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異世界崩壊編 後編
221話 最後の晩餐
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-アビスダンジョン 85階層-
「ハァハァハァ・・・・」
「シノブ大丈夫か?少し休もう。」
連続戦闘で息が切れる。
シャルが心配そうに背中を支えてくれる。
暗殺特殊技能は消費SPが少ないが即死成功率は職業補正を含めても50パーセント以下だ。
暗殺特殊技能の成功率は能力向上魔法による補正効果が無い。
スーパー●ボット大戦の様に「必中」とか「集中」の精神コマンドが欲しい所だ。
81階層から下は物理攻撃半減の特殊才能を持つモンスターが多く攻撃力の高いミカさんやDOS、サクラやクリス君の攻撃もダメージが通り難い。
暗黒神ハーデスとデイアも弱点属性魔法以外の魔法を吸収し傷を回復するので大規模な範囲魔法は使えない。
その為、各個撃破が余儀無くされ長期戦になるケースが多い。
傷や体力は薬や魔法で回復出来るが、SPはフィールド特性の少ない回復量で自然回復を待つしかない。
戦闘組と警戒休憩組2部隊に別けて、ローテーション制で戦闘を行いながら徐々に下層を目指す。
・
・
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-アビスダンジョン 98階層-
50階層から何日が経過しただろうか?
皆、疲労困憊で口数が減り溜息を付く回数が増える。
長い時間日光を浴びていない、あの不気味に赤く染まった空ですら長らく見ていないので懐かしく感じる。
モンスター数もさる事ながら、能力の高さと微妙に変更された耐性と行動パターンに苦戦する。
出来るだけ戦闘は避ける様に敵勢反応の少ない迂回路を選んで進むが、下層に進むにつれてDOSがある事に気付く。
モンスターの配置を見ながら少ない方へ進むと、必ず袋小路に追い込まれて囲まれる様にモンスターが押し寄せるのだ。
まるで監視されながら回復アイテムを意図的に消費させられている様だと言う。
「さぁ、皆先に進もう。後少しだ。」
・
・
・
98階層後半で事件が起きた。
クリス君の装備していた両手剣【神龍殺し】の耐久値が無くなり砕けてしまったのだ。
イベントボスのクリス君の初期装備【ドラグスレイヤー】は耐久値は無限に設定されていると暗黒神ハーデスが話していた。
「すみません、未熟さ故にミカエルさんの大事な剣を壊してしまいました。」
「いえ、途中で修理に戻れない状況ですからね。気にしないで下さい。誰か使っていない両手剣を持っている人はいないですか?」
両手持ちの剣で二刀流が出来る様になったクリス君は数値で見る事は出来ないが、単純攻撃力ならミカさんとDOSとサクラに次いで4番目に高い感じだ。
ミカさんはクリス君の攻撃力の低下は勿体無いと感じているのだろう。
「持ってはいますが・・・」
咲耶が歯切れの悪い感じでミカさんに答える。
咲耶が戦士職時代に手に入れ装備していた時期が有る武器で名前を【魔剣ティルヴィング】と言うらしい。
その名前を聞いた瞬間皆が口々に「ティルヴィングか・・・・」と呟く。
S級武器として名前は聞いた事が有るけど、刀や小太刀以外の知識に乏しい私はその剣の性能にピンと来ない。
「ねね、それってどんな武器なの?」
「ええっと・・・」
咲耶にどんな剣なのか聞いてみると、言い難そうに話してくれた。
「【魔剣ティルヴィング】は高い攻撃力と引き換えに、極まれに装備者の命を奪う魔剣です。ゲームではパーティープレイなので仲間が蘇生出来たのですが、この世界では蘇生手段が無いので危険なのですよ。」
「正確には即死効果では無く、相手に与えたダメージの1000倍のダメージが約2パーセントの確率で装備者に跳ね返ると言う設定になっている。」
咲耶の説明に暗黒神ハーデスが補足する。
1000倍って・・・それは体力極振りでもない限り即死する。
1回斬る毎に2パーセントの確率抽選で1000倍のダメージが返って来るって・・・
復活が出来ないと言う、現実に近いこの世界ではリスクが大き過ぎる。
ゲームの様に下位の蘇生薬が店売りされていたら、パーティープレイの主力装備になったかも知れないけど・・・
「・・・・使います。咲耶さん、その魔剣を貸して頂けませんか?」
「・・・しかし、私も過去に使っていたが体感で3時間に1回は死亡したんです。とてもじゃないが進められません。」
「・・・・どの道、ヨグトスと言う魔人を倒さなければ死ぬ訳ですよね?ならば尚の事使わせて下さい。命を懸けた戦いなのは承知で参加したのですから。」
咲耶はアイテムストレージから【魔剣ティルヴィング】を取り出し、無言で指し出す。
その魔剣をクリス君が受け取り腰に着用する。
「最終決戦まで温存します。それまでは【ドラグスレイヤー】だけで凌ぎます。」
「分かりました。強くは無いですが、取り敢えず私の予備の盾を使って下さい。」
「ありがとうございます。」
・
・
・
-アビスダンジョン 99階層-
この階層は大きな4つの部屋で構成されておりゲームと同じく最初の3部屋は多数のモンスターが出現するが最後の部屋はボス前で、聖域の様な造りとなっておりモンスターが出現する事は無い。
ここでキャンプを構築して休息を取る事にした。
簡易的な温泉を暗黒神ハーデスが造り、その他の皆がそれぞれ祖国の料理や好きな料理を作りかなり豪華な食卓が出来上がった。
「最後の晩餐でござるな。」
「お前は・・・不吉な事を言わないで下さい。」
空気の読めない発言をしたサクラの頭を咲耶が叩く。
その光景を見て笑いが起きる。
もしかしてサクラはワザと空気が読めない様な発言をしたのだろうか?
いや、買い被り過ぎだな。
でも確かに皆で食べる最後の晩餐かも知れない。
この先何が起こるのか全く予想が付かない。
破壊神アザドゥの言った通りなら、私以外の全員が殺されてエネルギーに変換されて消滅し魔人ヨグトスは次元上昇をする。
その結果、この世界は消滅しリアルの私や皆は廃人化する可能性が有る。
私は魔人ヨグトスと対話させて欲しいと皆に話す。
私の希望は、この世界の存続と皆とリアルへの帰還だと言う事を伝える。
その事に関しては皆は賛成をしてくれたが、私の自己犠牲的な方向に話が進みそうになる様なら戦う事を選ぶと言っていた。
語学力が無いので説得する自信は無いが、心が読まれている可能性が有るので敢えて無策で本心を語ろうと考えている。
祖国を破壊されたセーニア達は刺し違えても魔人ヨグトスを倒したいと思っているかも知れない。
しかし相手が想像を絶する強大な力を持っている事は理解してくれている。
戦いを挑むとしても全員で力を合わせる必要が有る。
しかし、感情に任せて襲い掛かり倒せる様な無謀な戦いはしないだろう。
・
・
・
その後、皆は世間話やリアル世界の話で盛り上がった。
シャル達はリアル世界の事に大変興味を示し、1度見てみたいなと話していた。
スマホが有れば写真とか見せれるので説明が容易になるんだけど・・・
私達が日常的に使っている会話は彼女達からしたら専門用語の集合体過ぎて要所要所に「〇〇〇って何ですか?」と質問が入り、その度に話が逸れてしまうと言うジレンマに襲われていた。
楽しい時間は続き話が途切れる事は無いが、1人また1人とその場で寝落ちして行った。
「ハァハァハァ・・・・」
「シノブ大丈夫か?少し休もう。」
連続戦闘で息が切れる。
シャルが心配そうに背中を支えてくれる。
暗殺特殊技能は消費SPが少ないが即死成功率は職業補正を含めても50パーセント以下だ。
暗殺特殊技能の成功率は能力向上魔法による補正効果が無い。
スーパー●ボット大戦の様に「必中」とか「集中」の精神コマンドが欲しい所だ。
81階層から下は物理攻撃半減の特殊才能を持つモンスターが多く攻撃力の高いミカさんやDOS、サクラやクリス君の攻撃もダメージが通り難い。
暗黒神ハーデスとデイアも弱点属性魔法以外の魔法を吸収し傷を回復するので大規模な範囲魔法は使えない。
その為、各個撃破が余儀無くされ長期戦になるケースが多い。
傷や体力は薬や魔法で回復出来るが、SPはフィールド特性の少ない回復量で自然回復を待つしかない。
戦闘組と警戒休憩組2部隊に別けて、ローテーション制で戦闘を行いながら徐々に下層を目指す。
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-アビスダンジョン 98階層-
50階層から何日が経過しただろうか?
皆、疲労困憊で口数が減り溜息を付く回数が増える。
長い時間日光を浴びていない、あの不気味に赤く染まった空ですら長らく見ていないので懐かしく感じる。
モンスター数もさる事ながら、能力の高さと微妙に変更された耐性と行動パターンに苦戦する。
出来るだけ戦闘は避ける様に敵勢反応の少ない迂回路を選んで進むが、下層に進むにつれてDOSがある事に気付く。
モンスターの配置を見ながら少ない方へ進むと、必ず袋小路に追い込まれて囲まれる様にモンスターが押し寄せるのだ。
まるで監視されながら回復アイテムを意図的に消費させられている様だと言う。
「さぁ、皆先に進もう。後少しだ。」
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98階層後半で事件が起きた。
クリス君の装備していた両手剣【神龍殺し】の耐久値が無くなり砕けてしまったのだ。
イベントボスのクリス君の初期装備【ドラグスレイヤー】は耐久値は無限に設定されていると暗黒神ハーデスが話していた。
「すみません、未熟さ故にミカエルさんの大事な剣を壊してしまいました。」
「いえ、途中で修理に戻れない状況ですからね。気にしないで下さい。誰か使っていない両手剣を持っている人はいないですか?」
両手持ちの剣で二刀流が出来る様になったクリス君は数値で見る事は出来ないが、単純攻撃力ならミカさんとDOSとサクラに次いで4番目に高い感じだ。
ミカさんはクリス君の攻撃力の低下は勿体無いと感じているのだろう。
「持ってはいますが・・・」
咲耶が歯切れの悪い感じでミカさんに答える。
咲耶が戦士職時代に手に入れ装備していた時期が有る武器で名前を【魔剣ティルヴィング】と言うらしい。
その名前を聞いた瞬間皆が口々に「ティルヴィングか・・・・」と呟く。
S級武器として名前は聞いた事が有るけど、刀や小太刀以外の知識に乏しい私はその剣の性能にピンと来ない。
「ねね、それってどんな武器なの?」
「ええっと・・・」
咲耶にどんな剣なのか聞いてみると、言い難そうに話してくれた。
「【魔剣ティルヴィング】は高い攻撃力と引き換えに、極まれに装備者の命を奪う魔剣です。ゲームではパーティープレイなので仲間が蘇生出来たのですが、この世界では蘇生手段が無いので危険なのですよ。」
「正確には即死効果では無く、相手に与えたダメージの1000倍のダメージが約2パーセントの確率で装備者に跳ね返ると言う設定になっている。」
咲耶の説明に暗黒神ハーデスが補足する。
1000倍って・・・それは体力極振りでもない限り即死する。
1回斬る毎に2パーセントの確率抽選で1000倍のダメージが返って来るって・・・
復活が出来ないと言う、現実に近いこの世界ではリスクが大き過ぎる。
ゲームの様に下位の蘇生薬が店売りされていたら、パーティープレイの主力装備になったかも知れないけど・・・
「・・・・使います。咲耶さん、その魔剣を貸して頂けませんか?」
「・・・しかし、私も過去に使っていたが体感で3時間に1回は死亡したんです。とてもじゃないが進められません。」
「・・・・どの道、ヨグトスと言う魔人を倒さなければ死ぬ訳ですよね?ならば尚の事使わせて下さい。命を懸けた戦いなのは承知で参加したのですから。」
咲耶はアイテムストレージから【魔剣ティルヴィング】を取り出し、無言で指し出す。
その魔剣をクリス君が受け取り腰に着用する。
「最終決戦まで温存します。それまでは【ドラグスレイヤー】だけで凌ぎます。」
「分かりました。強くは無いですが、取り敢えず私の予備の盾を使って下さい。」
「ありがとうございます。」
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-アビスダンジョン 99階層-
この階層は大きな4つの部屋で構成されておりゲームと同じく最初の3部屋は多数のモンスターが出現するが最後の部屋はボス前で、聖域の様な造りとなっておりモンスターが出現する事は無い。
ここでキャンプを構築して休息を取る事にした。
簡易的な温泉を暗黒神ハーデスが造り、その他の皆がそれぞれ祖国の料理や好きな料理を作りかなり豪華な食卓が出来上がった。
「最後の晩餐でござるな。」
「お前は・・・不吉な事を言わないで下さい。」
空気の読めない発言をしたサクラの頭を咲耶が叩く。
その光景を見て笑いが起きる。
もしかしてサクラはワザと空気が読めない様な発言をしたのだろうか?
いや、買い被り過ぎだな。
でも確かに皆で食べる最後の晩餐かも知れない。
この先何が起こるのか全く予想が付かない。
破壊神アザドゥの言った通りなら、私以外の全員が殺されてエネルギーに変換されて消滅し魔人ヨグトスは次元上昇をする。
その結果、この世界は消滅しリアルの私や皆は廃人化する可能性が有る。
私は魔人ヨグトスと対話させて欲しいと皆に話す。
私の希望は、この世界の存続と皆とリアルへの帰還だと言う事を伝える。
その事に関しては皆は賛成をしてくれたが、私の自己犠牲的な方向に話が進みそうになる様なら戦う事を選ぶと言っていた。
語学力が無いので説得する自信は無いが、心が読まれている可能性が有るので敢えて無策で本心を語ろうと考えている。
祖国を破壊されたセーニア達は刺し違えても魔人ヨグトスを倒したいと思っているかも知れない。
しかし相手が想像を絶する強大な力を持っている事は理解してくれている。
戦いを挑むとしても全員で力を合わせる必要が有る。
しかし、感情に任せて襲い掛かり倒せる様な無謀な戦いはしないだろう。
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その後、皆は世間話やリアル世界の話で盛り上がった。
シャル達はリアル世界の事に大変興味を示し、1度見てみたいなと話していた。
スマホが有れば写真とか見せれるので説明が容易になるんだけど・・・
私達が日常的に使っている会話は彼女達からしたら専門用語の集合体過ぎて要所要所に「〇〇〇って何ですか?」と質問が入り、その度に話が逸れてしまうと言うジレンマに襲われていた。
楽しい時間は続き話が途切れる事は無いが、1人また1人とその場で寝落ちして行った。
応援ありがとうございます!
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