特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
313 / 450
第13章 -1st_Wナユタの世界-

†第13章† -28話-[禍津大蛇]

しおりを挟む
〔ナユタ復活の最終工程に入ったと思われます!全員警戒を強めてください!〕

 際限なく降り注ぐ雷に打たれ狂暴化した瘴気モンスターを片っ端から倒しまくっていたその時、アルシェが強制的に[揺蕩う唄ウィルフラタ]を繋いで注意喚起して来た。
 振り返り世界樹を見やればゆっくりではあるが世界樹の下部から魔方陣が順々に広がっているのが見て取れた。

「最終工程ね……。あの魔方陣ひとつひとつがナユタの構造情報を保有してるってところか」
『(差し詰め、神族のナユタへ加工中という事ですね)』
『(じゃあさ~、ここで世界樹を破壊しておけば復活しないのかなぁ~?)』
『(あら、アクア姉様にしては冴えた考えですね。わたくしも同じ考えですよ)』

 俺とクーの考察はほぼ同じ様だ。続くアクアの考えに同意するアニマだったけど馬鹿にされているのに気づかずアクアは「えへへ~♪」と喜んでいる。それで姉の威厳は保たれているのだろうか?



「ん?」



 見間違いかと思った。それは起き抜けの様に世界樹からその身をのそりと立ち上げ、ナユタの復活進行と共に世界樹をぐるりとまず一周して見せた。黒い、禍々しく、何とも言えない脅威と恐怖がぶるりと俺の身体を振るわせる。
 冷や汗が一気に噴き出して容易に顎から1滴、2滴と滴り落ちて行く。

「見えているか?」
『(お父さんと同じです。ボク達も当然見えているです)』

 ノイ以外は俺と同じく身を強張らせて得体の知れないアレを見つめ続ける。

「フランザ達はどうだっ!?アレが見えているか!?」
〔は、はい!アレとは、黒いミミズの様な、蛇の様なアレの事で間違いありませんよねっ!?〕
「そうだ!見えていない者はいるか!?」
〔……タルテューフォと拳聖けんせいエゥグーリア様は見えていない様ですが感じ取れる様です。この地の者は何も……。アレは……何ですか?〕

 それは俺が聞きたいくらいだ。今もなお出て来たところからどんどんと伸びて行き、既に何週も世界樹をその身で巻き付いてナユタを追って行く。分かるのはアレがこれから厄災を広げるであろう事。おそらく得体の知れない[破滅]という存在に関係しているという事くらいだ。

「アルシェ達は何ともないか?」
〔無事ではありますが、世界樹が尋常ではないほどに震えています…。
 外から見えているソレは世界樹から何かを無理やり剥がしているのではありませんか?〕

 剥がしている? 安易に考えられるなら世界樹が貯め込んでいたエネルギー。つまりは[神力エーテル]だと思われる。

「呼びかけの方はどうだった?」
〔反応はありませんでした、が、個人的な意見で言えば意識が希薄なだけで意思はあると思っています〕
「アレが完全に抜けたら意思が戻るかもしれない。その時にまた声掛けを頼む。
 ただし危険と判断した場合は安全第一を優先してゲートに戻れ。場所はマリエルが知っている」
〔わかりました〕

アラームが鳴り続ける脳内を無理やり抑え込み次の手を考える間にクーがアドバイスをしてくれる。

『(お、お父様…。とりあえず[転写]を数枚しておきましょう)』
「だな……」

ソレを画角に収めて数枚写真に収めた。
思考は止めない様に意識しつつとりあえずアレがこのまま世界樹を登り切るのは不味いと、どんどんと上昇していく危機感に従って妨害を試みる。

「《スタイルチェンジ/カレイドルークス!》」
『(一点突破だあああああ!)』
「《光竜一刀こうりゅういっとうっ‼》」

 精樹界エレジュアの力も分けてもらい威力を増した光の奔流は何の妨害も無くソレに到達して飲み込んでいく。
 しかし、奔流が収まったその場には時間稼ぎにも、何の影響も受けなかったソレが世界樹をとぐろを巻きながら登っていく様子だった。

「明らかに瘴気関連の悪しき物だぞ…。何故光属性の攻撃が効かない!?」
『(良くも悪くもお父様は力技になってしまっています。アレが呪いならば浄化する手段が定められているのかと…。
 もしくは神族や魔神族よりも上位存在の為効果が出ていない可能性も……)』

 クーの言う通りなら現時点で俺にはアレを止める術がない。可能性としては聖女だけか?
 でも現実的にクレアをこんな危険な場所に連れて来るなんて選択肢は取れない。第2形態を望んでいたとはいえアレがナユタと一つになった時に同じく攻撃が一切効かなければどうしようもないぞ。

「避難はどの程度で終わる!?」
〔希望者は急がせています!私達の様子から急いでくださる方がほとんどですが、アレの到達までには間に合わないかと……〕
「ちっ! 予め伝えるが、アレの全身が出た時点で世界樹の力は根こそぎ持って行かれる可能性がある。
 つまりバリアの消失と全方位から瘴気モンスターの襲撃が発生するぞ。すでに世界樹の半分も登っているんだ、10分も猶予は無いぞ!」
〔い、急がせます!〕

 揺蕩う唄ウィルフラタはアルシェが一斉接続した事で異世界に来ている全員に垂れ流されている。
 フランザ相手に喋っていた内容だがメンバーから離れているゼノウやトワインが上手く動いてくれることを願うばかりだ。
 アルシェに関しても精霊が居ないとはいえマリエルも合流しているならゲートまでの移動なら容易に出来るだろうし、俺が考えるべきはナユタ第2形態をどのくらい抑えられるか…だな。攻撃が効かなければ逃げ回って避難が済むまでの囮をしなけりゃならんし。

 その後も属性別に妨害を試してみたが何の成果も得られないまま、ついにナユタが魔神族として顕現する時が来た。
 構成の過程で魔方陣は歪められ神族ではなく魔神族として肉体を得たナユタが世界樹の天辺から生まれ落ちた……。
 その瞬間。


 ——バクッ‼


 ミミズとも蛇とも判断の付かなかったアレが瞳を開き、寸分違わず復活を遂げたばかりのナユタを大口を開いて一気に飲み込んでしまった……。

「オロチ…だったのか……。そういう、事か……」

 俺の小さな呟きは子供達にしか聞こえていなかった。
 何故なら俺の予想通りにナユタを取り込む前にオロチの身体は世界樹から抜け出しており、仲間たちと避難前の住民は全員バリアの消失と共に混乱と瘴気モンスターの襲撃に右往左往していたからだった。

『ほら、お父様ー!バリアが消えて瘴気が一気に流れ込んでいますわよー!
 光魔法で援護しないと避難も合流もままなりませんわー!』
「あ、そうだな…」

 放心していた俺と違って冷静にニルは状況を観察しており、俺をその一言で正気に戻してくれた。

「《星光せいこうを発する星々ほしぼしよ、魔力の奉納ほうのうを持って我は願う。》」
「《時には闇を、時には陽光ようこうを、瘴気に犯されし大地を浄化し清めろ。》」
「《永久とわとは願わぬ、今一時の安寧を降り注ぐ光刃こうじんにてもたらし示せ。》」
「《邪悪な意思を撃ち貫け、邪悪な存在を斬り払え。 亭々ていていたる我らが意思を理解し世界を守る糧と成れ!!》」

 詠唱に合わせて天上に光属性の魔方陣が出現した。俺の身体と七精剣しちせいけんカレイドハイリアから魔力が溢れ魔方陣へと飲まれて行く。空気中の瘴気を浄化して広がっていく魔方陣はある程度まで成長するとその輝きをより強く、強く発していく。
 以前使用した大魔法アルスマグナとは別仕様の個人技ではあるが、ゲート周りと世界樹との導線を確保するだけならこれで十分だ。

 射出準備を終えた光の魔法剣が切っ先を魔方陣から覗かせる。魔力の放出も止まりすべて完了した。
 俺は剣を振り下ろしながら詠唱を完成させる。


「《光剣流星群ミーティア・クラウソラスっ》!!!」


 空から光が降り注いだ。後にその光景を見た避難途中の村民は揃ってその様に証言している。
 味方や村民に当たる事も無く、押し寄せる瘴気を押し留める障壁の様に光を振り撒く光の剣が村の至る所に突き刺さりゲートへと導いてくれる。焦った仲間たちも瘴気による視界阻害や不意打ちを注意する必要が払拭された事を理解して攻勢に切り替え村人を誘導していく。

『(追加だあああああ!)』
「《俺式サンクチュアリフィールド!》」

 テンションが上がると熱血系になるベルの掛け声と共に地上に落とした光剣に範囲浄化魔法を施していよいよ持って戦いやすいバトルフィールドが完成した。導線の他にも適当に光剣をばら撒いたから敵が仲間の下へ辿り着く頃には瘴気の鎧の効果は半減しているだろう。

「次は第2形態、もしくは完全体の対処か……。
 世界樹が生かされるのかナユタはこのまま使い捨てにされるのかも要観察だけど、攻撃が有効かどうかで逃げの選択をしないと」

 あれを[禍津大蛇オロチ]と仮称するとしてその性質を俺は知っていた。
 魔神族の一人、隷霊れいれいのマグニと全く同じ力に見える。
 魔神族の復活は各世界の世界樹で行う必要があると知った時点から隷霊れいれいのマグニがおかしいとは思っていたけど、いよいよ持って破滅の本体との間柄が重要になって来た。マグニだけがその場に身体があれば復活出来るのをメリーが目撃しているのだ。
 元々の考察は本体が別にいて分御霊わけみたまで他人の身体に寄生して暗躍していると考えていた。
 破滅の分御霊わけみたまの一つが隷霊れいれいのマグニならば権能の一部が扱えてもおかしくはないか? そして能力的には目の前で覚醒を果たそうとして世界樹の樹上で蛇玉になっている[禍津大蛇オロチ]も世界樹に寄生していたわけだ。

 寄生能力が同じなら禍津大蛇オロチを倒せば破滅を弱体化出来るのかもしれない。
 だって自身を分けて各世界に解き放っているわけで、そもそもの目的は不明だけど一部を削っている事に変わりはないだろう。
 蛇玉がいつの間に深淵を覗けるような深く禍々しい色の球体へと変貌していた。あれから生まれる奴に手も足も出なければ各魔神族の世界を巡る計画も頓挫してしまう事を考えると祈らずにはいられない。

「気分良く元の世界に帰してくれよ…。どうにもならんかったら死んでも死に切れん!」
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...