ハンティング・プレイヤー

日々菜 夕

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【ファースト・デート06】

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 勝手に安い正義感むき出しにして戦うとかほざいたのは自分自身だった。
 幸いな事に直ぐ近くには人は居ない。
 改札口より離れた位置に在るため、わざわざここから乗車しようと思う者は少ないからだ。
 一番込む時間帯ならそれなりに人も居るが…すでにピークは過ぎている。
 警察に電話して、駆除してもらえばなんとかなるはずだ。
 なにせ彼らには拳銃という遠距離攻撃可能な武器があるのだから。
 しかしながら、それには大きな問題もある。仮に警察に電話しても先ず100%信じてもらえないということだ。
 被害者が出るか、相応の問題でも起こらなければ用心して相手にする事もないだろう。
 最悪の場合。せっかく来てくれた警官が被害者になりかねないし。それだけは避けたい。

「なぁ。その致命的なケガをしない程度でなんとかなんねーのか?」
【回答。肉体損傷レベルを最低限に抑えた場合の最大攻撃力は約150%が妥当と判断。平均稼動速度は120%が妥当と判断。結論。以上の状態による勝率約0%と推測。要望。頭部破損は避けて下さい。ナナシの回収が困難もしくは不可能になります。説明。頭部に損傷がなければナナシの回収及び複製が可能】
「まてまてまてまて! あんだよそりゃ! まるで、俺が死んでもかんけーねーみてーじゃねぇか!」
【肯定。ナナシが克斗と行動を共にするのは克斗の機能停止までです。克斗の機能停止後は関係ありません】
「まてまてまて! いいか! 俺達は一緒だろ! 同じ身体を共有してるわけだろ!」
【肯定。ナナシは克斗と身体を共有していると言える状態に等しいです】
「なっ! だったら、一心同体、俺達は一心同体なわけだろ」
【肯定。現状ではその通り】
「だったら、そんな寂しいことゆーなよ! 俺も死なないしお前も死なない。これからも俺達はずっと一緒! どんな時も片時も離れずにずっと一緒だ! なっ、だから、俺達がきちんと生き残る方法を考えてくれよ」
【謝罪。回答困難。ナナシは克斗の要求に応えられないと判明】
「そんなことゆーなよ! なっ! とりあえず大丈夫な範囲なら攻撃力ってーの。上げちまってかまわねーからさ」

 片手で頼み込む姿をはたらか見れば……自動販売機に向かって拝み倒しているバカにしか見えないだろうが気にとめてる場合じゃない。

【無謀。現在、克斗の装備は投てき物1。皮製のシールド1と判断。提唱。他プレイヤーに戦果を譲る事を推奨】
「投てき物ってもしかして携帯? 皮製のシールドって鞄の事?」
【肯定。皮製のシールドは打撃武器としての応用も可能。提唱。現在の装備ではモンスターとの戦闘に敗戦する確率100%。至急、撤退行動を行って下さい】
「却下だ却下! そもそも携帯電話は投げるための武器じゃなくてコミュニケーションツールだ!」

 うぐっ――

 自分自身に精神攻撃してどうすんだよ俺。
 なにせ、俺の携帯には女の子のアドレスなんて一つもない。
 さらに言うなら同じクラスで三年間も過ごしたはずの中学時代。元同級生達とのやりとりも高校入学後数日で途絶えている。
 今では、新たに出来たクラスメイトの幸村と家族だけが唯一コミュニケーション可能な人物だったからだ。
 そんな俺の心情なんてお構いなしでナナシは状況のさらなる悪化要因をつきつけてきた。

【報告。未登録敵プレイヤーの接近を確認。至急対処してください】
「は?」
「おい! そこの外道! こんな所でなにをしている⁉」

 声の主は眼つきの鋭い美人だった。
 端整な顔立ちは綺麗と言うより怖さの方を強く感じる。
 近寄りがたい、異質感。彼女はなにも悪いことをしていないのに。
 ただ、見られているだけで悪いことをしたような錯覚におちいってしまう。 
 ソコには警察みたいな威圧感があった。
 一方で、背の低い女生徒は、可愛らしいという形容がぴたりと当てはまる。
 ぽやーっとした雰囲気と、女性らしさを誇張するかなり大き目なふくらみ。
 彼女の瞳に見つめられれば、それだけで頬が緩みだらしなく垂れ下がる。
 子犬や、子猫の様なマスコット的な愛らしさがソコにはあった。
 背の高い女生徒は俺を睨み付けながら、頭の先から爪先までをじっくりと観察してるみたいだった。
 こんな時間になんで? 一瞬自分の見間違いかと思ったが――やはり、俺が通う学院の制服だ。しかもリボンの色からしておそらく先輩である。
 迫り来る時間による焦りと何かを期待しているかのような無言の圧力。
 退学になりたくないという喪失感からくる怯え。
 この感覚は入学当初行われた自己紹介の時に似ていた。
 あの時は、テンパッテてきちんと思ったことを言えなかったから失敗したのだ。
 もし、きちんと自分の言いたい事が言えていたのならこんな境遇にはならなかったはず。
 だから必死に気持ちを落ち着かせ。
 ゆっくりと、口を開き。思った事を一語一句間違うことなく前回の失態を繰り返さないように相手に伝えた!

「俺の脳内に居る彼女が言ってたんだよ! ここにモンスターが出るってな!」

 し~~~~~~~~ん。
 ざざ~~~っと。

 波が引くように、聞き耳を立てていた、おっさんも、おばさんも、ちょっぴり綺麗なおねーさんも、みんなみんな俺から距離を置いた。見なかった聞かなかったことにしたみたいだ。
 そんな中。背の低い方の先輩だけは、背の高い先輩に向かって怒っていた。

「こんちゃん! こんちゃんってば! いいかげんにしてよね! 相手の心えぐるのが好きなのは知ってるけど限度ってもんがあるんだよ!」

 背の低い方の先輩が先程まで絡み付いていた右腕をぐいぐいと引っ張っている。
 それでも背の高い方の先輩は、俺の発した台詞の意味を理解するために思考を巡らせているみたいだった。

「あ…あの~。もしかして、俺ヤバイこと言っちゃいました……」

 俺は、冷静に物を言ったつもりだが相手は思った以上に衝撃を受け動揺しているみたいだが時間がない。
 もしナナシの言ってる事が本当だとしたら俺の近くに居るのはヤバイ!

「って! あぁ! もう、とにかくモンスターがでるから! どっか行ってくれ!」 
「立ち去るのはキサマだ鬼畜外道! 今日はココで鬼畜活動か⁉」
【警告。モンスター出現まであと30秒。現在での勝利確率0%。提案。至急撤退を要求します。警告。敵モンスターによる先制攻撃は溶解攻撃と断定】
「溶解攻撃⁉ って! もしかして一発アウトのやつか⁉」
【肯定。現状のまま直撃を受けた場合の生存率は0%】
「おい! 外道! さっきから誰と――」

 バキっとなにかがはじけるような大きな音がして慌てて振り返ると自動販売機の中心辺りから巨大なヒトデみたいなモノの一部が生えていた。
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