特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第03章 -港町アクアポッツォ編-

†第3章† -11話-[ブルーウィスプⅠ]

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 それは確かに荘厳でこの世の物とは思えぬ幻想的な光景だった。
 水中から青いライトアップがされたものとは違い、
 そのブルーウィスプと呼ばれる現象は世界が起こした奇跡そのものだった。

 水の中には風もないし、その火は実体がない。
 にもかかわらず水中からは、淡い、そして青い光が光り輝き、
 水面を照らし出している。

「これがブルーウィスプ・・・」
「いつか見てみたいと思いながら、
 どれほど綺麗な光景なのかと幾度も想像していましたが、
 どの想像よりも・・・綺麗ですね」
「近くで見ると違う物みたいですね・・・」
「・・・・」
『おぉ~!!』
『・・・・』

 俺は絶句し、アルシェは今までの望郷を反芻しつつ感動を表し、
 マリエルも同じように遠目で見た景色との違いを反芻し、
 メリーとクーは似たもの同士で静かに感動をしている。
 アクアが一番大きな声で綺麗だ何だと素直に言葉に出来ている分、
 ライラス君と感想を言い合っている。

 ブルーウィスプに魅入られてから10分は制止しており、
 その間にメイドさんが温め直した屋台料理を皿に盛り付けて、
 俺たちが座るテーブルへと並べてくれた。

「マスターさんはお酒飲みますか?」
「あ、あぁ。頂こうかな。
 果実酒とかあれば嬉しいんだが」
「今はアンジュ酒とオランジ酒の2つがございます」
「じゃあ、アンジュをロックでお願いします」
「かしこまりました」
「他の方はどうされますか?」

 こちらの世界に来てお酒を飲むのは初めてだな。
 まぁ、あまり飲まないしワインとか1杯飲むだけで2日酔いするから、
 もっぱら梅酒とか果実酒を飲んでいた。
 あれなら11杯くらい飲んでも意識を保って歩けるし、
 何より2日酔いにならないから、
 ワインだけが超絶的に俺と合わないだけだと思う。

「冷たいお茶をお願いします」
「同じ物をお願いします」
『みず~!』
『水をお願いします』
「僕もお茶をお願いしますね」
「私も運ぶのを手伝います」
「かしこまりました。
 ではメリー様、こちらへ」

 子供らしく何かのジュースを頼むかと思いきや、
 意外にお茶と水のセレクトをした。
 メリーが戻るまで待つのは皆も同意見だったので、
 またしばらくはブルーウィスプに目を向ける。
 今日はゆっくりと眺めて、
 明日の夜にでもこっそりアクアと近づいて、
 どんな現象か調査してみようかな。

「お待たせいたしました」
「坊ちゃま、どうぞ」
「ありがとう。
 さぁ、食べましょうか!」
「品数が多いから、全部食べたいなら自分で調節しろよ」
『あい!いただきます!』
「はい!いただきます!」
『はい、お父さま。いただきます』
「姫様ぁ~、半分こにしませんかぁ~?」

 飲み物が行き届き、
 俺とメリーが買ってきた屋台料理と、
 飲み物と一緒に運ばれてきたサラダと小皿。
 これで晩餐の準備は整った!
 さぁて、平均200G程度の屋台料理ではなく、
 単品価格1000Gを超えたレインボウフィッシュサンドをまずは頂くとしよう!!

「頂きまーす!」

 パク・・・モグモグモグ。
 しゅ、しゅごい美味しい。
 このサンドは外のパンから中に挟んである野菜に至るまで、
 レイボウフィッシュという魚の味を引き立たせる為に厳選されたのであろう!
 そこまで思える程に抜群の相性をしていた。
 試しにレインボウフィッシュの部分のみを食べてみたところ、
 味が複雑過ぎて、正直美味しいとは思えなかったが、
 再びサンドで食べると、
 やはり全くの別物のような旨味が口の中に広がる!
 さすがは1000G掛かるだけはある。

『これは1こたべていいの~?』
「お前らは体が小さいんだから、
 買ってきた珍しい物はクーと2人で半分にしな」
『あい』
『わかりました』
「計算してお腹に入らないと思ったら俺に言えよ」
『あい』
『じゃあ、お姉様。こちらをどうぞ』
『ありがとう、くー』

 酒も美味しいし最高の夜だな。
 アンジュ酒は俺の世界にある杏露酒(しんるちゅう)に名前が似ているだけあって、
 味もそれっぽいし俺の口に合う。
 たぶん女性も飲みやすいお酒なんだと思うんだよね。

「メリーは酒飲まないのか?」
「私はまだ成人しておりませんので」
「あぁそっか、まだ18歳だったなぁ」
「申し訳ございません」
「仕方ないさ。2年後も俺がいれば一緒に飲もう」
「はい、ご主人様」

 目の照準の定まりがゆっくりになった頃、
 改めて俺のテーブルに座るメンバーを見渡す。
 アルシェ、メリー、アクア、クー。
 このパーティメンバーの女率を早いところどうにかしたいと思う。
 アスペラルダ国領内で仲間に入ったことのある男は、
 王都にいるポルトーのみだし、
 出会った精霊もほとんど女性で、
 男性・・・というか爺さんはアルカトラズ様とヴォジャ様の2人。
 男運がないのか、この異世界も女性比率が高いのか・・・。
 一応、各国に俺たち以外の冒険者兼調査員を派遣したいから、
 頼りになる男性冒険者と知り合っておきたいんだけど、
 残念ながらダンジョンがない町に冒険者はほとんどいないんだよなぁ!

「お兄さん。なんだか複雑な顔をしてますけど、大丈夫ですか?」
「女に囲まれているのにそんな顔しないでほしいですね、水無月さん」
「ははは、マスターさんはモテモテですね」
「流石はご主人様です」
『モグモグ・・・なの~』
『お姉さま、怒られますよ』
「アクア、お行儀悪いから飲み込んでから喋れ。
 いやぁ、男のメンバーがほしいと思ってさ。
 候補がいないかなぁってね」
「戦える冒険者になかなか会えませんからね。
 どうしてもと言うなら騎士団から派遣しましょうか?」
「いやいや、そこまでじゃないけど。
 俺たちがアスペラルダを離れた後でも、
 引き続き異変調査をしてくれる人材がほしいと思っただけだ」
「それは王都に戻ってから議題に挙げるべきかと」
「・・・だな。
 よっし!アンジュ酒おかわり!」

 こうして、アクアポッツォ4日目。
 ブルーウィスプ1日目の夜は終わりを告げた。


 * * * * *
「今日から4日後の朝に町を出ようと思う」
「えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
「そうですね、1週間滞在する計算ですし良いかと」
「最終日に食料を買っておきます」

 滞在予定を仲間に伝えると、
 一番に反応したマリエル以外の人間2人は納得してくれた。
 彼女の説得は、まぁ必要ないだろう。
 邪魔をするつもりはなく、ただただアルシェとの別れがさみしいだけだし。

 さて、今日からの俺の予定は、
 午前中は準備運動とメリー+クーの戦闘会議。
 午後からアクアと夜まで遊ぶ予定になっているが、
 アクアポッツォにもお試しで移動してみるつもり。
 水脈移動は便利だが、別の精霊が支配済みの場所へ出る時は、
 その精霊に知らせが行き、どこの誰か?と聞かれる。
 今回は話を通しているので、アクアです!
 と答えれば、スィーネのいる水源に移動が出来る。
 これも水脈自体が繋がっていたから出来ることだ!
 で、夜はアクアを連れてブルーウィスプ調査。

 そして、明後日の予定は、
 午前中に準備運動とアルシェとの模擬戦。
 午後からアルシェと出かけて、
 夜はのんびり過ごす。

 7日目の予定は、
 午前中のうちに皆で王都へ水脈移動。
 スィーネの移動時間から計算して、ポルタまでが。
 60x24=1440分
 1440x9日(速度アップ抜き)=12960分
 12960÷5(おおよそ5分の1)=2592分
 2592÷60(時間に戻す)=43.2時間
 そうだな、2日ぶっ続けで移動してポルタフォールだから、
 その倍の4日あれば王都に辿り着くかな。

「あれ、計算あってるよな?
 ここから片道で4日?ってかその前に、
 お試しの時点で2日必要なんだが・・・あれ?」

 そして8日目は休日にあてて、
 十分な休息を取ってから町を出る。

「お兄さん、途中の混乱を無視しないでください」
「2日続けての移動は流石にアクア様への負担が大きすぎるのでは?」
「その計算なら今日から往復で4日使ってポルタフォールから帰ってくる。
 その次の日にアルシェ様とデートをして、
 さらに次の日に往復8日使って王都へ。
 合計は12日使う事になりますね、水無月さん」
「ぐおおおおおお!!!」

 完全に移動する期間を計算するのを忘れていた・・・。
 あああああああああ・・・・どうしよう・・・。
 旅も進めたいけど、国を出る前に挨拶と報告は済ませたい。
 しかし、お試しだけでも片道2日で王都なんて片道4日・・・、
 そんなの絶対アクアには無理だろぉ。
 なんて言っても初めての水脈移動だし、
 でもでもノイも早めに迎えに行きたいし・・・!

「スィーネさんとヴォジャ様に相談してみましょうか」
「そうですね。ご主人様は思考停止してしまいましたし」
「頼りになるんだかならないんだかわっからないわねぇ」

 そして、俺の午前中に予定していた準備運動は飛ばされた。


 * * * * *
「そういうことですか」
〔そそ。だから水脈に潜って出先を指定するだけだから、
 その間にずっと集中する必要はないのよ。
 ただし、移動速度は水の流れ次第になるから、
 遅い日もあれば早い日もあるの〕
「わかりました。お兄さんに伝えてみます」
〔あとさ、忘れてるみたいだから改めて教えておくけど、
 アクアポッツォのギルドで登録しておけば帰りは一瞬だからね〕
「あっ!エクソダスの裏技ですね!
 わかりました、そっちも後で伝えておきます」
〔はいはーい、じゃあね〕

 スィーネさんから良い情報は手に入りましたけど、
 お試しは期間的にしなくてもいいですかね?
 問題のひとつであったアクアちゃんの集中力の問題は解決しましたけど、
 もうひとつの掛かる時間をお兄さんはどうにかしたいみたいです。
 あとはヴォジャ様に伺ってみないと解決できるかわからないですね。

「私は午前中のうちにヴォジャ様に会ってきますので、
 アクアちゃんを連れて行きますね」
「応、何しに行くか知らんがいってらっしゃい」

 お兄さんはあれから王都へ帰るのにすごい日数が掛かるという事実を、
 完全に忘れ去って現実逃避をしながら闇グループ会議を行っています。

『まりー、どうするの~?』
「い、行きます!姫様をひとりには出来ません!」
『あくあもいくんだってば~!』
「はいはい、仲良くね。じゃあ3人で行きましょうか」
「姫様、アクア様、マリエル様、いってらっしゃいませ」
『アルシェ様、お姉さま、マリエルさん、いってらっしゃいませ』
「『いってきまーす』」

 ネシンフラ島行きの専用港へ行くと、
 小屋にハライクさんがいた。
 タユタナさんは船の操舵訓練の為に仮荷物を乗せて往復しているらしい。

「こんにちわ、ハライクさん」
「マリエル嬢ちゃんに姫様?どうしたんですか?」
「ヴォジャ様に聞きたいことがありまして・・・。
 島に帰られていますか?」
「はい、姫様。村長の家に入り浸っていますよ」
「爺さん同士で話が弾むんでしょ」
「島へ渡りますか?護衛の方は?」
「今回の護衛はこちらの水精霊、アクアちゃんです。
 すぐ戻っては来ますが、渡しをおねがいします」
『よぉ~しく~』
「わかりました。マリエル嬢ちゃんもかい?」
「えぇ、お願いしますね」

 アクアちゃんの遊ぶ約束もありますから、
 午前中のうちに戻ってこないと行けませんね。
 でないと、明日のお出かけがパーになってしまう可能性もありますから。
 私だってお兄さんとのお出かけが楽しみなんですから!


 * * * * *
「魔法への魔力供給は影に触れていれば出来るのか?」
『パーティメンバーの影であれば、可能かと。
 でも、お父さまが言われているのは敵の影ですよね』
「うん、なら時間制限はあるか・・・。
 じゃあこんな感じの短剣を同時作成は出来るか?」
『厚みは出ないですけど、
 ご要望の効果は発揮できるかと・・・。
 ただ、今のクーだと、この小ささでは10秒も持たないですね』
「そこは一時的で大丈夫だから無理しない程度でいいよ」

 アルシェ達が出発した後も戦術会議は進んでおり、
 高速機動と敵の撹乱、
 それに加えてデカい一撃も出来るようにしたいと思っている。
 まぁ、お分かりかと思うが、
 アサシン方向でこのペアは育てていこうと思う。
 幸いなことにメリーは元からAGIを極振りしていたし、
 クーが使える闇魔法のデバフと時空魔法の組み合わせ次第で、
 理想の忍者が出来上がるんじゃないかな。

「メリーはどのくらいまで投げられるんだ?」
「ギルドカードは20mほどで勝手に帰還してきますが、
 投擲武器であれば60mは投げられます。
 ただし、遠くなればなるほど命中率は下がります。
 20mは100%、40mは70%、60mは40%です」

 流石に遠距離攻撃専用なだけあり、魔法と同じ程度の攻撃範囲だ。
 しかし、今まで俺たちもそこまでの遠距離攻撃をする機会などなかったので、
 撃ったところで俺もアルシェも当たらない可能性が高い。
 さらに、敵が動いていれば偏差射撃しないといけないわけだ。
 残念ながらFPSなどのゲームは興味がなく、
 経験は一切ない為、当然エリアルショットみたいな追加攻撃も出来ない。

 そう考えると現状のパーティだと、
 このペアの時間稼ぎスキルは有用だ。
 戦闘でダメージを受けない理想的な戦術は、
 一撃必殺なわけで、接近する時間を無傷で稼げる魔法や技を考案しないと。

「そうか・・・。影縫は必須だよな・・・、
 あとは短剣で近接戦闘する時にデバフ付与もしたい」
「近接も出来ますので問題ないかと」
「装備の特殊効果でAGI化け物だから状態異常との相性がヤバイんだよなぁ。
 絶対に敵として現れてほしくないタイプだわ・・」
*メリーはAGIダントツ1位に加えて、特殊効果は攻撃速度60%UP

 ゲームのBOSSとかに居そうな理不尽さを感じる・・・。

「攻撃力も期待すると実際の短剣にエンチャントが良いよな」
『ですね。クーの闇魔法で造った短剣に攻撃力は期待できませんから、
 攻撃に使う時はペアになるお父さまか、
 メリーさんのインベントリにある物を使うことになります』
「エンチャントしてから出すことか可能か?」
『創ればなんとか』
「パートナーのインベントリ範囲を広げられるか?」
『時空魔法を使った人工アーティファクトですから、
 それも可能ですが、大きすぎたりするのは先ほどと同じく・・』
「それも急ぎじゃない。
 メリーの体から1.5m程の範囲を正面向きに開ければOKだ」
「正面ですか?」
「インベントリから直接エンチャントした短剣を、
 敵に射出出来れば大勢を相手出来るかと思ってな」

 イメージとしてはゲートオブバビロンを用いた影縫だ。
 まぁ、インベントリに入れておける武器は8枠と数が少ないから、
 精々一回しか使うことはできないだろうけど、今は無視してしまおう。
「その時はシンクロして、
 射出方向と射出距離はメリーが決めて、
 エンチャントとインベントリからの射出はクーが行う」
「なるほど。時間を見つけて練習しておきます」
「自分の手で投げるのと違うし、
 あくまで2人揃っていないと出来ない芸当だからな、頼む」
「かしこまりました」
『お任せください、お父さま』

 いま出来そうなのはこんなものかな?
 クーと契約したことでメリーも戦闘に介入できるようになる為、
 手札を増やしておきたかった。
 これで俺とアルシェは中近距離戦闘が出来、
 メリーとクーがオールラウンドに動ける他、
 情報収集に撹乱など本当に何でもできるようになる。
 アクアは遠距離支援か俺と一緒に戦闘、
 もしくはアルシェと行動となり、
 このパーティで出来る最高の状態になったと言えるだろう。

「じゃあ先に俺とシンクロして基礎の魔法を創るから、
 その先は2人で調整してくれ」
「かしこまりました」
『はい!』


 * * * * *
「おはようございます」
「ただいまー」
『アクアーリィ!』

 ネシンフラ島へと渡り、
 現在は村長邸の入り口をくぐったところです。
 とはいえ、この時間は村民全員が仕事に出ているので、
 村にはお休みの方と村長さんくらいしかいませんが。
 マリエルはお父さんのカインズさんがいないからか、
 すごくリラックスして帰宅を果たしたみたいですね。

「では姫様、お爺ちゃんに声を掛けてきますね」
「お願いね」
『ある~、あそんできてもいい~?』
「そんなに長居しないのであまり遊べないですよ?」
『だいじょうぶ~、おわったらこえかけて~』
「わかりました、気をつけて行ってらっしゃい」
『あい~』

 マリエルは家の奥へと進み、
 アクアちゃんは家の外へ出て行きました。
 私は入り口から居間へ移動して、
 座ってマリエルの帰りを待ちます。
 お兄さん達の戦術会議はどうなっているんでしょうか・・・。
 少し聞いた内容は毒の牙を手に入れたから、
 クーちゃんに使うと言ってましたね。
 毒消しは用意しているんでしょうか?

「姫様、お爺ちゃんの部屋へ行きましょう。
 ヴォジャ様もいらしてましたよ」
「そうですか、すぐ行きます」

 予想通りにヴォジャ様は村長さんと一緒に居たようですね。
 ひとまず、予定通りにあちらへ戻れそうで一安心です。
 あとはヴォジャ様が解決案を持っていてくれることを願うばかり・・・。


 * * * * *
「こんなところだな」
『自分でも意外な程に時空魔法にも慣れてきてたんですね』
影倉庫シャドーインベントリもセーフティ・フィールドも時空は関係しているしな。
 毎日使っている魔法だったから経験が積めていたってことだな」
『毒とインベントリ範囲拡張、影縫(仮)までは出来ましたね』
「後は射出関係ですね。
 こちらは私とクーデルカ様で調整いたしますので」
「まぁ、俺が投擲使えないからな、時間は掛かっても良いから」
「シンクロを使えば感覚も同調するのでしたよね?」
「そそ。だから、クーが射出する際の調整はメリーが代行することが出来るんだ」

 影縫(仮)は魔法武器を影に指すことで動きを止めるのが狙いだったが、
 完成度はまだまだ低く、動きが遅くなる程度に収まっている。
 まぁ、これはこれで使える場面は出てくるだろうし、
 別の魔法として創成するのもありかもしれない。
 遅くするのが可能なら素早くする事も出来るかな?
 うーん、まぁ一気に創ってもどれも中途半端になりかねないし、
 今回はこの辺が頃合いだろう。
 というか、すでに十分キャパオーバーだし、
 上手く2人が調整してくれるのを願うばかりだ。

『(そろそろかえるよ~!)』
「(こっちも一段落ついたから、午後から遊べるぞ)」
『(わーい!すぐかえるね~!)』
『お姉さまですか?』
「あぁ、今から帰ってくるってさ。
 お前達はどうするんだ?」
「私たちはこちらに残って先ほどの続きをしようかと思います。
 アルシェ様もこちらの残る予定ですので」
「わかった。
 俺たちは水脈移動の試しはしないで、
 町にいるから何かあれば連絡してくれ」
『はい、お父さま』


 * * * * *
「え!?本当か!!」
「はい、ヴォジャ様が言うには、
 私たちが使う[ライド]があれば移動速度を上げられるそうです。
 ただし、流れに沿った速度ではない為、
 水脈の形に合わせて多少の操作が必要とのことです」
「どれくらい違いが出るんだ?」
「私達のライドを見てもらったんですけど、
 おそらく3倍の速さが出るのではと」

 3倍なら王都まで片道・・・14時間か?
 半日で行けるようになったのはすごいことだけど、
 多少の操作の部分が気になるんだが・・・。

「あぁ、多少の操作って言っても、水の膜全体にライド?
 を使用出来れば問題なく移動出来るって言われましたよ?」
「それはアクアとアルシェがシンクロすれば大丈夫だ」

 マリエルからの追加情報は正直朗報以外の何物でもない。
 しかし、流石に一気に14時間は無理だろうから、
 一旦スィーネの所に顔を出すことにはなるだろうけど、
 それでも1週間を7時間か・・・凄まじい効率だなフハハ!

「ちなみに帰りはエクソダスで帰って来られますからね」
「・・・・あ!!エクソダス!そっかそっか、忘れてたわぁー!」
「町に帰った際に寄られればよろしいかと」
「だな。はぁー!問題が解決して良かったぁ-!」
『お姉さま、楽しんできてくださいね』
『うん!くーもがんばってね~』

 多少旅の予定が伸びてしまうが、
 王都へ戻る行為は必要なことなので、
 数日の足止めは覚悟しておこう。
 対策会議に出席をお願いされた場合は、
 1週間出られない可能性すらあると考えている。
 まぁ・・・・、勝手な想像ですけどね。
 そんな国家規模の会議なんて出たことないですからね。

 今世紀最大の問題を解決した俺は、
 晴れやかに気持ちでアクアを連れて町へと繰り出すのであった。

『♪~♪~~~♪~』

 頭の上に乗っかるアクアの鼻歌を聴きながら想う。
 こんなご機嫌なアクアは久しぶりだ。
 精一杯ご希望に応えてあげないとな。


 * * * * *
 それからは、本当に遊ばされた。
 海辺に行っては猫っぽいけどどこか違う生き物と戯れ、
 町に行っては何の店かもわからないのに入店して冷やかし、
 何故かギルドへ寄った時にはしばらく長居して遊んでとせがまれ、
 ほとんど頭か肩、前で抱っこしていたので、
 結構節々が悲鳴を上げている。
 ステータスで強化された体でも、
 半日に渡り数キロある子供を抱っこしていると、
 流石に辛いらしい。

 それでも頑張れたのは、楽しそうなアクアの笑顔と、
 アクアのぷにぷにの肌が俺に当たる度になんとも言えない癒やし効果があったからである。

『たのしかった~!ありがとう、ますたー!』
「また機会があればこういう時間も作ってやるよ」
『つぎは、くーといっしょね~』
「はいはい」

 屋敷へ帰宅したのは19時過ぎ。
 人の波が出来る前に帰りたかったが、時すでに遅く、
 波の飲まれて帰るのに結構無駄な移動を強要された。
 アルシェ達は再び昨夜行った別宅のバルコニーから、
 今夜もブルーウィスプを鑑賞している。
 俺の予定は潜ってブルーウィスプを調査するつもりだったんだけど、
 正直もうそんな元気はないし、屋台飯を買う力もないので、
 ベイカー氏の好意を受けて食事は屋敷で取ることにした。
 アクアだけでもアルシェに合流するかと確認したが、
 昨日ハシャギまくったから今日はいいとのこと。

「じゃあ、先にお風呂もいただきますね」
「えぇ、今夜は私も仕事が溜まっていますのでお先にどうぞ」
「アルシェ達には伝えていますので、気にせずお仕事をされてください」
「ありがとうございます、おやすみなさい」
「はい、おやすみなさい」
『おやすみ~』

 アクアも疲れが出ているのか、
 いつも走り回るお風呂だというのに俺に抱かれたままじっとしていた。
 のんびり入りたいとは思うが、
 眠気も襲ってきているのでさっさと体を洗い、
 アクアも膝に乗せて肩まで浸からせる。

『い~ち、に~ぃ、さ~ん・・・』
「しー、ごー、ろーく・・・」

 アクア達をお風呂に入れた時は、
 子供の頃に自分がしていた方法を思いだし、実践している。
 体を隠すようのタオルは湯に浸けてはいけないので、
 頭の上に乗せ、アクアには遊ぶように浸けてもいいタオルを渡している。

 数を数えながら、タオルに空気を溜めて、
 てるてる坊主のように一部をを絞る。

『お~、タコ~!』
「簡単には割れないから多少乱暴に触ってもいいぞー」
『お~~。お~~。お~~!これ、すわれないの?』
「さすがに座れないな。それ、自分でやってみろ」
『あい』

 小さいお手手で一生懸命空気を溜めては潰す行為を繰り返す。
 あとは水鉄砲でもあれば最高なんだけど、
 見たことはないんだよな・・・。
 そういえば、基本は皮を利用した装備を見るけど、
 ゴムが入った衣類は見たことがないかも知れない。

 誰かそういうのを作れそうな奴に出会ったら話しておこうかな。
 ゴムって確かお茶の木から出てるんだよな・・・?
 それに硫黄をいくらか混ぜればゴムとして使えたはず。
 研究はそいつに任せてしまえば、いつの間にか普及しているだろう。

 アクアが100を数え終え、
 ウトウトもしていた為、そのままお風呂から客室へと向かい、
 ベッドに潜り込んだ。
 明日はアルシェとお出かけか・・・、
 どこに連れて行かれるのかなぁ・・・、
 若い子と遊ぶ機会なんてなかったから・・・・、
 想像が・・・つかn・・・・・Zzzzzzz。
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