23 / 26
23話 胸の内
しおりを挟む
お前を憎んでいた。
カルードとウェスタを殺し、世界を滅ぼし、俺の全てを奪ったお前を。この塔で、訳もわからないままお前に何度も犯された時、ただ憎しみが心を焼いていた。
それなのに、どうしてだったんだろう。
心が屈辱に悲鳴を上げているのに、俺の体はお前の指に、その熱に、快楽を感じてしまう。あの旅の道中、お前と腕を絡め合って抱きしめあった時、まるで恋人同士みたいだと思ってしまった。
そんなはずはないと、必死に打ち消していたのに。
最初に狂ったのは、俺の方だったのかもしれない。
大勢の魔導士の中から、ゲニアス、お前を選んだのは、他の誰でもない、俺なのだから。
「あんたの目が、何かを強く求めていたからだ」
俺は言った。魔王を倒すための渇望だと信じていた。だが、違った。あの時から、俺はお前の瞳の奥にある、狂気に満ちた孤独と執着に、無意識に惹かれていたのかもしれない。
旅の記憶が蘇る。
仲間と笑い合う俺を、遠くから見つめていたお前の寂しげな瞳。
俺が傷を負った時、誰よりも早く駆けつけ、治癒魔法をかけてくれた、あの震える指先。
お前が言った時だ。「愛している」と。
その言葉を聞いた瞬間、全てが繋がってしまった。
憎しみも、屈辱も、お前に与えられた快楽も、そしてあの旅の記憶も、全てが同じ一つの感情から生まれていたのだと。
俺は気づいてしまった。
憎しみと絶望の下で、俺もまた、お前のことを。
俺は、この孤独な魔導士を、愛していたんだ。
だから、生き永らえてしまったのか。
お前の腕の中で心が壊れきってしまわなかったのは、この地獄の底で、お前へのこの醜い感情が、俺を繋ぎとめていたからなのか。
ゲニアスは言った。「私たちは共犯者なのだ」と。「お前と私で、世界を滅ぼした」と。
そうだ、その通りだ。お前の魔法は俺の理性を溶かし、痛みさえも快楽に変えた。もう、何が正しくて、何が過ちなのかもわからない。この快楽を知ってしまった以上、もう勇者だった頃の俺には戻れない。
ならば、いっそ、俺は罪人になろう。
お前がそう望むのなら。
死んでいったみんなに。滅びてしまった世界に。そして、ゲニアス、お前を愛してしまった、俺自身に。
俺は謝り続けよう。共犯者として、お前の隣で。
ごめんなさい、と。
カルードとウェスタを殺し、世界を滅ぼし、俺の全てを奪ったお前を。この塔で、訳もわからないままお前に何度も犯された時、ただ憎しみが心を焼いていた。
それなのに、どうしてだったんだろう。
心が屈辱に悲鳴を上げているのに、俺の体はお前の指に、その熱に、快楽を感じてしまう。あの旅の道中、お前と腕を絡め合って抱きしめあった時、まるで恋人同士みたいだと思ってしまった。
そんなはずはないと、必死に打ち消していたのに。
最初に狂ったのは、俺の方だったのかもしれない。
大勢の魔導士の中から、ゲニアス、お前を選んだのは、他の誰でもない、俺なのだから。
「あんたの目が、何かを強く求めていたからだ」
俺は言った。魔王を倒すための渇望だと信じていた。だが、違った。あの時から、俺はお前の瞳の奥にある、狂気に満ちた孤独と執着に、無意識に惹かれていたのかもしれない。
旅の記憶が蘇る。
仲間と笑い合う俺を、遠くから見つめていたお前の寂しげな瞳。
俺が傷を負った時、誰よりも早く駆けつけ、治癒魔法をかけてくれた、あの震える指先。
お前が言った時だ。「愛している」と。
その言葉を聞いた瞬間、全てが繋がってしまった。
憎しみも、屈辱も、お前に与えられた快楽も、そしてあの旅の記憶も、全てが同じ一つの感情から生まれていたのだと。
俺は気づいてしまった。
憎しみと絶望の下で、俺もまた、お前のことを。
俺は、この孤独な魔導士を、愛していたんだ。
だから、生き永らえてしまったのか。
お前の腕の中で心が壊れきってしまわなかったのは、この地獄の底で、お前へのこの醜い感情が、俺を繋ぎとめていたからなのか。
ゲニアスは言った。「私たちは共犯者なのだ」と。「お前と私で、世界を滅ぼした」と。
そうだ、その通りだ。お前の魔法は俺の理性を溶かし、痛みさえも快楽に変えた。もう、何が正しくて、何が過ちなのかもわからない。この快楽を知ってしまった以上、もう勇者だった頃の俺には戻れない。
ならば、いっそ、俺は罪人になろう。
お前がそう望むのなら。
死んでいったみんなに。滅びてしまった世界に。そして、ゲニアス、お前を愛してしまった、俺自身に。
俺は謝り続けよう。共犯者として、お前の隣で。
ごめんなさい、と。
11
あなたにおすすめの小説
悪役神官の俺が騎士団長に囚われるまで
二三@冷酷公爵発売中
BL
国教会の主教であるイヴォンは、ここが前世のBLゲームの世界だと気づいた。ゲームの内容は、浄化の力を持つ主人公が騎士団と共に国を旅し、魔物討伐をしながら攻略対象者と愛を深めていくというもの。自分は悪役神官であり、主人公が誰とも結ばれないノーマルルートを辿る場合に限り、破滅の道を逃れられる。そのためイヴォンは旅に同行し、主人公の恋路の邪魔を画策をする。以前からイヴォンを嫌っている団長も攻略対象者であり、気が進まないものの団長とも関わっていくうちに…。
冷酷無慈悲なラスボス王子はモブの従者を逃がさない
北川晶
BL
冷徹王子に殺されるモブ従者の子供時代に転生したので、死亡回避に奔走するけど、なんでか婚約者になって執着溺愛王子から逃げられない話。
ノワールは四歳のときに乙女ゲーム『花びらを恋の数だけ抱きしめて』の世界に転生したと気づいた。自分の役どころは冷酷無慈悲なラスボス王子ネロディアスの従者。従者になってしまうと十八歳でラスボス王子に殺される運命だ。
四歳である今はまだ従者ではない。
死亡回避のためネロディアスにみつからぬようにしていたが、なぜかうまくいかないし、その上婚約することにもなってしまった??
十八歳で死にたくないので、婚約も従者もごめんです。だけど家の事情で断れない。
こうなったら婚約も従者契約も撤回するよう王子を説得しよう!
そう思ったノワールはなんとか策を練るのだが、ネロディアスは撤回どころかもっと執着してきてーー!?
クールで理論派、ラスボスからなんとか逃げたいモブ従者のノワールと、そんな従者を絶対逃がさない冷酷無慈悲?なラスボス王子ネロディアスの恋愛頭脳戦。
冤罪で追放された王子は最果ての地で美貌の公爵に愛し尽くされる 凍てついた薔薇は恋に溶かされる
尾高志咲/しさ
BL
旧題:凍てついた薔薇は恋に溶かされる
🌟第10回BL小説大賞(2022年)奨励賞。2025年11月アンダルシュノベルズより刊行🌟
ロサーナ王国の病弱な第二王子アルベルトは、突然、無実の罪状を突きつけられて北の果ての離宮に追放された。王子を裏切ったのは幼い頃から大切に想う宮中伯筆頭ヴァンテル公爵だった。兄の王太子が亡くなり、世継ぎの身となってからは日々努力を重ねてきたのに。信頼していたものを全て失くし向かった先で待っていたのは……。
――どうしてそんなに優しく名を呼ぶのだろう。
お前に裏切られ廃嫡されて最北の離宮に閉じ込められた。
目に映るものは雪と氷と絶望だけ。もう二度と、誰も信じないと誓ったのに。
ただ一人、お前だけが私の心を凍らせ溶かしていく。
執着攻め×不憫受け
美形公爵×病弱王子
不憫展開からの溺愛ハピエン物語。
◎書籍掲載は、本編と本編後の四季の番外編:春『春の来訪者』です。
四季の番外編:夏以降及び小話は本サイトでお読みいただけます。
なお、※表示のある回はR18描写を含みます。
🌟第10回BL小説大賞での応援ありがとうございました!
🌟本作は旧Twitterの「フォロワーをイメージして同人誌のタイトルつける」タグで貴宮あすかさんがくださったタイトル『凍てついた薔薇は恋に溶かされる』から思いついて書いた物語です。ありがとうございました。
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている
飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話
アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。
無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。
ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。
朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。
連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。
※6/20追記。
少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。
今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。
1話目はちょっと暗めですが………。
宜しかったらお付き合い下さいませ。
多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。
ストックが切れるまで、毎日更新予定です。
【完結】スパダリを目指していたらスパダリに食われた話
紫蘇
BL
給湯室で女の子が話していた。
理想の彼氏はスパダリよ!
スパダリ、というやつになったらモテるらしいと分かった俺、安田陽向(ヒナタ)は、スパダリになるべく会社でも有名なスパダリ…長船政景(マサカゲ)課長に弟子入りするのであった。
受:安田陽向
天性の人たらしで、誰からも好かれる人間。
社会人になってからは友人と遊ぶことも減り、独り身の寂しさを噛み締めている。
社内システム開発課という変人どもの集まりの中で唯一まともに一般人と会話できる貴重な存在。
ただ、孤独を脱したいからスパダリになろうという思考はやはり変人のそれである。
攻:長船政景
35歳、大人の雰囲気を漂わせる男前。
いわゆるスパダリ、中身は拗らせ変態。
妹の美咲がモデルをしており、交友関係にキラキラしたものが垣間見える。
サブキャラ
長船美咲:27歳、長船政景の年の離れた妹。
抜群のスタイルを生かし、ランウェイで長らく活躍しているモデル。
兄の恋を応援するつもりがまさかこんなことになるとは。
高田寿也:28歳、美咲の彼氏。
そろそろ美咲と結婚したいなと思っているが、義理の兄がコレになるのかと思うと悩ましい。
義理の兄の恋愛事情に巻き込まれ、事件にだけはならないでくれと祈る日々が始まる…。
完結|ひそかに片想いしていた公爵がテンセイとやらで突然甘くなった上、私が12回死んでいる隠しきゃらとは初耳ですが?
七角
BL
第12回BL大賞奨励賞をいただきました♡第二王子のユーリィは、美しい兄と違って国を統べる使命もなく、兄の婚約者・エドゥアルド公爵に十年間叶わぬ片想いをしている。
その公爵が今日、亡くなった。と思いきや、禁忌の蘇生魔法で悪魔的な美貌を復活させた上、ユーリィを抱き締め、「君は一年以内に死ぬが、私が守る」と囁いてー?
十二個もあるユーリィの「死亡ふらぐ」を壊していく中で、この世界が「びいえるげえむ」の舞台であり、公爵は「テンセイシャ」だと判明していく。
転生者と登場人物ゆえのすれ違い、ゲームで割り振られた役割と人格のギャップ、世界の強制力に知らず翻弄されるうち、ユーリィは知る。自分が最悪の「カクシきゃら」だと。そして公爵の中の"創真"が、ユーリィを救うため十二回死んでまでやり直していることを。
どんでん返しからの甘々ハピエンです。
冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される
マンスーン
BL
王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。
泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる