特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第01章 -王都アスペラルダ城下町編-

†第1章† -09話-[レイド戦 VSキュクロプスⅡ]

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 シャーーーーーーーー!
 地面の未だに凍っている部分を通ってセリア先生と合流を目指している。
 俺?もちろん滑って転んでしまうからアルシェに背中を押してもらってます。
 アルシェのアイシクルチャージすんごい!
 遠回りをした分時間は掛かったが無事にセリア先生と合流できた。

「二人とも無事ですのっ!?」
「こっちは大丈夫!戦況は?何人やられましたっ?」
「前衛は2人直撃しましたわ。
 息はありますが戦線復帰は絶望的ですわね。
 浮遊精霊の鎧を抜けてダメージが入ってしまって、
 両腕がぐちゃぐちゃになってしまいましたわ」
「残りは2人ですか?よく戦線が持ってますね。
 逃げ出したとしても俺は責める事はできないくらい状況は絶望的ですよ?」
「盾を捨てて回避に専念してますわ。
 後衛もアインスの指示でヘイトを溜めない様に回復だけをさせてますわね。
 時間を稼いでくれているうちにやる事を決めましょう」
「さすがはギルドマスターですね。では、私たちの役割は」
「あれの対処ですわ」

 あの棍棒が出てから状況が一変している。
 レベルを上げて物理で殴るをお互いが繰り出し続けているようなもんだ。
 無理をした攻撃が成功して、
 勝てる可能性が見えたと思ったらあちらが奥の手を出してきた。
 次で決めないともう戦線の維持ができない。
 あとは全滅を待つだけになる。

『・・・ますたー、土ひろったぁ!』
「は?土?バッチイから捨てなさい」
『はぁい』

 俺達の後を追って飛んでいたはずのアクアが、
 フラフラしながら頭に乗ってきたかと思えば土を拾ったと報告してきた。
 コラコラ、俺の頭に土を捨てるんじゃありません!

「お待ちなさい!アクアが掴んでいるそれは・・・、
 土属性の浮遊精霊ではないかしら?」
『ん~?あのデカイのの~、あしもとにころがってたよぉ~』
「この辺りで土属性の浮遊精霊は珍しいですから、おそらく」
「キュクロプスから出てきたということでしょうか?」
「考える時間が惜しい、無理をすることになるけど本人に聞こう。
 アクア魔力貰うぞ」
『え~、やだぁ~』

 ぐずるアクアを無視してスライムの核をインベントリから取り出す。
 アクア用に3つ持ち込んでいたから、これが最後の1つとなる。
 出来ればアクアに残しておきたいが、
 現状打破に繋がる情報を持っている可能性がある浮遊精霊に使うことにする。
 詠唱は・・・それっぽいこと言わないとなぁ。

「≪その鉱石は名も無き石、砂としての生を終えて尚世界を巡らん、創主そうしゅの声を寄る辺に、いま我が元に来よ、聖壁せいへきを為せ!精霊加階!呼よ!ノイティミル=グランツァー!≫」

 俺だけでは魔力が足りないのでアクアからも魔力をもらう。
 契約してないからこいつを加階させる消費魔力半端ないな。
 これで役に立たなかったら許さない、絶対にだ!
 周囲の砂塵が核に集まり始め球体を精製する。
 少しすると身体を作り終えたのか球体は砂となり崩れていく。
 そういえば、アクアも初めてのときは少し時間が掛かってたな。

『ボクを開放してくださり、ありがとです』
「『とかげだぁ!』」

 アクアとアルシェが声を揃えて嬉しそうな声を上げる。
 そう、土属性の浮遊精霊は無事に加階を果たして砂で出来たトカゲになっていた。
 なんだ?俺はトカゲの騎士になって姫と一緒に星を砕けばいいのか?
 この場合の姫ってアルシェかな?
 じゃあこの娘は拳で星が割れるようになるのか・・。
 でも、氷を出せるんだから[勇者の剣(クサカベ)]とか教えようかな。
 魔力が底を尽きかけている。
 意識が薄くなっていくのを感じつつ、
 朦朧とした頭はトカゲ繋がりで好きだった漫画を思い出してしまっていた。
 アクアはさり気なくセリア先生にくっついて魔力供給してもらっている。
 俺にも供給してください。

 アインスさんからMPポーションを恵んでもらい頭がすっきりしたところで、
 事情聴取をしている2人と1匹のもとへ向かう。
 アクア?アルシェの肩で寝てるよ。

「どうですか?何かわかりましたか?」
「お兄さん、もう大丈夫なんですか?」
「ポーション貰えたからね。頭は回るようになったよ」
「いま、話を聞き終えたところですわ。
 簡単に言えば、
 あの核にはノイの他にあと4体の浮遊精霊が閉じ込められてますわ」
「閉じ込められてる?
 じゃあ正確には精霊加階せいれいかかいではない別物で、
 無理やり戦わされてるって事ですか?」
「そういう事ですわ」
「ひどい話ですね・・・」
「5体は役割があり、ノイは左腕と修復の一部を担っていたようですわね。
 欠けた珠からこの子が零れ落ちた為に、
 キュクロプスは左腕を失い修復力も落ちたのですわね」
「チッ。制御できない決戦兵器の使い方まんまだな。
 開放はやっぱり核の破壊しかないか?」
『はい、あの珠に閉じ込められて力はどんどん吸い取られているです。
 破壊してみんなを救うしか止める方法はありませんです』
「でも、あれを掻い潜って核を破壊するのは至難の業ですわ」

 セリア先生の視線を追うと、超ど級の棍棒を振り回すキュクロプスが目に入る。
 そろそろポルトー達も体力の限界だろう、いずれ捕まってしまう。
 悩んでいる暇がないなぁ全く・・・。
 まず、城の図書館で得た知識では土属性の適正は防御と創作クリエイトのはずだが、
 そこのところは精霊本人の資質にも影響があるだろうし、
 確認をした方が良さそうだな。

「ノイ=クレザント卿。聞きたいことがある」
『ボクの名前はノイティミル=グランツァーではなかったのです?』
「つい呼んでしまっただけだ、気にしないでくれ。
 ノイ、お前さんが担当していたのは左腕と修復と言ったな。
 他の奴の担当はどうなっている?
 そうだなぁ、わかりやすく1体3ポイント持っていることにして説明してくれ」
『ボクは左腕に1P、修復に2Pでした。
 あとは右腕に1体3P、左右の足に1体ずつ同じく3P。
 残り1体が修復と各部にフォローを入れていますです』
「ありがとう。次にお前はどんな魔法を使う?」
『ガントレットの武装精製と[シールドエンチャント]、
 あとはガントレットの修復です』
「ガントレットにエンチャントして耐久を上げることは可能か?」
『はいです。防御は最大の攻撃がもっとうの土属性精霊です!』

 で、あれば打ち合うことも出来るってことかな?あれと?流石に期待し過ぎだ。
 こっちは加階しているとはいえ1体であちらは浮遊精霊とはいえ4体いるし、
 珠に魔力が充填されているから対抗できる可能性は低く見積もっておこう。

「わかりました。
 あれは俺とノイで何とかしますから、
 アルシェの氷の矢とアクアのエンチャント、
 それからセリア先生の弓術で核を破壊してください」
『え?ボクです?』
「仲間助けたくないならいいぞ。
 でも、俺はあそこで頑張って時間を稼いでる男を失いたくないんだわ。
 お前はどうなんだ?」
『・・・・』
『あくあ、いなくていいの?』
「うん、二人を助けてあげてちょうだい。
 いざとなれば合図は送るから頼むぞ」
『よろこんで~』
「策がお有りなんですの?無謀と無茶は許されませんわよ。
 キュクロプスを倒せるかは私達に掛かっているのですからね」
「お兄さん・・・」
「大丈夫ですと胸を張れればいいんですが、
 土属性自慢の防御力と創造性でなんとか隙を作りますよ。
 どちらにしろ俺達だけでは必要な隙も攻撃力も用意できないんですがね。
 どうだ?腹は決まったか?」
『はい、ボクもあの中の苦しみは知っていますから・・・助けたいです!』
「よしキタ!じゃあ早速試しに行こうかっ!!」
「お兄さんっ!」
「駄目だよ。アルシェの精製する矢は勝つ為に必要な威力があるんだから、
 ここでセリア先生の手助けして」
「・・・・わかりました。
 絶対無事で帰って来て下さいね・・・、
 約束を破ったら許しませんからっ!」

 俺だって死にたいわけじゃないさ。問題はいまが死地であること。
 逃げることが許されるのであれば早急にアルシェたちを連れて逃げ出してるっての!
 あぁ嫌だ嫌だ、安全マージンはしっかりと取っていたはずなのに、
 なんでこんな強敵が現れるんだろうね!
 勇者と戦ってろよ!

 イメージ通りに出来たとしてもおそらく1撃1撃がすてみダメージになるんだろうなぁ。
 精神力も体力も削られるとか俺死んじゃうよ。
 まぁ、せめて死ぬなら兄として妹くらいは守らないとな。ハハハ。

「ノイ、準備はいいか?」
『はいです』
「無駄遣いできる魔力はお互いないし、魔法の制御はお前任せ。
 俺はイメージと戦闘に集中する。
 しっかりと俺のしたい事を理解するには俺とお前との間にパスが必要になる。
 だから仮契約をさせてほしいんだが・・・いいかな?」
『わかりました、仮のマスター。よろしくです』
「・・・≪異世界人足る我が乞う、力足りぬ我に彼の勇者と一時の契を許し給え・・・≫」

 俺とノイの中心から黄色に輝く光の柱昇り、
 詠唱が進むにつれて柱は太くなり俺達を包み込む。

「≪その身その体は彼のために・・・≫」
『≪その身その体は彼のために・・・≫』

 柱は徐々に形を変えて蕾の形に整っていく。

「『《共に歩まん!精霊契約!》』」

 今ここに黄色い花が咲き乱れた。


 * * * * *
「≪創主(そうしゅ)代演(だいえん)!彼方を守る右手に盾を、此方を守る左手に盾を!グランドウェポン!!≫」
『≪シフト:ガントレット!≫』

 俺と首周りに鎮座したノイが詠唱を行う。
 俺の周囲から砂が集まり渦を巻き両手へと収束していく。
 やがて包まれる感触を覚える頃には篭手が姿を現した。
 それは肘までを覆う大型の小手で、
 防御に適性を持つ土精霊が精製しただけあって相対者に接する指の付け根から、
 第2間接の基節きせつは特に頑丈な造りをしている。
 この創製魔法は俺お得意の魔法エンチャントではなく、
 アルシェやキュクロプスが行ったのと同じ武器を精製する魔法。
 制御もすべてノイ任せなので、
 短期決戦に持ち込まないとお互い魔力が尽きるし俺も死ぬしみんなも死ぬ。
 さぁ、ここが踏ん張りどころだ!!突喊とっかん

「ポルトー!ご苦労さん、交代だ!」
「やっとかぁ、遅いぞぉ!おーい、下がるぞぉ!!」
「まだやれるけどぉ?」
「十分な時間を稼いでくれたんだ、もうお前達は俺たちにとっての救世主なんだ。
 あとは、俺にも名乗るチャンスをくれないか?」
「はっ!仕方ないな、じゃあ下がって休ませてもらうわ・・・」

 俺とすれ違いながら後衛のいる位置まで下がっていく英雄は、
 みんなの元まで辿り着く。

 ドシャッ!

 二人が気を失い崩れ落ちる音が聞こえた。
 ここまで、御膳立てされてやられましたじゃ、格好が付かないだろっ!
 気合が改めて入った俺にキュクロプスは空気を読まず棍棒を振り抜いてくる。

 腰溜めからの右拳を棍棒に合わせると同時に独特な息を吐きながら右足を大きく踏み出す。
 いわゆる、中国武術の発勁はっけい寸勁すんけいと呼ばれる技術で、
 昔齧った程度の技前だけど使わないよりは使った方が威力が上がる。

「フッ!!!」

 ガンッッッ!!!!
 あぁこりゃ、無理だな。
 これが邪魔になって、俺の攻撃も後ろの攻撃も届く前に叩き潰されてしまう。
 それだけのポテンシャルがまだまだキュクロプスにはある。
 棍棒を受けた右拳は指の部分が大きく削れて無くなり、
 甲にはヒビまで入っている。
 俺自身も浮き上がりはしなかったが大きく吹き飛ばされる。

 後ろを振り返りアイコンタクトを交わす。

(棍棒を破壊しないと、核への攻撃は出来そうにない)
(かしこまりましたわ。まずは武器を破壊ですわね)

 正面を向く頃には右拳の修復は完了していた。
 流石は修復担当だな。
 後ろから緊張が伝わってくる。
 さぁ、チャンスを作ろうかっ!こいつを倒して大団円を迎えよう!

 いままで遠距離でしか姿を確認していなかったため、
 先ほどのポルトー達と同じく回避しながら動きを探っていく。
 今のところ行うパターンは1つは縦振り下ろし。
 これは棍棒を縦に振ればK点クリティカルポイントに当たる位置取りをしていると一番確立が高いパターン。

 回避は横に転がればいいんだけど、
 叩きつけから起こる揺れと爆風で体制を崩されることが多々ある。
 2つ目は横振りをしてくるパターンだが、
 これはとりあえず当たれば良いやって感じの動きなので大きくバックステップか、
 左足に転がれば当たらない。
 3つ目がキュクロプスダンスなんだけど、
 俺と1対1になってからは棍棒を持って振り回すには狭いのか1度もして来ない。
 複数相手でないと出さないのかもしれない。
 十数回の回避をしている間に棍棒を破壊する、
 もしくは無力化する方法を考えたが2つ程しか思いつかない俺の馬鹿さ加減に呆れてしまう。

「ノイ!次はエンチャントで一回打ち込んでみるぞ!!」
『また吹き飛ばされるのがオチですよっ!?』
「試せるうちに試すんだよ!左で頼む!」
『くっ!≪ストーンバレット!≫セット:ガントレット!』

 黄色い奔流が左手を包み込む大型のガントレットに収束し始める。
 その間の攻撃は回避して対応する。
 立ち位置はキュクロプスの左腕前方、つまり攻撃は。

「横振り!」

 一撃必殺の棍棒の一番太い部分が俺に向かって迫ってくるのを見つめながら腰を溜める。
 これで光明が見えれば幸い、
 見えなければ考え付いた方法で棍棒をどうにかしないといけなくなる。今度は左足を大きく踏み込む。

「《土竜一槌どりゅういっついっ!!!」

 ギィィガガガガガガゴォォォォォォォォンン!!!!!!

 拳を振り抜き棍棒と正面からブチ当てる。
 さすがに壊せはしなかったし、
 ガントレットもノイの付与した防御を抜けて、
 さきほどの右拳と同じく正面部分は砕けて酷い有様になってしまったが、
 甲までは届いていない。
 地面を削りながらかなり吹き飛ばされて、
 距離が開いてしまっている。

 目線を上げてキュクロプスを確認するが特に変わった様子は見られない。
 核を守る岩の外殻も皮一枚・・・いや、
 岩盤一枚修復したところで止まっているようだ。
 前線が上げられる前に急いでキュクロプスの右腕前へと戻ってくると、
 すぐさま縦に振り下ろしてくる。
 よっし!誘導できてるな!

 だが。

 それは先ほどまで振っていた速度と違い、目に見えて早い振り降ろしであった。
 俺もノイも正面から迫る脅威に咄嗟の対処が出来ず棒立ちになってしまう。

 あ・・・これ死ん・・

「っ!≪アイスランス!≫シフト:フルスタム!」
 ズガァァァァァァァァァァァァァンン!!!!!!

 目前に棍棒が迫るのを瞳に収めながら死を覚悟した瞬間、
 横から勢い良く生えてきた氷の壁のような物に突き飛ばされた。
 直後に真横で氷を砕き地面を強打する音を聞き届け、
 打ちつけにより発生した爆風に巻き込まれて砕けた破片と共に地面を転がる。
 どうやら、切っ先を面にするアルシェの改変魔法に突かれて攻撃範囲外へと避けられたようだ。

(っ!いまのは本当にまずかった・・・・!?)

「ノイ、何が起こったかわかるか!?」
『たぶん、フォロー役の1体が修復に回していた分を右腕に集中したです!』
「3Pだった右腕が6Pになって制御が良くなったってことか・・・」

 速度に慣れてきた途端に対応してくる。
 本当に嫌になるほど強いなこいつ。

「でも、やる事は決まってるんだなぁ。
 さっき殴った棍棒には対した効果はなかった、
 つまり太すぎて武器にダメージが入らない。
 武器破壊をするならば狙う場所はひとつ・・・柄だな」
『あの巨大な棍棒の柄ですから、
 何度も懐に入って攻撃を加えないと折れないです。
 ボクの魔力もマスターの魔力もそんなに持たないです!』
「そこで2つ目の方法だ。小指を狙う」
『小指です?それはなんでです?』
「武士曰く、武器を持つ際に一番大事なのは小指であるらしい。
 指を差し出せと言われた場合他の指を切らせると聞いたことがある」
『武士とか、指を差し出す状況とか意味がわからないですけど、
 小指を折れば今の戦況を打破出来るんですね?』
「あぁ、握りが甘くなるとか何とか。
 聞きかじりでスマンが、柄よりさらに細い小指なら1発でいいだろう?
 試す価値はあると思わないか?」
『理解したです!』

 補正が掛かった速度に慣れるため、
 同じように行動を観察するが攻撃速度と精度が上がっており、
 ギリギリに避けないと追尾してくることがわかったのと、
 揺れと爆風は確実に受けなければならない状況という事が判明した。

「足担当が腕に回ることはあり得るか?」
『絶対に無いです!あの膂力は両足が万全だからこその物です。
 1Pでも腕に回した途端に足が耐えられずに砕けるです!』
「じゃあ、あの爆風はどうにかできるか?」
『岩で壁を作れば防ぐことは出来るです、
 でも次の攻撃に遅れるです』

 俺達だけでは対応が困難らしい。
 セリア先生は風属性の精霊だから風除けの魔法とか持ってないかな?

(「アクア!セリア先生に風を防ぐ魔法があるか確認してくれ」)
(『あいあい~』)

 正式な契約をしているアクアとなら精神リンクも確立されているため、
 離れていても会話が出来る。
 これで風対策が取れれば勝てる。

(『ないって~』)

 勝てる算段は脆くも崩れ去った。

(『たいせいがくずれないように、けいげんならできるって~』)
(「それそれ!それでいいよ!キュクロプスが縦振りした時に、
 やつの手元に飛び込むからサポートお願いしますって伝えて!」)
(『よろこんで~』)

『算段がついたです?』
「あぁ、なんとかなりそうだ。
 次に縦振りが来たら手元に飛び込むぞ!」
『了解です!』
「UGAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 誘導に誘われず数度の横振りを挟み、
 ようやく期待の縦振りを放ってきた。

「GUUUUUUUUUッ!!!!」

 振り始めから前進して軌道修正が出来ないラインを超えたのを確認してから、
 手元に全力で文字通り飛び込む。
 間を置かず地面を強打する音がまた耳に届き、
 次に爆風が起こる。

「≪エアーソニック!≫」

 風魔法[エアースラッシュ]を纏った矢が俺と棍棒の間を通り抜け、
 土埃と爆風を巻き込んでキュクロプスの背後へと消えていった。
 俺の態勢は崩れておらず中空にて仰向けになる。

「≪アイスブロック!≫」

 小指のすぐ下に到着した瞬間にタイミング良くアルシェからの魔法支援が入り、
 氷が背中を支えてくれる。
 本来は中空状態から穿つつもりであったが、
 上向きに寝転んだこの状態なら威力の減衰も少ないだろう。

「≪ストーンバレット!≫セット:ガントレット!」

 再び黄色い魔法の奔流がガントレットへと吸い込めれていく。

土竜一槌どりゅういっついっ!!!」
 バッキィィィ!!!!!!!

 俺の目の前でキュクロプスの小指が折れる。
 思ったよりも簡単に折れたことに感慨を受ける暇も無く、
 次は外殻を剥がすために動き出す。
 足元へ体を引き寄せてからアルシェの氷を蹴りつけ、
 キュクロプスの正面へと移動する。

 キュクロプスは握りに違和感を覚えたのかまだ棍棒を振り上げない、
 ならば今のうちに破壊してしまおう。
 インベントリから[イグニスソード]を取り出し、
 自分の魔力から攻撃を放つ。

「≪ヴァーンレイド!≫セット:イグニスソード!」

 赤かった剣は魔法を吸い取ってさらに鮮やかな色へと変化する。

火竜一閃かりゅういっせんっ!!!」

 核を守る外殻は熱せられて赤く染まる。
 いまはアクアが居ないから水属性の[氷竜一閃ひょうりゅういっせん]は撃てないが・・・。

「アクア!許可くれ!」
『(きょかでたよ!≪はくしゅっ!≫)』(*゜▽゜ノノ゛☆パンッ!

 ガントレットに水の魔力付与が発生する。

「いくぞっ!」
『はいですっ!≪ストーンランス≫シフト:フルスタム!』

 いつの間に改変を出来るようになったのか知らないが、
 足元から発生した石に押し上げられ、胸元へと勢い良く迫る。

「オラァァァァァァァァァァァァァァ!!!!」

 俺の魔力はもうないし、ノイの魔力はあと2発分程度だろう。
 この後の事も考えるとこのトライに全てをかけるわけにもいかないし、
 ガントレットにはアクアの付与がされている。
 だから、ただただ殴る。
 重力に従って落ちる前に殴れるだけ殴る。

『核の露出確認したです!』

 核付近に攻撃が届かなくなったのでキュクロプスの体を蹴り距離を開けると、
 すぐさま状況をノイが報告してくる。

「セリア先生!!」
「まだですわっ!回避しなさいっ!!」

 まだ?小指が折れたキュクロプスが棍棒を振り上げた様子はなかったはずだ。
 では何を回避するのだろうか?
 目の前に居る岩の巨人は棍棒を持った右腕を後ろへ引き絞っている。

 この動きはつまり・・・突き!

『≪ストーンランス!≫セット:ガントレット!』

 最後の一撃とばかりに初めてみせる突き攻撃を放つ瞬間、
 ノイが反応して[ストーンバレット]ではなく[ストーンランス]をエンチャントしてくれる。
 威力がわからない以上先ほどよりも上位の魔法を用意するあたり良い判断だと思う。
 だが、これでもうエンチャントする魔力は残っていないはず。
 正真正銘の最後の攻撃だ!

土竜一槌どりゅういっついっ!!!」

 激突する突きと突きの衝撃は凄まじく、踏み込んだ足元は地面が割れ、
 砂や風だけでなく大きめの岩まで動くほどの振動が闘技場内に響き渡る。
 そんな中、さらに言葉を続ける。

虎砲こほう!!!」

 ノイが授けてくれた魔法のエネルギーを、
 パイルバンカーの容量で爆発させて棍棒に追加衝撃を叩き込む!
 バッガァァァァン!!!!!!!

 打ち込んだ瞬間腕が振りきれた。棍棒が消えたのだ。
 衝撃は俺にも少なくないダメージを与えている。
 死に体で確認すると握りが甘くなった棍棒はキュクロプスの手を離れて後方に転がっている。今度こそ、棍棒を無効化したのだ!

「あとは任せてくださいな!
 ここまでの絶好のチャンスを逃すものですかっ!」
『≪ほわいとふりーず≫せっと:こおりのや』
「≪エレメンタルジャベリン!≫シフト:ピラミッド!」

 アクアが事前に用意していた氷の矢にエンチャントを施し、
 アルシェがオプションとして矢の周囲に槍を配置する。
 弓を構え氷の矢を番えたセリア先生は、
 これから大砲撃を行うといわれても信じてしまいそうなほど凶悪な様相を持って必殺の一撃を射ち放つ。

「アイスアロー≪ソニック!≫」

 ピュッ!!バギィィィィィィィィン!!!!
 その威力は凄まじく、核の中心をしっかりと捕らえ、
 篭った攻撃力は惜しみなく珠へと叩き込まれた。
 その矢は珠を破壊してそのままキュクロプスの背中を抜けていき、
 壁に当たる前にキラキラと光る残滓を残しながら消えていった。

 キュクロプスの体がドッと砂へと戻ると砂煙となり視界が塞がれる。
 戦場にいる皆が皆、倒した!やったんだ!
 と喜びたいのを我慢して状況を見守る。
 今までのどんでん返しを警戒している。
 レイドエリアも開放されていないことも倒せたと確証するのに歯止めをかけていた。

「「「「「「「《エアースラッシュ!》」」」」」」」

 確認の為に魔法が使える後衛が全員で広範囲に広がっている砂煙を吹き飛ばす。

「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」

 全員が固唾を呑んで見守る。
 これ以上の戦闘は誰が見ても不可能な状況。
 ようやく魔法が砂煙全域に届き、全容を俺達の目の前に曝け出す。

 キュクロプスは・・・・いなかった。
 砂になり、そのまま復活はしなかったようだ。

「・・・・・っ!!!!」
「「「「「「「「「おっしゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!!!!!!!!!!!」」」」」」」」」

 歓声が闘技場を包み込む。

「お兄さんっ!」

 背中に衝撃を感じ、俺の名前を心配そうに呼ぶアルシェが視界に入る。
 なんだかずいぶんと久し振りに会えた気がして嬉しさから抱き締めてしまう。

「おおおお、おおお兄さんっ!?!?///」

 しばらく抱きしめていたら、セリア先生が駆け寄ってきた。

「アルシェ様一人で先行なさらないでくださいな。
 滑って行くのは反則ですわ」

 先生の声を聞いてやっと意識が現実に戻ってくる。
 念のためやらないといけない事がある。

「セリア先生、アクアとノイを連れて浮遊精霊の保護をお願いしてもいいですか?」
「わかりましたわ。そちらは私達でやりますから、
 水無月みなづき君はアルシェ様と後ろへ戻って休んでいてくださいな。
 本当にお疲れ様でしたわ」
「すいません、お言葉に甘えさせていただきます。
 アクア、ノイも頼むな」
『かしこまり~』
『はいです!』

 俺はアルシェに支えてもらいながら後方の陣に辿り着くと同時に、
 英雄達と同じく崩れ落ちた。
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 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

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