特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第09章 -奇跡の生還!蒼き王国アスペラルダ編Ⅲ-

†第9章† -13話-[アイアンノジュール前夜]

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 クーをアルカトラズ様の元へ返した後は、
 予定通りにクーの最召喚をしてアクアとニルも召喚サモンして合流。
 地脈移動で到着した地点の近くにはプルゥブトーアという大きめの町があり、
 そこで昼ご飯を交えながらどんな修行をしたのかなどを3人から聞いて参考にしたり、
 今日の動きを2人の上位土精と相談した。

 御二人はこのままプルゥブトーアに残って露天エリアで商売を再開して、
 今日はこのままこちらの町で夜を明かすことにするという。
 そして俺はアクアとニルを連れてトレマーズ村へと飛んでいき、
 クーは空の移動には必要ないということでアルカトラズ様のところで引き続き修行を進めてもらうことに決まった。

 そして3時間の移動が終わり、ゲートも設置が完了した。

「ギルドもないし、寄る必要はないかな・・・。
 アクアもすぐに迎えに行くからスィーネの元に戻ってろ。
 ニルもアルシェ達のところな」
『あ~い!』
『わかりましたわー!』

 そう言うとスッと元から居なかったかのように姿を消す二人。
 課程というものが抜け移動したという結果だけが残る異質な召喚サモンの効果でアクアとニルは帰って行った。

 知ったときはそこまで使う機会はないかと思って内心馬鹿にしていた召喚サモンだが、
 実際使ってみるとMPの負担もなく楽に精霊達を行き来させられる。
 もしもこの技術を知らなかったら、
 行き来にはゲートを開く必要が出て多大なMP消費をするわ、
 消費したMPを回復させるためにマナポーションを消費するわ、
 別々のところで修行させる事も出来ず、
 その都度で無駄なタイムロスが発生してしまっていたところだ。

 あとはクーを再び召喚サモンで呼び出し、
 ゲートを通って帰れば今日の外回りは終了だ。
 だけど。
 周囲に誰も居ない状態で落ち着いて連絡を取る事が出来る貴重な時間。
 それを放棄するのは馬鹿のすることだ。
 アニマが居る?精霊の居なくなった今の状態で姿を現してみろ。
 先の事もある為甘えられると思って出てきた・・・みたいな懸念をアニマは持つだろうから姿を現さないさ。

 俺は近くに転がっていた手頃な岩に腰掛けておもむろに揺蕩う唄ウィルフラタに触れながら、名前を呼ぶ。

「《コール》:ノイティミル」

 プルルルルル・・・
 プルルルルル・・・

 なかなか出ない。
 明日にも会えるというに何をしているのだろうか?
 これで留守電の機能まであったら8コール目で留守番電話サービスに接続されるところだぞ。

 プルルルルル・・・
 プルルr、ピロン♪

「あ、もしもし。遅いぞぉーノイ」
〔遅いぞーじゃあないです。
 いつもは夜なのになんで今日に限って夕方です?〕

 ようやっと繋がったと思ったら愚痴ってやんの。
 相変わらず可愛げの無いやつめ。

「今日の移動が終わったからいつもよりすこ~し話が出来る時間が確保出来たんだよ。
 嬉しかろう?」
〔別に・・・そこまで嬉しくもないです。
 どうせ明日迎えに来るんですよね?〕
「さぁてな・・・どうだろ」
〔エッ!?明日来られないんですっ!?〕

 意地っ張りな娘ほど弄り甲斐があるよな。
 明日迎えに来ると完全に信じているノイに意地悪を言ってみると、
 案の定慌てた様子で強めに聞き返してきた。

「あはははは、嘘だよノイ。
 予定は順調。明日お前も会った上位土精の二人に、
 アイアンノジュールまで送ってもらうから今より少し早い時間くらいに会えると思うぞ」
〔・・・っ!っ!!〕バシンバシンッ!

 俺の意地悪に揺蕩う唄ウィルフラタの向こうから、
 掌で遊ばれた事を悔しそうに尻尾をどこぞに打ち鳴らすノイ。
 この悔しそうな音だけで頭の中で現在のノイの姿が浮かび上がる。

〔ツマラナイ冗談は好きじゃないです!
 明日は来る!それで間違いはないですっ!?〕
「ないない、間違いないよ。
 一応俺と契約精霊のみんなで迎えに行くから、
 いろいろと心構えはしておいたほうがいいぞ」
〔心構えと言われても・・・。
 アクアとクーは顔見知り・・・ですけど、加階かかいが進んでいるんですよね。
 他にいるのはニルチッイとアニマです?
 合計四人の契約精霊なんて聞いたことがないとティターン様も仰っていましたです〕

 それは・・・俺も聞いた。
 過去に確認された精霊使いでも多くて契約精霊も二人だったらしい。
 というかまず精霊にそこまで親交のある人間はいなかったとさ。

〔で?定員はどうなってるです?〕
「定員とは~?」
〔わかってるですよね・・?
 アニマと契約した事でマスターの許容量がいっぱいになった件です。
 空きがないと正式契約しない約束です〕
「お前ねぇ、アニマと契約したのは1週間くらい前なんだぞ?
 それで容量を増やす為に精霊使いの質を上げるなんて簡単に出来るわけないだろ?」
〔出来なかったです?明日ですよ?〕
「出来なかったとは言ってないです。
 あまり時間は確保出来なかったけど、まぁギリギリ足りたよ」
〔そうですか〕

 ノイが気にする契約制限容量。
 精霊使いとは精霊と共に闘う職業である。
 剣士や魔法使いなどと並ぶ職業ジョブの中で少し仕様の違うものであり、
 剣士の質が上がれば身体の動かし方にキレが増していき、
 剣を装備した状態だと移動速度や攻撃力などが上昇するらしく、
 魔法使いも質が上がれば魔法の扱いが長けていき、
 杖を装備した状態だと魔法の威力やベクトルによる多様性をイメージ通りに使用できるようになるらしい。

 そんな中、精霊使いの質と言えば、
 本来は精霊にしか扱えない制御魔法がクソ雑魚レベルで使えるようになり、
 契約できる精霊の容量というものが増えていくみたい。
 というかそもそも精霊使いに契約精霊は一人というのが定説な為、
 容量があるなんてアニマですら知らなかった情報だ。
 他には召喚サモンとかあるけれど、
 基本的には確認個体が少ないのでどんな事が出来る職業なのかわからないってのが実際のところである。

 そして精霊使いの質を上げる条件というのが、
 名前の通り精霊からは切っても切り離せなかったりする。

 精霊との交流から精霊との絆、
 魔法の理解に属性への理解。
 俺の場合は精霊がみんな浮遊精霊ふゆうせいれいからの強制加階かかいを経て契約している為、
 絆は子育ての関係上強制。
 交流もなんだかんだで幼いうちの精霊は各地で可愛がられ、
 その関係で俺も色んな精霊と出会う機会が多い。
 魔法や属性についてはいろいろと考えていかないと生還率を上げられないしで、
 結局異世界で生活を始めてからは生きているだけで徐々に職業ジョブ経験値を稼いでいたようなものだ。

 そんな中でより職業ジョブ経験値を稼ぐ為、
 最近は今までよりもさらに早起きをして作った時間に、
 魔法剣を利用して魔法制御力をずっと鍛えてきた。
 そのおかげでつい昨日の話ではあるのだが、
 アニマから『まぁ、あと一人なら契約できそう、です!』と太鼓判も頂けた。

「というわけで問題はないよ。
 もうひとつも解決出来るしな」
〔加護ですね。なんだか一番頭を悩ませていた加護が、
 まさかアスペラルダから繋がるとは思いもしませんでしたです〕
「表面だけで考えるとアホらしいけど、
 よく考えれば昔の自分が関わったことが影響して良い流れに変わったって事だからな。
 まぁそもそもアレがなかったらノイとも出会ってないんだけどな」
〔そうですね。もう懐かしいと思えますし、マスターの顔もおぼろげです〕
「おいおい・・・」

 確かにポルタフォール以来顔を合わせていないけど、
 俺はちゃんとノイの容姿も顔も覚えてるっていうのに・・・トカゲだけど。
 俺の呆れとも悲しみとも取れる声音を聞き、
 ノイは楽しげな声で次の言葉を発した。

〔へへへ、嘘です。
 仮契約したからですかね、
 ずっと会っていないのにマスターの顔は覚えていますです〕
「この野郎」
〔野郎じゃないって教えたじゃないですか。ボクこれでも女の子です〕
「知ってるよ。最初はボクボク言ってたから勘違いしてたけどな。
 とにかく明日は夕方くらいに到着するってティターン様に伝えておいてくれ」
〔ティターン様も案内をする土精のお二方の行動は把握しておられますです。
 だから大丈夫だと思うですよ?〕
「いや、土精はのんびり屋が多いって聞いてるし、
 そっちに着いてから数日は滞在が必要とかだと俺たちも困るからな。
 念の為ティターン様とその側近にも伝えておいてくれ」
〔う~ん、マスターがそう言うなら伝えておきますです〕

 ノイは頑固というか頭が固いというか意地っ張りな部分は感じるけど、
 アニマが言うようなのんびりという気質は感じない。
 ただ他の土精はどうなのか分からないため、
 例え杞憂だったとしても手は打っておきたかった。

〔あ、ボクそろそろティターン様に呼ばれているので今日は終わりです〕
「はいはい、じゃあ明日な」
〔はい、明日・・・です〕

 ティロン♪
 ニルとの通話が終わると繋がりが途切れた事を知らせるSEが耳に届く。
 ちょこちょこと連絡を取っていたからか、
 そこまで感動的な再会にはならなさそうだけど、
 意地っ張りなノイには都合がいいかもしれないな。

「さて、お次はセリア先生だな・・・」


 * * * * *
「《コール》:セリア=シルフェイド」

 プルルルルル・・・
 プルルr、ピロン♪

 流石はセリア先生だ。
 2コール目で出られましたよ!

〔はい、セリアですわ。
 お久しぶりですわね、水無月みなづき君〕
「はい、本当にお久しぶりですセリア先生。
 マリーブパリアとハイラード牧場の間にある街道辺りで連絡して以来ですね」

 久し振りに聞いた綺麗で凜とした声。
 少し説明口調のように言葉を口にしているのは、
 以前話をした最後の場面を思い出しながら話し始めた所為だ。

〔王都フォレストトーレの話は伺いましたわ。
 大変な事になっていたようですわね〕
「本当は王都に近寄る前にセリア先生と合流したいと思っていたんです。
 精神的にも戦力的にも頼りになりますから。
 でも、結局タイミングを逃して連絡も出来ませんでしたが・・・」
〔どちらにしろ合流は難しかったと思いますわよ。
 ノイをアイアンノジュールに届けた後は土の国を少し回ってましたから、
 連絡は取れても合流をする手段がありませんでしたわ〕

 確かに今にして思えば、
 勇者メリオの移動手段は一度訪れることが条件で、
 あいつはフォレストトーレから土の国方面へは進んでいないし、
 俺のゲートも設置する必要があることから無理だったとわかる。

「土の国の中で何かありましたか?」
〔いいえ。あれからまだ数ヶ月ですし、
 噂は意識して耳にすることが出来ても、
 発生している問題に近寄ることもオベリスクの発見も出来ていませんわ〕
「精霊が精霊使いになれればいいんですけどね・・・。
 どうせならセリア先生がテンペスト様の後を継いでしまえば似た状態に成れるのでは?」
〔それを風精に言うのもそそのかすのも失礼に当たりますわよ・・・〕

 まぁ親に変わって王に成れってのはある意味親殺しみたいなものか?
 殺さないにしろ乗っ取りの示唆をしたみたいな事を口にしたんだ、
 テンペスト様の耳に入らないことを願おう。

「実は明日ノイを迎えに行くんですが、
 もしもセリア先生がアイアンノジュールに居るなら、
 アスペラルダへエスコートしようかと思っていたんですけど・・・、
 さっきの口ぶりからして離れてますよね」
〔残念ながら水無月みなづき君の考えている通りですわ。
 精霊の衣を来て移動したとしても3週間近くは掛かる距離に現在は居ますわ。
 それにしてもフォレストトーレの戦闘からひと月も経っていないでしょうに、
 もうアイアンノジュールまで移動して来ましたの?〕
「いえいえ、流石に俺たちでもそんな手段はありませんよ。
 ちょっとした出会いがありまして、
 上位土精の方々の地脈移動でお供させていただきました」
〔なるほど、精霊の移動手段で・・・それならばこの早さに納得ですわ〕

 セリア先生の話から明日の合流は難しそうだ。
 先生の口にされた精霊の衣は確か・・・、
 精霊がある程度成長した際に仲間の上位位階の精霊から頂く、
 精霊としての力を解放するような力のある伝統の衣装と聞いている。
 ちなみにセリア先生は風精霊だが、すでに空に浮かび上がることは出来ない。
 そんな先生が空を飛び移動速度を上げる手段として利用出来るのが精霊の衣となる。

「いまから大体一ヶ月と半月後に、
 フォレストトーレ解放合同作戦を行うのは知っていますか?」
〔それについても把握していますわ。
 調べたのもありますけれど、
 わざわざアインスが連絡して来ましたもの〕
〔アインスさんから?いつの間に・・・。
 まぁとにかく先頭を切るのは勇者メリオに任せて、
 俺たちは支援に集中するつもりです〕
「それがいいでしょう。
 他にもアスペラルダの将軍達が数名動くと思いますから、
 指揮系統も気にせずに動けるでしょうし」
〔王都には魔神族が最低でも3名確認していますし、
 こちらも勇者だけに任せっきりにも出来ませんから色々と修行を進めています。
 特に精霊達を各上位精霊に訓練してもらっていて・・・〕
〔アクアは・・・スィーネかボジャ様かしら?
 クーは・・・カティナ?〕
「いえ、クーは闇精王アルカトラズ様と上位精霊のクロワさんとクロエさんですね」
〔えええぇぇぇ!?闇精王!?
 水無月みなづき君そんな方とも出会っていましたのねっ!?〕

 あれ?言ってなかったかな?
 クーを仲間にした時に王様と王妃様には報告した覚えがあるけど・・・。
 あぁ、あのときにはセリア先生とノイはもう旅立っていたから知らないのか!

「アスペラルダにあるダンジョンの最奥に居られましたよ。
 あそこのBOSS前受付嬢がクロワさんかクロエさんですね」
〔あの受付嬢が・・・、
 必要な時以外は裏に引っ込んでいたから気が付きませんでしたわ〕
「まぁうちの精霊たちのうち風精のニルチッイってのが居るんですけど、
 知り合いの風精はセリア先生しかいないもので・・・」
〔そのニルチッイを鍛えて欲しいのですわね?
 ふぅ・・・。アスペラルダに戻るのも考えていましたしいいですけれど、
 とはいえ先にも伝えた通り時間が掛かってしまいますわよ?〕
「明日は無理でもアイアンノジュール方面に戻ってきてくれれば、
 俺もセリア先生の元へ向かいますので、
 3週間以内に合流して戻って頂けますか?」
〔わかりましたわ。
 念の為王様方へも伝えておいて下さいな〕
「了解です!ニルの件もよろしくお願いします!」

 念話ながら日本人でもなかなかしない、
 腰を90度に曲げた状態で頭を下げお願いする。
 この姿はセリア先生に見てもらえないんだけどな。

〔愛称がニルですわね・・・。
 揺蕩う唄ウィルフラタで話せますかしら?〕
「ばっちりです」
〔なら、移動以外の時間でニルに口頭だけでも教えるところから始めますわ。
 明日はどうなっているのかしら?〕
「明日は朝から8時間の地脈移動コースなので、
 日中はアスペラルダにニルを残すつもりです」
〔では明日から訓練を始めますから、
 ニルにも伝えておいて下さいな〕
「わかりました。明日からよろしくお願いします。
 それと顔を合わせるのも楽しみにしています」
〔こちらも楽しみですわ。それでは、アルシェ様にもよろしくね〕


 * * * * *
 ティロン♪
 ノイの時と同様の切電音をもってセリア先生との通話は終了した。
 久し振りに声を聞いたけど元気そうでよかったと思うと同時に、
 土の国にも俺たちの目を蒔きたいという考えが過ぎる。

 魔神族という厄介者さえいなければ、
 水の国は俺たちが、
 風の国をゼノウやセーバー達が、
 光の国は勇者メリオと聖女クレアが担当して破滅の目を潰していけるのだが、
 奴らが意図を引いている以上は先に根元を潰しておかないとイタチごっこになってしまう。

 精霊使い・・・水の国には居ないし、
 風の国はセーバーが居る。
 光の国や土の国にも都合上一人ずつ居ると仮定したとして、
 協力者も増やして情報収集やらの役に立って頂きたい。
 そうすれば俺は城で健やかな生活を送りながら情報の精査と指示出しだけして、
 あとは勇者が魔王を倒すのを待つだけで良くなるはず・・・。

『どうせそんな簡単には行かない、です』
「セーバーも偶然だったし精霊使いは精霊使い、
 素質はあるけど契約していないって奴も含めれば、
 結構数は揃えられそうじゃないか?」
『そのうち協力すると言う人間と精霊がどのくらい居ると思いますか?』

 コールが終わったのを見計らったように姿を現すアニマは、
 俺の素晴らしい思惑をただの一言で一蹴する。

『言っておきますけど、
 宗八そうはちのように影に徹したいなんて奇特な人間は少数、です!
 ほとんどの冒険者は華々しい活躍を目指したり、
 生活をするために冒険家業をしている者ばかり、です!』
「そりゃ知ってるさ。慣れれば一番稼ぎが良いし、
 ダンジョンランクによってはひと月頑張って稼げば2~3ヶ月働かなくていいからな」

 俺たちは立ち寄った町の問題の確認と対策をするのが目的なだけなので、
 今までは稼ぎらしい稼ぎはしたことはないけど、
 実際俺が潜ったことのあるダンジョンなんて、
 アスペラルダ城下町にある[死霊王の呼び声]と、
 マリーブパリアで発見された[バゼド飲食店地下]の2つだけだ。

 個人的にはもっとダンジョンに潜りたいところなんだけど、
 なんだかんだで大量の敵を倒している所為かレベルは46まで上がっている。
 ステータスもそろそろ全員で確認しておかないとな・・・。

『魔神族とやらが無精の鎧を着ていない事は先日で確認済みです。
 ですが、見た目は前衛には見えないあの白い魔女ですら攻撃は通らなかった。
 はっきり言えば、今更精霊使いを探しても対応の役に立つか疑問、です!』
「あくまで戦闘ではなく破滅の目の影響から外れた耳が欲しいだけなんだよ。
 出来ればやる気があって問題も発見したら自ら解決してくれる人材がいいけど、
 そこまで運良く希望通りとは行かないからな。
 いままでだって、精霊使いは見つかっていないわけだし」

 とはいえ、無精と核を用いた加階かかいを駆使して、
 人工的に精霊使いを作り出すことは出来るのだから、
 その目や耳に関しては解決の兆しはある。
 その上、二国のトップギルドマスターに協力して頂けるのだから、
 俺たちの情報網もかなり太くなってきたのは確かだ。

 そんな俺の返答に面白くないという顔をしたアニマは、
 殊更ことさら真剣な表情を持って俺に静かな声音で語りかけてくる。

宗八そうはちは楽観というより目を背けているだけではないですか・・・』
「それのどこが悪いよ。
 やれる事はやっているし、色々と考えてここまで協力体制を整えたんだぞ」

 わかってるさ。

宗八そうはちが召喚されてもう1年でしたか?』
「|召喚じゃなくていつの間にか召喚の塔に居たんだよ。
 俺は誰にも呼ばれてない。
 勇者が来て、そのひと月後に俺が現れただけ」

 一般人の俺に何が出来る?
 だから影に徹してるだろ?

『称号の件はどう、です?』
「詳細がわからないなら有って無いようなもんさ」

 気にしても目指す地点がわからないなら無いのと一緒。
 結局、異世界に来ても俺の根元の考えは変わっていないのだ。
 産まれてきた意味、何を成す為の命か。
 そういった指針もない生活に生きる気力の沸かなかった俺の生き方は、
 死を祈り、無駄な生活からの救済を願い、
 死んでいないだけの生を謳歌するだけ・・・。

 この世界でもそうだ。
 いまやっているのは俺自身がやりたいことだからで、
 別に俺がやらなきゃならない事ではない。
 俺にしかできないことでもない。
 勇者の様に世界を救うという目標を示された生き方なら俺も従うが、
 この異世界でも俺のすべき目標というものは提示されなかった。

『アレでは指針になりませんか?』
「ならんな。察しろ系は言ってないのと一緒だ。
 俺はそう読めたとしても勘違いだと諦める方に偏ってるからな」
『はぁ・・・ある意味正しく自分を理解している事は評価しますが、
 宿命は迫って来ますよ。
 今回の救世くぜ宗八そうはちも含まれていると仮定すれば、
 選択の刻は避けられません』
「俺に本当にそんな大層な選択があるならその時はその時さ。
 まぁあるとは思ってないけどな」
『腐っていると感じさせるレベルで達観していますね・・・。
 これではどんなに言葉を尽くしても自身を諦観している根本を変えないと意味がなさそう、です!』

 俺との意見の相違に対して最後にそう言って、
 プリプリと怒りながら再びまとわるアニマ。
 死ぬ用意は出来ている。
 だがそれは俺自身のという話だけである為、
 アクアやクーやニル、そしてノイの娘同然の精霊達の今後や、
 アルシェとマリエルの若い二人を死なせるわけにはいかない。

 そんな他者を理由にした微かな生きる意味を見いだして俺は進んでいる。
 寄生虫もかくや・・・だな。
 それでもそのお陰で魔法や魔法剣の開発。
 自身の自力を上げる為の肉体改造。
 精霊との契約も含まれるか?
 先日の死に際にも死にきれなかったし、
 俺自身が本来はあそこで死ぬ運命を変えてしまった可能性もある。
 いわゆる運命を切り開いたってやつだな。

「もしも本当だったら・・・こんな奴でサーセンね」

 誰かが何かを求めての結果かもしれない事を考え、
 口から漏れるのはその誰かに対する謝罪の言葉であった。
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