特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
337 / 450
第14章 -勇者side火の国ヴリドエンデ編-

†第14章† -06話-[噂の地下遺跡-噂の救世主の鎧⑤-]

しおりを挟む
 リッチの大規模魔法を魔法の盾で耐えたり回避して救世鎧きゅうせいがいの肉弾戦はマクラインの大盾とクライヴさんが相手取り、腕部が飛んでくれば攻撃チャンスとばかりに斬り払い様に傷を増やしていく。そして、最大のチャンスであり最も被弾が多いパーツ分割突撃で多くのパーツに総攻撃を行い斬撃・殴打・火魔法で確実にダメージを蓄積させていく。
 先のルーティーンの間にアナスタシアはリッチから吸収したMPをミリエステへと譲渡してミリエステ本人は立て続けに[フレアーヴォム]を投げ込み時には[ブレイズレイド]を救世鎧きゅうせいがいリッチに当て続けた。

 そんな戦いをかれこれ3時間続けており、皆の疲労がずいぶん貯まっている。
 先の魔物群暴走スタンピードは最初こそ大変だったが全て自分達で処理する必要が無かった為それなりに休憩を挟むことが出来たが救世鎧きゅうせいがいリッチとの戦いにおいては大規模魔法攻撃のおかげで後衛陣も結構な頻度で走り回る事になった。
 特にミリエステは駆け回りつつ魔法で攻撃もしつつパーツ突撃に備えてMP管理もしなければならず目に見えて息を荒げている。そろそろ限界だ。

「防御ばかりだから観察してるけど大きい傷は無いものの小さな傷はかなり与えているぞ!いい加減破壊出来るんじゃないか!?」
「俺もそうは思ってるけど……」
「硬さが変わった訳じゃねぇ。が、俺もそろそろだと睨んでる」

 リッチの大規模魔法でBOSSエリア中に紫の落雷が落ち続ける中での会話で状況のすり合わせを行う。
 落雷は全てマクラインとセプテマさんが設置した[避雷針]にほぼ落ちるので1・2発当たる程度ならすぐ回復魔法で前回可能な範囲だ。
 そんな会話を邪魔するように腕部がマクラインに向けて2つ飛んできた。救世鎧きゅうせいがいも学習するのか守りの要であるマクラインが邪魔だと認識したのか時折俺やクライヴさんの攻撃でも敵愾心ヘイトを変更することなく腕部攻撃の間ずっとマクラインを執拗に狙う事があった。今回もそのパターンの様だ。
 だからこそ大振りな攻撃もしやすくなるというもの!

「【メタルフィスト!】」
「【サンライトスラッシュ!】」

 振り抜けたけれど大きな傷を刻めただけで破壊には至らず……。
 ダメージを負った腕部はバランスを崩して俺とクライヴさんが攻撃した腕部がそれぞれ入れ替わり目の前に来た。

「【ブレイクブロウ!】」
「《セイクリッドセイバー!》」

 殻や鱗を持つモンスターに有効な戦技と勇者だけが使える戦技が再び鎧パーツに叩き込まれた。
 ——瞬間。バキッ……と音がクライヴさんの方から聞こえ顔を上げると腕部の一部が大きく欠けていた。地面に転がっていくパーツの欠片はやがて勢いを失くして止まり、それ以上に動くことは無かった。つまり。

「思った通りだったな!はははははっ!」
「よし!よしよしよし!全体的にダメージは入ってるからここからだぞ!メリオ!」
「わかってる、わかってるからマクライン!こっち振り返らなくていいから!」

 自分も嬉しくはあるけれど自分以上に喜ぶ頼れる盾役の様子にそれ以上に喜色を現すことが出来なかった。
 それでも口角は否応なしに上がって来る。マクラインの言う様にここからパーツの破壊が加速度的に進めばそこまで時間を掛けずに討伐だ出来そうだ。
 ひとまず腕部の攻撃を凌ぎ切り、続けて救世鎧きゅうせいがいの鎧パーツが光の線で区切られ始める。
 このパーツ突撃でどこまで破壊出来るか……。

 ——バラッ!

 パーツ群は大きさが大小混ざって突撃して来るから受けるダメージに幅がある。
 流石に全弾当たればHPが危険域に達してしまうけれど、それでも大半はマクラインの盾に阻まれるしパーツ群は二手に分かれてセプテマさん達後衛陣の方へも向かうので多少無理をしてもイケル計算だ。
 俺は盾を装備から外してエクスカリバーを両の手で握るとマクライン達よりも数m後方に位置取る。

「形態変化《エスカリボルグ》」
『承認します。片手剣エクスカリバーから両手剣エスカリボルグ。完了』
「《セイクリッドセイバー!》」

 片手剣から両手剣へ。そして魔法で光の剣身帯びる事でさらに攻撃範囲が広がった。
 これで余裕があればクライヴさんやマクラインが弾き飛ばしたパーツにも攻撃出来るかもしれない。
 ガンガンガンッ!とマクラインの盾に着弾したパーツが彼の頭上を越えて行く。
 その横を通り過ぎて俺に向かう一段をまずは斬り払うべく足りない攻撃速度を新しくレベルアップで得た魔法で自己ブーストする。

「《勇敢な心ブレイブハート!》」

 疲れを忘れ身体も軽くなり、パーツの細かい装飾や傷も見える。
 技術で再現出来ないセプテマさんの[高速剣]を魔法で底上げしたステータスで無理やり再現して片っ端から斬り払う。カランカランと後ろに飛んで行った何かが地面を転がる音が聞こえるが続けてマクラインの頭上を越えたパーツとクライヴさんが殴り飛ばしたパーツがズレたタイミングで飛んできた。
 その全てを斬り払った後に残るのは先ほどからも聞こえていたパーツの欠片。そして。

「メリオ!」
「やったぜ!」

 真っ二つに分かれたパーツが3つ。そちらも地面の上を転がったまま微動だに動き出さない。
 二人が再び上げる喜びの声は聞こえていても魔法で戦闘に集中している俺は後衛陣が捌き切ったパーツと今しがた自分達を襲っていたパーツが群れとなって本体に戻ろうとしている場所に向けて魔法を準備する。

「《ブレイズ・リュミエール》」

 チャージが必要な超火球を準備している間にもミリエステと契約火精の魔法追撃で爆発が止まらない。
 通り過ぎた後にはパーツの欠片が多く散らばっておりもう間もなくの終わりをさらに予感させた。

『行けます!』
「うおおおおおおおおおおっ!砕けろおおおおおお!!」

 パーツ群がリッチに辿り着く直前の位置に向けて振り下ろす腕に引っ張られるように超火球が動き出し瞬く間に射速は上がって着弾した。火球と言っても光が集まった超高熱の[ブレイズ・リュミエール]はミリエステ達の様に爆発はせず確実にパーツ群とわずかながらリッチの片腕も飲み込みその輝きを失った。
 攻撃が終わると魔法の効果が切れて俺は正気を取り戻した。地面に散らばる細かなパーツが多すぎて正確な状況はわからないが救世鎧きゅうせいがいリッチの鎧にいくつか穴が空いている事からパーツの破壊には成功した事を全員が理解する。

「きゃああああああ!やったわ!アナスタシアさん!」
「やりましたね!ミリエステさん!あぁ、良かった……」
「うむうむ。成果が見えるのは良い事じゃな」

 こうなると突きでリッチだけにダメージを与える事も出来るだろう。
 しかし、懸念点でもあるリッチが先に倒れた後に代わりに仲間が取り込まれる可能性を考えるとあまりリッチだけにダメージを与えるわけにも行かない。されど、程々にダメージは与えておかないと救世鎧きゅうせいがいの破壊をしたあとにHP満タンのリッチ相手では時間が掛かり過ぎる。
 今のところリッチはどれだけダメージを受けているのか全く分からないからここから調整を進めなければならない。
 つかの間の喜びなど自分達には関係ないとばかりに足元に霜が広がり走って行く。

「氷柱の津波!」

 その後も順調に2時間掛けて鎧の破壊、並びにリッチへのダメージも重ねて……。ようやく倒せた時。
 救世鎧きゅうせいがいリッチが最後に立っていた場所には、救世主の鎧と良く似た鎧が地面に転がっていた。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...