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第四十七話
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「私たちが予想してた通りね。……良かったら晴明としばらく過ごしてみない?一緒に過ごして一緒に寝るのよ。簡単なカウンセリングってやつ」
「え?そんな、安倍晴明殿に悪いです」
流石の史郎も慌てて遠慮した。
助けてもらっただけで充分感謝している。これ以上迷惑をかけられない。
彼の正面に座る晴明はじっと史郎のことを見つめる。
何か言いたげな瞳だ。やがて晴明は口を動かした。
「子供のくせに遠慮なんかしないでくださいよ、史郎さん。あと、私の事はどうか晴明とお呼びください。敬称とかいらないです」
自分も同じく子供だというのに史郎へ遠慮なくそう言った。
「施設の人には話をして許可はとってるのよ。だから遠慮はいらないわ。あとは貴方達から承諾を得れば晴明をここに置いて行こうと思う」
変わらず優しい眼差しで緑郎と史郎を見つめて葛の葉姫は言う。
どうしてそんなに優しくしてくれるのだろうと史郎は不思議に思った。
そう考えてしまうのも無理はない。
彼にとって向かい側に座る二人は出会って間もないのだ。
お互いに名前は知っていても交流なんて今までなかった間柄。
そんな中だというのに二人は史郎に優しくしてくれる。
幼い史郎にはその理由がわからなかった。
「どうしてそんなに優しいんですか……俺は何も返すことができないのに」
もどかしい気持ちを言葉にした。
二人のおかげで命が助かったけれど史郎は何も返すことができない。
自分はまだ子供だし何もできない。
それが史郎にはとても悔しかった。
「貴方に何かをして欲しくて私は助けたわけではありませんよ。そんなものの為に屋敷を全壊させるわけないじゃないですか」
「でも……」
「史郎さん。貴方は子供なんです。甘えていいんです。子供は周囲に甘えるべきです」
僅か六歳の少女がそう言う。
晴明の言葉に史郎は気持ちが大きく揺らいだ。
――いい、のだろうか。甘えてしまっても。この少女に傷ついた心を託してしまっても。
ギュッとズボンの裾を掴む。
少し考えてみたのち、史郎は言葉にした。
「……お願いできるかな、晴明」
この時初めて史郎は晴明のことを呼び捨てにした。
その呼び方が嬉しかったのだろうか。晴明は笑顔で答える。
「はい。どうかお任せください」
こうしてしばらくの間、晴明は史郎と共に暮らすことになった。
晴明との暮らしは思いの外心地よいものだった。
日中はあやかしの術を教えてもらったり、剣術を鍛えてもらったりした。
夜はうなされている時に優しく言葉をかけてくれたりと様々。至れり尽くせりだった。
こんなに親切にしてもらって申し訳ないという気持ちと同時に晴明と一緒に過ごせる喜びが日を増すごとに大きくなった。
晴明がいない隙に史郎は緑郎に胸の内を話した。
「最近、晴明と一緒にいると心が苦しくなることがあるんだ」
「……どうして?」
「それがわからない。晴明を見るとすごくドキドキするし、このままずっと一緒にいたいって思う。ずっと一緒に居ることができればどんなにいいかって……」
「それはいつからだい?」
「助けてもらった時から。その日からずっと気がついたら晴明のことばかり考えてる。俺、頭がおかしくなっちゃったのかな。父さん」
「史郎も人を好きになる歳になったんだねぇ」
しみじみと嬉しそうに父親はそう語る。
その言葉に史郎は緋色の瞳を大きく見開いた。
――そうか。この気持ちの名前は。
「俺、晴明のことが好きなのかな。父さん」
史郎が漏らした言葉に緑郎は微笑んで答える。
「きっとそうだと思うよ。素敵な女性を好きになれてよかったな、史郎」
この気持ちの名前が恋だと父親と会話をして史郎はようやく気がつくことができた。
そして史郎にとってこれが初恋だった。
晴明のことが好きだと気がついてから史郎はますます自分の気持ちが膨らんでいることに気がついた。
好きで、好きで、好きで。たまらなく好きで。
初めての気持ちにどうしていいのかわからなくなる。
頭の中が晴明のことばかりで他のことが考えられない。
自分の気持ちがコントロールできずにいた。
「史郎さん。最近、顔が赤いですね。どうかしました?体調は悪いそうに見えませんが」
史郎の気持ちを知らない晴明はそう尋ねる。
顔が赤くなるのは晴明を見て気持ちが昂っているせいだ。
そんなことは言えないので代わりに史郎はずっと思っていたことを話した。
「体調は大丈夫。顔が赤いのはどうか気にしないでくれ。……それより今更かもだけど、史郎でいいよ。年上だからって敬語もいらない」
「でも五歳年上にタメ口もどうかと思うのですけど」
「俺が気にしないんだからいいよ。どうか俺に対しても気軽に接してほしい」
「……わかった。これでいい?史郎」
新鮮な口調だった。
いつも礼儀正しく晴明は史郎に対して接してくれていたけれど、史郎はずっと気軽に接して欲しいと考えていた。
どうしてそんなことを考えるようになったかわからない。
ずっとわからずにいた。でも今は違う。
晴明と少しでも近くの距離に位置する男になりたいからだとわかる。
彼女の新鮮な口調に思えわず心臓がドクンと高鳴る。
「そのままの口調でよろしく」
史郎はとても嬉しそうにそう返事をした。
「え?そんな、安倍晴明殿に悪いです」
流石の史郎も慌てて遠慮した。
助けてもらっただけで充分感謝している。これ以上迷惑をかけられない。
彼の正面に座る晴明はじっと史郎のことを見つめる。
何か言いたげな瞳だ。やがて晴明は口を動かした。
「子供のくせに遠慮なんかしないでくださいよ、史郎さん。あと、私の事はどうか晴明とお呼びください。敬称とかいらないです」
自分も同じく子供だというのに史郎へ遠慮なくそう言った。
「施設の人には話をして許可はとってるのよ。だから遠慮はいらないわ。あとは貴方達から承諾を得れば晴明をここに置いて行こうと思う」
変わらず優しい眼差しで緑郎と史郎を見つめて葛の葉姫は言う。
どうしてそんなに優しくしてくれるのだろうと史郎は不思議に思った。
そう考えてしまうのも無理はない。
彼にとって向かい側に座る二人は出会って間もないのだ。
お互いに名前は知っていても交流なんて今までなかった間柄。
そんな中だというのに二人は史郎に優しくしてくれる。
幼い史郎にはその理由がわからなかった。
「どうしてそんなに優しいんですか……俺は何も返すことができないのに」
もどかしい気持ちを言葉にした。
二人のおかげで命が助かったけれど史郎は何も返すことができない。
自分はまだ子供だし何もできない。
それが史郎にはとても悔しかった。
「貴方に何かをして欲しくて私は助けたわけではありませんよ。そんなものの為に屋敷を全壊させるわけないじゃないですか」
「でも……」
「史郎さん。貴方は子供なんです。甘えていいんです。子供は周囲に甘えるべきです」
僅か六歳の少女がそう言う。
晴明の言葉に史郎は気持ちが大きく揺らいだ。
――いい、のだろうか。甘えてしまっても。この少女に傷ついた心を託してしまっても。
ギュッとズボンの裾を掴む。
少し考えてみたのち、史郎は言葉にした。
「……お願いできるかな、晴明」
この時初めて史郎は晴明のことを呼び捨てにした。
その呼び方が嬉しかったのだろうか。晴明は笑顔で答える。
「はい。どうかお任せください」
こうしてしばらくの間、晴明は史郎と共に暮らすことになった。
晴明との暮らしは思いの外心地よいものだった。
日中はあやかしの術を教えてもらったり、剣術を鍛えてもらったりした。
夜はうなされている時に優しく言葉をかけてくれたりと様々。至れり尽くせりだった。
こんなに親切にしてもらって申し訳ないという気持ちと同時に晴明と一緒に過ごせる喜びが日を増すごとに大きくなった。
晴明がいない隙に史郎は緑郎に胸の内を話した。
「最近、晴明と一緒にいると心が苦しくなることがあるんだ」
「……どうして?」
「それがわからない。晴明を見るとすごくドキドキするし、このままずっと一緒にいたいって思う。ずっと一緒に居ることができればどんなにいいかって……」
「それはいつからだい?」
「助けてもらった時から。その日からずっと気がついたら晴明のことばかり考えてる。俺、頭がおかしくなっちゃったのかな。父さん」
「史郎も人を好きになる歳になったんだねぇ」
しみじみと嬉しそうに父親はそう語る。
その言葉に史郎は緋色の瞳を大きく見開いた。
――そうか。この気持ちの名前は。
「俺、晴明のことが好きなのかな。父さん」
史郎が漏らした言葉に緑郎は微笑んで答える。
「きっとそうだと思うよ。素敵な女性を好きになれてよかったな、史郎」
この気持ちの名前が恋だと父親と会話をして史郎はようやく気がつくことができた。
そして史郎にとってこれが初恋だった。
晴明のことが好きだと気がついてから史郎はますます自分の気持ちが膨らんでいることに気がついた。
好きで、好きで、好きで。たまらなく好きで。
初めての気持ちにどうしていいのかわからなくなる。
頭の中が晴明のことばかりで他のことが考えられない。
自分の気持ちがコントロールできずにいた。
「史郎さん。最近、顔が赤いですね。どうかしました?体調は悪いそうに見えませんが」
史郎の気持ちを知らない晴明はそう尋ねる。
顔が赤くなるのは晴明を見て気持ちが昂っているせいだ。
そんなことは言えないので代わりに史郎はずっと思っていたことを話した。
「体調は大丈夫。顔が赤いのはどうか気にしないでくれ。……それより今更かもだけど、史郎でいいよ。年上だからって敬語もいらない」
「でも五歳年上にタメ口もどうかと思うのですけど」
「俺が気にしないんだからいいよ。どうか俺に対しても気軽に接してほしい」
「……わかった。これでいい?史郎」
新鮮な口調だった。
いつも礼儀正しく晴明は史郎に対して接してくれていたけれど、史郎はずっと気軽に接して欲しいと考えていた。
どうしてそんなことを考えるようになったかわからない。
ずっとわからずにいた。でも今は違う。
晴明と少しでも近くの距離に位置する男になりたいからだとわかる。
彼女の新鮮な口調に思えわず心臓がドクンと高鳴る。
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史郎はとても嬉しそうにそう返事をした。
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