特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第13章 -1st_Wナユタの世界-

†第13章† -31話-[魔神<霹靂のナユタ>③]

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 魔神族の底が見えた。
 全体的に高水準のステータスで構成はされているが予想通り最弱なのだろう。
 肉弾戦は中距離まで対応して来るが全てギリギリで回避可能。魔法も厄介だが特性は理解出来た。

「まだまだ様子を見たいところだったけど、気分が乗ったな……」

 世界樹から遠く離れ戦場。相対する人間から視線を外さずナユタはのそりと起き上がる。
 禍津大蛇オロチに飲まれ魔神へと強制的に進化させられたナユタの意思は固定されていた。
 殺せ。殺せ。殺せ。
 辛うじて自分は捨て駒にされたと理解した。この咆哮も魔法も、俺の全てを支配した呪いがあの人間を殺す為に勝手に体と思考を動かす。

「とはいえ被弾は不味いな。ニルは脚を。ノイは盾を」
『(《翠雷脚甲グリュモントバリハルト!》《雷天翔らいてんしょう!》)』
『(《聖壁の護楯ディバインアイギス》!)』

 深緑に煌めく脚甲グリーブで空中機動を。中空に浮かぶ煌びやかな大盾で一瞬の隙作りを。

「フラムは【蜃煙しんえん】でサポートを。残りはアクアの指示に従って」
『(《蜃煙しんえん》)』
『相性悪だし【龍玉りゅうぎょく】を護楯アイギスに混ぜておこうかなぁ~』
『受け入れるです』

 淡々とした声音で呼び出された【蜃煙しんえん】は、一度俺を包む様に現れた後、身体に吸い込まれて行った。
 アクアの呼び出した【龍玉りゅうぎょく】も大盾に溶けていき、防御性能を向上させた。
 今出来る悪足掻きはこの程度か。さてさて、昂った感情のままにどこまでの攻防戦が出来るかな。


 * * * * *
 こちらの武装を見てか、ナユタも雷の一部から大鎚を召喚していた。人型の時とは大きさは違うけれどアレはミョルニルで間違いないだろう。
 すでに距離はかなり詰められていた。互いが前に踏み出し得物が交差する。
 一合で衝撃波と炎雷が飛び散る戦いは連続で打ち合う激しいものとなり、誰も近づくことは叶わない。

 相対する得物は巨大な大鎚で面攻撃が主となる。
 まともに打ち合うには相手が悪いから角度や位置を適宜調整して捌いている。にも関わらず、衝撃波は止まらない。
 それだけの速度で振るわれ、負けない膂力で接触しては斬り払われる。
 剣が間に合わなければ大盾が絶妙な受け流しで空き時間を稼ぎ出来た時間にナユタへと斬り込み切り傷を作り続けた。

蜃煙しんえんが良い感じに決まってるなぁ!』
『自分のオプションながら誇らしい』

 俺の視覚には何の影響も及ぼしていないが、ナユタの視覚には多大な影響を与えている事を今も実感している。
 曰く、狩人は集団の一羽より単独の一羽の方が命中しやすいらしい。
 目移りし過ぎて集中力が落ちるって事だと思うけど、今のナユタの視界には俺がたくさん見えている。さらに幻術に特化したオプションのおかげで俺達が量産されているのだ。

 逆に言えば面攻撃の大鎚だからこそ今の攻防が出来ている。
 この辺りを攻撃すれば。この辺りで防御すれば。そういう大雑把な対処でなんとかなっているのだから魔神族は恐ろしいな。

『(《リカバー》)』

 加えて打ち合い時に発生する電撃と電磁波は長く浴びると状態異常値が蓄積して[麻痺]を引き起こす。
 本来は一度でも浴びれば即麻痺となる代物がニルと一体化している為、高い抵抗値により蓄積型として発動してしまっている。
 だがすぐにアニマが治してしまうので効果はほぼ無い。オマケ要素。隙が出来ればめっけもんと言った程度だ。

 スカッ。
 流れが考えていたよりも早めに軌道に乗ったから調子に乗って気を抜いた瞬間に剣が空振った。

「は?」

 目の前には今の今まで斬り合い打ち合いをしていたナユタのミョルニルと腕、そして身体もある。
 腕が上がった瞬間を狙った一撃が身体を透過してすり抜けた事で異常を認知した。

『(っ!?あ! ——上ですわー!)』

 ニルも混乱している。しかし、伝えるべき情報を整理して警告を優先する。
 暗雲から降った轟雷はミョルニルに落ち、勢い付いた雷速は神速と成って振り下ろされた。



「《——ThunderFall》」



 真っ暗だ。頭ではなく目の前が、だが。
 というか周囲全部が黒雷に包まれてる。
 凄い流暢に喋ったと思ったらなんじゃこの状況。

『(お父さん!正気に戻ったならなんとかするです!余り持たないですよ!)』

 はっ!俺は正気に戻った!
 ノイの大盾で受け止め、盾から溢れ出るアクアの水が導線を作って黒雷を逃がしている。
 その守りが残る間にこの雷の結界から脱出しなければならない。

 炎神一閃えんじんいっせんで盛り返せる可能性はある。しかし、先の直線砲より高威力で[魔力吸収ガイストアプション]で威力減退も出来ていない。さらに言えば一時的に得た神力エーテル並みの威力だが本物には劣る。

「クーの転移ジャンプはどうだ?」
『(超広範囲が雷の結界になっていて無理です。すみません、お父様……)』

 正面からの突破は無理。上や横への逃げも塞がれた。

「ならセオリー通り、下しかないよなぁ!」
『(急速潜行~♪)』
「カレイドは[精樹界エレジュア]に納刀!《ディグ!》」

 反転して頭から地面へと向かう。自然落下だけではなく魔力縮地まりょくしゅくちで自身を弾き飛ばして勢いよく地面に突っ込んだ。伸ばした掌で発動する魔法によって衝突することなく、俺の身体は地中深くへと潜行していく。
 巨剣も邪魔になるし位置を知らせる事となる為一時カレイドハイリア固有空間に収めてもらった。

「はははっ!」

 いやぁ、それにしても魔神族やべぇなw
 ちょっと調子に乗っただけでこうも簡単に形勢逆転されるもんかねw
 魔神族の中でも一番の雑魚だと判断して油断はあった。一閃にビビる様をみて調子に乗った。
 その次の展開が地面の中を逃走中とか不思議と笑えて来るんですけどw

 そんな笑っている間にノイ達の大盾が砕け散りミョルニルが地面へと到達した。
 ——瞬間。
 超威力の打ち下ろしを受けた大地は湖程に陥没し、広範囲に渡って地割れや隆起が起こった。
 かろうじて陥没に伴う圧縮から免れたとはいえ、地面の中でも前後左右で大地がひび割れ裂かれ断裂しては閉じたり上下に動いたりするので油断は一切出来ない。地面でこれなら地上はどうなっているのだろうか……。

『(お父様、もうすぐ範囲に入ります)』
「オッケー」

 クーの宣言通りすぐに目指していた地点まで辿り着いた事を知覚した。
 影へ潜行。そして再浮上すれば遠く離れた世界樹の村へと俺は戻って来ていた。
 攻撃を受けたのが先の先だからこちらは震度1って程度の揺れがすでに到着している。

「おかえりなさい、お兄さん。さっき遠くで凄い雷が落ちていましたけど、あれってナユタですか?」
「そうだよ。命からがら[影別荘シャドーモーテル]経由で戻ってきちゃった。
 あれの影響でこれから本震も来るから向こうに避難しておいた方が良いぞ。立ってられないくらいの奴だから」
「避難は終わってます!隊長、よく無事でしたね!」
「いちいち規模が洒落にならんからこっちも無事で良かったよ。流れ弾とか飛んできて無いよな?」

 ん? なんで皆して目を逸らすんだ?
 この感じだと被害が出たわけでは無さそうだけど……。
 え? 上? その方向だと世界…じゅ……。

「短くなってるっ!?なんでっ!?」
「えっと、お兄さんの一閃がですね…、えっと。斬り飛ばして通過して行きました」

 地上からはまだ距離がある位置だけど綺麗さっぱりと世界樹は半分になっていた。
 ナユタの広範囲攻撃の余波とか気にしてる場合じゃなかった!

「俺が被害出してるぅぅぅううううううっ!?」
「姫様と私達は世界樹から離れた後だったから影響はなかったですけどね。うわっ!本当に揺れが酷くなって来た」
「アルシェ様。ご主人様の言う通りあちらに移動しておきましょう」
「メリー…そうね。お兄さん、これだけは落ち着いて聞いてください」

 未だに混乱の最中だがアルシェの言葉で再び俺は正気に戻った。
 ナユタも俺を補足しているだろうし、確かに気持ちを乱して時間を使う訳にも行かない。
 真剣な瞳をしたアルシェが口を開く。

「世界樹は死にました。お兄さんの一閃が来る前の話です。
 この世界は放っておいても時期に滅びます。だから。 ——逃げ遅れないでくださいね」
「——あぁ。わかった」

 俺が戦っている間にアルシェ達も何か物語があったらしい。
 大人びた表情で心配そうな声音のアルシェ。俺が決着を付けずに戻るとは考えていない。
 勝って戻ると信じてくれている。その信頼に応える為にも必ず勝って帰ろう。

 本震が本格的に来る前に皆を元の世界へ帰してゲートを閉じた。
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