特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

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第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

†第15章† -09話-[その夜……]

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 その日は全員興奮が冷めやらぬ中、夜も差し迫って来たので俺達は城に泊まる事になった。
 親公認ではあるがアルシェは14歳。子供達も居る手前この興奮のままではどこまで致してしまうか自分達でもわからない以上今夜はそれぞれの部屋で眠る事となった。しかし、子供たちの寝息にと子供らしい体温に囲まれて眠れるかと思いきやなかなか眠りに付けない。

『お父様、眠れませんか?』
 珍しくアニマが俺から出て来た。
「アニマも。告白してからずっと難しい顔してるよ。子供らしくない」
 可愛い四女の頭を撫でる。頬を膨らませたアニマはぷりぷりと怒り出す。
『体は子供ですけれど精神は子供と大人が同居している様なものですもの。それはそうとしてお父様には辛い現実となってしまいました……改めて申し訳ありませんでした。貴方の人生を弄ぶ意図はなかったのです』
「わかってるよ。なんとかして世界を守ろうとしたんだろ。でも、破滅を予期していたのか?」

 アニマは大枠としての説明はしていたが何故俺が選出されて何故召喚するに至ったのかの説明は無かった。
 あくまで俺が召喚されたのは勇者とは違う方法だと説明しただけ。アルシェは感動で普段の聡明さを失っていたけれど陛下と王妃は気付いたうえで何も言わなかったのだ。

『破滅と固定したわけでは無く精霊の危機と定義しました』
 だから称号に精霊の救世主があったのだと宗八そうはちはハッと理解する。
『異世界への行きは魔力でどうにかしましたが戻りは分御霊わけみたまに丸投げでしたので、おそらくタイミングから見て勇者召喚に相乗りして召喚したのでしょう。正式な方法じゃないから勇者とズレた召喚となってしまったのでしょうね』
 なるほど、と宗八そうはちは納得した。正解ではなくとも筋は通っている。
「もしも破滅の到来と俺の召喚が大幅にズレる可能性はなかったのか?」
『少なくとも世界樹が出て来る前に宗八そうはちの召喚は何とかしたでしょう。ただし、戻りの魔力も分御霊わけみたまが使用する必要性が出るので今以上に不完全な状態での召喚だったでしょう。記憶もさらに曖昧で片腕くらいは失った状態になったと思いますよ』
 そう考えればかなり運が良かったのだろう。不完全な記憶、不完全な身体ではよしんば精霊と契約出来たとしても今以上の苦境である事に違いはない。

 ともかく俺自身が自分の境遇を悲観しておらず喜んでいるのだ。
 いつまでも愛娘が落ち込んでいるのは許容出来ない。両手で頬をムニムニしたり頭を撫でたり背を優しく叩いたりとあやして落ち着かせていく。気にしなくても良い、俺は喜んでいると何度も伝えればアニマの顔の険も取れていく。

「そういえば、なんで俺だったんだ?」
 完全に身体を委ねて脱力状態のアニマに尋ねる。それにアニマは事も無げに答えた。
『選定は分御霊わけみたまに任せていましたが少しでも魔力に理解のある者を選んだはずです。何か心当たりはぁ~?』
 もう眠そうだ。
「いや、心当たりはないから記憶が零れてるんじゃないか? それ意味ある?」
『本質が大事なので問題は無いでしょう。その証拠にお父様は救世主足り得る実績を立てていますから』

 すげぇ綱渡りも良い所じゃないだろうか?
 選定は世界を渡った分御霊わけみたまが行った事なのでその時既にアニマ本人は消えている。そして俺は魔力云々の記憶は無いとか誰も説明できないじゃないか。まぁ実際異世界に来ちゃってるしアニマの言う通り実績があるわけだから結果オーライで良いのかな。

『今後どうするのですか?』
 いつでも眠れそうな状態なトロけ顔のアニマの問い掛けに宗八そうはちは当然と答える。
「破滅の本体が到達するまでに戦力を整えるよ。俺自身が戦えない可能性は結局残ったままだし」
『そちらではありません。アルシェですよ。お爺様とお婆様が許しているからほぼ婚約状態ですけどお父様とアルシェの幸せを考えればずっと鍛え続ける生活というのはお勧めしませんよ』
 アニマの懸念は当然宗八そうはちも考えていた。しかし、そちらについてはある程度目途を設ける予定であった。
「実はナデージュ様からお腹の子供の性別が男の子だって聞いたんだ。その子をいずれ王太子にしてアルシェは分家として外に出すらしい。俺もある程度精霊使いの人材育成機関とか作れれば手を離しても良いと思ってる。救世主とはいえ何も破滅を倒すまでやらないといけない訳じゃないんだろ?」
 その報告にアニマは嬉しそうに微笑んだ。
『もちろん。切っ掛けを作ってくれるだけの可能性もあった所を戦力を整え魔神族の討伐までやってのけるなんて想定以上の成果です。|流石はわたくしですね。お父様を見繕ったわたくし分御霊わけみたまは良い仕事をしました』
 アニマは誇らしげに笑うとそのままスヤスヤと寝息を上げ始めた。

 ずっと謎だった俺の召喚。だが、蓋を開けばなんて事はなかった。
 当事者なのに興味が無さすぎるかとも思うけれど、俺は自分よりも自分が大事なものにしか興味を持てないからアニマが語った内容についても被害者の実感はなかった。それよりもアルシェや子供達とずっと一緒に居られる事の方が大事で嬉しかったのだ。
 ただ、これまで消える消える詐欺をしていた事実が新たに浮上した為方々へ謝罪参りに行かなくてはならないな……。

 いつの間にか子供達の寝息に宗八そうはちの寝息が合わさり夜は更けて行った。
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