妖精王の双剣-愛する兄弟のために身売りした呪われは妖精王に溺愛される

大田ネクロマンサー

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第3章 揺れるカーテン(アンドリュー)

第4話 執念深い使用人

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「アンドリュー様、朝食はどうなさいますか?」


相変わらずカルロは執念深い。計算が狂ったことがそんなに悔しいのかと疑いたくなる。扉を開けるのも億劫で座ったまま答える。


「一体、お前の望みはなんだ」


俺がため息を落とすや否や、銀のトレイで両手が塞がれたカルロが、足で扉を開けて入ってきた。


「部屋で召し上がりたいかと思いまして」


ガチャンと乱暴に朝食をテーブルに置き、鼻息で着席許可を催促する。俺が後ろの引き出しから灰皿を出すと、それを置くより前にカルロは目の前の椅子に座った。


「使用人とは、どの家でもお前のように横柄なのか?」

「貴方が私に求めるものは使用人の域を超えています」


カルロは手慣れた手つきで胸元から葉巻とマッチを取り出す。咥えた葉巻に火をつけようと顔を傾けた時、随分と皺が増えたな、という月並みな感慨を抱いた。


「先代は女性を惹きつけましたが、リノール様は男性を惹きつける。代によって対象が違うのですかね」


唐突に、しかしまったく関係ないとも言えず、カルロが吐き出す紫煙の行方を追う。


「先代の次男は男と家を出たことを考えると、兄弟によっても惹きつける対象が違うのかもしれません」


兄弟。その言葉に心の中で警鐘が鳴りはじめる。自分でもなにがこんなに心を騒がせているのかはわからないが、カルロの話を体が拒絶している。


「しかし、次男の方は……先代のようにその能力で人間不信に陥るほど、不幸に見舞われなかったようにも思います。それが招集の条件である長子の理由かと」


思ってもみない着地点に胸の動悸が和ぐ。助け舟に手の舳の向きを変えようと必死でさえあった。


「仮にそんな能力があったとして、それを献上しろという理由がわからんがな。エルフは好色なのか」

「エルフと人は血が交わらない。婚姻は結ぶが子はなせない。なので事実上、シュトラウス家の血はリノール様で途絶えます」


逃しはしない。カルロの視線がそう言っていた。唐突に差し向けられた切先に、焦りよりも諦めが先に出た。ここで血縁関係が無いと知れたところで、失うものなどなにも無いのだ。正確にいえば、もう失っていた。


「いつから気づいてたんだ」

「先代の借用書を見せろと言われたあたりでしょうか。いえ、黙って試合に出場して屋敷に賞金を入れはじめた時でしょうか」


先代の借用書。それが送りつけられたと聞き及んだ時、直感でキリーの仕業だとわかった。だから、遠方の領地で開催される試合で賞金稼ぎをはじめた。
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