特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第12章 -廃都フォレストトーレ奪還作戦-

†第12章† -03話-[我、夜戦に突入す!]

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『「ふぁぁぁぁぁぁああああああ・・・」』
「今は何時?」
「はい、姫様。16時でございます」

 夕方に入ったばかりか。
 ちょうど良い時間帯に起きられて良かった良かった。

「戦場の話は聞いているかしら?」
「申し訳ございますが何も伺ってはおりません。
 あちらに戻り次第ギルドマスターのアインス様へ確認をされるのがよろしいかと」
「わかったわ。
 お兄さん、アクアちゃん、先に夕食をいただきましょう」
『まだお腹空いてないよぉ~?』
「夜のうちは保存食を食べることになるけど、
 ちゃんと夕飯の時間を確保するのは難しいから今のうちに食べれるだけ食べとけ」
『あい』

 名前もわからないメイドさんに連れられて食堂に移ると、
 そこには何故かアルシェの父と母であるギュンター王とナデージュ王妃がいらっしゃった。
 食堂のテーブルの上には書類がいっぱいあり、
 ここで俺たちの目覚めを待ちながら仕事をしていたらしい事が窺える。

「やぁ、おはよう・・とは違うかな。目が覚めたようだね」
「あ、や、え~と。おはようございます?
 っていうか何故に食堂にいらっしゃるんですか?」

 戦場に出ないとはいえ後処理などで手を煩わせる予定の王様方に問いかける。
 今は裏方も一時の休息期に入ったのでは、と。

「我が国の兵士達が戦っているのだから気になるのは当然だろう?
 何か不測の事態になってやしないかと心境は落ち着かないものさ」
「王様なのですから信じてどっしり構えておいてくださいよ・・・」

 メイドに引かれた椅子に座りながら呆れた声を王様へ放つ。
 王様の方も苦笑しながら卓上の書類を側近にまとめて渡した。

「アルシェと宗八そうはちが仮眠を取っていたということは、
 第1フェイズは無事に終えられたのかしら?」
「えぇ、お母様。オベリスクの破壊は成功しました。
 私たちが自然に目覚めるまで起こされなかったことからも、
 現時点では不測の事態は起こっていないのでしょう」

 王妃様の質問にはアルシェが答えた。
 俺たちは開戦の頭で抜けたため、
 今回の瘴気モンスター情報を手にしてはいないが、
 あちらに戻ったら全てとは言わずともほぼ情報は出揃っていると思う。

「おい、持ってきてくれ」
「かしこまりました」

 王様の指示が飛びメイドさんが部屋を出て行く。
 既に計算して食事も作り始めていたらしい。
 これから持ってくる早い夕飯を一緒に取るつもりのようだ。

「フォレストトーレを奪還した後の統治はどのようにするのですか?」
「我々四神の加護がある土地の4国と光の国はある協定に縛られている。
 曰く人間にも恩恵を与える代わりに人間は争うな、というね」
「ですから、フォレストトーレの統治についてはしばらく周囲4国で様子を見つつ、
 生き残った王子がどのような選択をするのは待つ形になります」

 生き残ったってあのクソ王子か?冗談でしょ?
 そんな俺の顔をみてアルシェが横で笑っている。

「元からの性格もありますけど、
 破滅など非現実的な現状を受け入れることが出来なかっただけだと思いますよ。
 この度の大戦後に嫌でも選択を迫られるのですから、
 こちらは国が存続出来るようにできる限りの手助けをするだけになります。
 ですよね、お父様?」
「その通りだ。
 国を運営するには人材が必要となるのに重鎮はおろか、
 王都に集った優秀な若者も全滅してしまっている状況で取れる選択肢は少ないだろう。
 ラフィート王子が後悔しないように、我々は手助けするのだよ」

 ふぅ~ん、そんな世界なのか・・・。
 国の運営という物はわからない。
 しかし、ひとまずは各街の町長達が連携を取って体裁は保っているから、
 あとは国中をまとめられるリーダーシップさえあれば・・・か。

 あいつにそれだけの器があるんだろうか?
 そんな事を考えながら並べられた料理に俺は手を付け始めた。


 * * * * *
 黄昏時に俺たちは戦場へと戻ってきた。
 遠くから皆の戦闘音が聞こえてくる。

「おかえりなさいませご主人様、アルシェ様」
『おかえりなさいませお父様、アルシェ様』

 出迎えるは侍従の2人。
 他にも火精かせいフランと光精こうせいベルもクーの横にいる。

「お疲れ様メリー、クーちゃん。
 お兄さんはアインスさんの元へ行かれますか?」
「いや、もう暗くなってきているから光源が必要だろう。
 アルシェがアインスさんから情報をもらってきてくれ。
 俺とアクアは引き継ぎで前に出る」
「わかりました。
 メリー、クーちゃん、引き継ぎまでは付き合って。
 終わり次第仮設宿舎へ行って本日は休んでください」
「『かしこまりました』」

 直後、アルシェとの視線を切って歩き出す。
 胸にはアクアを抱き、差し出す手には猫の姿のクーが飛び乗る。
 アルシェもまた、
 メリーを伴ってアインスさんの居る天幕へと歩き始めた。

「《コール》七精の門エレメンツゲート
あるじ!』
『ぬし様!』
「わかってるよ、一緒においで。
 フラムは剣になってくれ鞘に納めるから」
『わかった!』
『また置いて行かれるかと冷や冷やしました・・・』

 まずは帰還の報告と情報収集。
 連絡を入れると即座に各々が即反応をして次々と揺蕩う唄ウィルフラタが繋がってゆく。

〔帰ったか、宗八そうはち
〔もう夜になる時間帯だぞぉ宗八そうはち
〔おかえりぃ~、お兄ちゃん〕
「夜になる前に戻れて良かったよ。
 ゼノウとセーバーのPTは同じ場所で戦っているのか?」
〔いや、少し離れてはいるがいつでも集まれる〕
「なら、フランザとアネスは空にヴァーンレイドを打ち上げてくれ」
〔〔了解〕〕

 視界に映る2つの氷の柱にはスィーネとボジャ様、
 それと光精のテルナローレがボジャ様と一緒に地上の支援に当たっている。
 ボガァァァァンボガァァン!!
 2発の爆発が空に咲く。

「位置は把握した。合流したら退いてくれ。
 仮設宿舎でさっさと寝て敵の視認が出来るくらいにまた俺と交代だ」
〔全員か?徐々に減らした方がいいんじゃねぇか?〕
「リッカに働かせる。
 どうせほとんど働けてないんだろ?」
〔も、申し訳ありません!その通りですっ!〕

 俺が鍛えただけじゃなく自主練も頑張っていたから実力はレベルよりも実際高い。
 そのクランメンバーが揃っているんだ。
 動けないリッカの役目なんてほとんどないだろう。
 なんせ敵のランクは3~4程度なんだ。余裕だろ。

〔あぁ、その予想は外れていたぞ〕
「なんだとっ!?」
〔敵のランクがもう一つ高かった。
 基本が4~5、時々6が出てくるって間隔だったぞ〕

 なんだよ焦らせんなよゼノウ。

「なら50%以上はランク4なんだろ?
 お前らならなんとかなるラインじゃねぇか。
 大きく外れて迷惑掛けたかと思ったわ」
〔迷惑は掛かっているんですがねぇクランリーダー?
 ランク1つの違いがレベルで言えば10違うってご存じかな?〕
「ゼノウ達が対処出来るならセーバー達なら問題ないだろ。
 恨み言は言いっこなしだよ」

 っと、そろそろ暗さが深刻になってきたな。
 各地で松明で対処も始めているけれど、
 それじゃあ戦うことも退くことも敵の接敵についても判断着かないだろうに。

「アクア、行こうか」
『あい!』

『「水精霊纏エレメンタライズ!」』

 蒼天そうてんの光の膜を突き破って空へと飛び立つ俺たちの視界がゼノウ達の姿を捉える。
 戦闘は継続している様子だが、
 きちんと無精と協力して浄化も同時に進められているようで安心した。

『お父様、光量を抑えて高度は低めに数を揃えるのであればもう少し下がよろしいかと』
「そか、わかった」

 夜に進軍予定は無い。
 明るく十全の戦闘が出来る日中にこそ進軍をするので、
 夜はとにかく堪え忍ぶのみ。
 しかしそれは人間の都合で敵には関係が無い。
 瘴気は夜にも同じ頻度で攻めてくる。

「《ライトボール!!》」

 数は80。
 高さとしては天井より少し高い。
 40ずつ分けて直列で2本。蛍光灯を想像していただければわかるかな?
 あれも同じように2本取り付けるだろう?

〔おぉ、やっと敵がちゃんと見える!〕
〔助かります、クランリーダー!〕
〔私たち下がった方がいいですか?〕
「いや、光源は頭上の2本の帯だけ設置する。
 下がっては逆に見えなくなるから位置は変えるな」
〔わかりました〕

 さて、とりあえずアスペラルダはこれでいい。
 ユレイアルド神聖教国は勇者とエクス、
 派遣光精ナチュラルとエトランゼがいるから問題は無い。
 土の国も派遣光精クリームヒルトとヘルムートがいるから光源を利用することは可能だ。

「問題はイレギュラーが起きた際に魔力が持つかどうか・・・」
『急ぎとはいえ中位の精霊にお越しいただけました。
 2人も居れば魔力切れは起こらないと思います』
禍津核まがつかくが来なければだねぇ~』

 確かにアレが来たら光精の協力は欲しい。
 今回普通の瘴気モンスターが4~6であれば、
 最悪9が出てくるかもしれない。
 想定よりも最悪が上回った・・・。

「これでも最悪を考えていたんだけどなぁ」
『完璧に読み取るなんて誰にだって出来ません。
 お父様の予想で何もしないよりも全然良い状態に持ち込めたのですからこれで良しと考えましょう』
『これでいいのだぁ~!』

 バカボンかな?

「お、こっちに気づいて両国の光精が同じ要領で光源を出したぞ。
 マリエルと交代する前にゼノウ達を退かせよう。
 あいつらが遅くなると俺たちの休憩もまた遅くなるからな」
『あ~い!』
『かしこまりました』

「《来よ!》クラウソラス!」

 宝物庫ほうもつこから取り出したるは光の剣[クラウソラス]。
 アクアが創る[お魚さんソード]でも通用するだろうけど、
 手間などを考えれば初めからこいつを使うべきだ。

「《武器加階ウェポンエヴォルト!》」

 次の瞬間には手にする光の剣の内部に溢れる魔力が表面化。
 剣身だけではなく柄まで結晶化して握りも少し外に押し出された。

 ピシピシッ!パリパリパリバリバリバリバリバリ!!!
 結晶が手元から砕けていき、
 その下から洗練された長めの柄、
 そして元より伸びた白刃も少し形を変えて切っ先まで整う。

「クー、エクラディバインダーはキツいか?」
『クラウソラスでも嫌いでしたけど、
 加階かかい後のエクラディバインダーはもっと嫌いなだけですから気にしないでください』

 一応確認しただけだけど、
 クーの毛は逆立ち耳としっぽは尖っている。
 口では思いっきり嫌いって言うところがアクアと同じだなぁと笑けてくる。

 現在ゼノウ達と接敵している集団の後ろから次の集団が近づいてきているのがみえる。
 あれから徐々に交代出来るといいな。

「《光竜一閃こうりゅういっせん!》」

 以前は必要最低限の道を作りオベリスクを破壊したので、
 沸いてくる瘴気モンスターも意図せず抑えられていたが、
 今回は何倍ものモンスターが一度に沸いてくる。
 3カ国に同時沸きしてから一定時間を置いて次が沸くというローテーションを繰り返していく。
 数千ずつって倒して浄化すればそれなりに浄化作業が進むとおもうんだけど、
 ゲーム脳だからそう思うのかな?現実は1日攻略を進めてまだ城下町にもたどり着いてないんだよね。

「いま相手をしている集団を後退しながら撃破しろ。
 殿しんがりというか残すのはリッカだけで良い!」
〔〔了解〕〕
〔あ、りょ、了解です!〕
『《アイシクルエッジ!》』

 照らし出される地上には光の一線を受けて瘴気の鎧を剥がされた集団が蠢いている。
 その集まる広範囲にアクアが魔法のトラップを仕掛けて敵は切り刻まれていく。

「うわ、エゲツナイなぁ」
「敵相手に何言ってんだセーバー。
 遠距離だけ攻撃を続けて近接は周辺警戒をしながら視界を確保できるギリギリまで下がってくれ」
「了解」
〔了解〕

 敵が綺麗に横一線で走ってくるわけでは無い。
 セーバーとゼノウで言えばセーバー側の敵が前に突出していた為、
 セーバーには直接指示を出したが、
 内容としてはゼノウにも同じ指示を出していると理解して揺蕩う唄ウィルフラタでゼノウも返事を返してきた。

「ボジャ様は撤退の準備をお願いします。
 スィーネはボジャ様の元に行ってテルナローレの護衛に着け」
〔わかったわい。休ませてもらおう〕
〔りょっか~い。
 ところでお兄ちゃん、私は休み無いのぉ?〕
「受肉してないなら魔力があれば眠気はないだろ。
 お兄ちゃん一人だとどうにもならないから手伝っておくれよ」
〔ん~~~、終わったら何かご褒美が欲しいな♪〕

 お前一応シヴァ様からの命令で出向してんだろうが・・・。
 なんで俺にご褒美を求めてくるんや。

「まぁ、出来る範囲でな。
 おいおい考えておいてくれれば頑張るよ」
〔やったね♪〕
「テルナローレも受肉してないから協力をお願いします」
〔それは任せてください。
 ソレイユ様からの指示ですし視界に入るだけで寒気のする瘴気が目の前にこれだけあるのですから休んでなんていられません〕

 聞いたかスィーネ?
 同じ命令で出向している精霊でここまで違うんだぞ?
 使命感とかそっちのけでご褒美なんて言葉を口にするのはどうなんだい!
 いや、感謝はしているからご褒美は何か考えてるけどさ。

『《スレッジハンマー!》』
「クー、精霊達にフリューネ達の魔力供給は出来ているんだよな?」
『はい、現時点で魔力は減り次第回復させておりましたので。
 クーが休むと流石に供給は止まってしまいますが』
「中位階から上位階精霊ばかりだから朝までは持たせられるかな」

 ゼノウ達と行動を共にしていたノイが低ランク瘴気モンスターをなぎ払う。
 発生した衝撃波でバランスを崩したモンスターには弓と魔法の追撃が次々と撃ち込まれる。
 うん、良いコンビネーションだ。

「ポシェント」
〔なんだ、宗八そうはち
「ポシェントも受肉しているだろう?
 お前も夜は休んで欲しいんだけど・・・」
〔ふっ。俺はお前の指揮下に入っているんだ。
 命令ならはっきりと言えば良いだろう?〕
「上位階のポシェントに命令とかまだ経験不足で恐れ多いんだけど」
〔俺たちは友人だろう?
 気兼ねなく必要なら命令してくれ。
 俺は斬った張ったが役割だからな〕

 くっ、ははは。
 やっぱいいな、コイツ。

「今、ボジャ様達の下付近だろ?
 アルシェ達が来たらポシェントも休んでくれ。
 ただ、いざという時に頼りにしたいからアインスさん居る中央天幕で休んでくれ」
〔了解した〕

 ゼノウとセーバー達は合流し、
 戦闘していた集団もほとんど倒し終わった頃合いに俺たちは地面に降り立つ。
 迫る次の集団は光竜一閃こうりゅういっせんで瘴気の鎧が剥ぎ取られ、
 アクアのアイシクルエッジで体力が削られ、
 中には致命傷にも関わらずゾンビの如く突撃してくる個体も居る。

おっそろしい顔しちゃって、まぁ」
あるじ、自分も戦う?』
「クーからはなんて言われてた?」
『戦闘を見るだけにしておきなさいと言われた』
『ベルもです』
「なら、今を見つめて何が出来るかいっぱい考えろ」

 Good。
 戦闘に参加させるには2人共幼すぎるし力不足だ。
 但し、戦闘を[視る]のは十分過ぎるくらいの修羅場になる。
 クーには俺から指示を出したわけではないけど、
 しっかりと状況が見えていて顔が綻ぶ。

 チャキ。
 白刃を高く掲げる。
 剣の魔力は十分に回復して溢れた分は剣から漏れ始めていた。

「《星光せいこうかがやけ!光刃剣戟こうじんけんげき!》」

 この後の爽快感を想像すると口のニヤケが抑えられないな。

「《星光天裂破せいこうてんれつはっ!》」

 振り下ろした剣からは溢れていた魔力は止まり、
 輝きもまた少し色落ちている。
 代わりに空の隙間から光が地上に降り注ぐ。
 円柱型の光は幅約15m程度。かなり広い。
 その天から落ちる光の柱は瘴気モンスターを飲み込みフォレストトーレの街方面に動き始めた。

「GYAAAAAAAAAAAAA!!!!」

 う~ん、集団で動いていたから低ランク瘴気モンスターが息絶える断末魔がいっぱい聞こえる。
 トレビア~ン。
 フリューネで試したから瘴気への効果には期待していたけど、
 その後ちゃんと使えるレベルまで整えて良かったぁ!

 まぁ流石に集団全部を攻撃は出来なかったから、
 柱の脇からは全力疾走のモンスターがわんさかと来ている。
 そして柱の攻撃を耐えた中ランク以上の瘴気モンスターがノッシノッシとまだ諦めずに前進を再開する様子が見える。

 柱は50mも進めば消えていった。

〔エグい!〕
〔瘴気モンスターに同情するレベルだぞ、宗八そうはち
「うるせぇな、女性陣にどうだったか聞いてみろ。
 きっと綺麗だったって答えるだろうよ!」

 未だに繋がっている揺蕩う唄ウィルフラタからセーバーに続きゼノウの感想が再び聞こえてきた。

〔確かに綺麗は綺麗ですけれど、
 流石に敵ながら同情しますね・・・〕
〔概ね同意です〕
〔私もです〕
〔右に同じぃ~〕

 アレ?おかしいな。
 効率的に敵を屠れるんだからいいじゃねぇかよ!
 くっそぉ!

「残りが来るぞ!援護ぉ!!」
〔リーダーがお怒りだぞ、トワイン、フランザ!〕
〔支援行きます!〕
〔こっちもだ、モエア、アネス!〕
〔右側支援入ります!〕

 照らし出される敵に続々と矢と魔法が撃ち込まれていく。

「アクア、お姉ちゃんの格好いい姿を見せてやろう」
『あい!フラム、ベル、クー!お姉ちゃん頑張っちゃうよぉ~!』

 初手魔力縮地まりょくしゅくちと!

「ブチ抜け!」
蒼天波動アクアズブラスト!』

 敵集団の中央。
 一番のデカブツへ水氷属性の波動ブラストを撃ち抜く。
 流石に周囲の奴らも反応が良く、
 既に襲いかかる姿勢になっているところで四肢を光の剣で切り裂いて行く。

『《竜玉りゅうぎょくカノン!》』
「《光竜一閃こうりゅういっせん!》」

 集団の後ろから跳躍してきた個体が2。
 上空からの強襲者に対し俺とアクアが同時に対処し吹き飛ばす。

『《竜玉りゅうぎょくショットガン!》』
「《ブレイズレイド!》」

 敵の塊に向けてアクアが散弾を放つと、
 それこそエグい壊れ方で多くが死んでいく。
 植物系の瘴気モンスターには火幻系の魔法を撃ち放つと、
 その爆発に巻き込まれてこれまた複数がただの瘴気へと還っていく。

 数としては初めは80くらい居たと思う。
 内40程度が光の柱に飲み込まれそのまま浄化された。
 残る40程度が襲いかかってきたけど低ランクはゼノウPTとセーバーPTがある程度殺した。
 最後の生き残りを俺とアクアが蹂躙しただけだから時間としては然程さほど掛からなかった。

「《光竜一閃こうりゅういっせん》」

 最後に敵の残り火となった瘴気を祓って終わりだ。

『むふぅ~!どう~!お姉ちゃんすごい~?』
『アクア姉様は強い、確かに自分たちでは足手まといと知った』
『ぬし様もアクア姉様も凄いです!』
『むふふぅ~!』

 満足そうだなアクア。
 淡々と心の内で納得するフラムとキラキラと目を輝かせるベルの対照的な感想で嬉しそうだ。
 どれがランク3でどれがランク4かもわからなかったけど、
 生き残っていたのは間違いなく4だと思う。
 まぁ時間も掛けずに倒せたのだから上々か。

『お父様、次の集団が迫っています』
「前の間隔をちゃんと覚えてないけど排出が少し早いか?」
『そのようです。
 濃度の所為か魔神族の所為か別の何かかは不明ですが』
「結構厳しいと思うけど他の所は崩れなかったのか?」
『危うい場面は将軍が出張って立て直していました。
 もう間隔は掴んでいる模様ですからお父様はご自分の心配だけで結構ですよ』
「わかった」

 アレが到着する前にアルシェ来てくんねぇかなぁ。
 と、来たか。
 気配に振り返るとメリーの後ろにフリューネとエルレイニアの二竜も一緒に着いてきていた。
 アルシェはもっと後方。
 ゼノウ達が今居る位置よりも後ろに陣取って氷の足場を伸ばしているのが見える。

「ご主人様、お待たせいたしました」
「なぁんでお前らもこっちに来たんだよ。
 アルシェの足下の方が後方だし安心できるだろう?」
『いやいや、僕の安全地帯セーフティーフィールドは君の居る場所だよ。
 アルシェも頼りになることは知っている。
 けれど、いざとなって宗八そうはちを求めちゃうならこっちに来るでしょ』
『肯定。約束は守る物です』
「さいでっか」

 可愛いことを言うじゃないかとは思わない。
 命大事にってだけの利用し合い関係だしね。
 アルシェの準備も整ったようだしクランメンバーの移動を開始しよう。

「ゼノウ、セーバーPTは戦線を離脱して休息に入れ!
 ボジャ様とポシェントも同じく撤退して休息に入ってください。
 スィーネ、テルナローレ、リッカはその場で戦線継続!以上!行動開始!」
〔〔〔〔〔〔〔了解!〕〕〕〕〕〕〕

 返事が聞こえると同時接続していた揺蕩う唄ウィルフラタも続々と切断されていく。

『お姉さま、お父様。
 クー達も一度離れます。お気を付けてくださいませ』
「あぁ、任せとけ。
 戻る途中でフラムとベルをアルシェの元へ届けてやってくれ。
 戦場を観察するなら高い方が良いし、
 アルシェなら頭の回転も速いから解説もこなすだろう」
「かしこまりました」

 ウェポン形態からニュートラル形態に戻ったフラムとベルをメリーに引き渡す。
 離れ際に頭を撫でてやると不安な顔が少しだけ和らいだ。

「しっかり観察して気づいた事があればアルシェに伝えてやってくれ。
 そんでアルシェが指示を出したらちゃんと従え」
『わかった』
『わかりました』

 最後に残るはマリエルだ。

「待たせたなマリエル、ニル。
 切りの良い所で帰って寝ろ」
〔言い方ぁ!長時間2人で空を守ったんですからね!〕

 疲れてるだろうにテンション高ぇ・・・。

「はいはい、全部終わったらちゃんと撫でながら褒めてやるよ」
〔それ喜ぶのはニルちゃんだけで私は恥ずかしいだけだってば!
 とにかく退いて良いならコイツ多少引っ張っても良いですか?〕
「いいよ。被害出さないようにな」
〔了解。隊長、おやすみなさい〕
「あぁ、おやすみ。
 じゃあ、お前らも今日はお疲れ様。
 兵士の交代タイミングに間に合うように全員を起こして配置に着かせてくれ」
「かしこまりました。
 明日からは私たちも戦闘に参加しても?」
「かまわないけど無理はするなよ」
「わかっております。では」

 メリー達の姿を見送ったついでにアルシェを見上げると、
 アルシェの両脇にはそれぞれアンカーが出現していた。
 精霊を宿してセントリーガンの真似事とあるじを守る2枚盾の役割を担う魔法は発動済みか。
 本当はアルシェとアクアはセットにさせたいけど、
 もうちょっと戦況が変化しないと無理だな。

「《コール》アルカンシェ」

 呼び出し音が響く中正面に向き直る。
 闇の中におびただしい紅く光る目と黒紫のオーラを纏う敵の集団がこちらへと駆けてくる様子に改めて覚悟を決めよう。

 どんと来い、理不尽!
 夜の間は魔神族だろうとここは通さんぞっ!
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