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異世界崩壊編 後編
220話 最下層を目指して
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-アビスダンジョン 73階層-
73階層まで到着した私達は、休憩するのに適した広さの場所を発見しキャンプを構築して腰を下ろしていた。
「流石につかれたよ~シノブ~。」
「うんうん、お疲れ様。」
「セーニア様の技の数々は凄いですね。驚きました。」
「ありがとう。クリスの発勁も見た目以上に破壊力があるんだな。」
最悪の分裂モンスター出現階層に攻撃役のシャルとクリス君とセーニアは多少疲弊していた。
シャルも鍵爪による斬撃では無く、打撃攻撃は通るので攻撃役として参加していた。
ミカさんがサブウェポンとして持っていた「ナックル系」の武器をシャルとクリス君に渡し2人が装備する。
ミカさん自身も両手にシールドを装備して【シールドバッシュ】の様な打撃系特殊技能で前衛で皆を守りながらも攻撃に参加していた。
盾による攻撃は剣の20パーセント程度のダメージなので主力にはなれない。
あくまでも盾役としての役割が中心だ。
「クリスは格闘技も強いな、今度是非手合わせしたいものだ。」
「セーニア様に本気の拳を向けるのは難しいかも知れませんね。」
金髪碧眼で幼い顔立ちのクリス君は、死別したセーニアの婚約者でピトゥリア国の王子アレクスに少しだけ似ている。
強い者が好きな彼女は、戦いの中で何処かクリス君にアレクス王子の面影を重ねているのかも。
そしてもう1人の攻撃役のシャルは私の膝枕で完全に猫化したかの様に溶けていた。
鍵爪と間合いが違うので苦労しているらしく、未だ上手く武器を使えないと尻尾をダラリと下げて嘆いていた。
私はシャルを慰める様に頭を撫でながら休憩をする。
「しかし、驚いたでござるな。まさかあんな事になるとは・・・」
大型モンスターが出現した時にサクラが試しに刀による斬撃攻撃で四肢を斬り落とした所、予想通り本体・両腕・両脚の5体のモンスターに変容した。
問題はこの後だ。
そのフロアに居た全てのモンスターが「自分も斬れ」と言わんばかりに優先攻撃順位が全てサクラに向いたのだ。
不思議な事に、まるでモンスター全体が自分達が戦闘に有利な形態へ戦況を意図的に変えようとしているかに見えたのだ。
ゲームではダメージ量によって優先攻撃順位が変わる。
1体しか攻撃を加えて無いサクラに優先攻撃順位が向くのは不自然なのだ。
その状況を危険だと判断したDOSが暗黒神ハーデスに指示を出し、サクラごと氷系の魔法で攻撃をしてモンスターの動きを鈍らせてから皆で攻撃し殲滅した。
「興味本位で指示を無視して行動したからです。」
「自業自得です、馬鹿なのですか?」
ミカさんと咲耶は結構辛辣だ。
しかしそれはサクラを心配しているからこそ出る言葉だ。
この階層のモンスターに囲まれてリンチされたら、サクラでも生存確率は低い。
「やはり行動パターンがゲームとは違いますね。」
「ああ、打撃攻撃で各個撃破している時は優先攻撃順位に変化は無かった。ヤツらは数の暴力と言う武器を自ら手に入れに来たとしか思えない行動をしていたからな。」
自分から斬られに来るとか怖過ぎる。
そういえば古代神カノプスも第2形態になる為に自ら腕を食っていたな。
ゲームと比較出来る私達からしたら、この世界のモンスターの行動原理は無茶苦茶だ。
物事を有利に進める為に自傷行為をするなんて、精神を病んだ人間みたいだな。
自分自身そう言った経験が無いので気持ちを理解する事は出来ないが、もし魔人ヨグトスの意思がモンスターに反映されているのなら少し怖い。
・
・
・
-アビスダンジョン 80階層-
73階層から約8日間掛けて80階層まで走破した。
「もうずっと日の光を浴びて無いですね。」
「そうだな、すいぶん太陽を見て無いな。」
クリス君とDOSが地上での話に花を咲かせていた。
彼等はキャンプ時に夜衛で一緒に居る事が多い。
結構気が合う様で最近では良く会話をしているのを見かける。
「あと20階層でござるな。」
ペース的には悪く無い。
食料の在庫は十分有るし回復系アイテムは約半分消費したって所だろうか。
完全回復薬【ハイエリクサー】は1個も消費していない。
各自1個ずつ所持し残りはギルド共有ストレージに収納して有る。
ちなみにNPC出身のシャル達は四次元空間的なアイテムストレージを持っていなかった。
どうやらプレイヤー特有の特殊才能的な扱いらしい。
その為ギルド共有のアイテムストレージの存在を知った時は、転送装置で初めて移動した時の様に驚いていた。
ギルドに加入した時に腰のベルト部分に小型ポシェットが付いていた事に後で気付いたらしい。
開けたら四次元空間になっていたので、皆大層驚いていた。
プレイヤーの私達から普通の事なので、色々と説明をしてあげた。
休憩を終えて皆準備を始める。
この下の階層からは此方の攻撃に対して耐性を持つモンスターが多いので長期戦になり易い。
分裂増殖しないだけマシだと考え重い腰を上げる。
なんと言っても81階層~99階層はダメージ半減や属性吸収と言う面倒な設定が付いているモンスターが多数出現する。
1番効率良く安定して倒せるのが私の暗殺特殊技能だ。
私は索敵と遊撃役に回り、皆はミカさんとDOSの指示の基でTPOに合った立ち回りをする作戦だ。
1階層から80階層までの戦闘経験でレベルアップしたクリス君は【両手剣片手持ち】と【二刀流】の特殊技能を体得し【神龍殺し】と【ドラグスレイヤー】の同時装備出来る様になった。
まさに龍種限定で最強の攻撃力を誇っていた。
セーニアは【金剛神拳】と言う相手の防御値を無視出来る特殊技能を覚え、防御力の高い大型モンスターに対しても主戦力になれるだけの攻撃力を獲得していた。
シャルはどう言う理由か分からないが、私の持つ特殊技能【影分身】を覚え、最大2体の分身体を使える様になった。
「シノブとお揃いにゃ♪」
「シャル、語尾がまた猫化してるよ。」
シャルの職業はクリス君と同じ「ウォリアー」だったはずだが、何故に「忍者」の特殊技能が使えるようになったかは謎だ。
「不思議だな。興味深い。」
システムプログラムを熟知した暗黒神ハーデスも首を傾げていた。
シャルは「愛の力ですよ!」と鼻息を荒くして言っていたが、恐らく猫人間種の種族ボーナス的なモノじゃないかと言う結論になった。
亜人種自体、プレイヤーの選べる種族では未実装だから何とも言えないのだけれどもね。
ちなみにデイアは初期レベル100のレイドボス能力として設定されていたのか、特に成長は見受けられなかった。
しかし、暗黒神ハーデスから雷属性が強化される長杖【ケラウノス】と魔力を物理攻撃力に変換する短剣【カルンウェナン】を貰い物理・魔法攻撃力が上昇していた。
「残り20階層だ、皆気合を入れて行くぞ!」
ミカさんの「男らしい」号令で皆の士気が上がる。
そう後20階層だ、この長かった旅が終わる。
73階層まで到着した私達は、休憩するのに適した広さの場所を発見しキャンプを構築して腰を下ろしていた。
「流石につかれたよ~シノブ~。」
「うんうん、お疲れ様。」
「セーニア様の技の数々は凄いですね。驚きました。」
「ありがとう。クリスの発勁も見た目以上に破壊力があるんだな。」
最悪の分裂モンスター出現階層に攻撃役のシャルとクリス君とセーニアは多少疲弊していた。
シャルも鍵爪による斬撃では無く、打撃攻撃は通るので攻撃役として参加していた。
ミカさんがサブウェポンとして持っていた「ナックル系」の武器をシャルとクリス君に渡し2人が装備する。
ミカさん自身も両手にシールドを装備して【シールドバッシュ】の様な打撃系特殊技能で前衛で皆を守りながらも攻撃に参加していた。
盾による攻撃は剣の20パーセント程度のダメージなので主力にはなれない。
あくまでも盾役としての役割が中心だ。
「クリスは格闘技も強いな、今度是非手合わせしたいものだ。」
「セーニア様に本気の拳を向けるのは難しいかも知れませんね。」
金髪碧眼で幼い顔立ちのクリス君は、死別したセーニアの婚約者でピトゥリア国の王子アレクスに少しだけ似ている。
強い者が好きな彼女は、戦いの中で何処かクリス君にアレクス王子の面影を重ねているのかも。
そしてもう1人の攻撃役のシャルは私の膝枕で完全に猫化したかの様に溶けていた。
鍵爪と間合いが違うので苦労しているらしく、未だ上手く武器を使えないと尻尾をダラリと下げて嘆いていた。
私はシャルを慰める様に頭を撫でながら休憩をする。
「しかし、驚いたでござるな。まさかあんな事になるとは・・・」
大型モンスターが出現した時にサクラが試しに刀による斬撃攻撃で四肢を斬り落とした所、予想通り本体・両腕・両脚の5体のモンスターに変容した。
問題はこの後だ。
そのフロアに居た全てのモンスターが「自分も斬れ」と言わんばかりに優先攻撃順位が全てサクラに向いたのだ。
不思議な事に、まるでモンスター全体が自分達が戦闘に有利な形態へ戦況を意図的に変えようとしているかに見えたのだ。
ゲームではダメージ量によって優先攻撃順位が変わる。
1体しか攻撃を加えて無いサクラに優先攻撃順位が向くのは不自然なのだ。
その状況を危険だと判断したDOSが暗黒神ハーデスに指示を出し、サクラごと氷系の魔法で攻撃をしてモンスターの動きを鈍らせてから皆で攻撃し殲滅した。
「興味本位で指示を無視して行動したからです。」
「自業自得です、馬鹿なのですか?」
ミカさんと咲耶は結構辛辣だ。
しかしそれはサクラを心配しているからこそ出る言葉だ。
この階層のモンスターに囲まれてリンチされたら、サクラでも生存確率は低い。
「やはり行動パターンがゲームとは違いますね。」
「ああ、打撃攻撃で各個撃破している時は優先攻撃順位に変化は無かった。ヤツらは数の暴力と言う武器を自ら手に入れに来たとしか思えない行動をしていたからな。」
自分から斬られに来るとか怖過ぎる。
そういえば古代神カノプスも第2形態になる為に自ら腕を食っていたな。
ゲームと比較出来る私達からしたら、この世界のモンスターの行動原理は無茶苦茶だ。
物事を有利に進める為に自傷行為をするなんて、精神を病んだ人間みたいだな。
自分自身そう言った経験が無いので気持ちを理解する事は出来ないが、もし魔人ヨグトスの意思がモンスターに反映されているのなら少し怖い。
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-アビスダンジョン 80階層-
73階層から約8日間掛けて80階層まで走破した。
「もうずっと日の光を浴びて無いですね。」
「そうだな、すいぶん太陽を見て無いな。」
クリス君とDOSが地上での話に花を咲かせていた。
彼等はキャンプ時に夜衛で一緒に居る事が多い。
結構気が合う様で最近では良く会話をしているのを見かける。
「あと20階層でござるな。」
ペース的には悪く無い。
食料の在庫は十分有るし回復系アイテムは約半分消費したって所だろうか。
完全回復薬【ハイエリクサー】は1個も消費していない。
各自1個ずつ所持し残りはギルド共有ストレージに収納して有る。
ちなみにNPC出身のシャル達は四次元空間的なアイテムストレージを持っていなかった。
どうやらプレイヤー特有の特殊才能的な扱いらしい。
その為ギルド共有のアイテムストレージの存在を知った時は、転送装置で初めて移動した時の様に驚いていた。
ギルドに加入した時に腰のベルト部分に小型ポシェットが付いていた事に後で気付いたらしい。
開けたら四次元空間になっていたので、皆大層驚いていた。
プレイヤーの私達から普通の事なので、色々と説明をしてあげた。
休憩を終えて皆準備を始める。
この下の階層からは此方の攻撃に対して耐性を持つモンスターが多いので長期戦になり易い。
分裂増殖しないだけマシだと考え重い腰を上げる。
なんと言っても81階層~99階層はダメージ半減や属性吸収と言う面倒な設定が付いているモンスターが多数出現する。
1番効率良く安定して倒せるのが私の暗殺特殊技能だ。
私は索敵と遊撃役に回り、皆はミカさんとDOSの指示の基でTPOに合った立ち回りをする作戦だ。
1階層から80階層までの戦闘経験でレベルアップしたクリス君は【両手剣片手持ち】と【二刀流】の特殊技能を体得し【神龍殺し】と【ドラグスレイヤー】の同時装備出来る様になった。
まさに龍種限定で最強の攻撃力を誇っていた。
セーニアは【金剛神拳】と言う相手の防御値を無視出来る特殊技能を覚え、防御力の高い大型モンスターに対しても主戦力になれるだけの攻撃力を獲得していた。
シャルはどう言う理由か分からないが、私の持つ特殊技能【影分身】を覚え、最大2体の分身体を使える様になった。
「シノブとお揃いにゃ♪」
「シャル、語尾がまた猫化してるよ。」
シャルの職業はクリス君と同じ「ウォリアー」だったはずだが、何故に「忍者」の特殊技能が使えるようになったかは謎だ。
「不思議だな。興味深い。」
システムプログラムを熟知した暗黒神ハーデスも首を傾げていた。
シャルは「愛の力ですよ!」と鼻息を荒くして言っていたが、恐らく猫人間種の種族ボーナス的なモノじゃないかと言う結論になった。
亜人種自体、プレイヤーの選べる種族では未実装だから何とも言えないのだけれどもね。
ちなみにデイアは初期レベル100のレイドボス能力として設定されていたのか、特に成長は見受けられなかった。
しかし、暗黒神ハーデスから雷属性が強化される長杖【ケラウノス】と魔力を物理攻撃力に変換する短剣【カルンウェナン】を貰い物理・魔法攻撃力が上昇していた。
「残り20階層だ、皆気合を入れて行くぞ!」
ミカさんの「男らしい」号令で皆の士気が上がる。
そう後20階層だ、この長かった旅が終わる。
応援ありがとうございます!
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