狙われた優子

雄太

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優子の真実

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優子の家の居間で康太が腰をおろす。
「翔子、あのな……」
翔子が康太の横に座る。
「優子と一緒に暮らせるのもあとちょっとかもしれない」
「ねえあなた、どういうこと?」
翔子、目を見開く。
「も、もしかして……」
「ああ、そうだ」
悲痛な表情の翔子と康太。

道を制服姿の優子と真央が学校から帰っている。
優子はションボリとしている。
「ねえ優子、元気だしなよ」
「ごめんね、心配かけて。今日はちゃんと家に帰るから」
「うん、早く両親と仲直りしたほうがいいよ」
「うん、いろいろありがとね。じゃあ」
「さよなら」
二人が別れる。

船井コーポの外に翔子が立っている。
「!」
そこへ優子が帰ってw来る。
「優子!」
翔子が優子に駆け寄る。
厳しい表情の優子。
「昨日は何があったの? 心配したのよ」
「母さん……」
そこに康太が船井コーポから出て来る。
「!」
優子の顔がみるみる険しくなる。
「優子、お父さんは今日気分が悪いって言って会社休んだんだよ」
「……」
「優子、ちょっと話があるんだ」
「話?」
「ちょっとこっちに来てくれ」
「ねえあなた、一体何なの? せっかく優子が帰ってきたのに」
「ちょっと優子に話があるんだってば」
「……」
優子が康太について行く。その様子を翔子が心配そうに見ている。

河原で康太と翔子が立っている。
「ねえお父さん、どういうことなの?」
「……」
「昨日どういうつもりであたしを連れ出したの?」
「……」
「説明して! 父さん!」
康太が物悲しい顔で優子を見る。

優子の家の台所では翔子が包丁でキャベツを切っている。
こへ優子が呆然とした表情で入って来る。
「……ねえ母さん」
「何?」
「どうして今まで黙ってたの?」
「黙ってたって、一体何を?」
優子が寂しげな表情で唇をギュッと噛みしめる。
「自分で分かるでしょ?」
翔子の包丁がピタッと止まる。
「優子、あたしには何のことだか…」
「今更とぼけなくたっていいよ! あたし、本当は母さんの子じゃないんでしょ?」
「ゆ、優子…」

居間で翔子と優子が向き合って座っている。
「私達夫婦はね、結婚してから長いこと、 子供ができなかったの。そんな時、お父さ んの会社の相武社長から赤ちゃんが欲しくないかって話を持ちかけられたの」
「……」
翔子の目から涙がこぼれる。
「実はね、お父さんが相武社長から優子を返してくれないかって言われてるみたいなの」
寂しげな翔子。
優子が部屋の入口に康太がいるのに気づく。
「今まで黙っていてごめんね。でもね、私も父さんもおまえを実の子以上に愛してたわ。それだけは信じて」
「母さん…」
翔子が優子を抱き寄せる。
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