13 / 13
美しい男
しおりを挟む
その男の第一印象は、美しいだった。
真剣に相手を探すのであれば、こういったサイトは不適切だと思いながらも、興味本位で見た条件提示型のサイトでひときわ目立った条件があった。
自分の自慰を見てくれる男性、必要以上に接触しない男性、報酬はフェラチオと20万円。投稿者、男性。
この条件でこの価格は、何か憐憫や切実さを感じるものがあった。それとともに湧き出す「どんな男が来るのだろう」という興味が勝った。
待ち合わせの場所に現れた男を見て、世の中、とんでもないことが平気で起こるものなんだな、と感じたのを覚えている。
その男は今俺の家に通うようになっている。
ベッドに座る私の股間に顔を埋め、俺のものを咥えている。この光景を見ると、出会ったばかりの頃を思い出す。
地味に見せた高級なスーツ、不自然に外された腕時計、磨かれた革靴。どう考えても金に不自由していない男だった。この身なりを見て、この男の20万というのは、自分が思っていた憐憫や切実さからは程遠いものなのかもしれない、と感じた。
しかしベッドに入ってみてそれは少し違う印象になった。男は怯えながらも、必死に誰かと繋がろうともがいていた。まるで声を殺して、自分を受け入れてくれる人間を探しているようだった。そして、自分を罰するようにブジーを差し込み、無言で何かを贖っているようでもあった。
美しい男の肩に触れて言う。
「斗也、こっちにきて」
男は顔を上げて見上げる。
「孝臣はこれ、嫌いなの?」
美しい顔を少し触る。男は不安で少し顔を曇らせる。
「声が聞きたい」
男の腕を引っ張り抱き寄せた。そのまま男の口に舌を入れた。
「っ……んんっ……! もうっ! それじゃ喋れない」
男は口を引き剥がし笑った。この家に来るようになってからよく笑うようになった。
それと同時に、愛おしさでどうしたらいいかわからなくなることがある。
男は俺を押し倒す。
「今日は孝臣が下ね」
男は俺の方を掴みマウントポジションを取る。
「ちゃんと準備し……」
言っているそばから口を塞がれる。
「さっき準備しといた」
指でそっと触れると、トロトロとしたもので穴が覆われていた。待ちきれず準備をしている男の姿を想像して、胸が締め付けられる。
「んっ……はぁっ……あっ……あっ……!」
男は身をよじらせながらゆっくり腰を下ろしていく。
「ああっ! っ……はぁっ……孝臣……ごめ……」
男が完全に腰を下ろした時、男は精子を俺の腹に吐き出した。
「っ……はぁっ……孝臣……ごめん……我慢が……全然できない……」
男はそう言うと腰を上下に動かし始める。浅い息と男の喘ぎ声で部屋と俺の心が満たされていく。
俺は男の腰あたりを掴み、深く差し込んだ。一度、二度と深くゆっくり奥に差し込む。
「っぅああああぁぁっ!」
男は悲鳴をあげて腰を浮かす。そして2度目の射精をした。男は肩を震わせ口で呼吸していた。
自分の体でこんなに悦ぶ男がいる、これは何物にも代え難い幸福だ。
「斗也……もう少し、こうしていよう」
男は俺に倒れ込みながら、体を痙攣させながら言う。
「ごめん……最近……本当に堪え性が……なくて……」
「そういう意味じゃないよ、俺がもうイきそうなんだ」
男は両手と耳を俺の胸に当てる。多分なんの意識もせずにやっているのだろう、この男の癖がいろんな感情を呼び起す。
俺の記憶にある限り、男の第一声は「他の男と寝た」だった。それは犯されたというんだ、と表現を正すことができないくらい、男はギリギリのところで自分を守っていた。
「もうわかってると思うけど」
俺は男の背中を撫でて言う。
「わかってるよ」
俺の言葉を遮り男は答える。何をわかっているのか不思議に思って胸にしがみついてる男の方を見た。
「わかってるけど、多分私の方が孝臣を好きだ」
男は微動だにせず言う。俺はたまらずに男の体を起こして腰を突き動かした。
「ああっ! っ……もう……少し……こうして……ようよっ……!」
体の芯が熱く頭がぼんやりしている。男が制止しようとする両腕を掴み奥へ奥へ突き動かす。
「や……あぁっ……! あああっ! ……っまた……ああああ!」
男は射精はせずに途中で果てた、俺はそれに構わず動かし続けて男の中に今感じる全ての感情を吐き出した。
お互いの体を拭いて一緒に風呂に入る。男はまたあの癖で俺の腕の中で耳を当てている。
「転職しようと思うんだ」
男はポツリと呟く。
あんなことがあっても仕事に行き続けていた男の発言とは思えなかった。多分男を犯したのは会社の人間だ。この動揺は俺の胸を伝わって男に届いたのだろう。
「孝臣に話してないこといっぱいあるけど、ちゃんと話せるようになったら、言うから」
俺は両腕でこの男を抱きしめる。
「私は孝臣みたいに、優しい人間になりたい」
俺は不覚にも涙腺が緩み、それを悟られないように男をきつく抱いた。
この心の震えが止まるまでずっと、ずっと、男を抱きしめた。
真剣に相手を探すのであれば、こういったサイトは不適切だと思いながらも、興味本位で見た条件提示型のサイトでひときわ目立った条件があった。
自分の自慰を見てくれる男性、必要以上に接触しない男性、報酬はフェラチオと20万円。投稿者、男性。
この条件でこの価格は、何か憐憫や切実さを感じるものがあった。それとともに湧き出す「どんな男が来るのだろう」という興味が勝った。
待ち合わせの場所に現れた男を見て、世の中、とんでもないことが平気で起こるものなんだな、と感じたのを覚えている。
その男は今俺の家に通うようになっている。
ベッドに座る私の股間に顔を埋め、俺のものを咥えている。この光景を見ると、出会ったばかりの頃を思い出す。
地味に見せた高級なスーツ、不自然に外された腕時計、磨かれた革靴。どう考えても金に不自由していない男だった。この身なりを見て、この男の20万というのは、自分が思っていた憐憫や切実さからは程遠いものなのかもしれない、と感じた。
しかしベッドに入ってみてそれは少し違う印象になった。男は怯えながらも、必死に誰かと繋がろうともがいていた。まるで声を殺して、自分を受け入れてくれる人間を探しているようだった。そして、自分を罰するようにブジーを差し込み、無言で何かを贖っているようでもあった。
美しい男の肩に触れて言う。
「斗也、こっちにきて」
男は顔を上げて見上げる。
「孝臣はこれ、嫌いなの?」
美しい顔を少し触る。男は不安で少し顔を曇らせる。
「声が聞きたい」
男の腕を引っ張り抱き寄せた。そのまま男の口に舌を入れた。
「っ……んんっ……! もうっ! それじゃ喋れない」
男は口を引き剥がし笑った。この家に来るようになってからよく笑うようになった。
それと同時に、愛おしさでどうしたらいいかわからなくなることがある。
男は俺を押し倒す。
「今日は孝臣が下ね」
男は俺の方を掴みマウントポジションを取る。
「ちゃんと準備し……」
言っているそばから口を塞がれる。
「さっき準備しといた」
指でそっと触れると、トロトロとしたもので穴が覆われていた。待ちきれず準備をしている男の姿を想像して、胸が締め付けられる。
「んっ……はぁっ……あっ……あっ……!」
男は身をよじらせながらゆっくり腰を下ろしていく。
「ああっ! っ……はぁっ……孝臣……ごめ……」
男が完全に腰を下ろした時、男は精子を俺の腹に吐き出した。
「っ……はぁっ……孝臣……ごめん……我慢が……全然できない……」
男はそう言うと腰を上下に動かし始める。浅い息と男の喘ぎ声で部屋と俺の心が満たされていく。
俺は男の腰あたりを掴み、深く差し込んだ。一度、二度と深くゆっくり奥に差し込む。
「っぅああああぁぁっ!」
男は悲鳴をあげて腰を浮かす。そして2度目の射精をした。男は肩を震わせ口で呼吸していた。
自分の体でこんなに悦ぶ男がいる、これは何物にも代え難い幸福だ。
「斗也……もう少し、こうしていよう」
男は俺に倒れ込みながら、体を痙攣させながら言う。
「ごめん……最近……本当に堪え性が……なくて……」
「そういう意味じゃないよ、俺がもうイきそうなんだ」
男は両手と耳を俺の胸に当てる。多分なんの意識もせずにやっているのだろう、この男の癖がいろんな感情を呼び起す。
俺の記憶にある限り、男の第一声は「他の男と寝た」だった。それは犯されたというんだ、と表現を正すことができないくらい、男はギリギリのところで自分を守っていた。
「もうわかってると思うけど」
俺は男の背中を撫でて言う。
「わかってるよ」
俺の言葉を遮り男は答える。何をわかっているのか不思議に思って胸にしがみついてる男の方を見た。
「わかってるけど、多分私の方が孝臣を好きだ」
男は微動だにせず言う。俺はたまらずに男の体を起こして腰を突き動かした。
「ああっ! っ……もう……少し……こうして……ようよっ……!」
体の芯が熱く頭がぼんやりしている。男が制止しようとする両腕を掴み奥へ奥へ突き動かす。
「や……あぁっ……! あああっ! ……っまた……ああああ!」
男は射精はせずに途中で果てた、俺はそれに構わず動かし続けて男の中に今感じる全ての感情を吐き出した。
お互いの体を拭いて一緒に風呂に入る。男はまたあの癖で俺の腕の中で耳を当てている。
「転職しようと思うんだ」
男はポツリと呟く。
あんなことがあっても仕事に行き続けていた男の発言とは思えなかった。多分男を犯したのは会社の人間だ。この動揺は俺の胸を伝わって男に届いたのだろう。
「孝臣に話してないこといっぱいあるけど、ちゃんと話せるようになったら、言うから」
俺は両腕でこの男を抱きしめる。
「私は孝臣みたいに、優しい人間になりたい」
俺は不覚にも涙腺が緩み、それを悟られないように男をきつく抱いた。
この心の震えが止まるまでずっと、ずっと、男を抱きしめた。
10
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
バイト先に元カレがいるんだが、どうすりゃいい?
cheeery
BL
サークルに一人暮らしと、完璧なキャンパスライフが始まった俺……広瀬 陽(ひろせ あき)
ひとつ問題があるとすれば金欠であるということだけ。
「そうだ、バイトをしよう!」
一人暮らしをしている近くのカフェでバイトをすることが決まり、初めてのバイトの日。
教育係として現れたのは……なんと高二の冬に俺を振った元カレ、三上 隼人(みかみ はやと)だった!
なんで元カレがここにいるんだよ!
俺の気持ちを弄んでフッた最低な元カレだったのに……。
「あんまり隙見せない方がいいよ。遠慮なくつけこむから」
「ねぇ、今どっちにドキドキしてる?」
なんか、俺……ずっと心臓が落ち着かねぇ!
もう一度期待したら、また傷つく?
あの時、俺たちが別れた本当の理由は──?
「そろそろ我慢の限界かも」
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
二日に一度を目安に更新しております
邪神の祭壇へ無垢な筋肉を生贄として捧ぐ
零
BL
鍛えられた肉体、高潔な魂――
それは選ばれし“供物”の条件。
山奥の男子校「平坂学園」で、新任教師・高尾雄一は静かに歪み始める。
見えない視線、執着する生徒、触れられる肉体。
誇り高き男は、何に屈し、何に縋るのか。
心と肉体が削がれていく“儀式”が、いま始まる。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
【bl】砕かれた誇り
perari
BL
アルファの幼馴染と淫らに絡んだあと、彼は医者を呼んで、私の印を消させた。
「来月結婚するんだ。君に誤解はさせたくない。」
「あいつは嫉妬深い。泣かせるわけにはいかない。」
「君ももう年頃の残り物のオメガだろ? 俺の印をつけたまま、他のアルファとお見合いするなんてありえない。」
彼は冷たく、けれどどこか薄情な笑みを浮かべながら、一枚の小切手を私に投げ渡す。
「長い間、俺に従ってきたんだから、君を傷つけたりはしない。」
「結婚の日には招待状を送る。必ず来て、席につけよ。」
---
いくつかのコメントを拝見し、大変申し訳なく思っております。
私は現在日本語を勉強しており、この文章はAI作品ではありませんが、
一部に翻訳ソフトを使用しています。
もし読んでくださる中で日本語のおかしな点をご指摘いただけましたら、
本当にありがたく思います。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
初めまして、後れ馳せながら感想を書かせていただきました。
タイトルに釣られて読み始めたのですが、タイトル通りの内容なのですが、それが勿体なく感じるくらい良かったです!!
文章もストーリや登場人物にに合った文体でとても惹き付けられました(^^)
主人公は己のことを卑しいと称していましたが、厭らしさの無い人物で、最後心も満たされる結果になり嬉しく思いました(*´ω`*)
自分の心情に対して不器用な受けって可愛いですね!
長々と駄文、失礼しましたm(_ _)m
鳶色さん
はじめまして!読んでいただき、感想までいただけて……とても嬉しいです(´;ω;`)
キャラによって文体を変えたいと心掛けているので、そう仰っていただけると、とても嬉しいです(´༎ຶོρ༎ຶོ`)
当面これで生きていけます(о´∀`о)