【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

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第1章

ゴブリン討伐と不穏な噂

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 薬草採取依頼の成功でいくらかの資金と自信を得た俺は、翌日、再びアッシュ村の村役場を訪れていた。プルは定位置の肩の上、リンドはさらに一回り大きくなり、今は俺の隣で静かに控えている。その姿は道行く村人の注目を集めたが、昨日の一件で警戒心は薄れ、好奇や感嘆の視線に変わってきているのを感じる。

「やあ、レント君。今日も依頼かね?」
 村長がにこやかに出迎えてくれた。どうやら、すっかり顔なじみになったようだ。

「はい。もう少し稼ぎたいと思いまして。何かお勧めの依頼はありますか?」
「ふむ……君の実力なら、これなどはどうじゃろう? 『ゴブリンの小隊討伐』。最近、村の東の街道近くで旅人を襲うゴブリンの一団が出没していてのう。5体以上の討伐証明があれば達成じゃ」

 ゴブリン単体なら危険度は低いが、集団となると話は別だ。連携を取り、数で押してくるため、油断すると手練れの冒険者でも足をすくわれることがある。

(今の俺たちなら、やれるはずだ)

 プルはレベルアップして新しいスキルこそ覚えていないが、《水弾》の威力や《粘着液》の範囲は確実に向上している。リンドも体格が大きくなり、その爪や牙は立派な武器になりつつあった。何より、あの威嚇の咆哮は、格下の魔物には効果てきめんだろう。

「分かりました。その依頼、受けさせていただきます」
「おお、頼もしい! 場所はこの地図のあたりじゃ。気をつけて行ってきてくれ」

 俺は村長から地図を受け取り、簡単な準備を整えてから村を出た。昨日稼いだ報酬で、少しだけ質の良いポーションを買い足し、【収納∞】に補充しておく。リンド用の肉も多めに仕入れておいた。

 村の東へ向かう街道を歩き、地図に示された地点に近づくと、道の脇に獣道のようなものができていた。おそらく、これがゴブリンたちの通り道だろう。

「プル、リンド、行くぞ。油断するな」
「ぷる!」
「きゅる!」

 獣道を進むと、やがて開けた場所に出た。そこには粗末な木の砦のようなものが築かれており、数匹のゴブリンが見張りをしている。奥にはさらに数匹の気配。リーダー格らしき、一回り大きな個体――ホブゴブリンもいるようだ。総数は7、8匹といったところか。

(よし、奇襲をかける!)

 俺は身を隠しながら、プルに合図を送る。
「プル、まず見張りの足を止めてくれ!」
「ぷるしゅ!」

 プルが茂みの中から飛び出し、見張りのゴブリンたちの足元に《粘着液》を広範囲に散布する!
「グギャ!?」
「ギギ!?」

 突然の奇襲と足元の異変に、ゴブリンたちが混乱した。その隙を突き、俺は砦の入り口へと駆け出す!

「リンド、咆哮!」
「キュアアアアアッ!!」

 俺の指示で、リンドが空気を震わせるほどの咆哮を放つ! ゴブリンたちは本能的な恐怖に竦み上がり、動きが完全に停止した!

(今だ!)

 俺は最も近くにいたゴブリンを一閃のもとに斬り伏せる! プルも《水弾》を連射し、混乱しているゴブリンを次々と撃ち抜いていく。経験値を自分にも少し回したおかげか、以前よりも体の動きが軽い。剣筋も冴えているのが自分でも分かった。

「グガアアア!」

 砦の中から、棍棒を構えたホブゴブリンが飛び出してきた! さすがにリーダー格だけあって、リンドの咆哮にも完全には怯んでいない。

「お前が親玉か!」

 俺はホブゴブリンと対峙する。ホブゴブリンが棍棒を振り下ろしてくるが、俺はその動きを冷静に見切り、最小限の動きで回避。同時に、がら空きになった脇腹へ剣を滑り込ませる!

「グギィッ!?」

 手応えあり! だが、ホブゴブリンは怯まず、棍棒を横薙ぎに振るってきた!

(まずい!)

 咄嗟に防御したが、衝撃で体勢を崩される。そこへ、ホブゴブリンが追撃を仕掛けようとした瞬間――。

 ――ガブリ!

 横から飛び出してきたリンドが、ホブゴブリンの腕に噛みついた! 鋭い牙が肉に食い込み、ホブゴブリンは激痛に顔を歪める。

「ナイスだ、リンド!」

 俺はその隙を見逃さず、体勢を立て直すと、ホブゴブリンの首を目掛けて渾身の一撃を叩き込んだ!

 リーダーを失った残りのゴブリンたちは、戦意を喪失して逃げ出そうとしたが、プルが放った《粘着液》に行く手を阻まれ、俺が確実に仕留めていった。

《経験値を合計450獲得しました……》

 戦闘後、俺はゴブリンたちの討伐証明(耳など)を集めながら、プルとリンドの労をねぎらった。リンドの成長は目覚ましく、すでに頼れる戦力だ。

 村役場に戻り、討伐証明を提出すると、村長は満面の笑みで迎えてくれた。
「おお、レント君! 見事じゃ! これでしばらくは街道も安全になるじゃろう。これが報酬じゃ。期待以上じゃから、少し色をつけさせてもらったぞ」

 差し出された袋はずっしりと重かった。これで当面の生活費と、プルとリンドの食費は十分に賄えるだろう。

「ありがとうございます、村長」
「礼を言うのはこちらの方じゃよ。……そういえば、レント君。最近、この辺りで見慣れない連中を見かけんかのう?」

 報酬を受け取った俺に、村長がふと思い出したように尋ねてきた。
「見慣れない連中、ですか?」
「うむ。妙に装備の良い調査隊のような者たちや、どこかの騎士団のような紋章をつけた者たちが、森の方をうろついているという目撃情報があってのう。何を探しているのか……」

 その言葉に、俺の胸がざわついた。装備の良い調査隊? 騎士団の紋章?

(まさか……アルヴィンたちが、俺を探している? いや、あるいは何か別の目的で……?)

 追放されたとはいえ、【収納∞】の本当の価値に気づいた可能性はゼロではない。あるいは、俺が追放された後に何か問題が起き、俺を連れ戻そうとしているのか。

「……いえ、俺は見ていませんが……少し、気になりますね」
「そうか。まあ、君も気をつけておくに越したことはないじゃろう」

 村長はそれ以上深くは聞いてこなかったが、俺の心には小さな、しかし無視できない棘が刺さったままだった。

 ゴブリン討伐の成功と報酬への満足感は、不穏な噂によって少しだけかき消されていた。
 今はまだ、ただの噂だ。だが、もし本当に奴らがこの辺境の地まで来ているとしたら……。

 俺は気を引き締め、プルとリンドと共に宿屋へと戻った。今はただ、力を蓄えるしかない。来るべき時に備えて。

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