意思

LEON

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辞めたい……。
働き始めてまだ半年の彼女は思った。長い五月病に侵され、彼女の心は水面に浮かべたスポンジの様に、光も届かない海底にゆっくりと沈んでいった。
毎朝起きると、「疲れた……」という言葉を吐き、つぶらな瞳を大きなビルへと向ける。朝から夜にかけて、偽りの自分を演じ、長い仕事を終えた彼女は、逃れる様に家へ転がり込む。そして、明日も仕事か、と深いため息と共に、床にへばりつき眠るのだった。次の日も、その次の日も、彼女は錆びた体を虐め抜いた。
彼女は働く意味さえ分からない。大人の社会というものも理解できない。他人は彼女に真面目に生きなくていい、ずる賢く生きて見せろと言う。しかしそうではないのだ。それだったら、私は真っ直ぐ生きたいのだと彼女は思った。しかし、それは言葉に出来ず、絡まった想いは喉に詰まり、彼女は窒息しそうになった。上司の言う事も理解できず、消化不良を起こした彼女は、一人暗闇でうずくまった。
失望が彼女の頬を伝う。腫れあがった赤い目に、アイシャドウの混じった黒い涙。悪魔の嘆きの様に、彼女は泣いた。
彼女は、とにかく働くことに執着した。理由などない。それが当たり前と教えられてきたからだ。
ある日、耐えられなくなった彼女は、仕事を辞めると上司に言った。年下上司との人間関係、客への接待、全てにおける対人関係が辛いのだと。
上司は言った。それでいいのかと。ここで辞めてしまっても、次の職場で同じことが起きるかもしれない。確かに原因はあなたの周りの人にあるかもしれない。でも、あなた自身にも問題があるとも限らない。
他人は変えようとしても本人が変える気が無ければ変わらない。でも、自分自身を変えようと思ったら、変える事は出来る。まずは自分自身にも非がないかと自問自答し、あれば改善してみる。それでも、環境が改善しないのなら、もうその場から離れてもいい。大人は、逃げるなと言うが、たまには逃げることも必要だ。
上司は言った。悩みの全ては対人関係にあると。そして、人から嫌われる勇気を持つことも必要であると。
それから彼女は、自分を見つめ直した。

ある日。疲れ切った彼女の元へ、一通のメールが届いた。上司からだった。
「今日もお疲れ様。辛いと思うけど、明日も頑張ろう。悩みがあれば、私で良ければ相談に乗るよ」
もう少しだけ頑張ってみよう、と彼女は思った。
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