティーとなっていた。
冒険者は男性比率が高く、後方から嫌な視線を感じる。
男性が女性のうなじ、胸、腰、尻、太腿等を見つめる視線。
ゲームの時はあくまでもヴァーチャルな感覚だったが今は生々しく感じて気持ち悪い。
自分も男だから相手の気持ちは分からなくも無いが・・・
それが同性から自分に向けられる飢えた獣の様な視線は虫唾が走る。
サクラや咲耶は自身の強みとして女性の体を利用している様に見えるが、僕はそう言う立ち回りが苦手だ。
ギルドマスターと言うポジショニングも有り常に堂々と振舞う必要が有る。
丁度DOSとハーデスを足して半分にした様な人物を演じる必要が有る。
たとえリアルの自分が勉強位しか取り柄が無く、その割に医学部の中で落第生の部類の人間で有っても・・・。
勉強は嫌いでは無かった。
特に趣味も無く友人も少ない自分は親に言われるがままに勉強をし小・中・高校と体育以外の成績は良かった。
唯一の趣味はフィギュアを集める事で、綺麗に並べて眺めるだけで幸せだった。
そこそこ偏差値の高い大学の医学部を現役合格し順風満帆な人生だった、SMOに出会うまでは・・・
SMOはサービス開始から1ヶ月もすると人気声優の声でプレイ出来るゲームが発売したと世間やネットで話題になっていた。
プレイ動画やMAD、テレビCMやニュースでも多数取り上げられてサービス開始当時は超人気作品のだった。
映像コンテンツとして良く視界に入るSMOは、今まで無趣味な人生を送って来た自分には珍しく興味が湧いたコンテンツだった。
動画を見たり雑誌の特集を見たりと少しずつ興味が膨らみ、親からの仕送りとコンビニアルバイトをして貯めたお金でソフト一式を買い揃えサービス開始3ヶ月目にして初めてログイン出来た。
初めての電脳世界は衝撃的だった。
そして全てが新鮮で輝いていた。
大学で有名な美人留学生を再現した自身のキャラクターを造り、寝る間も惜しんで冒険を楽しんだ。
当然勉強は疎かになり成績は下がる。
仕送りの1部を課金に使いリアルよりもネット世界へとのめり込んで行った。
僕は単純作業や効率的行動が上手く、そしてゲーム内の運も良かった。
強い激レア装備を手に入れゲーム内で徐々にフレンドも増え始めていた。
現実の自分が如何に人間関係を疎かにして来たか実感出来る位に多くの人と関わる様になっていった。
人を助ける事の出来る強さとそこから生まれる精神的余裕。
フレンドから頼られ得られる尊敬の眼差しはまるで麻薬の様に精神をSMOに依存させていった。
プレイ開始から1年目のある日、ゲーム内で行われた大会で優勝しゲーム雑誌やSNSでも取り上げられる程のキャラクターとなった。
その時の大会で2位だったDOSと話が合いギルド「深紅の薔薇」を立ち上げた。
立ち上げた当初は3人だったが当時3番手だったリアル女子大生の「麻婆豆腐丼」と言うキャラクターが会話の中で何を勘違いしたのか「全員リアル性別が女性ならさ、女性限定ギルドにしてみたらウケルんじゃね?」と何気無く言った一言でギルド規約として掲げる事になった。
自分が実はリアルでは男性と言い出せ無いままギルド規模が拡大していき、最大52名を有する中堅ギルドとなった。
最大定員100名なので中堅ギルドと言うポジションだがプレイヤースキルの高い実力者が多く、中規模ギルドの中でも大規模ギルドに引けを取らない実力派として有名になった。
結局最後までゲームに残ったのは6人だったけど・・・
空っぽだった僕の人生はやがてSMOの比重が高くなり、当然勉強も遅れ単位も落とし留年が確定。
しかもその最中にサービス終了の告知が来て絶望する。
今まで頑張って積み上げた物が消えて無くなる。
明日からどうしようかと人生に絶望していた自分が居た。
サービス終了日にシノブの頼みで「ギルドメンバーでストーリーモードをプレイしながら思い出を語ろう!」と言う提案に皆が賛同し、サーバーダウンぎりぎりで暗黒神ザナファを倒した。
・・・と思ったら光に包まれて、目の前にゲーム画面よりも生々しい姿の暗黒神ザナファが居た。
初めて握る剣の感覚、周囲の空気感と匂い、自身の体が周囲の気温を感じる。
その日からミカエル=アルファで生きる新しい僕の人生が始まった。
皆はどう思っているが分からないが僕は今の人生に満足している。
訳の分からないまま異世界に飛ばされてからNPCが加入して7人になるとは思いも寄らなかった。
出来ればこのままミカエルとしてこの世界に居続けたいと思う。
しかし皆は現実世界に戻りたいと目標に掲げている。
なる様になるか・・・と深く考えない。
「さぁ!もうすぐボスのメジード出現エリアです。冒険者の皆さんも気合を入れていきましょう!」
「おおおお!」「任せてください!」
「ミカエル様に着いて行くぜ!」
冒険者もギルドメンバーの皆も気合十分と言った雰囲気で頷く。
彼らは強いが、私は皆の先頭に立つ必要が有る。
僕はミカエル=アルファ、「深紅の薔薇」のギルドマスターだ!
蜃気楼の街内部は全てが白一色で他の色は存在しない世界。
ゲームと同じ造りで1階層しかないがダンジョン構造になった広大なMAPで迷い易い造りとなっている。
この世界にはミニMAPが表示と言うコマンドが存在しない為気を付けないと迷ってしまう可能性が有る。
それよりも・・・
シノブが蜃気楼の街に入れなかった。
正確には間に合わなかった感じだ。
彼女はプレイヤースキルが高い。
回避技術に関しては職業補正やステータスカスタマイズによる物も有るが僕から見たら天才的な才能が有る様に見える。
彼女はその素早い動きで敵を翻弄し隙を作り出す戦闘スタイルだ。
本人はダメージ総量が少ない事でボス戦で貢献出来て無いと勘違いしているが、それは全く違う。
彼女が隙を作るからこそ僕やDOS、サクラにハーデスと言った火力重視タイプの攻撃が有効打へと変わるのだ。
ゲーム内で聞いた時はコントローラー操作をしていたと言っていたが、この世界でもその時の動きを再現した様な身のこなしを出来ている。
人懐っこい性格からギルドの中でも人気が高く現在このギルドでも紅一点で皆も信頼を寄せている。
パーティーとして彼女が居る居ないでは、戦略も連携も大幅に変更する必要が出て来るのだ。
特にレイドボス戦は難易度が跳ね上がると考えた方が良さそうだ。
「・・・間に合わなかったでござるな。」
「ええ、お留守番ですね。」
「・・・・・」
「まぁ、さっさと終わらせるれば問題無かろう。」
皆は意外と楽観的に考えている様で少しだけ不安になる。
ゲームの時よりも強化されているボス戦は油断が1番命取りになるはずだ。
しかし、悩んでいても仕方が無い。
とにかく先に進むしかない。
「そうですね、皆さん行きましょう。冒険者の・・・・ってもう、居ませんね。」
「オッチャン達はさっき走って行っちゃったよ。」
僕はギルドメンバーの皆と話し合いを行う。
このダンジョンは平面で目印が無く広いので攻略が難しい。
京都の街並みに似て同じ様な建物と十字路が目立つ。
何より色が真っ白なのでマッピングし難い。
目印を付ける為に試しに建築物のオブジェクトを破壊しようと試みるが、テクスチャにブロックノイズが走る様なエフェクトが掛かり貫通した様な手応えで破壊出来無かった。
しかし建物に触ると硬い。
破壊しようとしたり傷付けたりは出来ないが通り抜けたりは出来ない様だ。
良く見ると遠くの方で戦闘が行われているのか魔法による爆発が起きている。
冒険者達が雑魚モンスターと戦闘を行っているのだろう。
「皆、再充填時間の長い高威力の特殊技能はボスまで温存して下さい。DOSはマッピングをお願いできますか?」
DOSは無言で頷く。
彼はサブマスターとして頼りになる優秀な右腕だ。
僕達は蜃気楼の街の散策を始める。
周囲の景色は相変わらず変化が乏しく何度か迷いそうになるがDOSの補助もありダンジョン構造の街の全体像が見え始めた。
このダンジョンの出現モンスターは様々な地域で出現したモンスターのステータスを再調整し白色に塗りつぶした様な感じで多種類出現する。
・・・言ってみれば手抜きだ。
だがこの世界の難易度に調整されているので雑魚モンスターと言えど激強い。
道中死に倒れている冒険者を【ヒルドルの盾】で蘇生し、同行して行く。
その結果、僕達は既に23人パーティーとなっていた。
冒険者は男性比率が高く、後方から嫌な視線を感じる。
男性が女性のうなじ、胸、腰、尻、太腿等を見つめる視線。
ゲームの時はあくまでもヴァーチャルな感覚だったが今は生々しく感じて気持ち悪い。
自分も男だから相手の気持ちは分からなくも無いが・・・
それが同性から自分に向けられる飢えた獣の様な視線は虫唾が走る。
サクラや咲耶は自身の強みとして女性の体を利用している様に見えるが、僕はそう言う立ち回りが苦手だ。
ギルドマスターと言うポジショニングも有り常に堂々と振舞う必要が有る。
丁度DOSとハーデスを足して半分にした様な人物を演じる必要が有る。
たとえリアルの自分が勉強位しか取り柄が無く、その割に医学部の中で落第生の部類の人間で有っても・・・。
勉強は嫌いでは無かった。
特に趣味も無く友人も少ない自分は親に言われるがままに勉強をし小・中・高校と体育以外の成績は良かった。
唯一の趣味はフィギュアを集める事で、綺麗に並べて眺めるだけで幸せだった。
そこそこ偏差値の高い大学の医学部を現役合格し順風満帆な人生だった、SMOに出会うまでは・・・
SMOはサービス開始から1ヶ月もすると人気声優の声でプレイ出来るゲームが発売したと世間やネットで話題になっていた。
プレイ動画やMAD、テレビCMやニュースでも多数取り上げられてサービス開始当時は超人気作品のだった。
映像コンテンツとして良く視界に入るSMOは、今まで無趣味な人生を送って来た自分には珍しく興味が湧いたコンテンツだった。
動画を見たり雑誌の特集を見たりと少しずつ興味が膨らみ、親からの仕送りとコンビニアルバイトをして貯めたお金でソフト一式を買い揃えサービス開始3ヶ月目にして初めてログイン出来た。
初めての電脳世界は衝撃的だった。
そして全てが新鮮で輝いていた。
大学で有名な美人留学生を再現した自身のキャラクターを造り、寝る間も惜しんで冒険を楽しんだ。
当然勉強は疎かになり成績は下がる。
仕送りの1部を課金に使いリアルよりもネット世界へとのめり込んで行った。
僕は単純作業や効率的行動が上手く、そしてゲーム内の運も良かった。
強い激レア装備を手に入れゲーム内で徐々にフレンドも増え始めていた。
現実の自分が如何に人間関係を疎かにして来たか実感出来る位に多くの人と関わる様になっていった。
人を助ける事の出来る強さとそこから生まれる精神的余裕。
フレンドから頼られ得られる尊敬の眼差しはまるで麻薬の様に精神をSMOに依存させていった。
プレイ開始から1年目のある日、ゲーム内で行われた大会で優勝しゲーム雑誌やSNSでも取り上げられる程のキャラクターとなった。
その時の大会で2位だったDOSと話が合いギルド「深紅の薔薇」を立ち上げた。
立ち上げた当初は3人だったが当時3番手だったリアル女子大生の「麻婆豆腐丼」と言うキャラクターが会話の中で何を勘違いしたのか「全員リアル性別が女性ならさ、女性限定ギルドにしてみたらウケルんじゃね?」と何気無く言った一言でギルド規約として掲げる事になった。
自分が実はリアルでは男性と言い出せ無いままギルド規模が拡大していき、最大52名を有する中堅ギルドとなった。
最大定員100名なので中堅ギルドと言うポジションだがプレイヤースキルの高い実力者が多く、中規模ギルドの中でも大規模ギルドに引けを取らない実力派として有名になった。
結局最後までゲームに残ったのは6人だったけど・・・
空っぽだった僕の人生はやがてSMOの比重が高くなり、当然勉強も遅れ単位も落とし留年が確定。
しかもその最中にサービス終了の告知が来て絶望する。
今まで頑張って積み上げた物が消えて無くなる。
明日からどうしようかと人生に絶望していた自分が居た。
サービス終了日にシノブの頼みで「ギルドメンバーでストーリーモードをプレイしながら思い出を語ろう!」と言う提案に皆が賛同し、サーバーダウンぎりぎりで暗黒神ザナファを倒した。
・・・と思ったら光に包まれて、目の前にゲーム画面よりも生々しい姿の暗黒神ザナファが居た。
初めて握る剣の感覚、周囲の空気感と匂い、自身の体が周囲の気温を感じる。
その日からミカエル=アルファで生きる新しい僕の人生が始まった。
皆はどう思っているが分からないが僕は今の人生に満足している。
訳の分からないまま異世界に飛ばされてからNPCが加入して7人になるとは思いも寄らなかった。
出来ればこのままミカエルとしてこの世界に居続けたいと思う。
しかし皆は現実世界に戻りたいと目標に掲げている。
なる様になるか・・・と深く考えない。
「さぁ!もうすぐボスのメジード出現エリアです。冒険者の皆さんも気合を入れていきましょう!」
「おおおお!」「任せてください!」
「ミカエル様に着いて行くぜ!」
冒険者もギルドメンバーの皆も気合十分と言った雰囲気で頷く。
彼らは強いが、私は皆の先頭に立つ必要が有る。
僕はミカエル=アルファ、「深紅の薔薇」のギルドマスターだ!
応援ありがとうございます!
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