皇帝に追放された騎士団長の試される忠義

大田ネクロマンサー

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第27話 横たわる隻腕 ※

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 メアとユキが肩の止血をした後、部屋のベッドに担ぎ入れられ、長い間ミオが回復魔法の詠唱をしてくれた。痛みが徐々に和らぎ、血が流れ出る感覚も止まった。

 しかし動悸が止まらず、起き上がることができない。息を吸うだけで胸に痛みが走り、目の前が焼かれたように顔が熱かった。

 荒い息が治らないことを心配していたメアもユキも、ミオが気を使って家に帰した。

「レジー、痛みはない?」

 心配そうに、しかし冷ややかな声色が俺を責めている。ミオは今どういった気持ちで俺の横に座り、胸に手を当てているのかがわからなかった。

「ミ、ミオ。ミオ、ミオが、送ってくれていたのか、アデルに」

 ミオは俯きそれには答えなかった。使い道のわからなかった報酬、定期的な不在。それを女がいるだの病気だの勘ぐり、彼の深い愛を蔑ろにした。

 俺は自分の罪をミオに隠していた。皇帝に好意を寄せていたことを黙っていた。だからミオの親切がこんな形で裏切られた。

「あり、ありがとう、ミオ、お、俺を軽蔑して、してくれて、か、構わない」

 言わなければならないことが沢山あるのに、うまく言葉が出てこない。今ミオの手が置かれている胸に何かがつかえて、声がうまく出せないのだ。

「あんな、あんな……」

 結果は違えど事実は事実だった。俺は陛下の寵愛を望んで奉仕をしていた。それが権力目当てだと言い換えられても、事実は事実。俺は薄汚く卑しい人間だった。そんな人間が。

「あんな、や、約束を……」

 成人したら抱いてやるなどと。傲慢で身の程を弁えない人間だった。ちゃんと謝罪したいのに、出てくるのは熱い息だけで、これ以上話せそうにない。

「どうして、皇帝と関係はなかったって言い返さなかったの? 弟にも知られたくないほど大切な秘密なの?」

 ミオの問いの真意はわからなかったが、ミオはまだ俺をどこかで信じているのだろうと思った。

「おな、同じだ……」

 関係があろうとなかろうと、下心があったことは隠しようのない事実だ。

 ミオが全身をブルブル震わせる。きっと理解して怒りで震えている。

「違うよ、レジー。俺に操を捧げたい、そう言ったはずだ。そうでなければなぜ、サニアの家であんなに怯え悲しんでいたんだ。なんで俺の胸で涙を流したんだ」

 ミオの声の変化に驚き、顔を向ける。ミオは息苦しそうに胸を押さえて、激しく震えている。

「誰かに抱かれたいと願うことはそんなに恥ずかしい? そんなに恥ずかしいなら俺にその秘密をくれよ」

 ミオのブロンドが逆立ち、その毛の先から緑に染まっていく。そして額から鮮血が飛び出したかのように、赤いツノが生える。

「俺は誰にもその秘密を渡さない、俺しかわからないレジーの秘密、決してレジーを渡さない。誰にも」

 サスペンダーやベルトが空を切って外れ、履き物がビリビリと破れる。荘厳な鱗が部屋の灯りに眩く光り、部屋は緑に反射するのに、俺は影に包まれた。竜神が俺に覆い被さっていたのだ。

「ミ、ミオ」

「レジー、俺のレジー」

 竜神は俺の混乱をよそに、いつの間にか流してしまっていた涙を唇で拭う。何度も何度も両頬目尻を吸うが、面倒になったのか目頭をジュウッと吸った。

 そして、そのまま恐る恐る鼻筋を下って、唇にそっと触れた。

「ミオ」

 竜神はそれには応えず、口の中に舌を割り入れた。舌先同士が触れた時、竜神に初めて抱き寄せられた光景が脳裏をかすめて、また目頭が熱くなる。

 ミオの兄弟のキスとは違う。相手を思いやり確かめ合うキスに、頭の奥が痺れて息苦しい。

「ミオ、なんで……」

 唇が離れても、ミオは俺の問いを無視して、服を引き裂きはじめる。露わになった肌を節くれだった冷たい指が這いまわり、そして息を漏らした。

「美しいレジー。俺のレジー」

 ミオは俺の胸の先端に吸い付き、長い舌でそれを弾いたりする。そうされる度に体が跳ね、ミオの柔らかな胸の毛に触れる。

「んっ、ぅっ、んっ……」

 漏れる声を抑えようと残された腕を噛んだ。しかしすぐにそれは見つかって、腕を掴まれる。そして今度は容赦なく口に長い舌を突っ込まれ、奥の柔らかい場所を犯し尽くされた。

 息もできないほどの快楽を口に与えられているのに、ミオは腕を掴んでいない方の手で俺の下半身を弄る。冷たい手が濡れるたび、自分がどれだけの体液を溢しているのかを思い知らされる。

「んっ……はぁっ、ぁっ、はぁっ」

 ミオは俺の片腕を離さなかった。長い首を器用に折り曲げ首筋、胸、腹、と様々な場所に印をつけていき、そして腹の丘陵の先で震える俺自身をゆっくりと喰む。

「んぅーーーーっ!」

 声にならない声をあげ、それを制御しようとすればするほどそこが敏感になる。ミオは音を立てて吸いながらも、長い舌を巻き付け管全体を絞り上げる。敏感な先端も器用に捏ねて、彼の口の中が一体どうなっているのかわからないほどだ。

「んっ、んっ、っぅ、あ、あ、あ!」

 限界の上蓋がガタガタ音を立てて迫り上がる。

「ミオ!」

 熱心に下半身に齧り付いていたミオが頭を上げた。僅かに開いた口から糸が垂れるそのあどけない顔に、胸がギュッと掴まれた。

「もう逃がさない。俺のために生きて、レジー」

 ミオは俺の腕を掴んでいた右の手を口元に寄せた。そして人差し指の爪を噛んで割る。口に入った割れた爪をその辺に吐き捨て、再び長い首を伸ばして俺の顔に寄せた。

 指は腿から筋を伝って窄まりに滑り落ちていく。俺の体液なのか、ミオの涎なのかもわからない滑りが窄まりに集まっている。それを添えられた指で知る。

 顔のすぐそばで、無表情のミオが俺を観察する。そして俺が視線を逸らしたときに、指が差し入れられた。竜神の節ですんなり入ったのは僅かだった。しかしミオは俺の頭を片方の腕で抱き、強引に指を差し入れた。

「いっ……」

「レジー、もう少し我慢して」

 ミオは自分が痛むかのように眉をひそめ、恐る恐る、指を回す。そしてようやく馴染んだ頃に指の全部を差し入れた。そしてなにかを探すように指で腹の中をかき混ぜはじめる。
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