特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第16章 -勇者 VS 魔王-

†第16章† -44話-[それは計画された侵略戦争(レコンキスタ)]

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「はい、はい。わかりました。失礼します」
 棒使いディテウスは盟主からの連絡を揺蕩う唄ウィルフラタに受けていた。
 会話は終わり、魔道具が切断すると魔法使いアネスが覗き込んで来る。

「盟主は何ですって?」
 歳が離れているとはいえ、小柄で奇麗なアネスの顔が突然視界に入って来た事でディテウスの内心は震える。
「えっと……。何か資料になりそうな物は本以外でも影に回収する様に、だそうです」
 頬を掻きながら情報を共有する。
 先ほど流れてきた風が、残骸に厚く積もっていた埃も剥ぎ取ってくれたおかげで物の判別もしやすくなっていた。

「資料ねぇ……。ここは期待出来ないかなぁ……」
 アネスの呟きにディテウスも釣られて室内を見回す。
 魔法の光源がアネスの制御で暗い室内を広範囲に浮かび上がらせる。
「広さと残骸から見るに食堂ですかね?」
 複数人で利用するテーブルと椅子の残骸から辛うじて読み取ったこの部屋の用途。
 続き部屋を覗き込むとキッチンも見つけられたので、ディテウスの予想通りこの部屋は食堂ということになる。

「こういう時ってどんなものが資料になりますかね?」
 食堂に残る資料に心当たりがない為、アネスに問いかけたディテウスに小さな先輩は胸を張り答えた。

「———私にわかるわけないでしょ!どれもゴミにしか見えないわよっ!」

 無言で見つめ合った二人を冷えた空気が包み込む———。
 ディテウスにも言える事だが、アネスも冒険者として活動するにあたり今を生き抜くことに特化していた。
 情報収集において何を基準にすればいいのか……。二人には縁遠い話だった。
「と、とりあえず……。調べるのは俺達の役割じゃないんで何でも一部回収しましょうか……」
「そうね!そうしましょう!」
 どうせ盟主の伝手で調べる人がいるはず。
 戦闘は自分達の役割だが、知識方面はどうしてもおざなりなのだ。
 ディテウスの言い訳に便乗したアネスは元気に同意して、二人は適当に見繕った残骸を影へ落とし探索を進めた。

 * * * * *
 いくつかの部屋を経て、宗八そうはち達は合流を果たした。
 最深部と思しき場所には、通路の左右に道があった。
「こっちは武器庫だろうな」
 環状通路の先にあった部屋は広く、四人で入室して朽ちた残骸を拾う。
 宗八そうはちが手にした物は、頑丈に造られた樽に複数本収められた槍の一本。
 複数ある箱も一部が劣化により壊れており、中には変色したポーション類が大量に入っていた。

「旦那様、こちらの本棚に中位と上位の魔導書だったものがありました」
 反対の壁に散らばった物を調べていたサーニャが声を上げた。
 振り返り彼女の手に収まっているものを見ても、宗八そうはちには紙の切れ端にしか映らない。
「品質は悪いですけど、汎用武器の補充はしっかり行われていますね」
「近接武器以外に杖も揃っているわね」
 ディテウスはロングソードを手に、アネスは杖を手にしながら思案する。
 全員の頭の中にあったのは、同じ疑問だ。

 ———ここは一体””なのか……。

 大魔王城の武器庫がここにあるわけはない。
 資料室や食堂などを城と分ける必要は無い。つまり……。
「クー。何かわかったことはあるか?」
 合流した際にディテウスの影に収めた残骸などは、闇精クーデルカが回収している。
 子供達は、クーデルカを中心に影のなかで残骸と資料の断片を調べてくれていたのだ。
 影から出て来たクーデルカが報告を始める。

『はい、お父さま。姉弟に優先して手記を探してもらい調べを進めました……』
 流石は子供達の中で一番の才媛。
 短い時間で報告出来る情報を見つけ出したようだ。

『———破滅教団の施設のようです』

 破滅教団の情報は、今の時代にほぼ伝わっていない。
 神聖教国に残っていた文献にも少しだけ名前が出て来るだけで、その実態は謎に包まれていた。
「破滅教団の活動時期は、人魔大戦の時代だったよな?」
 宗八そうはちが問い掛けたのはサーニャだった。
 彼女の前職は聖女クレシーダのアナザー・ワン。
 当然、神聖教国に納められている資料は全て閲覧可能な立場だ。
「そうですね。丁度その時代が名前が多く出て来た時期で間違いないです。ただ、あくまでその情報は人族領の話で、魔族領でも活動していたという記録ではありませんでした」
 記憶の海からサーニャが引き上げた破滅教団の記述は、合計四か所だった。

 1.破滅教団という謎の組織が近年活動を始めた。
 2.破滅教団の破棄した拠点を見つけた。
 3.拠点内で研究をしていた形跡あり。詳しくは不明。
 4.プレイグ帝国内で破滅教団残党に遭遇。「破滅は必ず訪れる」と叫び死亡。

 三つは人魔大戦が起こっていた八百年前の記録。
 最後が数十年経ったあとの記録だった。

「だが事実、魔族領のそれも大魔王城のすぐ側にここまでの拠点があった。もしかしたら、魔族立教の教えなのかもしれないな」
 探索途中、確かに研究室のような部屋に無骨な小上がりと魔方陣も見つけていた。
「つまりここは、遥か昔に活動していた宗派の施設だったという事ですか?」
 宗八そうはちとサーニャが醸し出す重い空気に比べて、話の内容は大したことはない。
 そう短絡的に考えたディテウスが失言を溢してしまう、が。
 すかさずアネスが彼を叱りつけた。

「なら危険はないですね、とでも続けるつもり? それを決めるのは盟主であって、私達じゃないでしょう。ちょっと黙ってなさい」
 腰に手を当てジト目の彼女に睨まれたディテウスは、自分の失言に気が付いた。
「す、すみません。今は聞かない宗派だったので……。調査に戻ります」
 ディテウスの保護者のように二人揃って宗八そうはちに頭を下げ、宣言通りに室内の調査へ静かに戻った。

「……ここは二人に任せる。クーは資料調査に戻ってくれ」
 宗八そうはちとしては弟子の戯言如きで怒るようなことではないと考えていた。
 しかし、アネスのやや過剰反応から盟主の仮面を外せなくなってしまった為、環状通路の先にあったもう一つの部屋を調べる体で逃げる選択を選んだ。
「「了解」」
『かしこまりました』
 踵を返す宗八そうはちの後を指示をされずとも静々と付いて来るサーニャを連れて通路を通り、もう一つの部屋へ逃げ込んだ。

 だが、ひと際頑丈な造りの扉を開き足を踏み入れた二人は絶句する。

「祭壇……か?」
 教会を彷彿させる椅子の配置。
「そう……見えますね」
 部屋の奥には何かを祭るような台座。

 無宗教代表の日本人であろうと、教会の配置は常識的に理解している。
 この世界でも神に祈る場合は、ほぼ変わらぬ配置なのでサーニャも驚きを隠せなかった。
 二人の視線の先には———”黒い結晶体”が浮かんでいる。
 まるでオベリスクを彷彿とさせる黒い結晶体の存在は、八百年前から破滅ヴィネアの介入を想像させるには十分な代物だった。

 宗八そうはちと同時に無精アニマの身の毛がよだった。
 八百年前。当時は世界を管理する代理神の立場であったとはいえ、だ。
 よもや、破滅ヴィネアに目を付けられていた可能性に、無精アニマは己が身を恥じる。

 細かく人の世を確認していれば、当時の情報を宗八そうはちに伝える事も出来ただろう。
 だが、あくまで管理をする神の立場を順守した無精アニマに破滅教団の情報は何もない。
 人が人の世を巡らせることに神は介入しないのだ。

『(お父さま、断言します。あれは同じ存在が造り出した代物です)』
 恥じた所で何か改善するわけでは無い。
 それを歯を食いしばりつつも理解する無精アニマは宗八そうはちへ共有する。

「あぁ……。だが、お前の予感が当たった事で俺が間に合ったんだ。絶望するには早いだろ?」
 当時の無精神アニマの判断で、分御霊わけみたまが世界を越え宗八そうはちを産み出したのだ。
 巡り巡って最終的にこの世界を護れるならば、今更破滅教団の動きを把握できなかったことなど些末な事だ。

 傍から見れば宗八そうはちは独り言を口にしている。
 しかし、眺めるサーニャは理解し。黙って見守った。

「———何がどう作用したから今の状況なんて関係無いんだよ。俺が居て世界を護る準備が進んでいる。今のお前は俺の娘なんだから、お父さんに甘えれば良いんだよ」

 父の言葉に無精アニマは涙を溢す。
 当時の力を手放し、今や幼い身の上だ。一人では何も成せない。
 しかし、頼りになる父親の存在がアニマの心にぬくもりを与えるのであった。
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