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第1章
竜の盾
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守護ゴーレムとの死闘で消耗しきった俺、プル、そして覚醒の反動でふらつくリンド。対するは、包囲網を狭め、殺意のこもった視線を向けてくる王国騎士団の斥候たち。数は七、八名。多勢に無勢、状況は最悪だった。
「ハッ、見ろよ、あのザマを。竜もスライムも、もう虫の息じゃねえか」
「油断するな。隊長からは、確実に仕留めろとの命令だ」
「よし、一気にかかるぞ!」
リーダー格の男の号令と共に、斥候たちが一斉に襲い掛かってきた! 剣が、槍が、そして後方からは魔法の詠唱も聞こえる!
「くそっ!」
俺は『星穿』を構え、プルを守るように前に出る! 【収納∞】から煙幕玉を投げつけ、視界を遮ろうとするが、相手は前回の失敗から学んでいるのか、散開して冷静に対処してくる。時間停止空間を利用した奇襲も、消耗した今の俺では精度が低く、決定打にはならない。
「ぷるるっ! レント、危ない!」
プルが最後の魔力を振り絞り、俺に回復魔法をかけようとするが、それも焼け石に水だ。数人の斥候が、俺の防御をかいくぐり、その刃を俺へと突き出してきた!
(ここまで、か……!?)
死を覚悟した、その瞬間だった。
「グルアアアッ!!」
リンドが、ふらつく巨体を奮い立たせ、俺の前に立ちはだかった! 覚醒の反動で攻撃的な力は低下しているようだが、その体は依然として巨大な盾だ!
ガキンッ! ギャリリッ!
斥候たちの剣や槍が、リンドの深紅の鱗と、ボルガン親方が作ってくれたプロテクターに弾かれる! さすがの硬度だ! だが、衝撃は完全に殺しきれず、リンドの巨体がよろめく。
「まだ動けるのか、化け物が!」
「構うな! 竜ごと貫け!」
斥候たちはなおも攻撃を続け、リンドの体には新たな傷が刻まれていく。それでもリンドは、決して退かずに俺とプルを守り続けていた。その黄金色の瞳には、強い意志の光が宿っている。
(リンド……! 無茶だ!)
このままでは、リンドが持たない! 俺が前に出ようとした、その時だった。
――静かにしろ、騒がしい。
凛とした、しかし有無を言わせぬ声が、闘技場跡に響き渡った。その声の主は、いつの間にか、斥候たちの背後に音もなく現れていた。古びたローブを目深にかぶった、あの遺跡の守人だ。
「な、何奴!?」
「いつの間に……!?」
斥候たちが驚き、慌てて守人の方へ向き直る。だが、彼らが武器を構えるよりも早く、守人は静かに片手を上げた。
「ここは聖域。汝ら『鉄の者』が、土足で踏み荒らして良い場所ではない」
守人がそう呟くと、彼の手のひらから、遺跡の石畳に描かれていた古代文字が淡い光を放ち始めた! 光は瞬く間に斥候たちの足元へと広がり、複雑な紋様を描き出す!
「うわっ! 体が……動かない!?」
「な、なんだこれは! 魔法か!?」
斥候たちは、まるで金縛りにあったかのように、その場で身動きが取れなくなっていた! 古代の束縛魔法、あるいは遺跡の力を利用した技か! その力は、俺がこれまで見てきたどの魔法よりも強力で、洗練されていた。
「……これで分かったであろう。ここは汝らの力の及ぶ場所ではない。速やかに立ち去れ。さもなくば、ここで遺跡の塵となるが良い」
守人の冷たい声に、斥候たちは完全に戦意を喪失した。彼らは恐怖に顔を引きつらせ、縛られたまま、助けを求めるように互いを見つめ合っている。
「……撤退だ! 全員、撤退する!」
リーダー格の男が叫ぶ。守人は、彼らが逃げるのを黙って見ていた。やがて、束縛が解かれた斥候たちは、負傷した仲間を引きずるようにして、蜘蛛の子を散らすように遺跡の奥へと逃げ去っていった。おそらく、氷刃隊長への報告を最優先するだろう。
斥候たちが完全に姿を消すと、守人は静かに俺たちの方へと向き直った。
「……試練は乗り越えたようだな、若き竜とその主よ。見事な覚醒の兆しだ」
その声には、わずかながら感嘆の色が混じっているように聞こえた。
「だが、お前たちのせいで、奴らをこの奥まで呼び込んでしまった。ここは、もはや安全な場所ではない」
「……助かりました。ありがとうございます」
俺は素直に礼を言った。彼の助けがなければ、俺たちは今頃……。
「礼は不要だ。私は、この遺跡と、古き竜の封印を守る者として、為すべきことをしたまで」
守人は、消耗しきっているリンドを一瞥した。
「その竜の覚醒は、まだ始まったばかりだ。真の力を得るには、さらなる試練と、そしてそれを正しく導く者の存在が必要となるだろう。……そして、奴らは必ずまた来る。より大きな力を持ってな」
守人の言葉は、俺たちの勝利が一時的なものであることを改めて示していた。
「……どうすればいいんですか?」
「今は、力を蓄えよ。そして、この遺跡から一時的に離れるのも一つの手かもしれん。あるいは……この遺跡のさらに奥深く、真の試練に挑む覚悟があるのなら、話は別だが」
守人は意味深な言葉を残すと、再び踵を返し、朝靄の中へと静かに消えていった。
「覚醒は、まだ始まったばかり……か。そして、奴らはまた来る……」
俺は、守人が消えた方向を見つめながら呟いた。窮地は脱したが、課題は山積みだ。リンドの真の覚醒、迫りくる氷刃とアルヴィン、そして守人が示唆した「真の試練」。
朝日が、傷つきながらも寄り添う俺、プル、そしてリンドの姿を照らし出す。
俺は、次なる一歩をどこへ踏み出すべきか、静かに考え始めていた。
「ハッ、見ろよ、あのザマを。竜もスライムも、もう虫の息じゃねえか」
「油断するな。隊長からは、確実に仕留めろとの命令だ」
「よし、一気にかかるぞ!」
リーダー格の男の号令と共に、斥候たちが一斉に襲い掛かってきた! 剣が、槍が、そして後方からは魔法の詠唱も聞こえる!
「くそっ!」
俺は『星穿』を構え、プルを守るように前に出る! 【収納∞】から煙幕玉を投げつけ、視界を遮ろうとするが、相手は前回の失敗から学んでいるのか、散開して冷静に対処してくる。時間停止空間を利用した奇襲も、消耗した今の俺では精度が低く、決定打にはならない。
「ぷるるっ! レント、危ない!」
プルが最後の魔力を振り絞り、俺に回復魔法をかけようとするが、それも焼け石に水だ。数人の斥候が、俺の防御をかいくぐり、その刃を俺へと突き出してきた!
(ここまで、か……!?)
死を覚悟した、その瞬間だった。
「グルアアアッ!!」
リンドが、ふらつく巨体を奮い立たせ、俺の前に立ちはだかった! 覚醒の反動で攻撃的な力は低下しているようだが、その体は依然として巨大な盾だ!
ガキンッ! ギャリリッ!
斥候たちの剣や槍が、リンドの深紅の鱗と、ボルガン親方が作ってくれたプロテクターに弾かれる! さすがの硬度だ! だが、衝撃は完全に殺しきれず、リンドの巨体がよろめく。
「まだ動けるのか、化け物が!」
「構うな! 竜ごと貫け!」
斥候たちはなおも攻撃を続け、リンドの体には新たな傷が刻まれていく。それでもリンドは、決して退かずに俺とプルを守り続けていた。その黄金色の瞳には、強い意志の光が宿っている。
(リンド……! 無茶だ!)
このままでは、リンドが持たない! 俺が前に出ようとした、その時だった。
――静かにしろ、騒がしい。
凛とした、しかし有無を言わせぬ声が、闘技場跡に響き渡った。その声の主は、いつの間にか、斥候たちの背後に音もなく現れていた。古びたローブを目深にかぶった、あの遺跡の守人だ。
「な、何奴!?」
「いつの間に……!?」
斥候たちが驚き、慌てて守人の方へ向き直る。だが、彼らが武器を構えるよりも早く、守人は静かに片手を上げた。
「ここは聖域。汝ら『鉄の者』が、土足で踏み荒らして良い場所ではない」
守人がそう呟くと、彼の手のひらから、遺跡の石畳に描かれていた古代文字が淡い光を放ち始めた! 光は瞬く間に斥候たちの足元へと広がり、複雑な紋様を描き出す!
「うわっ! 体が……動かない!?」
「な、なんだこれは! 魔法か!?」
斥候たちは、まるで金縛りにあったかのように、その場で身動きが取れなくなっていた! 古代の束縛魔法、あるいは遺跡の力を利用した技か! その力は、俺がこれまで見てきたどの魔法よりも強力で、洗練されていた。
「……これで分かったであろう。ここは汝らの力の及ぶ場所ではない。速やかに立ち去れ。さもなくば、ここで遺跡の塵となるが良い」
守人の冷たい声に、斥候たちは完全に戦意を喪失した。彼らは恐怖に顔を引きつらせ、縛られたまま、助けを求めるように互いを見つめ合っている。
「……撤退だ! 全員、撤退する!」
リーダー格の男が叫ぶ。守人は、彼らが逃げるのを黙って見ていた。やがて、束縛が解かれた斥候たちは、負傷した仲間を引きずるようにして、蜘蛛の子を散らすように遺跡の奥へと逃げ去っていった。おそらく、氷刃隊長への報告を最優先するだろう。
斥候たちが完全に姿を消すと、守人は静かに俺たちの方へと向き直った。
「……試練は乗り越えたようだな、若き竜とその主よ。見事な覚醒の兆しだ」
その声には、わずかながら感嘆の色が混じっているように聞こえた。
「だが、お前たちのせいで、奴らをこの奥まで呼び込んでしまった。ここは、もはや安全な場所ではない」
「……助かりました。ありがとうございます」
俺は素直に礼を言った。彼の助けがなければ、俺たちは今頃……。
「礼は不要だ。私は、この遺跡と、古き竜の封印を守る者として、為すべきことをしたまで」
守人は、消耗しきっているリンドを一瞥した。
「その竜の覚醒は、まだ始まったばかりだ。真の力を得るには、さらなる試練と、そしてそれを正しく導く者の存在が必要となるだろう。……そして、奴らは必ずまた来る。より大きな力を持ってな」
守人の言葉は、俺たちの勝利が一時的なものであることを改めて示していた。
「……どうすればいいんですか?」
「今は、力を蓄えよ。そして、この遺跡から一時的に離れるのも一つの手かもしれん。あるいは……この遺跡のさらに奥深く、真の試練に挑む覚悟があるのなら、話は別だが」
守人は意味深な言葉を残すと、再び踵を返し、朝靄の中へと静かに消えていった。
「覚醒は、まだ始まったばかり……か。そして、奴らはまた来る……」
俺は、守人が消えた方向を見つめながら呟いた。窮地は脱したが、課題は山積みだ。リンドの真の覚醒、迫りくる氷刃とアルヴィン、そして守人が示唆した「真の試練」。
朝日が、傷つきながらも寄り添う俺、プル、そしてリンドの姿を照らし出す。
俺は、次なる一歩をどこへ踏み出すべきか、静かに考え始めていた。
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