【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる

文字の大きさ
50 / 99
第1章

竜の盾

しおりを挟む
 守護ゴーレムとの死闘で消耗しきった俺、プル、そして覚醒の反動でふらつくリンド。対するは、包囲網を狭め、殺意のこもった視線を向けてくる王国騎士団の斥候たち。数は七、八名。多勢に無勢、状況は最悪だった。

「ハッ、見ろよ、あのザマを。竜もスライムも、もう虫の息じゃねえか」
「油断するな。隊長からは、確実に仕留めろとの命令だ」
「よし、一気にかかるぞ!」

 リーダー格の男の号令と共に、斥候たちが一斉に襲い掛かってきた! 剣が、槍が、そして後方からは魔法の詠唱も聞こえる!

「くそっ!」

 俺は『星穿』を構え、プルを守るように前に出る! 【収納∞】から煙幕玉を投げつけ、視界を遮ろうとするが、相手は前回の失敗から学んでいるのか、散開して冷静に対処してくる。時間停止空間を利用した奇襲も、消耗した今の俺では精度が低く、決定打にはならない。

「ぷるるっ! レント、危ない!」
 プルが最後の魔力を振り絞り、俺に回復魔法をかけようとするが、それも焼け石に水だ。数人の斥候が、俺の防御をかいくぐり、その刃を俺へと突き出してきた!

(ここまで、か……!?)

 死を覚悟した、その瞬間だった。
「グルアアアッ!!」

 リンドが、ふらつく巨体を奮い立たせ、俺の前に立ちはだかった! 覚醒の反動で攻撃的な力は低下しているようだが、その体は依然として巨大な盾だ!

 ガキンッ! ギャリリッ!

 斥候たちの剣や槍が、リンドの深紅の鱗と、ボルガン親方が作ってくれたプロテクターに弾かれる! さすがの硬度だ! だが、衝撃は完全に殺しきれず、リンドの巨体がよろめく。

「まだ動けるのか、化け物が!」
「構うな! 竜ごと貫け!」

 斥候たちはなおも攻撃を続け、リンドの体には新たな傷が刻まれていく。それでもリンドは、決して退かずに俺とプルを守り続けていた。その黄金色の瞳には、強い意志の光が宿っている。

(リンド……! 無茶だ!)

 このままでは、リンドが持たない! 俺が前に出ようとした、その時だった。

 ――静かにしろ、騒がしい。

 凛とした、しかし有無を言わせぬ声が、闘技場跡に響き渡った。その声の主は、いつの間にか、斥候たちの背後に音もなく現れていた。古びたローブを目深にかぶった、あの遺跡の守人だ。

「な、何奴!?」
「いつの間に……!?」

 斥候たちが驚き、慌てて守人の方へ向き直る。だが、彼らが武器を構えるよりも早く、守人は静かに片手を上げた。

「ここは聖域。汝ら『鉄の者』が、土足で踏み荒らして良い場所ではない」

 守人がそう呟くと、彼の手のひらから、遺跡の石畳に描かれていた古代文字が淡い光を放ち始めた! 光は瞬く間に斥候たちの足元へと広がり、複雑な紋様を描き出す!

「うわっ! 体が……動かない!?」
「な、なんだこれは! 魔法か!?」

 斥候たちは、まるで金縛りにあったかのように、その場で身動きが取れなくなっていた! 古代の束縛魔法、あるいは遺跡の力を利用した技か! その力は、俺がこれまで見てきたどの魔法よりも強力で、洗練されていた。

「……これで分かったであろう。ここは汝らの力の及ぶ場所ではない。速やかに立ち去れ。さもなくば、ここで遺跡の塵となるが良い」

 守人の冷たい声に、斥候たちは完全に戦意を喪失した。彼らは恐怖に顔を引きつらせ、縛られたまま、助けを求めるように互いを見つめ合っている。

「……撤退だ! 全員、撤退する!」
 リーダー格の男が叫ぶ。守人は、彼らが逃げるのを黙って見ていた。やがて、束縛が解かれた斥候たちは、負傷した仲間を引きずるようにして、蜘蛛の子を散らすように遺跡の奥へと逃げ去っていった。おそらく、氷刃隊長への報告を最優先するだろう。

 斥候たちが完全に姿を消すと、守人は静かに俺たちの方へと向き直った。
「……試練は乗り越えたようだな、若き竜とその主よ。見事な覚醒の兆しだ」
 その声には、わずかながら感嘆の色が混じっているように聞こえた。

「だが、お前たちのせいで、奴らをこの奥まで呼び込んでしまった。ここは、もはや安全な場所ではない」
「……助かりました。ありがとうございます」
 俺は素直に礼を言った。彼の助けがなければ、俺たちは今頃……。

「礼は不要だ。私は、この遺跡と、古き竜の封印を守る者として、為すべきことをしたまで」
 守人は、消耗しきっているリンドを一瞥した。
「その竜の覚醒は、まだ始まったばかりだ。真の力を得るには、さらなる試練と、そしてそれを正しく導く者の存在が必要となるだろう。……そして、奴らは必ずまた来る。より大きな力を持ってな」

 守人の言葉は、俺たちの勝利が一時的なものであることを改めて示していた。
「……どうすればいいんですか?」
「今は、力を蓄えよ。そして、この遺跡から一時的に離れるのも一つの手かもしれん。あるいは……この遺跡のさらに奥深く、真の試練に挑む覚悟があるのなら、話は別だが」

 守人は意味深な言葉を残すと、再び踵を返し、朝靄の中へと静かに消えていった。

「覚醒は、まだ始まったばかり……か。そして、奴らはまた来る……」

 俺は、守人が消えた方向を見つめながら呟いた。窮地は脱したが、課題は山積みだ。リンドの真の覚醒、迫りくる氷刃とアルヴィン、そして守人が示唆した「真の試練」。

 朝日が、傷つきながらも寄り添う俺、プル、そしてリンドの姿を照らし出す。
 俺は、次なる一歩をどこへ踏み出すべきか、静かに考え始めていた。

しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

《レベル∞》の万物創造スキルで追放された俺、辺境を開拓してたら気づけば神々の箱庭になっていた

夏見ナイ
ファンタジー
勇者パーティーの雑用係だったカイは、魔王討伐後「無能」の烙印を押され追放される。全てを失い、死を覚悟して流れ着いた「忘れられた辺境」。そこで彼のハズレスキルは真の姿《万物創造》へと覚醒した。 無から有を生み、世界の理すら書き換える神の如き力。カイはまず、生きるために快適な家を、豊かな畑を、そして清らかな川を創造する。荒れ果てた土地は、みるみるうちに楽園へと姿を変えていった。 やがて、彼の元には行き場を失った獣人の少女やエルフの賢者、ドワーフの鍛冶師など、心優しき仲間たちが集い始める。これは、追放された一人の青年が、大切な仲間たちと共に理想郷を築き、やがてその地が「神々の箱庭」と呼ばれるまでの物語。

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

有賀冬馬
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

もふもふと始めるゴミ拾いの旅〜何故か最強もふもふ達がお世話されに来ちゃいます〜

双葉 鳴
ファンタジー
「ゴミしか拾えん役立たずなど我が家にはふさわしくない! 勘当だ!」 授かったスキルがゴミ拾いだったがために、実家から勘当されてしまったルーク。 途方に暮れた時、声をかけてくれたのはひと足先に冒険者になって実家に仕送りしていた長兄アスターだった。 ルークはアスターのパーティで世話になりながら自分のスキルに何ができるか少しづつ理解していく。 駆け出し冒険者として少しづつ認められていくルーク。 しかしクエストの帰り、討伐対象のハンターラビットとボアが縄張り争いをしてる場面に遭遇。 毛色の違うハンターラビットに自分を重ねるルークだったが、兄アスターから引き止められてギルドに報告しに行くのだった。 翌朝死体が運び込まれ、素材が剥ぎ取られるハンターラビット。 使われなくなった肉片をかき集めてお墓を作ると、ルークはハンターラビットの魂を拾ってしまい……変身できるようになってしまった! 一方で死んだハンターラビットの帰りを待つもう一匹のハンターラビットの助けを求める声を聞いてしまったルークは、その子を助け出す為兄の言いつけを破って街から抜け出した。 その先で助け出したはいいものの、すっかり懐かれてしまう。 この日よりルークは人間とモンスターの二足の草鞋を履く生活を送ることになった。 次から次に集まるモンスターは最強種ばかり。 悪の研究所から逃げ出してきたツインヘッドベヒーモスや、捕らえられてきたところを逃げ出してきたシルバーフォックス(のちの九尾の狐)、フェニックスやら可愛い猫ちゃんまで。 ルークは新しい仲間を募り、一緒にお世話するブリーダーズのリーダーとしてお世話道を極める旅に出るのだった! <第一部:疫病編> 一章【完結】ゴミ拾いと冒険者生活:5/20〜5/24 二章【完結】ゴミ拾いともふもふ生活:5/25〜5/29 三章【完結】ゴミ拾いともふもふ融合:5/29〜5/31 四章【完結】ゴミ拾いと流行り病:6/1〜6/4 五章【完結】ゴミ拾いともふもふファミリー:6/4〜6/8 六章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(道中):6/8〜6/11 七章【完結】もふもふファミリーと闘技大会(本編):6/12〜6/18

追放された”お荷物”の俺がいないと、聖女も賢者も剣聖も役立たずらしい

夏見ナイ
ファンタジー
「お荷物」――それが、Sランク勇者パーティーで雑用係をするリアムへの評価だった。戦闘能力ゼロの彼は、ある日ついに追放を宣告される。 しかし、パーティーの誰も知らなかった。彼らの持つ強力なスキルには、使用者を蝕む”代償”が存在したことを。そして、リアムの持つ唯一のスキル【代償転嫁】が、その全てを人知れず引き受けていたことを。 リアムを失い、スキルの副作用に蝕まれ崩壊していく元仲間たち。 一方、辺境で「呪われた聖女」を救ったリアムは自らの力の真価を知る。魔剣に苦しむエルフ、竜の血に怯える少女――彼は行く先々で訳ありの美少女たちを救い、彼女たちと安住の地を築いていく。 これは、心優しき”お荷物”が最強の仲間と居場所を見つけ、やがて伝説となる物語。

40歳のおじさん 旅行に行ったら異世界でした どうやら私はスキル習得が早いようです

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
部長に傷つけられ続けた私 とうとうキレてしまいました なんで旅行ということで大型連休を取ったのですが 飛行機に乗って寝て起きたら異世界でした…… スキルが簡単に得られるようなので頑張っていきます

「お前の戦い方は地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん、その正体は大陸を震撼させた伝説の暗殺者。

夏見ナイ
ファンタジー
「地味すぎる」とギルドをクビになったおっさん冒険者アラン(40)。彼はこれを機に、血塗られた過去を捨てて辺境の村で静かに暮らすことを決意する。その正体は、10年前に姿を消した伝説の暗殺者“神の影”。 もう戦いはこりごりなのだが、体に染みついた暗殺術が無意識に発動。気配だけでチンピラを黙らせ、小石で魔物を一撃で仕留める姿が「神業」だと勘違いされ、噂が噂を呼ぶ。 純粋な少女には師匠と慕われ、元騎士には神と崇められ、挙句の果てには王女や諸国の密偵まで押しかけてくる始末。本人は畑仕事に精を出したいだけなのに、彼の周りでは勝手に伝説が更新されていく! 最強の元暗殺者による、勘違いスローライフファンタジー、開幕!

「お前は無能だ」と追放した勇者パーティ、俺が抜けた3秒後に全滅したらしい

夏見ナイ
ファンタジー
【荷物持ち】のアッシュは、勇者パーティで「無能」と罵られ、ダンジョン攻略の直前に追放されてしまう。だが彼がいなくなった3秒後、勇者パーティは罠と奇襲で一瞬にして全滅した。 彼らは知らなかったのだ。アッシュのスキル【運命肩代わり】が、パーティに降りかかる全ての不運や即死攻撃を、彼の些細なドジに変換して無効化していたことを。 そんなこととは露知らず、念願の自由を手にしたアッシュは辺境の村で穏やかなスローライフを開始。心優しいエルフやドワーフの仲間にも恵まれ、幸せな日々を送る。 しかし、勇者を失った王国に魔族と内通する宰相の陰謀が迫る。大切な居場所を守るため、無能と蔑まれた男は、その規格外の“幸運”で理不尽な運命に立ち向かう!

処理中です...