特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

†第15章† -06話-[残暑終了のお知らせ。]

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 アスペラルダ渾身の政策のひとつとして鍛冶師の質を上げようという話があった。
 武具には希少度があり一般的な鍛冶師では普通ノーマルしか作製する事しか出来ず、ひとつ上の優秀ファインですら調子が良ければという体たらくで。当然武具は消耗品なので手入れや補修も必要なのにダンジョン産のレア武器は対象外であった。
 その環境を改善する為に行われたのが極東の島[リクオウ]から渡来して来た異邦人でありリッカ=ニカイドウの父親でもありユレイアルド神聖教国の鍛冶師でもあるマサオミ=ニカイドウ氏を火の月の期間だけアスペラルダに招致して王都の鍛冶師を鍛え直してもらうという政策だ。
 避暑を目的として釣れた様な気がしないでもないが水の国で過ごす火の月はお気に召したのか何の問題も起こらぬまま暑かった日々は過ぎ、残暑も終わり土の月の空気になって来た今日この頃。

「今回はアスペラルダにご協力いただき感謝している。また折を見て招致の依頼をしたいと考えているのだがどうかな?」
「既に肌寒く感じております故、次にお呼びになる際は来年の同じ時期をお願いいたします」
「ははは!それもそうだね。また宗八そうはちに迎えに行かせる予定だから覚えておいて欲しい」
「ご連絡をお待ちさせていただきます。それではこの度はこれにて御前を失礼致します」

 謁見の間から退室して来たマサオミ氏。
 兵士と雑談をしながら待っていた俺は手を挙げて自身の存在をアピールするとマサオミ氏はこちらに真っ直ぐ向かってくる。

「色々とお疲れさまでした」
「避暑と言いつつなんだかんだと土の月の頭まで世話になったからな。その分鍛冶師共にはしっかりと技術を叩き込んで優秀ファインまではコンスタントに作製出来る様になったぞ」
「夏の間だけでそこまで叩き込んでくれれば御の字ですよ。流石に属性武器は別カテゴリですか?」
「だな。次は来年の予定とギュンター陛下と約束しちまったからまた話を持って来てくれ」

 アスペラルダにはマサオミ氏だけではなく奥さんのルビディナさんも一緒に来てもらっていたので今回も一緒に送り届ける為に一家が泊まっていた客室へと歩を進める。今はリッカと共に客室で待ってもらっている。この招致していた間にリッカは何度か両親に会いに来ていて今年最後の一時となるかもしれない家族との対話を楽しんでいた。

 コンコン!
水無月みなづきです。陛下との謁見が終わりましたので迎えに上がりました。外で待ちますので準備が出来次第お声がけください。さあマサオミ氏は中へ」
「あぁ、ありがとう」

 準備自体は奥様とリッカが雑談をしながらも進めていたらしくそれほど待たずとも準備完了の声がけが来た。
 ゲートの設置はこの客室に施してこのまま送り届ける手筈となっており、向こうにはクレアとクレチアさんに本日送る旨を伝えているので変な混乱は起こらないだろう。実のところサーシャも「クレア様に会いたい!」とか言ってたけど、異界が開いた以上は強化が遅れている彼女の時間を一日でも無駄にしたくはないので今回は泣く泣く飲み込んでもらった。終わったら素晴らしい一時を過ごさせてやると約束をしたので守らないと本気で命を狙われる事になりかねない……。
 室内に入室してゲートを開いた。繋げたのは彼らの自宅前。

「この度は主人だけでなく私までアスペラルダにご招待いただきありがとうございました。今後とも主人だけでなく娘共々良いお付き合いをよろしくお願いいたします」
「こちらこそ遠い地までご足労頂きありがとうございました。またお声がけすると思いますのでその際は奥様もご一緒に招待いたしますよ。もちろんご息女と会える時間は配慮させていただこうと考えておりますので」
「陛下からもまた呼ぶだろうとお言葉を頂いた。暑くなる時期にまた……呼んでくれ。水無月みなづき殿たちの活動についてはリッカからもクレシーダ聖女からも伺っている。娘の為にも出来得る限り力になるからいつでも言ってくれ、と言いたいところだがそのレベルの武器や防具は流石に俺でも手入れが精々だ」
「出会ってからずっと助けていただいておりますよマサオミ氏。今後も頼りにさせてもらいます」

 向こうへと荷物やらお土産やらを全員で運び込み、アスペラルダ側には俺とサーニャが残った。
 ルビディナさんの丁寧な言葉にこちらも身を引き締めて返礼を行いマサオミ氏とも別れの挨拶を行う。最後は隣にいるリッカが散々別れを惜しみながらも率先して荷運びを手伝っていたけれど最後の言葉を口にする。

「お父様、お母様。久し振りにゆっくりとお会いすることが出来て嬉しゅうございました。リッカは再び戦場に赴きますがまた再会出来ることを心待ちに致しております。それまで御健勝であられますよう祈っております」
「私達はリッカの顔が見られるだけで嬉しく思っています。リッカの事もアルカンシェ殿下の事も隊長さんの事も、お仲間も無事を祈っています。次も元気な姿で私達の元へ帰ってきなさい」
「今回も母さんが言いたい事を言ってくれたから俺は短く言うが、いつでも遠くでお前の無事を祈っているよ」
「はい!ソレイユ様と…サラマンダー様のご加護がありますよう!」

 仲の良いニカイドウ一家のお別れに立ち会うとどうにも朧げな記憶の彼方にある家族を想起して俺も家族に会いたくなってくる。
 召喚者の記憶は召喚時こそ混乱してあやふやでも時間が経てば自然と全てを思い出せるという話だったはずなのに俺の記憶は未だに元の世界の記憶が曖昧な部分が多く存在している。家族構成は父は他界しており姉と母親と犬と兎がいた、と思うけど顔や声は思い出せない代わりに口調や性格はなんとなく覚えているから家族が恋しくても難儀する。
 涙ながらにしっかりと別れを告げたリッカが手を振る中で最後に会釈をしてゲートを閉じた。光精王ソレイユ様だけではなく今後お世話になる火精王サラマンダー様の名を挙げたのには花丸を上げたい。

「さて、そろそろリッカもサラマンダー様に祝福を貰えないかもう一度顔を出しに行こうか」
「ぐすん。そういえばそろそろミリエステ様が祝福されてから半年になりますね。真なる加護の祝福は半年毎にしか出来ないと聞いていますがヴリドエンデの王族を優先しなくてよろしいのですか?」
「今から育てるのは時間が掛かるし半年前のリッカと同じでサラマンダー様に認められるわけが無いだろう。俺の子供たちの副契約者は今後アルシェを支えられる人材に任せると決めているんだ。どこぞの王子に任せられるか」
「付き合いはまだ短いですがお二人の関係はもどかしくもあり微笑ましい複雑な気持ちになります。アルカンシェ様も水無月みなづき様も節度を保てていて凄いですね」

 何言ってんだコイツ。
 俺が居なくなった後でもアルシェが生き残れるように手を付くしているだけなんだぞ。お前らは凄い覚悟だ凄い愛だと持て囃すが、俺にとっては事は結構辛いもんだぞ。リッカの台詞に対して俺が憮然な態度で何も言わない事で何かを察したリッカは「言葉が過ぎました、申し訳ありません」と謝罪の言葉をそれに見合う表情で発したので俺も気分を変えてサラマンダー様の元へ繋がるゲートを開くのであった。
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