20 / 82
さん『エンマ様が判決を下す日はお気に入りの傘を逆さにさして降ってきたキャンディを集めよう』
1 大嫌いな白いアイツ
しおりを挟む
「4個しか入ってない」
サキは白色のキャンディをもう一度数え直し呟いた。
「この前は10個も入ってたのに?」
いつもは捨ててしまうあの刺激的な味のキャンディ。こんなにも君を求める日がくるとは思わなかった。
サキはいつもドロップスの缶を逆さにして広げると、各色ごとに一個一個数えて仕分ける。カラフルなキャンディたちの中でピンク色がたくさん入っている缶はアタリ、逆に白色はハズレだった。
一番好きなピンク色のリンゴ味を最初に缶へ戻すと、あとは適当に入れて蓋をする。食べるときはカシャカシャと軽くシェイクして、手のひらにランダムに飛び出したキャンディで今日の運勢を占いながら口に含む。その中に大凶である白色のキャンディは存在しない。真っ先に捨ててしまうからね。
「とっておけばよかったぁ……」と嘆くも、時すでに遅し。
うなだれながら皿にあけたキャンディを缶に戻していく。白色を一個残して。
「美味しくないんだよなぁ……」
食べようとして躊躇するサキは、タバコを吸うあの人の横顔を思い出してニヤついた。
記憶の彼に背中を押されたサキは意を決して口に放り込んだ。
「……うっ……うへぇ」
久々に口にしたあの味。やはり苦手だ。
キャンディを舐め、タバコを模した細い円柱形の砂糖菓子を唇に銜えてまねる。
あの時感じた激しいスモーキーさはないものの、サキは満足気に銜えた砂糖菓子をつまみ口から離して見えない煙を吐いた。
「ふぅ」
とはいっても、口が痛くなるような冷たい感覚と鼻から抜ける独特なかおりが嫌で、時おり歯で挟んで舌に触れないようにして、休みながら舐め続けた。
(美味しくない……)けど、そのオトナな味にサキは酔いしれていく……、
──プルルルル……──
「ッ、飲ンじゃった!」
音の方をみると、滅多に鳴ることのない携帯電話が光を点滅させ鳴っている。聞き慣れない着信音に毎回びっくりしてしまうサキは喉元に触れた。明らかなる違和感がそこにあった。
「どうしよう……!」
喉にひっかかっているキャンディの不安を抱きながら携帯電話を開くと、心臓がドキンッと跳ねた。
「うそっ!」
その着信は今まさにサキが想っていた人物からだった。
タイミングもタイミング。さっきまでの行為を悟られた気がして、やましい気持ちがあったわけではないのにとてつもなく恥ずかしくなった。
着信が切れる前に早く出ないと、とは思うものの、第一声はなんと返すべきなのか、余計なことをグルグルと考えてしまい一秒一秒無駄に過ぎていく。
このままだと本当に切れてしまうと意を決したサキは、咳払いをして震える指で通話ボタンを押した。
「……もしもしっ!」
『サキさん?』
「はい!」
『こんばんは、ハルです。傘のことでお電話いたしました』
「はい……!」
存在は電話越しの声だけ。それなのに、彼がすぐそばにいるような気がして顔が熱くなった。耳元で話しかけられる声がくすぐったくもあり、頭はいっぱいいっぱいでハルの話す内容はほとんど入ってこない。
『……よろしいですか?』
「あっ、はい!」
『ではその日に』
慌てて返事をしたが、何を聞かれたのかわからない。電話が水没しそうなほど溢れる手汗を、服でぬぐった。
「あの、もう一度教えてください……」
『近くに紙とペンはありますか? 覚えられないならメモを取りなさい』
「はい、すみません……ちょっと待ってくださいっ」
サキは急いで机の引き出しを開け、落書き帳を取り出し適当なページを開いてペン立てから赤いペンを取ると、スタンバイできたことを告げた。
一言一句聞き逃さないように集中してメモを取っていると、紙は汗が染みてシナシナになっていく。
『よろしいですね?』
「……はい!」
サキはメモを見返した。
番号を交換したけど、自分からかける勇気はないし、本当にかけてきてくれるなんて思わなかったし、自分のことを覚えていてくれて、今、こうして話ができただけでも幸せなのに、
『土曜日の午後3時、駅前のアベルで……』
(また会えるなんて、夢みたい……)
電話を切る頃には、喉に居座り続けるキャンディのことなどサキの頭から消えていた。
サキは白色のキャンディをもう一度数え直し呟いた。
「この前は10個も入ってたのに?」
いつもは捨ててしまうあの刺激的な味のキャンディ。こんなにも君を求める日がくるとは思わなかった。
サキはいつもドロップスの缶を逆さにして広げると、各色ごとに一個一個数えて仕分ける。カラフルなキャンディたちの中でピンク色がたくさん入っている缶はアタリ、逆に白色はハズレだった。
一番好きなピンク色のリンゴ味を最初に缶へ戻すと、あとは適当に入れて蓋をする。食べるときはカシャカシャと軽くシェイクして、手のひらにランダムに飛び出したキャンディで今日の運勢を占いながら口に含む。その中に大凶である白色のキャンディは存在しない。真っ先に捨ててしまうからね。
「とっておけばよかったぁ……」と嘆くも、時すでに遅し。
うなだれながら皿にあけたキャンディを缶に戻していく。白色を一個残して。
「美味しくないんだよなぁ……」
食べようとして躊躇するサキは、タバコを吸うあの人の横顔を思い出してニヤついた。
記憶の彼に背中を押されたサキは意を決して口に放り込んだ。
「……うっ……うへぇ」
久々に口にしたあの味。やはり苦手だ。
キャンディを舐め、タバコを模した細い円柱形の砂糖菓子を唇に銜えてまねる。
あの時感じた激しいスモーキーさはないものの、サキは満足気に銜えた砂糖菓子をつまみ口から離して見えない煙を吐いた。
「ふぅ」
とはいっても、口が痛くなるような冷たい感覚と鼻から抜ける独特なかおりが嫌で、時おり歯で挟んで舌に触れないようにして、休みながら舐め続けた。
(美味しくない……)けど、そのオトナな味にサキは酔いしれていく……、
──プルルルル……──
「ッ、飲ンじゃった!」
音の方をみると、滅多に鳴ることのない携帯電話が光を点滅させ鳴っている。聞き慣れない着信音に毎回びっくりしてしまうサキは喉元に触れた。明らかなる違和感がそこにあった。
「どうしよう……!」
喉にひっかかっているキャンディの不安を抱きながら携帯電話を開くと、心臓がドキンッと跳ねた。
「うそっ!」
その着信は今まさにサキが想っていた人物からだった。
タイミングもタイミング。さっきまでの行為を悟られた気がして、やましい気持ちがあったわけではないのにとてつもなく恥ずかしくなった。
着信が切れる前に早く出ないと、とは思うものの、第一声はなんと返すべきなのか、余計なことをグルグルと考えてしまい一秒一秒無駄に過ぎていく。
このままだと本当に切れてしまうと意を決したサキは、咳払いをして震える指で通話ボタンを押した。
「……もしもしっ!」
『サキさん?』
「はい!」
『こんばんは、ハルです。傘のことでお電話いたしました』
「はい……!」
存在は電話越しの声だけ。それなのに、彼がすぐそばにいるような気がして顔が熱くなった。耳元で話しかけられる声がくすぐったくもあり、頭はいっぱいいっぱいでハルの話す内容はほとんど入ってこない。
『……よろしいですか?』
「あっ、はい!」
『ではその日に』
慌てて返事をしたが、何を聞かれたのかわからない。電話が水没しそうなほど溢れる手汗を、服でぬぐった。
「あの、もう一度教えてください……」
『近くに紙とペンはありますか? 覚えられないならメモを取りなさい』
「はい、すみません……ちょっと待ってくださいっ」
サキは急いで机の引き出しを開け、落書き帳を取り出し適当なページを開いてペン立てから赤いペンを取ると、スタンバイできたことを告げた。
一言一句聞き逃さないように集中してメモを取っていると、紙は汗が染みてシナシナになっていく。
『よろしいですね?』
「……はい!」
サキはメモを見返した。
番号を交換したけど、自分からかける勇気はないし、本当にかけてきてくれるなんて思わなかったし、自分のことを覚えていてくれて、今、こうして話ができただけでも幸せなのに、
『土曜日の午後3時、駅前のアベルで……』
(また会えるなんて、夢みたい……)
電話を切る頃には、喉に居座り続けるキャンディのことなどサキの頭から消えていた。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
せんせいとおばさん
悠生ゆう
恋愛
創作百合
樹梨は小学校の教師をしている。今年になりはじめてクラス担任を持つことになった。毎日張り詰めている中、クラスの児童の流里が怪我をした。母親に連絡をしたところ、引き取りに現れたのは流里の叔母のすみ枝だった。樹梨は、飄々としたすみ枝に惹かれていく。
※学校の先生のお仕事の実情は知りませんので、間違っている部分がっあたらすみません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる