狙われた優子

雄太

文字の大きさ
4 / 13

優子と父親

しおりを挟む
優子の家の台所
翔子が目を腫らして入って来る。
居間では優子が沈痛な表情で座っている。
優子の近くに康太が立っている。
「心配しなくてもお父さんの頼みどおりに、お母さんにはあのことは言わなかったよ」
「……」
「お母さんを心配させたくないし……でもこれだけは言っとく、もうあんたなんか父親とは思わないよ」
悲痛な表情の康太。
優子が立ち上がって部屋を出る。

居間で康太が物悲しい顔で一人で酒を飲んでいる。
「……」

朝になり、道を制服姿の優子と真央が一緒に学校に向かっている。
「アナウンサーを目指すん?」
「うん、あたしに向いてると思うんだよね。喋るの好きだし」
「でも女子アナってなるのってめっちゃ難しいんじゃない? 倍率も数百倍とかでしょ?」
「だからって最初から諦めることもないでしょ?」
「そりゃまあそうよね」
「そういえば優子は医者になりたかったんだよね?」
「うん」
「二人とも夢が叶うといいね」
「……」
「どうしたの?」
「でもあたし最近ね、医者になるのはやっぱ難しいかなって思うようになったの。今家計はかなり厳しいみたいだし」
「……そうなんだ」
「それにあたしの両親さ、あたしの本当の親じゃなし、そんな迷惑かけれないよ」
「え? そうなん?」
 優子がうなづく。
「最近知ったんよ。もうショックでさ」
「……」
「ねえ真央、実の親と今まで育ててくれた親、あなただったらどっちが大切?」
「えー、いきなりそんなこと言われても困るわ。実の親と育ての親が一緒なのが当たり前だったからさ」
「あたしさ、育ててくれた今の両親がずっと黙ってたことがムカつくんだよね」
「言いづらかったんだよ、きっと」
「そういう問題じゃないよ、あたしには本当の親が誰なのか知る権利があるわ。それを大人の都合で黙っておくなんて」
「でもさ、今まで優子のことを愛情もって持って育ててくれたんだしさ……」
「愛情もってねえ……それも怪しいけどね」
怪しい?」
「あたしさ、お父さんに裏切られたんだよ」
「裏切られた? どういうこと?」
「……詳しくは言えないけど、とにかくもうあの人の顔を見るのも嫌なの」
「……」
二人が歩いて行く。

夜優子の家の居間で優子・翔子・康太がテーブルで夕食を食べている。
どこかギクシャクした空気。
康太が優子を見る。
ご飯を食べる優子。
「えっと、醤油は?」
「ああ、そこにあるわ」   
優子の目の前に醤油が。
「優子、お父さんに醤油取ったげて」
優子は何も答えずに黙々と食べる。
「……」
康太が立ち上がって優子の前の醤油を取ると、康太と優子の目が合う。
「!」
優子がすぐに康太から目を逸らし、また食べ出す。
「……」

夜、相武家の大きな建物の玄関前に相武毅彦を乗せた車が停まる。
毅彦が後部座席から出て来る。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

身体の繋がりしかない関係

詩織
恋愛
会社の飲み会の帰り、たまたま同じ帰りが方向だった3つ年下の後輩。 その後勢いで身体の関係になった。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ナースコール

wawabubu
大衆娯楽
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

職場のパートのおばさん

Rollman
恋愛
職場のパートのおばさんと…

妻の遺品を整理していたら

家紋武範
恋愛
妻の遺品整理。 片づけていくとそこには彼女の名前が記入済みの離婚届があった。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

処理中です...