【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

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第1章

オーク討伐

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 村長から聞いた「見慣れない連中」の噂が、どうにも頭から離れない。宿屋に戻ってからも、俺はそれとなく他の宿泊客や女将さんに話を聞いてみたが、具体的な情報は得られなかった。「そういえば、そんな連中を見た気がする」程度の曖昧なものばかりだ。リンドが目立つこともあり、あまり派手に嗅ぎまわるわけにもいかない。

(考えすぎても仕方ないか……。今は俺たちの力をつけるのが先決だ)

 俺は気持ちを切り替え、翌日には再び村役場へと足を運んだ。プルとリンドも、俺の決意を感じ取ったのか、いつもより少しだけ引き締まった表情(に見える)で後に続く。

「村長、また依頼をお願いします。今度はオークの討伐依頼というのはありますか?」
「おお、レント君。オークか……ちと手強い相手じゃぞ? 村の南の森に数匹住み着いて、木こり達を困らせているという話じゃが……」
 村長は少し心配そうな顔をしたが、俺とリンドの姿を見て、すぐに納得したように頷いた。

「君たちなら大丈夫かもしれんな。よし、オーク3体の討伐証明、頼めるかの?」
「はい、お任せください」

 オークはゴブリンよりも遥かに体格が良く、力も強い。知能は低いとされるが、侮れない相手だ。だが、ゴブリンの小隊を難なく蹴散らした今の俺たちなら、勝算は十分にあるはずだ。

 俺たちは村の南の森へと向かった。オークの縄張りとされる場所は、ゴブリンの時よりもさらに森の奥深くにあった。辺りには、オーク特有の荒々しい痕跡――太い木の幹に付けられた傷や、巨大な足跡――が残されている。

「いるな……。プル、索敵を頼む」
「ぷる!」

 プルは俺の肩から飛び降りると、音もなく周囲の茂みに紛れていく。スライムの特性を活かした隠密行動は、プルの得意技の一つになりつつあった。
 しばらくして、プルが戻ってきた。俺の足元で、特定の方向を指し示し、三回ほどぴょんぴょんと跳ねる。

(三匹か……よし)

 俺たちは慎重に、プルの示した方向へ進む。やがて、開けた場所で三体のオークが焚き火を囲んでいるのを発見した。いずれも筋骨隆々で、手には歪な棍棒を持っている。

(奇襲しかない!)

「リンド、ブレス!」

 俺の合図と共に、リンドが大きく息を吸い込んだ! まだ完全な炎ではないが、以前よりも遥かに高温の熱波が、オークたちに向かって放たれる!

「ブゴオオッ!?」

 不意の熱波に、オークたちは驚き、混乱した! その隙を突き、俺は最も手前のオークに駆け寄り、剣を振るう!

「プル、援護!」
「ぷしゅー! ぷしゅー!」

 プルが援護するように《水弾》を連射するが、オークの硬い皮膚にはあまり効果がないように見える。しかし、その時、プルが不意に緑色の光を放った!

「ぷるるっ!」

 プルの体から、小さな光の粒が俺に向かって飛んでくる。光に触れると、わずかに体力が回復する感覚があった。

(回復魔法…《ヒール》!? プル、いつの間に!)

 驚きつつも、プルの新たな力に感謝する。これなら、多少の怪我は気にせず戦える!

「ブゴッ!」

 一体目のオークが棍棒を振り回してくる。俺はそれを紙一重でかわし、がら空きになった懐に飛び込む!
 リンドも戦線に参加していた。低空を滑るように飛び、鋭い爪でオークの腕を切り裂く! 飛行能力も徐々に身についてきているようだ。

「ブオオオオッ!!」

 仲間がやられ、残りのオークたちが怒り狂って突進してくる! 俺は一体を引き受け、もう一体をリンドに任せる!

 オークの攻撃は重い。一撃でも食らえば致命傷になりかねない。俺は集中力を高め、相手の動きを見切りながら斬り結ぶ。プルが時折《ヒール》で回復してくれるおかげで、持久戦に持ち込めていた。

 一方、リンドはオークの攻撃を俊敏な動きでかわしながら、爪と牙、そして威嚇の咆哮で着実にダメージを与えている。すでにリンド単独でも、オークと互角以上に渡り合えるようになっていた。

 やがて、俺は隙を見てオークの首筋に深々と剣を突き立て、一体を仕留めた。リンドもほぼ同時に、相手のオークの喉元に噛みつき、動きを止めていた。

《経験値を合計800獲得しました……》

「はぁ、はぁ……。やったな、二人とも」

 さすがにオーク三体は骨が折れた。プルもリンドも少し疲れているようだ。俺は貯蓄した経験値を二匹に優先的に分配し、その成長を促す。

 討伐証明としてオークの太い牙を折り、【収納∞】に入れようとした時、ふと、オークが身に着けていた粗末な腰袋が目に留まった。戦利品か何かだろうか?

(念のため、これも回収しておくか)

 腰袋を【収納∞】に入れようとした瞬間、中から何かが転がり落ちた。それは、泥に汚れた金属片――何かの装備の一部、盾の破片のようなものだった。
 そして、その破片に刻まれた紋章を見て、俺は息を呑んだ。

 ――見覚えがあった。それは、俺が所属していたパーティー『竜牙の閃光』が、後ろ盾として契約していた王国の騎士団の紋章だったのだ。

(なぜ、こんな辺境のオークが、騎士団の紋章が入った装備の破片を……?)

 村長の言っていた「見慣れない連中」の噂が、一気に現実味を帯びてくる。奴らは、この森に、それもオークと接触するような場所まで来ていた……?

 彼らの目的は何だ? 俺を探しているのか? それとも、この森に何か別の――俺の知らない何かがあるというのか?

 嫌な予感が背筋を駆け上る。俺は騎士団の紋章が入った金属片を強く握りしめた。

(どちらにせよ……負けるわけにはいかない)

 プルとリンドを守るためにも、そして、理不尽な追放への意趣返しのためにも。俺は、もっと強くならなければならない。

 決意を新たに、俺たちはオークの縄張りを後にした。心の中に巣食う不安と、それを打ち消す強い意志を抱えながら。

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