織田信長IF… 天下統一再び!!

華瑠羅

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第一部『序章』

第十弐話

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籐吉郎を見送った信長は春日山城の謙信の元を訪れていた。


謙信「信長殿、どうされたのじゃ?まだ半年も経っていないのに、どうしてまた越後へ?」
「なに、東北の伊達家の当主が変わったと猿が報告してきてな。」

謙信「ああ、元服したての若造に変わったと聞いたが、それが?」
「その伊達に恩を売って、味方に引き入れる。」

謙信「そう言えば言っておったな。」
「そんな事より、北条を滅ぼす準備が整ったので謙信殿も出陣して関東に向け出陣して欲しいのじゃ。」


謙信は信長の願いに対して、先ほどの和やかな雰囲気とは一変し真剣な表情を浮かべ
「それについてじゃが、一つ宜しいか?」

信長「ん?いきなり、どう致しましたかな?」
「ここで両家にとっての主従関係をはっきりして頂きたい。」

信長「それなら、同盟関係で…」
「待たれよ!同盟関係であるなら、いつ何時解消して織田殿と合間見えるやもしれん。しかし、我が上杉家は織田殿に勝つ事は無理と判断した。よって、徳川殿と同じ織田家の家臣にしてこの越後を含む領地を安堵して頂きたいのじゃ。」

信長「(何を言ってるのじゃ?謙信殿は… ワシにとっては都合が良いが…)謙信殿。それで上杉家として良いと申すのですか?」
「無論。家臣達とも話し合った結果じゃ。」


信長は腕を組み考えて結論を出した。


信長「謙信殿覚悟と申し入れ、承知仕った!では、領地でござるが… 越後に加え、越前の金ヶ崎城を含む全てをと言いたいところですが、まだ朝倉義景の一乗谷が残ってる。これを謙信殿が攻め落とし手に入れてもらう必要がある。それに加え、加賀・能登・越中・信濃・甲斐と上野を領地として活用して下され!」
「待て待て、いや待って下されじゃな。それでは、現在の領地と変わらない領地を頂けるのですか?」

信長「ですが、問題でも?」
「(この男の技量はどこまで凄いのじゃ!ワシの目に狂い無しじゃ。)そこまで、このワシや家臣の事を思っての配慮痛み入る。」

信長「それと、謙信殿の…」
「信長殿いや大殿!その殿と言うのは辞めて下され!謙信と呼び捨てでお願い仕る。」

信長「謙信殿に、いや謙信に大殿と呼ばれるのは気恥ずかしいが… それより、謙信の家臣だが、これまで通り謙信が采配してくれ!ワシが直接命令するのは謙信だけじゃ。」
「我が家臣の配慮をここまで考えてくれるとは… 感謝する。」

信長「ワシが直接命令するのも抵抗ある者も居るだろうからな。では、本題に戻るが…」
「皆まで言わなくとも、もういつでも出陣準備は整っておりまする!」

信長「さすがは越後の龍じゃ!では、上野に居る権六いや柴田勝家にワシからのこの書状を渡した後、まだ敵城の館林城を落とし唐沢山・小山を平らげ宇都宮に進行願う。」
「心得た!明日、出立致す!それと、北条家に「織田家家臣・上杉謙信」と名乗る事を了承下され!」

信長「許すも何も無い!存分に戦われよ!間に合えば、ワシも伊達を加えた軍勢で大田城か鳥山城に襲い掛かりるのでな!」


次の日、謙信の軍勢を見送った信長は蘆名家の黒川城を襲うため新発田城へ自軍を進めたのであった。



信長は自軍と共に新発田城へ到着した頃、羽前の伊達政宗居城・米沢城で政宗が知らぬ間にある事件が発生していた。


蘆名家の家臣で二本松城城主・二本松義継による伊達政宗の父である伊達輝宗の誘拐である。


しかし、信長はこの事件を起きるが分かっていた為、常に伊達輝宗の周辺に草を何人か付かせて見張らせていたのだった。


その知らせはすぐに信長へ届けらた。

「信長様、伊達輝宗が誘拐され二本松城へ向う街道沿いの村の一角に捕らわれています。」

信長「うむ。では、深夜に忍びこみ救出しろ!その後、事情を説明してワシのところまで丁重に連れて参れ!」


草は、深夜に伊達輝宗が捕らわれてる小屋に忍びこみ、伊達輝宗が拘束されてる縄を外し
「お静かに、伊達輝宗で間違いないですかな?」

輝宗「確かにワシは伊達輝宗じゃが、そなたらは何者じゃ。」
「それはここを出てから、お話致します。我らの後を付いて来て下され。」

輝宗「付いては行くが、ここの手練れはどうしたのじゃ?」
「ここを見張ってたやつらは全て寝かせています。それに、さっき輝宗様が居た場所にかかしを置いていますので、すぐには見破れないかと。」


輝宗が振り返ると
「なんと?!いつの間に!」

「それより、早く!」


輝宗を草の所有する馬に乗せ、織田信長の居る新発田城と黒川城の間の街道に向った。


そして、道中
「そこもとらは、どこの家中の者か。話してくれぬか?」

「我らは織田信長様の直属の間者でございます。」

輝宗「織田?知らん名だな。」
「この界隈では聞きなれない御方ですが戦国大名です。」

輝宗「ほう。その織田殿とはいかなる御仁だ?」
「それは会ってから、本人に聞かれた方が宜しいかと。もうすぐ着きます。」

輝宗「もうすぐじゃと?しかし、ここはまだ蘆名と上杉の国境で… 何!?」


輝宗は絶句し驚いた!


丁度、日が昇り始めた頃の時間もあいまって、見た事もない大軍勢の姿を…


(あれが織田の軍勢か!!しかし、あちらは越後の上杉家だったはずだが何故?)


輝宗が馬を止めて、呆然としているので信長は待ってるのやめて近付いた。


信長「この度は災難でしたな。輝宗殿。」
「は?!あ、失礼。そなたは?」

信長「ああ、これは失礼。ワシの名は織田信長と申す。」
「貴殿が織田信長殿ですか!しかし、何故ワシを助けてくれたのですか?」

信長「ワシの義弟が、是非同盟を組むなら伊達家が良いと言うもんでな。で、蘆名家を滅ぼす為の情報収集や、同盟国になる伊達家を探っていたら、そこもとが拉致られたとの報告を受け、助けたまでの事。(全部、嘘だがな。)」
「なんと!?我が伊達家と同盟ですか?しかし、その前に一つ聞いても良いですかな?」

信長「何なりと。」
「織田殿の軍勢は何処を通って来たのですかな?」

信長「越後からですが何か?」
「越後?!では、上杉と一戦交えての行軍ですかな?」

信長「ああ、そういう意味ですか。上杉謙信殿は、今やワシの家臣ですので問題ないのですよ。」
「はあぁぁぁ?!あの越後の龍を屈服させたのですか?いったいどうやって?」

信長「いや、謙信殿から属国に成りたいと申し出がありましてな。」


(何なのだ?この男は?!頭がおかしいのか?いや、現に越後を通って来ないと、この先の黒川城には行けん。ワシは狐か物の怪に騙されてるのではあるまいな…)


輝宗の顔の表情が二転三転するのが面白ので、信長はその光景を意地悪く見ていたのだった。



                   ★



信長が伊達輝宗と会っていた頃、米沢城では二本松義継の文が政宗の元に届いていた。



【米沢城。一説によれば、城主が伊達輝宗から伊達政宗に成り、その後は蒲生郷安になり直江兼続の居城に成った。】



政宗は文をその場で破り捨て、槍を持って屋敷を出ようとしたところを片倉景綱に止めれた。



【片倉景綱(カタクラカゲツナ)。政宗の右腕として有名で、秀吉の小田原攻めに参戦する事を強く薦めて伊達家を救った。】



景綱「殿!お待ち下され!どうされたのですか?血相をかいて!」
「父上が義継に誘拐されたのじゃ!すぐに助け出さねば!」

景綱「事情は分かりましたが、少し頭を冷やして下さい!単独で向かったら、それこそ敵に思う壷ですぞ!」


政宗は景綱の発言で自分が冷静では無い事に気付き
「景綱の言う通りじゃ。すまなかった。」

景綱「その素直なところが殿の良いところです。それより、輝宗様の居場所が分からないと…」
「いや、場所は文に書いていた。二本松城へ向う街道沿いの村らしい。」

景綱「そこの殿を誘き寄せ、亡き者にするつもりだったのでしょう。」
「良くワシを止めてくれた!感謝する。」

景綱「いえ、当然の事ですから… すぐに兵を整えて救出に向います!殿は吉報をお待ち下さい!」
「いや、駄目じゃ。ワシも行くぞ!」

景綱「なりません!!殿の身に何かあれば…」
「いくら景綱の頼みでも、駄目なものは駄目じゃ。行くと言ったら行く!」


景綱は溜息を付き
「殿は言い出したら聞きませんからね。分かりました。しかし、無茶だけはしないように。」

政宗「すまぬ。では鉄砲隊50と弓隊100を連れて行こう。」
「貴重な鉄砲を50丁とは、この伊達家の全て鉄砲ですよ?弓隊だけでも良いと思いますが…」

政宗「こんな時しか使えないであろう?」
「ですが… 分かりました。殿の言う通りに致します。一刻ほどで準備できますので、殿も支度を整えて下さい。」


そして、政宗は景綱と共に輝宗の救出に向ったのだった。



その頃、既に輝宗が信長の手の者に救出されてる事を知らない義継は政宗が単独で助けに来るのを待っていた。


義継「あの政宗の事、ワシの文を見て怒り狂っておるに違いない!」
「しかし、義継様。本当に単独できるのですか?」

義継「ワシも馬鹿ではない。兵300を潜ませているし、景綱の入れ知恵で兵をかき集めても100か200が関の山じゃ。それにこっちには輝宗もおるしな。」



そうこうしている内に政宗がやって来た。


政宗「義継!父上は何処にいる!」
「はい此処です!と、教える馬鹿がどこにいる!」

政宗「ぬぬぬ。」

景綱「義継!何故、輝宗様を誘拐した?」
「片倉か… 知れた事、政宗がワシの全てを奪ったのが原因じゃ!だから、貴様の大事な者を奪ったまでじゃ!」


政宗が義継に攻撃しようとすると
「おっと、今ワシを攻撃すると輝宗が死ぬぞ?いいのか?」


すると、政宗の背後にいた片倉が小声で
「殿… 苦渋の決断かも知れませんが、このまま義継を殺して輝宗様を探す方が良いかと!」

政宗「それでは父上が死んでしまうぞ?」
「それでも、殿には決断して頂きたいのです。ここが伊達家の命運がかかってると思い、お願い致しまする!」

政宗「伊達家の命運か… 分かった。父上もそれを望んでるかもしれんしな。」

義継「さっきから何をごちゃごちゃと言ってるのだ? な?!」


政宗は無言で手を挙げ、後方にいる鉄砲隊の火縄銃が火を吹いた!!


”だだだぁぁぁん!!”


義継の身体に無数の銃弾が当たり絶命し、その後方に居た義継の兵も、目の前で義継が殺された事で混乱し敗走したが何人か捕らえられ政宗のところまで連れて来られた。


政宗「お前達、父上はどこにおるのじゃ?正直に申せば命は助けてやる。」


残兵達は怯えながら
「「「は、はい… あそこに見える小屋の中です。」」」

景綱「おい!」
「はっ!」


景綱の配下が残兵の言う小屋に入り、そして戻って来た。


「景綱様、あの小屋には誰も居ません。」


政宗「何だと?!おい、貴様ら!命がいらんのか?」
「そ、そんなはずはないです!」

政宗「おい!景綱、本当に何もないのか?」

景綱「おい、どうなのだ?」
「かかしのような物があっただけです…」

政宗「かかし?面妖な… あたりを探せ!どんな些細な事でもいい!」

景綱「この者どもは、どうしますか?」
「こやつらは、嘘を言ってる顔ではないが… しかし、父を攫った一味でもあるからな始末しておけ!」


残兵達は無残にも皆殺しにされた。


(父上… いったい何処に行ってしまわれたのですか…)


政宗は途方に暮れていると、南東の蘆名領の黒川城がある方向にモクモクと黒い煙が昇っているのが見えた。


政宗「おい!景綱。あの煙は何だ?」
「あの辺りは、確か蘆名の黒川城ですね。」

政宗「黒川城ですねではない!すぐに確かめて参れ!」
「は?!はい!!」


景綱は数名の部下を連れて、黒川城方面に向った。


暫くすると、景綱が血相を変えて戻ってきた!


景綱「殿!大変です!遠目ではありますが、越後の上杉の大軍勢が黒川城に攻撃を仕掛けていまいた!」
「それは誠に上杉軍なのか?」

景綱「あの方角からだと上杉軍で間違いないかと!」
「あい分かった!父上の事が心配ではあるが、戻って対策を練るしかあるまい!」


政宗は景綱と連れて来た兵と共に米沢城へ戻って行った。




少し時間を遡る…


信長「我らはこれより、蘆名の黒川城を襲うが輝宗殿は越後の新発田城で匿ってもらう手筈に成ってるので向って欲しい。」
「織田殿。ワシは織田殿の戦ぶりを拝見したいのじゃが… 駄目か?」

信長「それは構わんが、その身なりで戦に望むのはどうかと思うので、この甲冑を着て頂けるかな?」
「こんな凄い甲冑を某に貸してくれるのですか?」

信長「それはワシが前に来ていた南蛮甲冑で、鉄砲や矢を跳ね返す代物なので安全かと思いましてな。」
「おお!それは凄いが、これは重いですな。」

信長「それが嫌だったので、今の甲冑にしたのです。その兜で顔も隠しておいて下され。」
「そうですな。蘆名家とは敵対関係ですが、城を奪い取るまでの劣悪な関係ではないので助かります。」


輝宗の支度が整うと、信長の号令と共に大軍勢が黒川城に向け動き始めたのであった。


その大軍勢の行軍の音が地響きとなり、地震と間違えて黒川城の蘆名盛氏が飛び起きた。



【蘆名盛氏(アシナモリウジ)。蘆名家16代当主。近隣の大名と婚姻関係を結び、北条・武田・上杉と同盟を結ぶと、それを後ろ盾にして佐竹家と戦った。】



盛氏「地震じゃ!皆の者!気をつけるのじゃ!」
「父上!こんな朝早くに地震ごときに大声で叫ばないで下さい!」

盛氏「しかしな、地響きが…」
「本当ですね。何だ?この地鳴りは…」



【蘆名盛興(アシナモリオキ)。蘆名家17代当主だが盛氏より早く死んだ。】




「殿!大変です!越後方面から物凄い数の軍勢が、この城に迫って来ています!」

盛氏「なんじゃと?!馬鹿な!上杉とは同盟を結んでいるはず?!」
「あの律儀で名高い謙信殿が同盟を破棄するとは!何か謙信殿に不都合になるような失態はしていませんか?父上!」

盛氏「そんな事は無い!断じて無い!」


盛興が物見の兵に再度確かめると…


盛興「お前達、旗印は何じゃ?」
「それが、見た事も無い旗印で…」

盛興「上杉家ではないのか?」
「はい!」


(越後方面からの大軍勢… 上杉軍しかないが…)」



そうこうしている内に何か聞こえて来た!


”ひゅうぅぅぅ!”


そう、織田軍の大筒が黒川城に向け撃たれ、その弾丸が飛んでくる音だった。


”どっかあぁぁぁぁぁん!!”


黒川城は大きく揺れ動いた!!


盛氏「いったい何事じゃ!!」
「大変です!あの軍勢からの何かの攻撃です!二ノ丸屋敷が一瞬で消えました!」

盛氏「馬鹿な?!」




時間を戻す… 


その煙が政宗と景綱が見た煙であった。



                   ★




政宗と景綱は米沢城に戻り、至急家臣達と軍評定を開き、伊達家家老の後藤信康・伊達成実・屋代景頼・留守政景を交え協議した。



【後藤信康(ゴトウノブヤス)。合戦には必ず黄色の布を身体に巻きつけ出陣した為、黄の後藤と界隈で恐れられた。】

【伊達成実(ダテシゲザネ)。伊達家一門で家中一の猛将だが知略にも優れた。】

【屋代景頼(ヤシロカゲヨリ)。小姓から政宗に仕え、政宗から信頼を受けて伊達成実が出奔事件を起こした際に活躍したが、傲慢な性格が仇となり追放させられた。】

【留守政景(ルスマサカゲ)。政宗の叔父。合戦では常に中枢として活躍した。】



政景「殿!上杉が同盟を破棄して攻めて来たと噂しておりますが、本当ですか?」
「うむ。ワシらが父上を救出に行った際に蘆名の黒川城付近から煙が立ち上るのを見て、景綱の配下が確認に行くと攻撃されていたらしい。」

成実「殿!これは明らかな違反ですぞ!」
「しかし、まだこちらには攻めて来てはいないが時間の問題だろう。どうすれば良いか意見を聞きたい。」

景綱「殿。ここは篭城しかございません。」

成実「それはそうだが、一つ加えて言うと白石殿に援軍要請し挟撃すれば良いかと。」
「その戦法は今回の戦で有効打にはならん。敵兵力が多すぎるのだ!」

成実「多いとは、いったい如何ほど居るのですか?」
「景綱。どうなのじゃ?」

景綱「はっ!少なく見積もっても5万は居るかと。」


家臣達が驚愕した。


景頼「5万じゃと?!そんな大軍に攻められたら、この米沢城に篭城しても無意味なのでは?」
「景頼の意見も一理ある。ここは、この城を捨て仙台城に移り全兵力を終結して戦うしかあるまい!」

信康「そうじゃ!敵わぬとも、一矢でも報いねば伊達家の名折れじゃ!」

成実「殿、兵力差があったとしても、我らには地の利があるので上手く行けば勝てるやもしれませんぞ!」
「うむ。敵は5万、こちらは2万と白石の兵が合わされば半分になるしな。では、この城を捨て仙台城に向う準備を早急に致せ!」


一同「「「「「はっ!」」」」



その頃、蘆名の黒川城に砲弾をこれでもかと撃ち込み半日足らずで落とし、輝宗を誘拐した二本松義継の二本松城に兵を進めていた。


輝宗「織田殿の戦法は凄まじいですな。あの黒川城が瓦礫の山に成っているのを見る事になるとは思いもしませんでした。」
「まあの。大筒があれば容易い事じゃ。この大筒は特殊での、ワシの抱えてる鉄砲鍛冶が作った代物でな、普通とは少し違うのじゃよ。」

輝宗「しかし、そんな事を某に喋って良いのですか?」
「喋るも何も、これから同盟を結ぶ相手ですし、ある程度の情報共有は必要であろう?」

輝宗「それはそうですが… あっ!見えて来ました!あそこが二本松城です。」


そこの見えてきた城は城とは名ばかりの砦だった。


信長「あれが城か?砦と大差ないではないか。しかも、誰も居ないぞ?」
「それは、ワシを誘拐したアノ村にまだ居るのではありませんかな?」

信長「いや、それは無い!あれだけ黒川城を攻撃したから煙くらいは見えただろうから逃げたか?」
「逃げる?それも無理ですな。南には織田軍、北には政宗がいるし、アノ村に潜伏してほとぼりを待っているやもしれません。」

信長「それもあるが、まだ輝宗殿が居ると思って政宗殿に文を送ってやもしれませんぞ?」
「義継の奴なら有り得る!では、もう政宗に殺されてるやも…」

信長「どのみち、アノ村は後ほど向うつもりじゃ。それより、この城の南に用がある。」
「南と言いますと、須賀川城ですな。しかし、あの城には蘆名家の武将はおりませんが。」

信長「何?居ないじゃと?それは良い事を聞いた!」
「は?!今の言葉を簡単に信じて良いのですか?まだ同盟を結んでないし、ワシはただの隠居者ですし。」

信長「お主は、信頼出来ると思ってるからの。変かの?」
「(この男は… どうも計りかねんな。)変です!しかし、面白い!で、次はアノ村を通り米沢城に向うのですか?」

信長「いや、我が家臣の佐々成政に一隊を率いさせ白石城に向わせる。」
「え?!まさか、白石城を落とすおつもりか?」

信長「輝宗殿には悪いが、白石城を包囲するだけじゃ。危害は加えんが、攻撃されたら報復するがな。」
「な?!しかし、使者は出すのであろう?」

信長「出さん。包囲するだけじゃ。政宗はワシらを上杉と思っているであろう。なので、成政に上杉の旗を持たせ包囲させる。こちらの兵力に恐れを抱いてくれたら良いがな。」
「白石城を守ってる白石は臆病なので、攻撃はしないでしょうが… 何日間包囲するのですか?」

信長「そう心配そうな顔をするな。5日間程度じゃ。」
「では織田殿本体は米沢城に向うのですな?」

信長「いや、一度越後に戻って、元尾浦城跡から最上を襲うつもりじゃ。」


輝宗はまた混乱して
「待って下され!その元尾浦城跡とはどういう事ですかな?」

信長「ああ、輝宗殿は知らんか。大宝寺家の尾浦城は去年、黒川城と同じ目にしたのだ。」
「はぁ?!では、また瓦礫の山に?全く知りませんでしたぞ!しかし、それでは安東家が黙ってませんぞ?」

信長「ああ、その安東家や南部家も、もう無いですからの。今はたぶん無法地帯化してるかと。ゆくゆくは伊達家に譲渡しようかと思っていましてな!わっはっはっは!」
「(何なのだ?この信長は本物のイカレか?そんな馬鹿話、さすがに信じられん!しかし…)分かりました。政宗に会うまで、お供します。よろしいか?」

信長「いや、今回は越後の新発田城で待ってて頂きます。同行は遠慮下さい。政宗殿と会う時、また会うという事でお願い致す。」
「何を考えておるか全く分からんが、今は織田殿に従うとしよう。」


信長は白石城の包囲と策を成政に伝え、輝宗と共に越後へ向け戻って行ったのだった。



【白石宗実(シロイシムネザネ)。白石城城主で軍を率いて戦って、いくつかの城主を歴任して、隠居後は京で過ごした。】

【佐々成政(サッサナリマサ)。織田家母衣衆の出身で柴田勝家に従い北陸遠征に加わり活躍した。】



輝宗と共に越後の新発田城下に戻った信長を上杉家の柿崎景家が出迎えた。


景家「織田殿いや、大殿!策は上手くいったようですな。」
「うむ。それより、柿崎殿いや景家は… うーん… どうも慣れんな!お互いに。」

景家「ですな。で、言いかけた事は何ですかな?」
「そうであった。景家は何故、ここに?」

景家「それは殿に、大殿は度重なる戦で兵が減ってるだろうからと言われて某が来たのです。」
「おお!これは心強い。兵が2万ほど別行動してるので丁度良かった。」

景家「ほう。それで、その御仁は何処の方ですかな?」
「この者は、伊達輝宗殿じゃ。」


輝宗が景家にお辞儀すると
「某は上杉様を属国にしたと織田殿から聞いてはいたが、本音を言えば半信半疑だったのだ。これで確信に変わった。」

信長「何じゃ。信じてなかったのか?」
「いきなり言われて、はいそうですか。とは、無理という物ですぞ。」

信長「では安東家や南部家の事も信じてないという事ですな?」
「ですな。それが本当なら、伊達の草から報告があがってくるからの。」

信長「あの草は伊達殿の草だったのか!先に言っておくが、その草なら全て口封じをした。許せ。」
「なんと?!しかし、弱い者が悪いこの乱世です。謝るに値しません。ということは、本当に滅ぼしたという事ですね。」

信長「だから、さっきからそう言ってるであろう?では、ここで一旦お別れです。3日後にワシの手の者が向えに来るので、同行をお願いします。」
「あい、わかった。では。」


こうして、伊達輝宗と分かれた織田信長は柿崎景家と共に総勢10万の兵は元尾浦城跡に向ったのだった。



その頃、伊達政宗はというと…


政宗「皆の者!仙台城にこれから移動するが、もう忘れた物資はないな?」

景綱「もう無いと思います。」
「うむ。上杉軍に対する土産は置いて置けよ!」

成実「それは完璧です!」
「うむ。では移動を開始する!加えて白石殿に援軍の文を景頼!お前が持って行け!」

景頼「はっ!某にお任せを!!」


伊達政宗は米沢城を捨て、仙台城に移動を開始した。


政宗が出立した、丁度2日前に進軍を開始した織田軍は、瞬く間に最上領の城を落として行き、最後の山形城も一夜の内に陥落したのだった。


景家「最上もあっけなかったですな。」
「所詮、烏合の衆だ。相手にならん。次はいよいよ伊達領だが…」

景家「では、輝宗殿に迎えを差し向けますか?」
「いや、先に仙台へ向う。」

景家「は?それはまた何故?」
「仙台城の北に伊達に手を貸してる豪族が何家かある。そこを押さえないとな。」

景家「ほう。大殿、いつの間にそんあ情報を摑んでいたのですか?」
「南部家を掃討した折に、小耳に挟んだのだ。(嘘だがな。)」

景家「大殿の耳は差し詰め地獄耳ですな。」
「ふ… 褒め言葉として受け取る。さて、参るか!仙台城は城主が居ないと聞くが一応、物見をたてる!」


信長は物見に何人かの草を放ったのだった。



【安東愛季(アンドウチカスエ)。檜山安東家8代当主。日本海交易を通じて織田信長にも早くから接触してた。】

【南部晴政(ナンブハルマサ)。南部家24代当主。優れた采配で陸奥北部を征圧し、信長にも通じ鷹や駿馬を献上した。】



しばらく経つと、物見が帰って来て
「大殿!仙台城に無数の足軽達が出入りしてるのを確認しました。」

信長「何じゃと?あの城には常駐兵しか居ないと思っていたが… それで数は分かるか?」
「はっ!城内に少なく見ても5000は居るかと!後、城内に入りきらない方は2万弱は居るかと思われます!」

信長「ほう。2万5000か、かなりの兵力だな。まるで、どこかと合戦の準備をしている様な。」

景家「大殿… どこかと合戦の準備をしている様なではなく、その相手は織田軍かと思うのですが!」
「ああ、なるほどな… え?!ワシら織田軍とか?」

景家「(この男はやはり面白いな。)それしかないでしょう?しかし、織田ではなく上杉だと思ってるかと。それはそれで腹が立ちまするが!」
「しかし、いったい誰が大将なのだ?」

景家「上杉と思っているなら、某が突いてみましょうか?」
「うむ。頼めるか?」


景家は真剣な面持ちで
「「頼めるか?」ではありませんぞ!某は織田信長様の下の家臣・上杉謙信の、そのまた下の配下の者ですぞ?その者に対して「頼めるか?」はおかしいでしょう?言い直して下され。」

信長「そうであったな。助言感謝致す。」

と、信長は景家に対して頭を下げた。


景家「(この男は…)そのように頭を下げないで下され… まったく…」
「わっはっはっは!そう言うな!間違った時は遠慮なく助言を言ってくれるのは有り難いものじゃ。では改めて… 景家!先行して威嚇して参れ!ワシはその後方からゆっくり向うのでな。間違っても攻撃はするなよ!」

景家「はっ!心得ました!では。柿崎隊!いくぞぉぉぉぉぉ!!」


”おおぉぉぉぉぉぉ!”


柿崎景家は自軍20000を率いて仙台城に向って駆け出す!




その頃、仙台城では白石城の事が軍評定での議題にあがっていた。


政宗の命を受け屋代景頼が白石城に向ったが、上杉軍によって包囲されていた事である。


景頼「我らとほぼ同じ兵力で包囲されていました!援軍が必要です!」
「援軍か…」

成実「殿。援軍は無理ですな。何の為に米沢城を放棄したか分からなくなりますから…」
「うむ… どうしたものか…」

景頼「まだ敵が来て居ません!半分でも良いので援軍に向うべきです!」
「よし!白石を見捨てるわけにはいかん!景頼、5000の兵で後方から強襲し白石に逃げる機会を与える手助けをしろ!」


その言葉を受けえた景頼は成実を見て鼻で笑った。


景頼「ふっ… では行って…」


そこに伝令が!?


政宗「何事じゃ!」
「はっ!この仙台城に上杉軍約20000が迫って来ております!」

政宗「何?!それは間違いなく上杉軍か?」
「はっ!柿崎家の旗印で先頭に柿崎景家が居ました!」

政宗「何じゃと?!あの猛将で有名な柿崎景家か!それに20000じゃと?!同等なら我らで勝てる!」

成実「殿!至急撃って出ましょう!そうしないと、白石城を包囲してる上杉軍が来てしまいますぞ!」
「それは、白石が敗れるという事か?」

成実「はい!今、この城に迫って来ている柿崎軍と同等の数で包囲されてるのですぞ!そうは持ちますまい!」
「なんという事じゃ。分かったすぐに出陣する!」


政宗は早急に城の外に出て出撃準備に入り、全軍に号令を出す!!


「皆も知ってるとは思うが、この城に上杉の柿崎軍が迫って来ている!そこで我はこの軍を野戦で叩く事に決した!皆者!この戦いは速さが命じゃ!大将の柿崎景家を討ち取るか負傷を負わせるか、兵の数を減らせ撤退させる事が出来れば我らの勝ちじゃ!我らと敵の兵力はほぼ同じ!皆者!ワシに続けえぇぇぇ!!」


”おおぉぉぉぉぉぉぉぉ”


勢いよく撃って出た政宗率いる伊達軍だったが、上杉軍のかなり後方に得体の知れない大軍を目にするのだった。
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克全
歴史・時代
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 尾張徳川家(尾張藩)の第14代・第17代当主の徳川慶勝が、美濃高須藩主・松平義建の次男・秀之助ではなく、夭折した長男・源之助が継いでおり、彼が攘夷派の名君となっていた場合の仮想戦記を書いてみました。夭折した兄弟が活躍します。尾張徳川家15代藩主・徳川茂徳、会津藩主・松平容保、桑名藩主・松平定敬、特に会津藩主・松平容保と会津藩士にリベンジしてもらいます。 もしかしたら、消去するかもしれません。

天正の黒船

KEYちゃん
歴史・時代
幕末、日本人は欧米諸国が日本に来た時の黒船に腰を抜かした。しかしその300年前に日本人は黒船を作っていた。

もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら

俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。 赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。 史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。 もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。

幻の十一代将軍・徳川家基、死せず。長谷川平蔵、田沼意知、蝦夷へ往く。

克全
歴史・時代
 西欧列強に不平等条約を強要され、内乱を誘発させられ、多くの富を収奪されたのが悔しい。  幕末の仮想戦記も考えましたが、徳川家基が健在で、田沼親子が権力を維持していれば、もっと余裕を持って、開国準備ができたと思う。  北海道・樺太・千島も日本の領地のままだっただろうし、多くの金銀が国外に流出することもなかったと思う。  清国と手を組むことも出来たかもしれないし、清国がロシアに強奪された、シベリアと沿海州を日本が手に入れる事が出来たかもしれない。  色々真剣に検討して、仮想の日本史を書いてみたい。 一橋治済の陰謀で毒を盛られた徳川家基であったが、奇跡的に一命をとりとめた。だが家基も父親の十代将軍:徳川家治も誰が毒を盛ったのかは分からなかった。家基は田沼意次を疑い、家治は疑心暗鬼に陥り田沼意次以外の家臣が信じられなくなった。そして歴史は大きく動くことになる。 印旛沼開拓は成功するのか? 蝦夷開拓は成功するのか? オロシャとは戦争になるのか? 蝦夷・千島・樺太の領有は徳川家になるのか? それともオロシャになるのか? 西洋帆船は導入されるのか? 幕府は開国に踏み切れるのか? アイヌとの関係はどうなるのか? 幕府を裏切り異国と手を結ぶ藩は現れるのか?

皇国の栄光

ypaaaaaaa
歴史・時代
1929年に起こった世界恐慌。 日本はこの影響で不況に陥るが、大々的な植民地の開発や産業の重工業化によっていち早く不況から抜け出した。この功績を受け犬養毅首相は国民から熱烈に支持されていた。そして彼は社会改革と並行して秘密裏に軍備の拡張を開始していた。 激動の昭和時代。 皇国の行く末は旭日が輝く朝だろうか? それとも47の星が照らす夜だろうか? 趣味の範囲で書いているので違うところもあると思います。 こんなことがあったらいいな程度で見ていただくと幸いです

世界はあるべき姿へ戻される 第二次世界大戦if戦記

颯野秋乃
歴史・時代
1929年に起きた、世界を巻き込んだ大恐慌。世界の大国たちはそれからの脱却を目指し、躍起になっていた。第一次世界大戦の敗戦国となったドイツ第三帝国は多額の賠償金に加えて襲いかかる恐慌に国の存続の危機に陥っていた。援助の約束をしたアメリカは恐慌を理由に賠償金の支援を破棄。フランスは、自らを救うために支払いの延期は認めない姿勢を貫く。 ドイツ第三帝国は自らの存続のために、世界に隠しながら軍備の拡張に奔走することになる。 また、極東の国大日本帝国。関係の悪化の一途を辿る日米関係によって受ける経済的打撃に苦しんでいた。 その解決法として提案された大東亜共栄圏。東南アジア諸国及び中国を含めた大経済圏、生存圏の構築に力を注ごうとしていた。 この小説は、ドイツ第三帝国と大日本帝国の2視点で進んでいく。現代では有り得なかった様々なイフが含まれる。それを楽しんで貰えたらと思う。 またこの小説はいかなる思想を賛美、賞賛するものでは無い。 この小説は現代とは似て非なるもの。登場人物は史実には沿わないので悪しからず… 大日本帝国視点は都合上休止中です。気分により再開するらもしれません。 【重要】 不定期更新。超絶不定期更新です。

本能寺からの決死の脱出 ~尾張の大うつけ 織田信長 天下を統一す~

bekichi
歴史・時代
戦国時代の日本を背景に、織田信長の若き日の物語を語る。荒れ狂う風が尾張の大地を駆け巡る中、夜空の星々はこれから繰り広げられる壮絶な戦いの予兆のように輝いている。この混沌とした時代において、信長はまだ無名であったが、彼の野望はやがて天下を揺るがすことになる。信長は、父・信秀の治世に疑問を持ちながらも、独自の力を蓄え、異なる理想を追求し、反逆者とみなされることもあれば期待の星と讃えられることもあった。彼の目標は、乱世を統一し平和な時代を創ることにあった。物語は信長の足跡を追い、若き日の友情、父との確執、大名との駆け引きを描く。信長の人生は、斎藤道三、明智光秀、羽柴秀吉、徳川家康、伊達政宗といった時代の英傑たちとの交流とともに、一つの大きな物語を形成する。この物語は、信長の未知なる野望の軌跡を描くものである。

戦国終わらず ~家康、夏の陣で討死~

川野遥
歴史・時代
長きに渡る戦国時代も大坂・夏の陣をもって終わりを告げる …はずだった。 まさかの大逆転、豊臣勢が真田の活躍もありまさかの逆襲で徳川家康と秀忠を討ち果たし、大坂の陣の勝者に。果たして彼らは新たな秩序を作ることができるのか? 敗北した徳川勢も何とか巻き返しを図ろうとするが、徳川に臣従したはずの大名達が新たな野心を抱き始める。 文治系藩主は頼りなし? 暴れん坊藩主がまさかの活躍? 参考情報一切なし、全てゼロから切り開く戦国ifストーリーが始まる。 更新は週5~6予定です。 ※ノベルアップ+とカクヨムにも掲載しています。

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