私の色を決めないで

黒鐘夜奈

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一章 私は子供

15,説得の結果

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 『お父様、お母様。お二人の気持ちは嬉しく思います。ですが、これは私にしか出来ないことなのです。』
 「しかし、君はまだ子供なんだよ?」
 私の言葉に父は少しだけ目が揺らいだが、まだ頷こうとはしない。
 (まだこれじゃあ足りない!もっと何か他にないの?)
 そう思っていた時、思わぬ人から助け舟が出された。
 「ユカリナ様が力を示されたら納得出来ますか?」
 エリーさんのその言葉に父も驚いている。
 「そ、それは・・・。」
 父が言葉を濁す。
 (分かってる。父さんが言いたいのはそういうことじゃない。でも、これはチャンスだ!)
 『お父様、どうなのですか?』
 「公爵様、親とは時に見守る事も必要なのですよ。ユカリナ様は既に覚悟をお決めになられています。」
 父の顔がだんだんと渋くなっていく。私は隣にいる母を見る。母はため息をつくと父の方に手を置く。
 「エルフィン、私達も覚悟を決めましょう。」
 「マリアナ・・・。」
 父が母を見つめて目を瞑り、重々しく頷く。その父の様子に母はニッコリ微笑み、そしてすぐに真面目な顔をしてこう言った。
 「ただし、ユカリナ。貴女には明日、王宮にて力を示してもらいます。」
 「マリアナ!?」
 父が今度は青い顔をして何か言おうとするが、母に塞がれモゴモゴしている。
 (あっ・・・母さん鼻と口塞いでる。)
 一瞬父を憐れに思うが、それも直ぐに吹き飛ぶ。次の母の言葉が頭をいっぱいにしたからだ。
 「そこで陛下にも貴女の勇姿をご覧に入れれば陛下の説得も出来て一石二鳥です。」
 『へ、陛下の前でやるのですか?私達はいいですけど、陛下って忙しいんじゃ・・・。』
 私の言葉に他の皆が驚く所そこなの?という目で私を見てくる。
 「普通は緊張したりとかでなければ断るところだと思うのですが・・・。」
 一人勇気ある神官がツッコミを入れ、他の二人がウンウンと頷く。ちなみに父は既にあさっての方向を向いて気絶しているが・・・誰も気づいていない。私の事より父の方に突っ込んであげて欲しい。
 『そんな事よりお母様、王宮でやると簡単に仰っていましたが、大丈夫なのですか?』
 私が質問すると、母は余裕の笑みを浮かべて「問題無いわ。」と言う。私が頭にクエスチョンマークを浮かべていると、エリーさんが補足してくれる。
 「マリアナ様は陛下の妹君なのですよ。つまり、元々は王女様だったのです。」
 『なるほど、そういう事でしたか。』
 「陛下は今もマリアナ様を溺愛されておりますゆえ、マリアナ様のならなんでも叶えてくださるでしょう。」
 「ええ、陛下お兄様にお願いすれば叶えてくれるでしょう。ふふふっ。」
 そう言って微笑む二人は正直怖いと思った。
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