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第20話 魔法使いと父の教育
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「玲音、あんたは先に学校に行ってなさい」
多分母は怒ってはいないが、玲音を牽制するために今まで聞いたこともない低い声で言った。玲音は怯えながら返事もそこそこに家を出た。薄情者め……!
母が怒っているかはわからないが、心当たりはひとつしかなかった。
「冬馬、毎晩なにを履行してるの」
気がつかないわけもないし、気がつかないフリもしてくれませんよね……。昨日に至っては2回ほどいたしましたしね……。
「玲音起こすの嫌だから、水の魔法使ってるだけだよ」
抽象的だが言ってることは合っている。ふふっこのくらいの処世術、俺にだってあるんだからな。勝利を確信して母を見たら、母が机に何かを叩きつけた。よく見たらコンドームの箱だった。俺は母の気の狂った行動に凍りつく。
「な……なに……違う、やってない……」
これは真実だった。まず母が叩きつけたものは俺が買ったものではないし、玲音へ一方的にエロいことをしているが、本当に最後までしていなかった。母はしばらくブルブル震えてキッと俺を睨みつけた。
「お母さんだってこんなこと言いたくないわよ! でもお父さんいないんだからしょうがないでしょ!」
耳をつんざくような金切声で母が叫ぶ。
「わかった、わかったから! かーちゃん!」
とんでもない雰囲気の中、肩身の狭い思いで早く時間が過ぎないか黙って待っていた。ただ母は今日パート休みだったし、俺がなにも言わなければこのまま膠着状態が続くことは容易に想像できた。
「玲音が……我慢してたから……手伝ってるだけで、本当にまだしてない……」
それに男同士で妊娠するわけもなし、別にそんなものは不要だろうに……。
「あんたたちがそうなってからじゃ遅いと思って言ってるの!」
また母が怒鳴り散らす。もう、母が心底、嫌々話しているのはよくわかったから怒鳴らないで欲しい。しばらく沈黙が続いたが母が重い口を開いた。
「大体……玲音はその……」
母がか細い声でなにを言いかけたのか、わかった。
「わかってるから、そういうこと言うなよ!」
それは性教育とは全く別問題だった。思わず怒鳴った俺の声に母は肩を縮めて俯く。母も心配しているのに大人気ないことを言ったと、母を見て反省した。玲音は義父に虐待された経験があって、惚れた腫れたでする行為以上に責任があることはわかっていた。母もそれを死ぬほど心配しているのだと思う。一時期の気の迷いで玲音の一生を決定づける可能性だってあるのだから、そういう覚悟がなければ臨んではならないのだ。
「玲音とそうなったら、ちゃんと責任を持たなきゃならないのもわかってる」
母は俯いたまま動かなかった。
「玲音も……他の選択肢だってあるんだからね」
それも、わかっていた。円華ちゃんが遊びに来た時に嫌ってほど思い知った。玲音は自分自身気がついていないが、家族と恋人の境界線があやふやだった。それが虐待における1番の後遺症だということもわかっている。性別なんてもはや関係なく、ある日突然別の人に一目惚れする可能性だってあるのだ。そうなった時に俺との関係を玲音がどう思うかなんて火を見るより明らかだった。
「それに……お母さん嫌だからね。冬馬にフラれて自暴自棄になった玲音が、そこかしこにこども作って借金まみれになるの……」
とんでもない想像力だな。でも学校を大奥にした玲音ならあり得ない話ではなかったし、実績はあった。
「お母さんもわからなかったから色々調べた。病気のリスクもあるし……冬馬は玲音の父親でもあるんだから……ちゃんとそういうことしっかりしないとダメなんだからね……」
母が消え入りそうな声で言う。母も恥ずかしいことはよくわかった。
「玲音とそうなっても、ならなくても。ちゃんと俺からその件は言うから」
一生こんなことで悩むことなんてなかったであろう陰キャの俺が、人とセックスをする責任について真面目に考えてるのが急に笑えてきた。
「なにを……笑っているの……冬馬……」
母が怒りに満ちて魔法を履行しそうな勢いだった。俺は逃げるように学校へ向かった。
多分母は怒ってはいないが、玲音を牽制するために今まで聞いたこともない低い声で言った。玲音は怯えながら返事もそこそこに家を出た。薄情者め……!
母が怒っているかはわからないが、心当たりはひとつしかなかった。
「冬馬、毎晩なにを履行してるの」
気がつかないわけもないし、気がつかないフリもしてくれませんよね……。昨日に至っては2回ほどいたしましたしね……。
「玲音起こすの嫌だから、水の魔法使ってるだけだよ」
抽象的だが言ってることは合っている。ふふっこのくらいの処世術、俺にだってあるんだからな。勝利を確信して母を見たら、母が机に何かを叩きつけた。よく見たらコンドームの箱だった。俺は母の気の狂った行動に凍りつく。
「な……なに……違う、やってない……」
これは真実だった。まず母が叩きつけたものは俺が買ったものではないし、玲音へ一方的にエロいことをしているが、本当に最後までしていなかった。母はしばらくブルブル震えてキッと俺を睨みつけた。
「お母さんだってこんなこと言いたくないわよ! でもお父さんいないんだからしょうがないでしょ!」
耳をつんざくような金切声で母が叫ぶ。
「わかった、わかったから! かーちゃん!」
とんでもない雰囲気の中、肩身の狭い思いで早く時間が過ぎないか黙って待っていた。ただ母は今日パート休みだったし、俺がなにも言わなければこのまま膠着状態が続くことは容易に想像できた。
「玲音が……我慢してたから……手伝ってるだけで、本当にまだしてない……」
それに男同士で妊娠するわけもなし、別にそんなものは不要だろうに……。
「あんたたちがそうなってからじゃ遅いと思って言ってるの!」
また母が怒鳴り散らす。もう、母が心底、嫌々話しているのはよくわかったから怒鳴らないで欲しい。しばらく沈黙が続いたが母が重い口を開いた。
「大体……玲音はその……」
母がか細い声でなにを言いかけたのか、わかった。
「わかってるから、そういうこと言うなよ!」
それは性教育とは全く別問題だった。思わず怒鳴った俺の声に母は肩を縮めて俯く。母も心配しているのに大人気ないことを言ったと、母を見て反省した。玲音は義父に虐待された経験があって、惚れた腫れたでする行為以上に責任があることはわかっていた。母もそれを死ぬほど心配しているのだと思う。一時期の気の迷いで玲音の一生を決定づける可能性だってあるのだから、そういう覚悟がなければ臨んではならないのだ。
「玲音とそうなったら、ちゃんと責任を持たなきゃならないのもわかってる」
母は俯いたまま動かなかった。
「玲音も……他の選択肢だってあるんだからね」
それも、わかっていた。円華ちゃんが遊びに来た時に嫌ってほど思い知った。玲音は自分自身気がついていないが、家族と恋人の境界線があやふやだった。それが虐待における1番の後遺症だということもわかっている。性別なんてもはや関係なく、ある日突然別の人に一目惚れする可能性だってあるのだ。そうなった時に俺との関係を玲音がどう思うかなんて火を見るより明らかだった。
「それに……お母さん嫌だからね。冬馬にフラれて自暴自棄になった玲音が、そこかしこにこども作って借金まみれになるの……」
とんでもない想像力だな。でも学校を大奥にした玲音ならあり得ない話ではなかったし、実績はあった。
「お母さんもわからなかったから色々調べた。病気のリスクもあるし……冬馬は玲音の父親でもあるんだから……ちゃんとそういうことしっかりしないとダメなんだからね……」
母が消え入りそうな声で言う。母も恥ずかしいことはよくわかった。
「玲音とそうなっても、ならなくても。ちゃんと俺からその件は言うから」
一生こんなことで悩むことなんてなかったであろう陰キャの俺が、人とセックスをする責任について真面目に考えてるのが急に笑えてきた。
「なにを……笑っているの……冬馬……」
母が怒りに満ちて魔法を履行しそうな勢いだった。俺は逃げるように学校へ向かった。
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