特に呼ばれた記憶は無いが、異世界に来てサーセン。

黄玉八重

文字の大きさ
373 / 450
第15章 -2ndW_アルダーゼの世界-

†第15章† -19話-[再探索②]

しおりを挟む
 毎日朝の訓練を終えて汗を流し朝食を食べてから異世界探索に約10時間繰り出した。
 星の大きさ次第ではあるけれど法定速度に比べてさらに速く移動している宗八そうはち達は海も渡り別大陸へとやって来ていた。

 地震と噴火する火山を前に宗八そうはちは呟いた。
「この大陸もひでぇな……」
 それに同意するアルカンシェ。
「アスペラルダにあるのは休火山ですし活火山を見るのって実は初めてです。町の近くで噴火すると考えると怖いですね」
 火山には鉱物や硫黄など希少な素材が豊富ではあるが死と隣り合わせである為、安全を優先にアスペラルダでは火山の近くに町や村は作らない様にしていた。鉱山が豊富なわけでは無いが魔族と戦う為に協力関係を取る各国との貿易で十分金属や宝石は潤っているので火山の怖さを目の当たりにして探索組の面々は緊張感を持って前進する。

 セーバーが汗を拭いながら周囲を見回す。
「この辺りは今までよりも気温が高いな……。火山の所為で空気も廻るし魔法で熱気を抑えるにしても限界があるぞ」
 彼の言葉に同意するのは風精霊使いのマリエルとライナーだ。滅入り始めた三人に宗八そうはちが声を掛ける。
「ヤバそうなら暖かめの[コキュートスルーム]に切り替えるか? 普通なら一瞬で凍死してもおかしくない魔法だけどこの大陸なら丁度良いかもしれない」
 三人は悩む。現在は[クールルーム]で涼しい空気を用意し[エアロサーモス]でその空気を閉じ込める事で異世界の熱気に対抗している。しかし、今までの大陸は千度前後でも多少暑い程度に抑えられていたが今は汗が止まらず体力がどんどんと削られていると実感できる程の暑さを感じていた。[クールルーム]はエアコン程度の範囲で空気を涼しくしてくれるが宗八そうはちが新しく創った[コキュートスルーム]は言葉通りマイナス何百度に設定出来る魔法で涼しいどころではない。
 悩みはするがこの状態では仲間に迷惑を掛けるとそれぞれが考え、ひとまず一番暖かい設定で魔法を掛けてもらう事となった。

「《コキュートスルーム》」
「うおっ!おぉ~~~……。うおっ!」
 一番頑丈で凍死し無さそうなセーバーに魔法を掛けると変な反応をする。その理由を彼は語った。
「エアロサーモスがあると凍える程寒かったから風二枚で作っている空気の層の一枚を解除して外の熱気と混ぜる事で中和しようとしたんだ。基本的には暑くも寒くもないんだが、時々凍結のデバフになる」
 体の動きを封じる凍結のデバフが発生するなら戦闘中は危ない場面が出て来る。今回創った魔法はこの異世界の熱気を再現する為の[マグマルーム]の反対魔法を大雑把に組み上げたものだ。そういうデメリットがあるにしても彼らの環境が改善するなら失敗とは言え造っておいて良かったと宗八そうはちは考えた。あとは子供に任せれば凍結のデバフが出ない様に調整をしてくれる。
「アクア、頼んだぞ」
『(アクアにお任せ~♪)』
 これまた宗八そうはちに丸投げされた依頼に第一長女アクアーリィは喜んで了承する。
「調整しながら移動を続けるぞ。速度は落とすけど何かあればすぐに知らせろ」
 セーバー、マリエル、ライナーの三名はリーダーの言葉に頷き後を追う。

 環境適応能力の高い加護を持つ宗八そうはちとアルカンシェを含むその他のメンバーも熱気が上昇した事は把握していた。
 すでに風精使いの全員の[クールルーム]は限界まで下げている。それでも数十度下がっただけでは熱気の上昇量を打ち消すことは出来ておらず汗が浮き始めていた。まだまだ海を渡る必要があるかもしれず、今後更に暑い大陸に足を踏み入れる必要が出る可能性を考えればクールとコキュートスの間の魔法も創るべきだと宗八そうはちは考える。今はセーバーを人身御供にして調整を進めるとしよう。

 この大陸は熱気も酷ければ魔物もそれに応じて強くなった。さらに1ランク高い魔物が群れで現れる。
「アルシェ、フランザ、トワイン!足止めしろ!セーバー、リッカ、ディテウスは後ろに抜かせるな!マリエルは第二陣を遅らせろ!」
 先の大陸で現れた木炭のトレントが更に大型に成長したトレントが一方向から40体以上の群れで駆けて来る。木炭らしく打ち合わされる音は甲高く美しい事が耳に触る。群れの合奏は爆音となって意思疎通の邪魔となる為、声が届く間に最低限の指示を出す。
「《銀世界!》」「《フリズドスフィア!》」「《シャインスコール!》」
 アルシェの広範囲足止めに加えフランザが凍てつく光球を複数射出し上半身まで身動きを阻害する。加えてトワインが空へ放った矢は瘴気と灰の空気を斬り裂き上空で炸裂。止まったトレントが集まる範囲に光の矢が降り注ぐとトレントは瘴気の鎧を剥ぎ取られ苦しみだす。その隙に前衛陣は急接近して第一陣を蹴散らし始めた。

 宗八そうはちは地精ノイティミルにオプションを借りて聖壁の護腕ディバインラームで目に付くトレントを内側から破壊していく。
「《極剛波動ブラストマクスィール!》」
 セーバーは氷に抵抗してギチギチ音を立て抵抗するトレントを嵐の破壊力を持って粉砕する。
「《嵐破剣ヴァルテリアブレイク!》」
 リッカは丁寧に一体一体を細切れにしていく。
「二階堂流!虚鞘抜刀こしょうばっとう!【桜花おうか!】」
 ディテウスは自分に出来る最大の突きを放ち高ランクトレントの硬い身体に棒で風穴を開けて行く。
「《水華蒼天突すいかそうてんづき!》」

 順調に前衛が数を減らす中、少しだけ遅れて到着予定だったトレント達はマリエルの敵愾心ヘイトを向けて襲い掛かるも互いの大きな体が邪魔をして小さく俊敏で空を駆けるマリエルを捕える事が出来ずにもたついていた。
「《鈍足のバロック!》」
 更にAGIを下げる音楽を撒き散らしデバフを受けたトレントは順調に第一陣から距離が離れて行った。

「(お兄さん!第二陣へ攻撃開始します!)」
 素早く戦場を見回しトレント以外の魔物が死角から寄って来ていない事を確認したアルカンシェは宗八そうはちへ念話する。現時点でフランザとトワインのサポートがあれば第一陣は安全に処理出来ると判断したので。宗八そうはちもすぐに答える。
「(いいぞ!)」
 数を減らしたとはいえ密集気味の大きなトレントが遮蔽物となり奥に居る第二陣を相手取るには技術が必要だった。
「アクアちゃん!」
『(氷纏マテリアライズ~!スナイプモード~♪)』
 氷のドレスアーマーが形状変化し遠距離を狙う為の軽装に切り替わる。瞳には標準装備として[ウォーターコンタクト]が仕込んでありズームが可能になったアルカンシェは第二陣に向けて攻撃の準備をする。
「《氷属性武器精製アイシクルウェポン:ランサー》」
 入手済みの装備を魔法で召喚する魔法を唱えたアルカンシェの背後に八本の槍が生成される。召喚されたのは当然グラキエスハイリア。弓を引くような姿勢になったアルカンシェの手元に一本の氷の槍が装填され……。
「《流星蒼槍グリムアルカンシェル!》」
 詠唱と共に後方に引いた腕の指先が槍の石突に触れるとアルカンシェの水色の魔力を帯びた氷の槍が手前のトレントの間を縫う様に射出されてマリエルが足止めしていたトレントの頭部を撃ち抜き転倒させる。防御力の高いトレントを倒すには至らずとも的確に頭部を狙い撃ちにしてバランスを崩したどの個体もすべからく転倒して足を止められる。

 槍の射出の為に横移動を始めたアルカンシェの邪魔に成らぬ様にフランザとトワインは立ち位置を調整した。
 宗八そうはち達も第一陣のトレント達を片付け終わり前進するとトレントは全員のろのろ転倒から起き上がろうと動いていた為そのまま襲い掛かりトレントは綺麗に全員討伐された。
 手透きになった者から周辺警戒に切り替えたが特に魔物の増援が入る様子は無く戦闘は終了したと判断した。

 その日も大した発見も無く探索は終了してしまうも[コキュートスルーム]の調整をアクアーリィが完了させてくれたおかげで加護の無い残留メンバーが異世界へ同行出来る可能性も見えて来た。結局は風魔法と氷魔法を仲間に掛けてもらわなければならない上に手を離せない時に魔法が切れれば焼死してしまう事を考えれば万全とは言えないがその辺りは焦る話でもない。
 次の日も、次の次の日も、そのまた次の日も宗八そうはち達は進み、海だったモノを渡り、新たな大陸へと上陸したのだった。
しおりを挟む
感想 87

あなたにおすすめの小説

家の庭にダンジョンができたので、会社辞めました。

希羽
ファンタジー
都内のブラックIT企業で働く社畜・佐藤健太(27歳)。 手取り18万、残業100時間。唯一の資産は、亡き祖母から相続した郊外のボロ戸建てだけ。 「このまま死ぬのかな……」 そう絶望していたある夜、庭の物置の裏に謎の穴が出現する。 ​そこは、なぜか最弱モンスターしか出ないのに、ドロップアイテムだけは最高ランクという、奇跡のボーナスダンジョンだった。 試しにスライムを叩いたら、出てきた宝石の査定額はなんと――【1,000,000円】。 ​「……え、これ一個で、俺の年収の3分の1?」 ​スマホアプリで即換金、ドローン配送で手間いらず。 たった10分の庭仕事で5000万円を稼ぎ出した健太は、翌朝、上司に辞表を叩きつけることを決意する。

優の異世界ごはん日記

風待 結
ファンタジー
月森優はちょっと料理が得意な普通の高校生。 ある日、帰り道で謎の光に包まれて見知らぬ森に転移してしまう。 未知の世界で飢えと恐怖に直面した優は、弓使いの少女・リナと出会う。 彼女の導きで村へ向かう道中、優は「料理のスキル」がこの世界でも通用すると気づく。 モンスターの肉や珍しい食材を使い、異世界で新たな居場所を作る冒険が始まる。

【完結】辺境の魔法使い この世界に翻弄される

秋.水
ファンタジー
記憶を無くした主人公は魔法使い。しかし目立つ事や面倒な事が嫌い。それでも次々増える家族を守るため、必死にトラブルを回避して、目立たないようにあの手この手を使っているうちに、自分がかなりヤバい立場に立たされている事を知ってしまう。しかも異種族ハーレムの主人公なのにDTでEDだったりして大変な生活が続いていく。最後には世界が・・・・。まったり系異種族ハーレムもの?です。

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

最弱スキルも9999個集まれば最強だよね(完結)

排他的経済水域
ファンタジー
12歳の誕生日 冒険者になる事が憧れのケインは、教会にて スキル適性値とオリジナルスキルが告げられる 強いスキルを望むケインであったが、 スキル適性値はG オリジナルスキルも『スキル重複』というよくわからない物 友人からも家族からも馬鹿にされ、 尚最強の冒険者になる事をあきらめないケイン そんなある日、 『スキル重複』の本来の効果を知る事となる。 その効果とは、 同じスキルを2つ以上持つ事ができ、 同系統の効果のスキルは効果が重複するという 恐ろしい物であった。 このスキルをもって、ケインの下剋上は今始まる。      HOTランキング 1位!(2023年2月21日) ファンタジー24hポイントランキング 3位!(2023年2月21日)

転生したらスキル転生って・・・!?

ノトア
ファンタジー
世界に危機が訪れて転生することに・・・。 〜あれ?ここは何処?〜 転生した場所は森の中・・・右も左も分からない状態ですが、天然?な女神にサポートされながらも何とか生きて行きます。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 初めて書くので、誤字脱字や違和感はご了承ください。

転生貴族の移動領地~家族から見捨てられた三子の俺、万能な【スライド】スキルで最強領地とともに旅をする~

名無し
ファンタジー
とある男爵の三子として転生した主人公スラン。美しい海辺の辺境で暮らしていたが、海賊やモンスターを寄せ付けなかった頼りの父が倒れ、意識不明に陥ってしまう。兄姉もまた、スランの得たスキル【スライド】が外れと見るや、彼を見捨ててライバル貴族に寝返る。だが、そこから【スライド】スキルの真価を知ったスランの逆襲が始まるのであった。

スーパーの店長・結城偉介 〜異世界でスーパーの売れ残りを在庫処分〜

かの
ファンタジー
 世界一周旅行を夢見てコツコツ貯金してきたスーパーの店長、結城偉介32歳。  スーパーのバックヤードで、うたた寝をしていた偉介は、何故か異世界に転移してしまう。  偉介が転移したのは、スーパーでバイトするハル君こと、青柳ハル26歳が書いたファンタジー小説の世界の中。  スーパーの過剰商品(売れ残り)を捌きながら、微妙にズレた世界線で、偉介の異世界一周旅行が始まる!  冒険者じゃない! 勇者じゃない! 俺は商人だーーー! だからハル君、お願い! 俺を戦わせないでください!

処理中です...