【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

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第1章

騎士団の痕跡

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 宿屋の一室、ランプの灯りがテーブルの上に置かれた金属片を鈍く照らしていた。オークの持ち物から見つかった、王国の騎士団の紋章が刻まれた盾の破片。これを見るたびに、俺の胸には重い疑念が渦巻く。

(騎士団が、なぜこんな辺境の森に? そして、なぜオークが彼らの装備の一部を持っていた?)

 考えられる可能性はいくつかある。騎士団がオークと戦闘になり、装備を落とした。あるいは、もっと不穏な――騎士団がオークを利用していた、もしくはその逆か……。どちらにせよ、奴らがこの近くまで来ていることは間違いないだろう。俺を探しているのか、それとも別の目的があるのかは不明だが、いずれ接触する可能性は高い。

(呑気に村の依頼をこなしているだけではダメだ。もっと、圧倒的な力が必要だ……!)

 プルとリンドを守り抜き、そして理不尽な追放を仕掛けてきた連中に一矢報いるためには、さらなるレベルアップが不可欠だ。より多くの、そして質の高い経験値が必要になる。

 俺は決意を固め、翌日、再び村長の元を訪れた。
「村長、この辺りにダンジョンのような場所はありますか? もっと経験値を稼ぎたいんです」

 俺の言葉に、村長は少し驚いた顔をしたが、すぐに納得したように頷いた。
「ダンジョンか……そうじゃな、この村から半日ほど歩いた山麓に、『試練の洞窟』と呼ばれる古い洞窟がある。昔は新米冒険者が腕試しに使っていたようじゃが、最近はあまり近寄る者もおらん。魔物は出るし、奥には多少の鉱石も眠っているという話じゃが……」

「そこに行ってみます」
「そうか。まあ、君の実力なら大丈夫かもしれんが、決して深入りはするんじゃないぞ。奥には危険な魔物もいるという噂じゃ。これが簡単な地図じゃ」

 村長から地図と注意を受け取り、俺は礼を言って役場を出た。プルとリンドも、新たな挑戦に闘志を燃やしているように見えた。

 翌日、俺たちは十分な準備を整え、「試練の洞窟」へと向かった。山麓にぽっかりと口を開けた洞窟の入り口は、不気味な雰囲気を漂わせている。

「よし、行くぞ」
「ぷる!」
「きゅる!」

 松明に火を灯し(もちろん【収納∞】から取り出した)、俺たちは洞窟の中へと足を踏み入れた。ひんやりとした空気が肌を撫でる。内部は思ったよりも広く、道はいくつか枝分かれしているようだ。

 ――キィィィ!

 早速、天井から数匹のジャイアントバットが襲い掛かってきた!
「プル、水弾! リンド、威嚇!」

 俺の指示に、二匹は即座に反応する。プルの《水弾》が正確にバットを撃ち落とし、リンドの咆哮が残りのバットを竦ませる。動きが鈍ったところを、俺が剣で確実に仕留めていった。

 ダンジョン内は魔物の出現頻度が高い。その後も、壁を這うケイブスパイダーや、不気味に立ち上がるスケルトンなどが次々と現れたが、俺たちの連携の前には敵ではなかった。
 プルは回復役としても安定感が増し、リンドは持ち前のパワーとスピードで敵を蹂躙していく。俺自身も、経験値を分配してレベルアップしたおかげで、動きの精度が格段に上がっていた。

 戦闘を繰り返しながら洞窟の奥へと進んでいく。獲得した経験値は着実に貯蓄され、プルとリンドのレベルも順調に上がっていく。鉱石が眠っているという壁をいくつか見つけたので、それも【収納∞】に回収しておいた。これは換金できそうだ。

 順調に探索を進め、少し開けた場所に出た時、俺は思わず足を止めた。
 そこには、明らかに人工的な痕跡が残されていたのだ。

(これは……野営の跡?)

 焚き火が燃やされた跡、食べ物の残りカス、そして……地面に突き立てられ、引き抜かれたような杭の跡。それも一つや二つではない。比較的最近のものだ。

 そして、さらに奥の壁際には、何かを激しく掘り返したような跡もあった。土や岩が乱雑に積み上げられている。

(誰かが、ここでキャンプをして、何かを探していた……?)

 まさか、と思い、俺は焚き火の跡の近くに落ちていた燃えさしを拾い上げた。その木片には、微かに、だが確かに見覚えのある紋章の焼き印が押されていた。

 ――王国の騎士団の紋章だ。

「……やっぱり、奴らか」

 オークの持ち物から見つかった盾の破片だけではなかった。騎士団は、この「試練の洞窟」の内部にまで入り込み、何かを探していたのだ。それも、かなり執拗に。

 背筋に冷たいものが走る。
 奴らは一体、このダンジョンで何を探しているんだ? ただの鉱石や財宝とは思えない。もっと別の、重要な何かがあるのか?

 危険な香りがする。だが、同時に好奇心も刺激された。そして何より、奴らの目的が何であれ、それを易々と達成させるわけにはいかないという反骨心も湧いてきた。

「もう少し、奥へ進んでみよう」

 俺は松明を掲げ、騎士団が掘り返した跡の先へと続く通路を見据えた。プルとリンドも、俺の決意を感じ取ったように、静かに、だが力強く頷いた。
 この洞窟の奥に何が待っているのかは分からない。だが、俺たちは進むしかないのだ。強く、なるために。

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