ハンティング・プレイヤー

日々菜 夕

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【ファースト・デート07】

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「とにかく死ぬのはダメだ! 何があっても生き残る事が絶対条件だ! 俺達が生き残るためなら多少の事は気にするな! いちいち確認なんぞしてんじゃねー! なんでもいいからとにかく生き残ることだけを考えろバカ!」

 むちゃくちゃな言い分だってわかってる。
 感情ではなく理論的に判断してるとしか思えないナナシに対して言っても無駄かもしれなかった。

しかし、俺の彼女(仮)は応えてくれた――

【了解。ナナシは、ナナシと克斗が存命するために全力を発揮します。報告。安全装置解除。肉体制御開始。運動領域抑制装置解除。各部伝達系統正常に接続完了。基本運動性能200%で固定。痛覚神経遮断。色素認識レベル下限修正完了。味覚、嗅覚神経遮断。心拍数正常に上昇中】

 まるでさっき言ってた脳が死んでなければOKみたいな言い草っぽいが気にしている場合じゃない。
 あきらかに、ヤバそうなのが出てきちまったのだから!
 こっちだってそれなりに覚悟をしなければならない!
 例え退学になったとしても二人を見捨て逃げるよりは何倍もましな気がした。







 俺は白黒の世界に放り込まれていた。

【報告。各部神経伝達速度最大で固定。感覚判断基準完全共有回路構築成功。各部誘導優先順位。第一を克斗。第二をナナシに設定。戦闘開始】

 ナナシとの会話にはほとんど時間と言うものを必要としなくなったと感覚で分かる。
 例えるならば、相手に何か伝えようと単語の最初の文字を発しただけで答えが帰ってくるような感じだ。

【報告。敵モンスター索敵開始。索敵範囲30メートル以内と判明。索敵終了。攻撃対象克斗に決定】 
「二人とも逃げろっー‼」

 叫ぶよりも行動が早かった。無抵抗な相手に対して一方的に暴力を振るうヤツに対する憎しみを、めいっぱい込め!
 手にしていた鞄を思い切り押し付けた! 鞄越しに感じる噴出した液体を受け止める感触。鞄に弾かれた溶解液が周りに飛び散る。
 それは、主に自動販売機に降りかかり。飛び散った液体が僅かにズボンの裾や靴を溶かしていた。

【報告。敵の攻撃はシールドにより防御成功。シールド第一層貫通確認。シールド内に溶解液充満確認。シールド大破確認。次に同様の攻撃を選択された場合による防御手段無し。敵モンスターの溶解攻撃終了を確認。我々に防御手段があると認定されました。初撃の攻撃失敗により次撃の判断を選定中。敵モンスター音波攻撃を選択。攻撃再開まで3秒】
「ちっ!」

 手放した鞄はどろどろに溶けていて――
 コンクリートのホームにべちゃり。と、張り付いたが最後。中身ごと泡となってグツグツ煮えている。
 弾け飛んだ溶解液は俺の手や腕にもわずかに飛び散り服を溶かし始めていた。
 痛みは感じない。
 買ってもらって間もない新品の鞄は中身ごとまるまるダメにしちまった。
 きちんと教科書やノートの類を入れていなかったらやばかった。
 はっきり言って運が良かっただけ。もしも敵のレベルがもっと強かったらマジで瞬殺されてた。
 振り向くと、先輩達はその場で硬直していた。

「って! なにやってやがる!」 

 怒りだろうか、苛立ちだろうか。《キュイーン》という高音でモンスターの奇声が響き渡る!

「ぐぁ~~‼」
「いや~~‼」

 あまりのうるささは聴覚に痛みを感じさせるみたいだ。二人の先輩だけでなく、何事かと近くに寄って来た人達も耳を押さえてうずくまる。
 そんな中、後天的に痛覚に対する神経を遮断する事が可能になった俺だけは、さしたる問題も無く立っているようにも思えたが――
 
「なんだよ、こりゃ⁉」
【報告。敵の音波攻撃により聴覚に深刻なダメージを確認。三半規管の一時的な機能低下に伴い平衡感覚に問題発生。敵モンスター次の行動選択まで3秒】

 ――ざけんじゃねー‼

 こころの中で悪態を吐くと同時に彼女達をかばうため敵に背を向けて突進を試みる!
 しかし――視界が揺らぎ、身体が思うように進まない。気付けば膝を地面に打ち付けてはいつくばっている状態だ。

【報告。敵モンスター。音波攻撃が有効と判断。攻撃を選択。攻撃方法突起物による射撃攻撃と断定。次の攻撃まで3秒】
「くっしょ――! ってゆーか、突起物ってなんだよ!」

 そんななことよりも、あんな溶解液をかぶった先輩達の姿なんて見たくなかった。
 ましてや射撃攻撃とか聞きたくも無い言葉だ。
 だから、身体を起こす。
 二人同時に動かすためには、間に割って入り。強引にでも緊急退避するしかないからだ。
 渾身の飛び込みで先輩達にタックルを仕掛ける。

【了解。説明方法変更致します。敵モンスター先の尖った硬化外皮を射出開始】
「うぐ~」
「きゃっ」

 三人とも無様に倒れこんだ。
 感覚が残っていたらコンクリートの冷たさを味わっていたことだろう。

《ズドン》

 と、先程まで俺達が居た場所に棘の様に先の尖った物体がコンクリートに深く突き刺さっていた。

【報告。先の尖った射出攻撃回避成功。敵モンスター、こちらに回避する余力があると判断】

 鈍く光るそれは三本。直径5センチほどで見た目は金属というよりも動物の爪に近い。
 それぞれ的確に人体の最も大きい部分。胴体の中心を狙って放たれていた。

「早く、逃げろ‼」

 近くに居た他の連中は、危険を感じ取り逃げ出したが――
 俺の叫びに二人の先輩は、ほとんど反応を示さない。どうやら俺同様、モンスターに近過ぎたのだ。
 一時的に動けなくなってると判断していいだろう。
 鞄を間単に溶かした溶解液やコンクリートに突き刺さるほどの物理攻撃により伝わった地面の振動波。
 それらが総合的に先輩達を恐怖と混乱で縛り、動きを止めてしまっているみたいだ。

【報告。敵モンスター次の行動は攻撃を選択。攻撃方法音波による足止めと断定。次の攻撃まで3秒。直ちに戦闘モードに移行して反撃を開始して下さい】
「バカか! 戦ってる場合じゃねぇんだよ!」
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